理想の注文住宅を建てるにはハウスメーカー選びが重要だ。大手だからといって、どこの会社を選んでも同じというわけではない。ハウスメーカー各社それぞれに特徴があり、得意・不得意もある。そのため、希望とマッチした会社を選ぶことが重要だ。ここでは、ハウスメーカー選びで失敗しないための7つのポイントを紹介しよう。(住宅・不動産ライター、宅地建物取引士 椎名前太)
ハウスメーカー選びの注意点
注文住宅を建てる場合、依頼先は大きく分けて、ハウスメーカー、工務店、設計事務所の3つがある。これらのどこに依頼するかが、理想の家づくりを行うための重要なポイントだ。
ハウスメーカー、工務店、設計事務所には、それぞれメリットやデメリットがあるが、ここではハウスメーカーを選ぶ際の注意点や押さえておくべき7つのポイントを紹介しよう。
【関連記事はこちら】>>失敗しない注文住宅会社の選び方を解説! ハウスメーカー、工務店、設計事務所のメリット・デメリットは?
なお、ハウスメーカーに明確な定義はないため、本記事では「オリジナル部材を用いて全国展開している住宅会社」ということにする。
ではまず、ハウスメーカー選びの注意点から見ていこう。
建築費が1000万円以上高い大手ハウスメーカーを、本当に選ぶべきか考える
ハウスメーカーで家を建てる主なメリットは、「性能」「デザイン」「アフターフォロー(保証)」など、建築依頼先を選択する際に重要な項目が、すべて高レベルで実現できる点だろう。
その代わりに建築費も高い。全国の注文住宅の平均坪単価は62.4万円(国土交通省「建築着工統計(2017年度)」だが、主なハウスメーカーの平均坪単価(2018年度)は次のようになっている。
上表のとおり総平均坪単価は89.3万円と、全国平均より約30万円も高い。30坪の家なら1000万円近くも高くなるということだ。
ここで考えなければならないのは、これだけ多く支払う価値があるかどうかだ。
よく考えずに「大手は安心だから」という理由で依頼してしまうと、後々オーバースペックだったり、自分の価値観とは合わなかったりして後悔することになる。
営業担当者の対応だけでハウスメーカーを決めてしまうのは危険
注文住宅でありがちな失敗例が、「建物のことはよく分からないので、営業担当者の対応で選んだ」というケースだ。
リクルート住まいカンパニーの「注文住宅3年以内建築者調査(2018年)」でも、「建築会社を選んだ決め手」の1位が「担当者の対応が良かった」(46.8%)となっている。
ところがハウスメーカーの離職率はけっして低くない。頼りにしている営業担当者が、家を建てて数年で退職してしまうケースも多々あるのだ。そもそもハウスメーカーの多くは、アフターフォロー専門の担当者が付くことになっており、入居してからは営業担当者との接点はほとんどなくなる。
したがって、営業担当者の対応だけで決断してしまうのは危険だ。
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ハウスメーカーの選び方7つのポイント
以上の注意点を踏まえて、ハウスメーカーを選ぶ際は以下の7つのポイントに注目しよう。
ポイント① 建築費をチェックする
前述のとおり、ハウスメーカー同士でも平均坪単価は30万円近くも違う。とはいえ、この差額は絶対ではなく、間取りや選択する設備などによって大きく変化する。実際の価格を知りたければ、各社に同じ間取りで相見積もりを取ればいいだろう。
【関連記事はこちら】>>注文住宅の相場価格はいくら? 30坪や40坪の家に必要な費用や予算の考え方を解説!
ポイント② 住宅性能の+αに注目する
住宅性能の目安となるのが「住宅性能表示制度」だ。これは国が定める制度で、耐震性、省エネルギー性など10分野の住宅性能を等級で表示するものである。
例えば、耐震等級を見てみると次のようになっている。
建築基準法で定められている最低基準。震度6強~7の地震でもすぐには倒壊しないレベル。このレベル以下の家は、法律上建てることができない。
耐震等級2
等級1の1.25倍の耐震性能。震度6強~7の地震でも一定の補修で住み続けられるレベル。
耐震等級3
等級1の1.5倍の耐震性能。震度6強~7の地震でも軽い補修程度で住み続けられるレベル。
ここで注意しなければならないのは、多くのハウスメーカーは標準仕様で住宅性能表示制度のほとんどの分野の最高等級を取得できるということだ。要するに、どのハウスメーカーもこの制度においては横並びということ。
だからといってすべての住宅性能が同等ということではない。「最高等級+α」が違うのだ。
一例を挙げれば、同じ「耐震等級3」でも、あるメーカーは「制震装置」を導入している。これは建物の壁に組み込んで地震の揺れを吸収するもので、震災時の建物の損壊を軽減する効果がある。
ハウスメーカーの性能を比較する際は、このような「最高等級+α」の部分に注目したい。
ポイント③ デザインの得意・不得意を確認する
どのハウスメーカーの営業担当者も内外装のデザインに関しては、「お客さまの好みに合わせてカスタマイズします」と言うだろう。しかし、各ハウスメーカーによってデザインの得意・不得意の差は大きい。
例えば、和風建築を得意とするメーカーに南欧風のデザインをリクエストした場合、ちぐはぐな印象の家になる可能性は高い。
得意なデザインを確認する方法としては、住宅展示場で現物を見学するのがもっとも簡単だ。
また、多くのメーカーはデザイン集のパンフレットも作製しているので、それで確認してもいいだろう。
ポイント④ 設備・内装材のグレードの違いをチェックする
システムキッチンやバスなどの住宅設備にはグレードがある。例えば、高グレードのシステムキッチンなら、より質感やデザイン性の高い天板や扉の面材になり、最初から食器洗い乾燥機などの装備も付いている。
また、同じフローリングの床でも高グレードならば、より天然木に近い質感になる。どの程度のグレードの設備、内装材を標準仕様にしているかはハウスメーカーによって異なる。
【関連記事はこちら】>>注文住宅のキッチン選びのポイントは? 種類別のメリット・デメリットを知り、理想の暮らしを実現しよう!
ポイント⑤ 保証制度の違いを確認する
新築住宅の場合、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって10年間の保証が付くことになっている。保証対象は基礎、柱などの構造耐力上主要な部分と屋根や外壁など雨水の侵入を防止する部分だ。
しかし、大手といわれるハウスメーカーのほとんどは、それを上回る30年の初期保証を付けている。違いが出るのは30年以降の保証期間と延長のための費用だ。大体は10年ごとに無料または有料の点検を行い、そこで見つかった不具合を修繕すれば保証期間が延長される。
多くの延長期間の上限は築60年までだが、建物が存在する限り延長するというメーカーもある。
ポイント⑥ メンテナンスコスト(耐久性)
メンテナンスコストは建築費以上に重視したい。例えば、一般的な外壁塗装の寿命は10年から15年といわれているが、最近は30年をアピールするハウスメーカーも増えてきた。
外壁塗装の相場は1回当たり100万円以上するので、寿命が延びればそれだけメンテナンスコストが削減できる。
そのため、メンテナンスコストを比較する際は、営業担当者に30年、60年といった長期スパンのメンテナンス費用を出してもらって横並びで確認するとよい。
メンテナンスコストは、数十年単位で考えれば場合によって数百万円の差が生じるので、当初の建築費との差額を埋められることもあり得る。
ポイント⑦ 間取りの自由度はあるか?
上記の外壁を含め、ハウスメーカーのほとんどの部材はオリジナル品だ。そのため、「この輸入品を使用したい」といったように、オリジナル品以外の採用をリクエストしても仕様上、設置できないこともある。
また、柱や階段などの構造材も寸法などが決まったオリジナル品なので、「この階段の角度をもう少し緩く」「ここの天井を2cm高く」といった細かい間取りの変更にも対応できないことが多い。
このような自由度に関しては、やはり同じ間取りで相見積もりを依頼すれば分かるはずだ。
自由度の低いハウスメーカーの場合、「当社ではその間取りは不可能です」「どうしてもここに柱が入ります」といった回答になるはずだ。
ハウスメーカー選びは7つのポイントを総合的に判断しよう
以上、注文住宅のハウスメーカー選びについて解説してきた。
ハウスメーカーの建築費の差は主に、②住宅性能、③デザイン、④設備、内装材のグレード、⑤保証制度、⑥メンテナンスコスト、⑦自由度によって生じる。
それゆえ、これら7つのポイントを総合的に判断して、自分や家族にとって、最も費用対効果の高いハウスメーカーを選ぶことをおすすめする。
【関連記事はこちら】>>注文住宅を建てるハウスメーカー・工務店、28社のおすすめポイントや特徴を解説!
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