
東京23区の中古マンションの成約件数が5カ月連続で減少したことで「売れ行きが落ちている」「マンション価格下落」などの報道が目立ちます。本当にマンションが売れなくなっているのか。マンションリサーチの福嶋真司氏が、不動産データをもとに中古マンション市場について解説します。(※本記事は、YouTubeチャンネル「福嶋総研 マンションリサーチ公式」9月14日公開動画を要約したものです)
中古マンション、成約件数5カ月連続減少のカラクリを解く
まず、2026年8月のレインズのレポートから確認していきましょう。データを見ると、東京23区の中古マンションの成約件数は、5カ月連続で減少しています。また、成約平米単価も4カ月連続で下落しており、1990年10月の水準を下回る結果となりました。
この「5カ月連続の成約件数減少」という数字だけを見ると、多くの方は「不動産の流動性が落ちて、売れなくなっているのではないか」と思われるかもしれません。しかし、ここには大きな注意点があります。
前年の同時期(2025年8月)の市場を振り返ると、転売取引も含めて極めて活発に売買が行われていた時期でした。実際に住む目的で購入される実需層の取引を考える場合、前年の活発な転売取引による数字をマイナスして差し引いたうえで市場を評価しなければなりません。
つまり、単に実需の流動性が落ちたのではなく、前年のような活発な転売が行われていた時期やエリアと比較したために、件数が減少しているように見えているのです。したがって、一概に「マンションの流動性が低下した」と結論付けることはできません。
また、成約平米単価のグラフ推移を詳しく見ると、現況はずっと横ばいの推移が続いています。全体として価格が減少傾向をたどっているわけではなく、基本的な傾向は変わっていないと判断できます。
築年帯別では、築浅の在庫が急増している
不動産市場の変化をより明確に捉えるために、東京23区における中古マンションの在庫推移を築年帯別に分析してみましょう。
築年数を3つの区分に分けて在庫の動きを確認します。1つ目は、1982年以前に建築された物件(旧耐震基準など)、2つ目は、1983年から2005年に建築された物件、そして3つ目は、2006年以降に建築された築年の浅い物件(築浅マンション)です。
成約件数が減っていると聞くと「全体の在庫が増えているのだろう」と考えがちですが、データを見るとまったく異なる現象が起きています。
1982年以前の物件の在庫は、増えるどころかむしろ減少傾向を示しています。また、1983年から2005年の物件の在庫についても、横ばいかやや減少という状態です。
一方で、2006年以降に建築された築浅物件だけに限って見ると、在庫が急増している状態が浮かび上がってきます。つまり、特定の築年帯である「築浅マンション」の在庫だけが増えているのです。
在庫の急増は、都心5区の投資家・転売層の動きと直結
この2006年以降の築浅物件の在庫急増は、特定のエリアで顕著に表れています。それが、千代田区、港区、中央区、新宿区、渋谷区の都心5区です。このエリアは、国内外を問わず多くの投資家や、いわゆる転売目的の事業者・個人が集中している地域です。
現在、同エリアで何が起きているかというと、転売目的で売り出された物件の価格が高騰しすぎた結果、市場の買い手が追いつかず売れなくなっています。そして、売れ残った転売物件がそのまま在庫として積み上がっている状態にあります。
本来、住宅として正常に機能し、居住用に供給されるべき物件ではなく、あくまで投資や転売の対象となった物件が在庫として急増しているわけです。
前年の2025年8月は、転売も含めた取引が非常に活発でしたが、現在の市場ではそうした転売の動きが落ち着き、市場から姿を消しました。転売取引が減少すれば、全体の成約件数が落ち込んでくるのは当然の結果です。したがって、この成約件数の減少幅を単純に「住宅市場全体の流動性低下」と見るのは、かなり危険な解釈だと言えます。
「マンション暴落」報道に惑わされず、市場を見極める
価格面についても同様のことが言えます。高価格帯に設定された築浅の転売物件が売れ残って在庫化する一方で、実際に成約しているのは相対的に価格が安く、買いやすい築年帯の物件です。
売れる物件の価格帯が相対的に安い方にシフトしているため、全体の成約データを集計すると、平均単価が下がっているように見えています。
これは「マンションの価格自体が下落・暴落している」ということではありません。高価格帯の物件が売れ残り、購入しやすい価格帯の物件が必然的に選ばれて売れているという市場の買い手の実態が反映されている状態なのです。
ニュースや各種メディアの解説では「流動性が落ちている」「マンション価格が下落している、暴落している」といった見方がなされることがあります。しかし、データを細かく分解して精査していくと、必ずしもそのような状態ではないことがはっきりと見えてきます。
市場の動きを見極める際は、一部の築年帯や投資的な取引の影響を正しく切り分け、数字の裏にある構造を正確に捉えることが大切です。
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