東京都港区のマンション価格は平均坪単価970万円(2025年6月時点)と70㎡で2億円を超える水準に達し、高所得層でも手が届かない高価格となっています。ここまで高騰している背景とは? 港区マンション市場の実態について、マンションリサーチ株式会社不動産データ分析責任者の福嶋真司氏が、YouTubeチャンネル「福嶋総研 マンションリサーチ公式」で豊富なデータをもとに解説しました。(※本文で出てくるデータは、マンションリサーチ独自のデータを使用しています)
港区マンションが70平米2億円超え、高所得層でも届かない価格帯に
東京都港区のマンション市場をみると、2025年6月時点での平均坪単価は970万円と東京都23区の中でも群を抜いて高く、70㎡のマンションなら2億円を超える計算です。
世帯年収2,000万円の人でもローンを組んで買うのは難しい水準で、高所得でも購入できない状況となっています。
中央区:人口流入が多く、価格が上昇
では、中央区の市況を見てみましょう。中央区では、人口増加率、価格高騰率がともに23区で最も高く、マンションの取引が活発に行われています。需要が多いため、価格も上がっているエリアです。
平均坪単価は約690万円ほど。湾岸エリアのタワーマンションを除けば、平均坪単価は620万円程度で、70㎡のマンションでも1億5000万円以下に収まります。この価格帯だと、世帯年収1500万円以上の高所得層がローンを組めば購入できるので、人が入ってくる余力がある実需で動く市場と言えます。
港区:人口の伸びは少ないが、価格が上昇
一方、港区の人口増加率は23区の中でも最も低いにもかかわらず、価格高騰率は中央区に次ぐ高さです。港区の人口はほとんど増えていないにも関わらず、価格は高騰しているのです。
この背景には、港区のマンションは、新規の流入者が買うのではなく、実際には住民票の登記を行わない海外富裕層のセカンドハウスや投資目的での購入、または、港区内の既存住民による買い替え(内需)が起こっていると考えられます。これらのケースが取引を活発化させ、価格を押し上げている要因となっていると言えるでしょう。
港区では、富裕層の高額取引が活発化
次に港区の販売戸数と在庫回転率のデータを見てみましょう。
在庫回転率とは、ある時点で販売されている物件のうち、1カ月でどの程度売れているかを示す指標です。たとえば在庫が100戸あり、そのうち50戸が1カ月で売れた場合、回転率は50%となります。数値が高いほど売れやすいことを意味しています。
港区では、この在庫回転率が2023年初頭から継続的に上昇しているのが見て取れます。販売戸数も直近で増えており、港区の不動産市場は、売れ行きが非常に良く、売れる数も多いことが分かります。
外部からの流入が少ないにもかかわらず、このように取引が活発であることは、港区エリアに外国人含む富裕層といった資金力のある人々が入ってきて、取引が増えていることを示唆しています。
2億円以上の高額取引が急増
富裕層による取引の活発化は、価格帯別の成約件数にも表れています。港区の価格帯別の成約件数を分析すると、2025年6月の港区全体の成約件数は前年比で50%増えています。その中でも、2億円以上の高価格帯の成約件数は、前年同月比150%増と驚異的な伸びを見せています。
価格全体の上昇に伴い、高額の物件が増えることはある程度予測されますが、想定を超える勢いで高価格帯の取引が急増していることが見て取れます。
結果、港区の平均成約価格がそれに引っ張られる形で高くなり、全体の取引も非常に活発になっているため、港区全体の価格は依然として上昇傾向にあることがわかります。
港区のマンション市場に5億円以上の高額物件が急増
港区のマンション市場で高価格物件がどのくらい出ているのか、3億円以上の新規売り出し数の推移を出してみました。
上図のグラフを見ると、2024年中盤からが急増しているのが分かります。特に5億円以上の物件(オレンジ色の折れ線グラフ)の伸び方は著しく、さらに、これまでほとんど売り出されなかった10億円以上の超高額物件も、この1年半で市場に出るようになりました。
これらの動向は、港区が特別なマーケットであって、高額な物件が市場に多く供給されるようになったことを示しています。高額物件を購入できる富裕層(港区内の内需や外国人富裕層)が増えていることが、実際の成約件数や商品構成を見れば明らかです。
今回、さまざまなデータから港区の実態について解説しましたが、国内の高所得者でも購入が難しくなった港区のマンション価格は、今後もさらに上昇していくメカニズムが働いていると考えられるでしょう。
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