「EGENT」のような不動産売買の
エージェント検索サービスは日本でも普及するのか

2019年9月3日公開(2021年4月26日更新)
千葉利宏:ジャーナリスト

「EGENT(イージェント)」は日本初の不動産エージェント(宅地建物取引士)紹介サービス。運営するのは、不動産スタートアップのEQON(エコン)だ。三菱地所ハウスネットや大成有楽不動産販売など170社の提携企業に所属する宅建士の中から経験豊富な196人をエージェントとして登録。サービス開始からわずか2か月で500組近い相談が寄せられ、相談内容に適したエージェントを紹介して好評を得ている。米国など海外では広く普及しているサービスだが、はたして日本でも定着するのだろうか。※2021年4月現在、EGENTはサービスを停止しています。

米国の不動産取引では
エージェント検索サービスが広く利用されている

 不動産スタートアップのEQON(エコン)を創業したのは、丸紅出身の三井將義代表取締役CEOと、リクルート出身の澤井慎二取締役COOの2人だ。設立は2018年7月で、本社は東京都新宿区下落合に置く。現在は渋谷のスタートアップ向けシェアオフィス「Plug and Play Shibuya」などを拠点に活動している。

 消費者が保有する不動産を売却する時に最初に悩むのは、どこに仕事を依頼するのが良いかである。知り合いなどに信頼できる相談相手がいなければ、次のような方法を取ることが多いだろう。

①テレビCMなどを流している営業力が高そうな大手不動産仲介会社に問い合わせる

②自宅のポストに投函されていたチラシなどを見て不動産仲介会社に問い合わせる

③インターネットの一括査定サイトを利用して不動産仲介会社を選ぶ

 いずれにしても「不動産仲介会社」を選び、媒介契約を結んで仕事を依頼することになる。

 不動産を購入する場合は、SUUMO、HOME'S、athomeなどの不動産物件検索サイトで物件探しから始める消費者が多いだろう。希望する物件を見つけたら、その広告を掲載した不動産仲介会社に問い合わせることになる。

 不動産仲介会社に問い合わせた時点では、実際の不動産取引を行う宅建士が誰になるかは分からないし、不動産仲介会社が決めた宅建士に取引を任せることになる。

 しかし、宅建士もあらゆる不動産取引に精通しているわけではない。「経験年数、担当エリア、住宅ローンやリノベーション、相続対策などの専門知識でも違いがあります」(三井氏)。

 医者や弁護士も、知識やスキルによって専門分野や得意・不得意があるように、宅建士も依頼者との相性や取引案件の特性などに応じてパートナーを選ぶのが本来は望ましいはず。ところが日本では「消費者からの問い合わせの電話をたまたま取った人間が担当者になることも珍しくありません」(三井氏)という状況が続いてきた。

 米国でも、不動産取引の資格を持つエージェントはブローカー(不動産会社)と契約しているが、基本的に個人事業主として活動している。消費者も、これまでの実績などを参考にエージェントを選んで仕事を依頼するのが普通で、米国ではHomeLight、UpNestなどエージェント検索・紹介サイトが広く利用されている。

日本初のエージェント検索サービス
「EGENT」の特徴

EGENTのトップページ
「EGENT」

 「EGENT(イージェント)」は、HomeLightなどと同様にサイトに登録している宅建士個人を消費者が自由に選ぶことができる日本初のサービスだ。サイト立ち上げのために三井、澤井の両氏は250社もの仲介会社に協力を依頼し、1000人以上の宅建士にインタビューを行った。その中なら8年以上の実務経験があり、専門性などを考慮しながら196人の宅建士を選んでサイトに登録している。

 「かなりエリ好みしたので、大手不動産仲介会社でもマネージャー級や、中小になると社長クラスしかEGENTには登録していません」(三井氏)

 提携に応じた不動産仲介会社は170社で、三菱地所ハウスネット、京急不動産などの大手から、地場の富ヶ谷不動産、外国人向けのハウジングジャパンなどバラエティに富んでいる。エージェントは東京23区をカバーするように担当エリアと専門性を考慮して選抜しており、個人ごとに顔写真、経歴、担当エリアのほかに得意分野や評価点を加えて紹介している。

 「サイトを見ただけではエージェントを選べない、という利用者も多いので、EGENTが事前に要望を聞いてエージェントの紹介も行っています」(三井氏)

 EGENTの最大の特徴は、不動産取引が成立するまでEGENTが利用者に伴走しながらサポートするところだ。エージェントを紹介した後も、利用者とエージェント間のメールをEGENTもCCでチェックし、エージェントの提案に利用者が納得できない時にはEGENTが個別に相談に応じている。「物件の内見や契約にも同席するようにしています」(三井氏)と、きめ細かくフォローしている。

 EGENTでは成約課金型のビジネスモデルを採用しており、不動産取引が成立してエージェントが得る仲介手数料から10%の報酬を得る。利用者がエージェントの対応に満足せずに成約まで至らなければ、EGENTも報酬を得ることができない。利用者の「カスタマーサクセス」がEGENTのビジネス拡大に直結しているからだ。

 日本では、不動産仲介会社は売主と買主の双方を媒介して、両方から計6%の仲介手数料を得る「両手取引」が広く行われてきた。最近では、物件を買取再販業者に安値で売却し、リノベーション済み物件を売却する際にもまた自社を通じて売ることで計12%の仲介手数料を得る、『往復びんた』と呼ばれる取引も増えています。手数料に目がくらみ、売主が少しでも高く売れるように努力してくれないという問題も増えています」(三井氏)といった問題も生じている。
【「往復びんた」についてはこちら参照】>> 不動産を「買取」で売るメリット・デメリットとは? 仲介との違いから、買取業者の選び方、注意点まで、マンション・戸建ての買取で損しない方法を徹底解説

EGENTの利用者が
不利益を被る可能性は

 紹介したエージェントが両手取引に持ち込むために売却物件を売り惜しんだり、安値で買取再販業者に転売しようとしたり、利用者の不利益になる行為を行っていないかを監視するのもEGENTの重要な役割だ。

 エージェントがEGENT利用者の不利益になる行為を行っていることを確認した場合はどうするのか。

 「まずは問題点を指摘して改善を求めます。場合によっては別のエージェントを紹介します」(三井氏)

 不動産業界では、専任媒介契約の有効期限は3ヵ月以内で、契約後に不動産仲介会社を変更したいと思っても契約が切れるまで待たなければならない。

 しかし、EGENTは成果課金型なので、エージェントにも成果が出なければ途中での担当交代を認める契約としている。結果的に「EGENTの利用者に買取を提案した担当者はまだ一人もいません」(三井氏)と抑止効果にもつながっているようだ。

 このほかにEGENTを利用して、どのようなメリットがあるのか―。具体的な事例で見てみよう。

【ケース1】EGENTで媒介契約を結んだ顧客が仲介会社から値下げ交渉をされた 

「媒介契約後にエージェントが行った広告活動を確認すると、不動産物件検索サイトの掲載方法や広告掲載区分などで十分な対策が講じられていませんでした。まずはエージェントに広告表現の改善提案を行い、その結果、値下げせずに希望価格で売却できました」

【ケース2】EGENTの提携先ではない仲介会社と媒介契約を結び、希望価格で売れずに業者買取を提案されたのでEGENTに相談した

「EGENTは宅建業者ではないので、提携先のエージェントに物件がレインズにどのような広告区分で掲載されているかを確認してもらったところ、このケースでも対策が不十分であると判明しました。そこで、前の不動産仲介会社との媒介契約が切れるのを待って、囲い込みをしない売却専門のエージェントを紹介。広告の量の改善を行った結果、無事に希望価格で売却できました」

【ケース3】自分でリノベーションしようと中古物件を探していたが、欲しい物件が買取再販物件ばかりなので困ってEGENTに相談した

「リノベーションに精通したエージェントを紹介。取り扱い物件数が多い大手業者に、ローン審査や瑕疵担保保険などの面倒な手続きをかけずに、買取再販業者と同じ条件で購入することを伝えることで、買取再販業者に出回る前の物件を紹介してもらうことができました」

エージェント検索サービスは
日本でも普及するのか

 米国とは不動産取引の商慣行が異なる日本で、EGENTのようなエージェント検索サービスは定着するだろうか。

 これまで、不動産仲介会社の優秀なエージェントが担当する仕事は、紹介による依頼が多かった。インターネットが普及して誰もが手軽にネット経由で問い合わせができるようになったが、優秀なエージェントはネットの問い合わせに対応している時間はないため、経験の浅い担当者が付くことになる。つまり、経験の浅い担当者からしつこい営業をかけられるばかりで、優秀なエージェントには出会えないのだ。売主・買主が優秀なエージェントに仕事を依頼するには「バイネーム(指名制)」しかない。

 「仲介会社の経営者でも、腕一本で偉くなってきた方はEGENTの考え方を応援してくれています。日本でも、優秀なエージェントがSNSを通じて自ら情報発信できる時代背景もあって、不動産仲介は“ヒトで売るビジネス”という認識が高まっています」(三井氏)

 しかし、優秀なエージェントにとっては、バイネーム(指名制)で仕事を依頼されても人気ゆえに対応しきれない可能性がある。そのため、EGENTのようなサービスが事前に売主・買主の要望を聞いてくれて仕事を振り分けてくれる方が効率的かもしれない。日本の不動産業界でも人手不足問題が深刻化し始めているので、エージェントの生産性向上を図るためにEGENTを利用する仲介会社が増える可能性もあるだろう。

 「また、EGENTは、すべての不動産取引は価格ではなくエージェント選びから始めるべきであるという信念でやっています。それを実現するためには、エージェントに会う前にユーザー自身で不動産価格を知ることができる環境を整えることが重要と考えています」(三井氏)

 米国では、ZillowのAI(人工知能)を活用した住宅価格推計システムが業界標準として普及しており、日本でも20近いAI査定サービスが登場している。

 「最近ではAI査定の精度もかなり向上してきていますが、当社でも取引事例とAI査定を組み合わせた価格査定サービスの開発を進めています。さらに今後は国際的な不動産仲介にも力を入れていきます」(三井氏)

 海外投資家にとっては、米国などと同様のサービスが日本にもあれば利用しやすいだろう。

 テクノロジーを活用し、さまざまな不動産取引に対応していくことで、エージェント検索サービスはさらなる利用拡大が期待できそうだ。

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