不動産の購入希望者に物件を案内する際に、不動産仲介会社の営業担当が気をつけるべきことは? コロナ禍の不動産業界の取り組みにも少し触れつつ、詳しく解説したいと思います。(不動産会社向けの集客&教育コンサルタント・梶本幸治)
「物件案内」をする際に気をつけること
以前の記事の中で、「不動産買付営業の基本的な考え方」として次のようにご提案しました。
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・不動産買付営業では「購入理由」のヒアリングに全力を尽くす
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・「購入物件像」に関してはお客様から聞くのではなく、ヒアリングした「購入理由」に基づき、営業担当者から提示する
この考え方について、具体的に解説しましょう。
購入希望の顧客が、たとえば「名古屋市営地下鉄の池下駅周辺で、中古の分譲マンションを探している」とおっしゃっているとします。しかし「購入理由」のヒアリングにより、あなたが「いや、このお客様の購入理由であれば、星ヶ丘駅近くの中古戸建の方が良いはずだ!」と判断するのであれば、不動産のプロとして「池下駅のマンション」に加え、「星ヶ丘駅の戸建て」もご提案いただきたい、ということですね。
なぜ、購入理由をヒアリングした上で、顧客の希望条件以外の物件も提案した方がいいのでしょうか? ここで1つ余談ですが、不動産の営業担当者なら、次のような経験をしたことがあると思います。
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不動産購入を希望する顧客からご希望条件(物件種別・予算・広さ・最寄駅からの距離など)を聞き、条件通りの物件を何件か案内するも商談まで進展せず、その日は「また、いい物件が出ましたらご連絡します」と伝えて解散。
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その後、希望条件に合う物件が売りに出されたため、大急ぎでお客様に電話したところ、「ごめんなさい。他の物件を買ってしまいました」との返事。
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どんな物件を購入したのか聞いてみたところ、予算も広さも最寄り駅も、聞いていた条件とは全く異なる物件でビックリ。
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お客様との電話を切った後で、「くそ~。お客様にウソをつかれた! 聞いていた条件と全然違うじゃないか!」と不満を漏らしたところで後の祭り……。
しかし、これはお客様がウソをついていたわけではありません。
不動産営業担当者のヒアリングが不足していたのです。いや、正確には「ヒアリング不足」というより「ヒアリング対象の間違い」と言った方がいいかも知れません。
購入希望の顧客への最初のアプローチは、「どんな物件をお探しですか?」と聞くか、「なぜ、不動産を購入しようと思われたのですか?」と聞くかで、その後の営業方針は全く異なってきます。私のコンサル先の不動産営業担当の方には、後者の質問を聞くように伝えています。
ここでお客様から「結婚するんです」との返事があっても、「結婚されるんですか。おめでとうございます。それで、どんな物件をお探しですか」と話を進めてはいけません。
結婚するから家を買う……それって普通でしょうか?
「結婚するから家を買う人」と「結婚するから賃貸を探す人」なら、いきなり家を買う人よりも、賃貸を探す人の方が人数は多いでしょう。
ここはもう一歩踏み込んで、「結婚されるにあたって賃貸を探される方も多いですが、なぜ、このタイミングでマイホームを購入しようと思われたのですか?」とヒアリングしたいところです。
このように「なぜですか?」「なぜですか?」「なぜですか?」と聞き進めていくと、顧客の「真の購入理由」に行き当たる可能性が高まります。
そして、この「真の購入理由」を踏まえた上で、前述のように「いや、このお客様の購入理由であれば池下駅周辺の譲マンションよりも、星ヶ丘駅近くの中古戸建の方が良いはずだ!」とあなたが判断すれば、不動産のプロとして堂々とご提案してほしいのです。
「くそ~。お客様にウソをつかれた! 聞いていた条件と全然違うじゃないか!」と愚痴ることの多い営業担当者は、この「真の購入理由」が把握できていないと私は考えています。
お客様は「不動産の素人」です。どんな物件がどんな価格でどんな条件で売りに出ているのか、深くはご存知ではありません。
つまり、「どんな物件をお探しですか?」と質問されても、インターネットで検索した程度の知識しかお持ちではないのです。
今後、AIなどが不動産業界にも導入されてくると、「どんな物件をお探しですか?」と質問して聞いた希望条件に対する提案しかできない営業担当は、残念ながら淘汰されてしまうかもしれません。
お客様を案内する際には事前のヒアリングに力を入れ、「プロにしかできない提案力」でお客様にご満足いただける物件を紹介してください。
コロナ以前と以後で、「物件案内」は変わるのか
しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響により「物件案内」の方法も様変わりしつつあります。
「今のところ、そんなに影響は受けていないよ」とおっしゃるエリアもありますが、そのような地域でも、次の秋冬での再流行の可能性まで見据えれば、コロナ以前と全く同じ方法での案内は難しくなるかもしれません。
そんな中で、LINE(ライン)のビデオ通話を使った「LINE案内」や、YouTubeに物件の室内動画を多く掲載して、その動画を顧客に見てもらう「YouTube内覧」を取り入れている不動産業者も出てきています。
不動産業界は今まで「IT導入の遅れた業界」と言われてきました。
私自身も「ITの導入が遅れてて何の問題があるんだ。別にいいじゃないか」という気持ちが心のどこかにありましたが、今回のコロナの影響を受け、認識を新たにした次第です。
不動産の仕事は「face to face」が大切であり、「会ってナンボ」の世界です。face to faceの良さは理解できますし、不動産の商談を進める上では大切なことですが、「face to face至上主義」までいくと、いかがなものかと思います。
テクノロジーで代替できるところは代替していく発想が、我々、不動産業界にも必要でしょう。
しかし、不動産業界に最新のテクノロジーを提供してくれるはずの不動産テック企業側にも、問題は多いように思います。
あえてひどい表現を使わせていただくと、「不動産の素人が単なる思いつきで作った、ワケの分からない横文字サービス」が多すぎるのです。
もちろん、不動産テック企業の中には不動産業を調査し、マーケットに必要とされるサービスを提供している会社もたくさんいますが、そうではない会社も多すぎるのです。
不動産会社側からも、エンドユーザー側からも、ニーズがあるとは思えないサービスを開発し、「旧態依然とした不動産業界を、我々が開発したこのサービスで変える」と言っている(ように聞こえる)、自己陶酔型の不動産テック企業がいらっしゃいます。
アフターコロナをこのような状況で乗り越えていけるのでしょうか?
IT嫌いの不動産会社も、思い込みの激しい不動産テック企業も、それぞれの殻を破り、お互いに手を携えて、エンドユーザーの皆様に喜んでもらえるサービスを提供したいですよね。
コンサルタントのくせに具体的な提案が皆無で、精神論的な事を言い過ぎて汗顔の至りです。
しかし、「禍福はあざなえる縄の如し」とも申します。コロナ禍を契機にみんなで知恵を出し合って、不動産業界が良い方向に変わっていけることを心より願います。
【関連記事はこちら】>>″不動産業界への転職″はおすすめ? 未経験での転職で「成功する人」「失敗する人」
【買付編】
(1) 不動産買付営業の基本的な考え方
(2) 反響が獲れる「不動産チラシ」の作り方
(3) 反響が獲れる「不動産WEBサイト」の考え方
(4) お客様を案内する際の注意点
(5) 「不動産購入申込書」受領時の注意点
【仕入れ編】
(6) 不動産仕入れ営業の基本的な考え方
~今後公開予定~
(7) 「売り求むチラシ」で仕入れを行う方法
(8) DMで不動産所有者から連絡をもらう方法
(9) 「不動産一括査定サイト」利用時の注意点
(10) 不動産査定訪問時の注意点
(11) 不動産売却希望者の長期追客法
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