住友不動産販売が売買で「ステップオークション」を導入! 個人の売主にはメリットなのか?

2021年10月13日公開(2023年6月26日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

大手不動産仲介会社の住友不動産販売が、不動産売買仲介事業の「買取事業」について、ネットを使った大規模な入札へと変更しようとしている。アナログだった不動産業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)化する先進的な取り組みであると評価する声の一方で、従業員の不当なキックバックを防止するための対策という指摘もあるようだ。不動産の売主にとって、どんな影響があるのか検証してみた。

住友不動産販売が、入札制度を導入

住友不動産販売「ステップオークション」ホームページ
住友不動産販売「ステップオークション」ホームページ

 住友不動産販売が新たに導入したのは、「ステップオークション」という仕組み。同社を使って不動産を売却したいという顧客のうち、早期に現金化を希望する場合などは不動産買取会社が買い取ることになるが、その「買取事業」については、物件情報を全国6000社の不動産買取会社へ送信し、オークション形式で物件を買い取ってくれる不動産会社を効率的に紹介するというもの。類似の事業は一部の不動産業者で行っているが、大手不動産会社が導入したのは珍しい。

 オークションの際は、金額や売却時期だけでなく、「○月までに現金化したい」といった細かい条件にも合う会社を探してくれるという。

 住友不動産販売に限らず、多くの不動産仲介会社では不動産の売却依頼を受託した場合、一般の不動産購入者(買主)を探すのが通常の流れだ。しかし、「問題があり、一般の人がなかなか買ってくれない」「早期に売却したい」「半年以上も売りにだしているが売れない」という物件については、不動産のプロである不動産会社(買取業者)の中から買い取ってくれる会社を探すことがある。

 売主にとっては、一般の買主を探すよりも売却価格は2~3割程度も安くなってしまうが、買主の住宅ローンが通らずにキャンセルになるということがなく、現金化が確実で早くなるメリットもあるため、一定数の売主が利用している。

 従来、買取事業は支店や営業所単位で地域の不動産事業者を中心に買取業者を探すことが多かった。物件情報を伝えるのはFAXや電話などのアナログなやり方にとどまっていることも多く、時間がかかる上に、数十社程度に情報を発信するにとどまっていた。

 新たなシステムでは各営業所の情報を本社で集約し、6000社以上の提携する業者がその情報を見られるようになるだけでなく、平均180社に情報を通知しているという。その上で期日を設定し、買い取ってくれる宅建業者をオークション形式で募集する。「期限内に受け付けた購入申し込みの全てを売主様にお伝えし、売主様のご判断を仰ぎます」(編集部が入手した買取業者向け資料から抜粋)。最終的に価格、売却時期などの条件面で合意すれば売却できる。

 運営は本社の専門部署がネットを介してまとめて行うので、効率的な手続きが期待できる。また、オークション形式ならば公平かつ最高価格で売却先が見つかる可能性も高そうだ。

 7月に一部のエリア、物件でテストを開始し、徐々に対象となる物件を拡大し、10月からは戸建て住宅やマンションなどを含めて、全国、全種別の物件をこのシステムで取り扱う予定だ。

 住友不動産販売の広報は、「不動産仲介は情報産業でありながら、情報伝達の手法に関しては未だ電話やFAX等のローテクで、著しく時代遅れの方法を取っておりました。こうした問題意識のもと、着手実行しやすい業者買取り仲介から一気呵成にDX化を推し進めることで、仲介の仕組みや従業員の働き方を変える取り組みを始めています」としている。

キックバックという悪習がなくなる⁉

住友不動産販売 ログイン画面
買主となるプロの宅建業者のログイン画面。果たして、うまく機能するのだろうか。

 このように、新システムは一般の売主にとっては歓迎すべき取り組みとなりそうだ。

 一方で、不動産業界からはさまざまな噂が出ている。中でも多いのは、「新システムは従業員のキックバック対策として導入されたのでは?」という疑念だ。

 キックバックとは、不動産業界に長らく続く悪習の一つ。売却物件を担当している営業担当者個人が、関係の深い不動産事業者に優先的に物件を買い取らせて、見返りにマージンをキックバック(還流)してもらうというもの。それも会社に還流するのではなく、個人の懐に収めてしまうのだ。

 営業担当者がキックバックを手にいれるためのよくある取引手順を解説しよう。

 まず、売主に人気がない物件と思わせるために行うのが「囲い込み」だ。「囲い込み」の過程では、他の不動産仲介会社から「物件を購入したい買主がいる」と問い合わせがあっても、「すでに検討しているお客様がいる」などと遠ざける。なかには「希望価格ですぐに購入したい」という買主がいても、相手にしないこともある。

 そうやって物件を売り出してから数カ月がたち、「希望価格では買う人がいないのかな…」と売主が思いだしたところで、すかさず「値ごなし」と呼ばれる値下げ交渉をして売却価格を下げる。それと同時に、「すぐに買い取ってくれる業者がいる」などとお抱えの買い取り業者に誘導していくのが常套手段とされる。

 言うまでもないが、不動産の売主から見れば、2~3割程度も売却価格が安くなる、とんでもない背徳行為といえるが、こうした「囲い込み」によってキックバックを手に入れるという行為は不動産売買業界では誰もが知るほどに横行していた。

 今回の新しいシステムでは、「買取事業」については、業者へ販売する物件を担当者レベルで囲い込んだり、お抱えの買い取り業者を優先したりすることは難しくなる。

 編集部が入手した買取業者向け資料によると、「宅建業者(編集部注、買い取りする不動産会社のこと)様へのご紹介物件は、新たに設立する専従部署に全て集約し、同部署より各社様宛に物件情報をご紹介させて頂き、一定の期限を設けて購入申し込みを受け付けさせて頂きます」と不動産会社に説明している。

 つまり、不動産会社が買い取りする物件は「全て」新システムに登録させると説明しており、実際にそのように運用が開始されているという。購入希望者を入札方式で集めるならば最高売却価格が明確になるため、適切に運用される限りは売主にとっては良い話なのは間違いないだろう。

【関連記事はこちら】>>不動産を「買取」で売るメリット・デメリットとは?仲介との違いから、買取業者の選び方、注意点まで、マンション・戸建ての買取で損しない方法を徹底解説

伊藤社長がコンプラを重視

 気になるのは、なぜ今になってこのようなシステムの導入を決めたのかだ。

 住友不動産販売の社内事情に詳しい関係者によると、親会社である住友不動産出身の伊藤公二氏が、2019年4月に住友不動産販売の社長に就任したことが大きいという。伊藤氏の体制になってからはコンプライアンス(法令順守)が重視されるようになり、社内処分も急増。キックバックで私腹を肥やす営業担当者に腹を据えかねて、買取事業にメスを入れたようだ。

 住友不動産販売の広報は「本サービス導入の理由は従業員の個人的なキックバックを封じる為などではありませんが、業者取引がキックバックの温床となり得るとの指摘に対して、当社が率先して改善をするという意味も持つかもしれません」と説明しており、これまでにない本気度が伺える。

 事情はどうあれ、「買取事業」というごく一部の事業ではあるが、一般の不動産所有者の利益につながる取り組みが始まったことには歓迎の声が多い。今後、住友不動産販売の動きに追随する大手不動産仲介会社が現れるのかも注目したい。

囲い込みはなくならない?

 なお、今回の「ステップオークション」は、業界ではキックバックよりも頻繁に行われている、担当者レベル、支店レベルでの「囲い込み」への対策ではない。

 「業者買取」まで持ち込まなくても、「囲い込み」をすれば、不動産会社としては十分儲かる。というのも、「囲い込み」によって自社で買主を見つけ、手数料を「売主」「買主」の両者からとれば、両手取引によって手数料をがっぽり稼げるのだ。「囲い込み」だけでも、不動産会社にとってはおいしい行為となる。ちなみに、囲い込みは違法な行為である。

 住友不動産販売は、両手取引の比率が高いことが知られる会社の一つで、過去には「囲い込み」をしてきた疑いがある(下記の関連記事参照)。今後、住友不動産販売が「囲い込み」や「両手取引」とどう向き合っていくのかも、注視していきたい。

 住友不動産販売の広報は「不動産仲介における『囲い込み』については、売手保護の観点から当社に限らず全ての宅地建物取引業者から排除すべき行為であり、業界をあげて取引の透明性の確保を進めていくことが必要であると考えております」と回答している。

【関連記事はこちら】
>>大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃
>>大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?! 住友不動産販売の「両手比率」は、52.26%! 不動産売却時は「両手比率」が高い会社に注意を【2021年最新データ】

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