大手ハウスメーカーの注文住宅は5000万円超えが標準に！　ツーバイフォーの主流化で今後さらに高額化するか

大手ハウスメーカーの注文住宅の建築費は5000万円超えが当たり前になってきた。さらに、プレハブ住宅よりも単価の高いツーバイフォー工法の住宅が主流になりつつある。消費者の間でもハイスペックな住宅であれば高くても仕方がないという考え方が定着しているだけに、注文住宅価格はますます高くなっていきそうだ。（住宅ジャーナリスト・山下和之）

木造住宅の建築費は10年で4割以上高くなっている

　建設物価調査会のデータによると、木造住宅の建築費は10年前の2015年比で4割以上上昇している。

　図表1のように、2015年を100としたときの2025年3月の建築費の指数（グラフの青線）は143.5。前年同月と比べて1.7％の上昇となっている。

　住宅設備指数（オレンジの線）は137.0だから、建築費よりはやや上昇率が低くなっているものの、2024年12月以降に急激な右肩上がりとなっている。

図表1　木造住宅の建築費と住宅設備の指数の推移（2015年＝100）

　このように建築費や住宅設備費が高くなれば、注文住宅の価格も上げざるを得なくなる。

　しかも、大手ハウスメーカーでは、新設住宅着工戸数の減少をスペックのアップによる1棟単価の引き上げで補う戦略を取っているため、注文住宅価格の上昇が一段と強まっている。

大手ハウスメーカーの1棟単価は5000万円超えが当たり前

　大手ハウスメーカーの1棟単価は5000万円超えの時代になりつつある。図表2は建設業界トップの大和ハウス工業の決算資料から、1棟単価の推移を示している。

図表2　大和ハウス工業の注文住宅の1棟単価（単位：万円）

　2023年度は、大和ハウス工業が得意とする鉄骨造のプレハブ住宅の平均価格が4910万円で、在来工法の木造住宅が4870万円だった。

　プレハブ住宅は前年度比で8.6％上がっているので、2024年度の決算では5000万円の大台に乗せるのはほぼ間違いはないだろう。なお、2024年度の注文住宅の坪単価は116.7万円と100万円を超えている。

積水ハウスはZEH化に伴うコスト増で5000万円超え

　大手ハウスメーカーのなかでも積水ハウスは1月決算であるため、大和ハウス工業など3月決算の企業より一足早く2024年度決算を公表している。図表3は、2024年度の注文住宅の1棟単価の平均とZEH（ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス）比率を示している。

図表3　積水ハウスの注文住宅1棟単価とZEH比率

　積水ハウスの注文住宅1棟単価は5248万円で、2023年度の4955万円から5.9％のアップとなり、5000万円の大台に乗せている。

　1棟単価の上昇の要因として同社が説明しているのが基本性能の引き上げで、なかでも、ZEH化に伴うコストアップだ。

　ZEH化するためには、まず、屋根、外壁などの断熱材を厚くしたり、窓を複層ガラスにするなど、建物の断熱性能を高める必要がある。

　そのうえで、太陽光発電システムを採用、家庭用蓄電池の設置でエネルギー効率を高めているというわけだ。こうしたコストアップの要因により、価格が大幅に上昇している。

三井ホームやヘーベルハウスも5000万円超え

　大手ハウスメーカーのなかでも、じつは大和ハウス工業や積水ハウスより1棟単価の高いメーカーがある。

　住宅産業新聞社の調査によると、最も単価が高いのは三井ホームで、2023年度の段階で5223万円と5000万円を超えている。

　また、ヘーベルハウスの旭化成ホームズも5090万円と5000万円超えだった。先述の積水ハウスや大和ハウス工業は、その2社に次ぐレベルになっている。

ハウスメーカーの中でも高額なスウェーデンハウス

　スウェーデンから資材を輸入し、日本に合うようにアレンジしているスウェーデンハウスは1棟単価の高さで知られている。

　受注戸数などの関係から、住宅産業新聞社では大手には含まれていないが、1棟単価は5000万円前後からそれ以上といわれている。

　株式を公開していないので決算資料から数値を見ることはできないが、単価が高いにも関わらず、消費者から支持されているハウスメーカーのひとつだ。

　ローコストを前面に打ち出したパワービルダーの戸建て住宅なら、本体価格は2000万円台、3000万円台で建てられるのが、スウェーデンハウスだと4000万円、5000万円は当たり前。各種住宅設備や内装、外構を加えると6000万円、7000万円になる。

　それにもかかわらず、スウェーデンハウスはオリコンによる注文住宅の顧客満足度調査で11年連続総合1位を獲得。それも「情報のわかりやすさ」から「デザイン」「アフターサービス」まで13の評価項目のすべてで1位を獲得し、断然のトップとなっている。

ツーバイフォーの着工数が増加、単価がさらに上昇する

　国土交通省の「建築着工統計調査」によると、2024年度は初めてツーバイフォー工法による新設住宅の着工戸数が、従来のプレハブ住宅を上回った。

　ツーバイフォー工法は、断面が2インチ×4インチの木材を枠組みとしたパネルを使った工法で、建物を壁、天井、床の六面体で支えている。柱、梁で支える在来工法に比べて耐震性が高く、台風などの風にも強い。

　さらに、パネル同士をピッタリとつなぎ合わせるため隙間が発生しにくく、気密性が高まり、断熱性が向上、冷暖房効率のアップ、省エネ性能の向上につながる。

　従来はパネルの組み合わせゆえに間取りの自由度や大きな開口部の確保が難しく、リフォームにも制約が多いとされてきたが、最近の技術革新でこれらの課題も着実に改善されるようになってきている。

　SDGsに対応して、省エネ性能の高い住まいが当たり前に求められる時代になり、注文住宅の供給側だけではなく、消費者もSDGsに貢献するためには多少のコスト負担は仕方がないという受け止め方になりつつある。

　こうした変化もあり、ツーバイフォーの新設住宅の着工戸数は伸びている。戸建て住宅においては、長くプレハブ住宅が中心的な役割を果たしてきたが、今後はツーバイフォーが主役に移っていく可能性は高い。

　スウェーデンハウスや、先の住宅産業新聞社の調査において、1棟単価が最も高いとされた三井ホームもツーバイフォーを主力としている。今後、ツーバイフォーが増加することで、ますます注文住宅の1棟単価が高くなりそうだ。

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