Facebookでつながる大家は900人! 「頼れる塗装屋さん」として多くの大家さんから絶大な支持を受けるのが、今回登場する「ペイント先生」こと原島信一さんだ。多忙な塗装業の傍ら、賃貸オーナー向けの「塗装の啓蒙セミナー」も積極的に行っている。そんな大家さんの味方の「ペイント先生」に、無駄なコストを徹底的に排除する「賢いリフォーム術」を聞いた。
[参考記事]
●塗装のプロが教える家のリフォーム「コスト削減」テクニック。よい業者さんの選び方、好かれる方とは?
ペイント先生 原島信一氏 第1回
●素人でも失敗しない「DIYペイント術」入門編 道具は? 塗料は? コスト削減を実現しよう!
ペイント先生 原島信一氏 第2回
●調理師、不動産営業を経て塗装店を継いだ経緯からあの有名人との接点、ドローン見積まで意外な素顔を公開
ペイント先生 原島信一氏 第3回
塗装のプロに聞いた!
リフォームを安く早く仕上げる、スゴい「ワザ」とは?
――私の知人に、リフォーム会社に外壁塗装の見積もりを頼んだら、建坪50坪の家で200万円の見積もりが送られてきて驚いた、という人がいます。業者にだまされないためにはどうしたらいいでしょうか。
200万円は高いですね。例えば、うちの場合ですと、高価なフッ素クラスの塗装でも50坪(約165㎡)で130万円前後です。もしかするとその会社、下請けの塗装会社に100万円で発注し自分のところで100万円ほど抜いているのかも。間に入っている会社が高額な中間マージンをとることはよくあるので、外注ではなく、自社で職人を雇用している塗装専門の会社に直接頼んだほうが安く上がりますよ。
建物の改修工事をする会社には「総合工事業」と「専門工事業」があります。前者は、改修工事を一手に請けて、いろんな業種の専門業者に仕事を発注します。その管理・監督まで行いますので、人件費を考えても全体の費用が高くなります。
実は25年ほど前までは、家主さんが直接、専門業者に頼むことはあまりなくて、私たち塗装の仕事も総合工事業者から下請けや孫請けで受けることがほとんどでした。知り合いの大家さんから「原島さんとこ、高いよ」と言われて、見積もりを見せてもらったら、私が元請け会社に出した見積もりより2倍の100万円ほど乗っけられていた、なんてこともありましたよ(笑)。
わかっていない人が分離発注するとかえって高くつくことも
――なるべく「中間マージンを減らす」のがポイントですね。
はい。大きい会社は、「会社で座っている人」の数が多いですからね(笑)。安くていい仕上がりを期待するなら、実際に作業する職人のギャラを削るんじゃなくて、「会社で座っている人」の数を考えたほうがよいかと思います。
ただし、「外壁だけでなく、畳もユニットバスも交換したい」というように工事が複数の業種にまたがるときは、総合工事業者にまとめて頼んだほうがいいです。
専門業者ごとに、建て主が直接工事を発注する方法を「分離発注」と言いますが、工事の段取りがわかってない人が分離発注をすると、職人に無駄な作業が増え、かえって時間と費用がかかります。せっかく床を張ったのに、配管が終わっていないとか、外壁を塗ったのに、後から配管の穴が開けられていたり。大家さんが数件に分離発注してもめているケースがよくあります。
よい業者さんを選ぶコツは店舗に足を運ぶこと
――なるほど。専門業者さんはどうやって選んだらいいですか?
ホームページの営業日記やブログ、Facebookの記事やコメントなどを読んで、業者さんの「人間性」を知ることはすごく大事かと。他社のホームページをそっくりマネしてかっこよく作って、仕事内容はひどいという会社も多いです。あとは口コミですね。「Dzサロン(ザイ不動産投資サロン)」などの大家さんのネットワークに入って、評判のいい業者を聞いてみるのもいいと思いますよ。
あとは契約前にその会社に足を運んでみることをお勧めします。店舗を見れば、どういう会社なのか、想像がつきますので。ホームページでは親切をうたっていても、実際行ってみると職人に怒鳴り散らしてるなんてことも。最悪の事例として、悪徳な訪問販売業者で手付を払ったら業者がいなくなってしまい、ペンキの中も水。電話もつながらなくて、あわてて所在地を訪ねてみたら、会社がなかった、なんてこともありますからね。
業者さんから見た成功する大家さんの特徴とは?
――逆に原島さんのほうから見て、「成功する大家さんはこういう人が多い」といった共通点のようなものはありますか?
成功している大家さんは、業者(人)をすごく大事にしているなあと思いますね。僕はよく「チーム」という言い方をするんですが、管理会社さんだけじゃなくて、畳屋さんとか、クロスの張替え屋さんとか、弁護士さんとか、いざというときに自分を助けてくれる人をすごく大事にしています。一方で失敗する大家さんは、相見積もりを気軽にとりまくるなど、仕事をお願いする人の立場に立っていない気がします。
――相見積もりはとらないほうがいいんでしょうか。
本当に頼む気があって、2~3社相見積もりをとるくらいだったらいいと思います。実は、大家さんの中には5社、10社、相見積もりをとる人がいるんですよ。見積もりは無料ですが、実際にはタダではない。現場までの交通費も時間や労力もかかっている。それを理解したうえで頼んでほしいですね。
――どういう風に頼むとスマートでしょうか。
「工事金額の相場がわからないので、ほかの会社にも見積もりを頼みたいと思っていますが、それでもいいでしょうか」と一言添えれば、快く見積もりを出してくれますよ。もちろん最終的に仕事をお願いしなかった場合は、メールでいいので結果を伝えることも大事です。
――ほかに嫌だなと思う大家さんはいますか?
上から目線で恐縮ですが、最初から「予算はありません」と言ってきたり、やたら値切ってくる人ですね。最近は初めての物件購入で築古一棟アパートを買う人が増えていますよね。リフォーム代を考えずに購入してしまって、「購入時に全部使っちゃって、リフォーム代がなくて……」と、「それ絶対無理でしょ」というような金額を提示してくる。しかもそういう人に限って、現場で「ここも、あそこも、きれいにして!」と次々オーダーしてきて、追加料金は払わない(笑)。そういう人の仕事はこれっきりでおしまいにしたいです。
――やはり成功している大家さんは値切ってこないものですか?
Dzサロンにも参加している人気不動産ブロガーのishiさんに塗装の見積もりを出したら、金額が数万円高く修正されて戻ってきて、感激したことがあります。ishiさんはもと大工さんですから、職人の気持ちがわかるんでしょうね。
[参考記事]
●中卒大工見習から17棟年間家賃収入8000万円!不動産ブロガー・ishiが不動産投資に目覚めたきっかけとは?
中卒不動産ブロガー・ishiが誕生した理由【前編】
●中卒大工見習から17棟年間家賃収入8000万円!不動産ブロガー・ishiの不動産投資のこだわりとは?
中卒不動産ブロガー・ishiが誕生した理由【後編】
――かっこいい話ですね。助けてもらえる「チーム」を作りたいなら、「職人の給料は減らさないこと」を肝に銘じないといけないですね。次回は、素人でもできるDIYのコツを教えてください。
第2回は「大家さんなら知っておきたいペンキの種類と素人でも簡単にできるDIYのコツ」です。
(取材・文/タカチホ 撮影/和田佳久)
原島信一さん(ペイント先生)プロフィール
高校卒業後、日本そば・手打ちうどんの店に就職。その後、実家が経営する原島塗装店(現ウォールデザインハラシマ)に入社するも方針が合わず退職。不動産会社で賃貸営業に従事していたところ、父親の交通事故がきっかけで実家の塗装店に再就職。2015年より代表に就任。全国の塗装業者が集まる「日本塗装交流会」も主宰。