不動産・住宅業界への転職をお考えの方を対象に、今回は「宅建士の資格を持っていないと、不動産業界への転職は難しいでしょうか?」というご質問に、不動産会社向けの集客・教育コンサルを行っている私、株式会社レコの梶本幸治が解説いたします。(不動産会社向けの集客&教育コンサルタント・梶本幸治)
「宅建士」の資格とは
不動産業界で仕事をするためには、「宅建士」の資格が必要だとよく言われますよね。「宅建士(旧宅建)」は昭和33年(1958年)の資格創設時からしばらくは「宅地建物取引員」という名称で呼ばれ、昭和40年(1965年)からは「宅地建物取引主任者」という名称になりました。
そして、平成27年(2015年)4月1日から「宅地建物取引士」になり、士業の仲間入りを果たすことができました。この「士業の仲間入り」という部分はあとで解説しますので、覚えておいてくださいね。
その「宅建士」にしかできない仕事は何かと申しますと、主だった仕事は下記の3点です。
・重要事項の説明
・重要事項説明書(35条書面)への記名押印
・契約書(37条書面)への記名押印
これらの業務は宅地建物取引士の独占業務です。従って、弁護士や不動産鑑定士の先生方が「宅建士より私たちの資格試験の方が難しいから、私たちも重要事項説明をやります!」という訳にはいかないのです。
確かに、弁護士や不動産鑑定士に比べると宅地建物取引士の資格取得は容易だと思われています。しかし、これは弁護士や不動産鑑定士といった超難関資格と比べた場合であって、宅地建物取引士もそこそこ難しい資格で、たいして勉強せずに楽して合格できるレベルではございません。
昔から宅建士試験は、50点満点中「35点取れたら合格ライン」と言われてきましたが、過去32年33回の宅建士試験で、合格点が36点以上となった試験は6回ありました。なお、そのうち3回が、平成30年以降に実施された試験となっています。直近では、令和2年10月(合格率17.5%)と同年12月(合格率13.0%)の試験で、合格点36点以上でした。
ちなみに私(梶本)は平成8年の宅建試験合格者で、合格点32点のところ、43点で合格。47年の人生の中で数少ない自慢話の一つです(笑)。
まぁ、私の昔話は横に置いておくとして、ここからは今回のテーマである「宅建士の資格を持っていないと、不動産業界への転職は難しいでしょうか?」という観点から、宅建試験へのチャレンジを考えてみましょう。
転職に「宅建士」が必須条件の不動産会社は少ない!?
まず考えるべきことは、不動産業界では「宅地建物取引士の有資格者を優先的に採用したい」と考えているか否かという問題です。
確かに大手不動産仲介会社の中には、宅地建物取引士の資格取得を採用条件にしている会社もあると聞きます。しかし、一般的な地域密着型の不動産会社では「宅地建物取引士歓迎」程度の扱いであり、採用に際しての必須条件という会社は少ないように感じます。
なお、宅地建物取引業法の定めにより、不動産会社は5人に1人の割合で宅地建物取引士(専任の宅地建物取引士)を所属させる必要があります。ですから、社員の退職などで、5人に1人の要件を満たさない可能性が出てきた不動産会社は、大慌てで宅地建物取引士の有資格者を募集する必要に迫られるのですが、こんなにバタバタと求人を出す不動産会社はあまり見たことがないです。
業務の根幹をなす部分なので、計画的に宅地建物取引士を配置しているのか、要件を満たさなくなっても見て見ぬふりでそのままにしているのかは定かではありませんが、とにかく「宅地建物取引士の社員を絶対に募集しなくては!」と言っている不動産会社に出会ったことは、ほとんどございません。
つまり、不動産会社が募集する人材は「業績をあげられる営業担当者」であって、冒頭に申し上げたような「士業である宅地建物取引士」ではないのです。それから、さらに踏み込んで申し上げると、不動産業界の人間で、宅地建物取引士を士業の一員だと思っている方はほとんどいないと言ってもよいでしょう。
もちろん、不動産業界発展のため、宅地建物取引主任者から「取引士」の名称変更に尽力してくださった方々の努力や功績を軽く見るつもりはございませんが、弁護士や不動産鑑定士などといった士業と同じような土俵で、宅地建物取引士を語ることには無理があると思います。
必要なのは資格よりも営業力!
つまり、「宅建士の資格を持っていないと、不動産業界への転職は難しいでしょうか?」とのご質問には、「宅建士の資格がなくても、営業に自信があればどんどん不動産業界へと飛び込んで来てください」と回答させていただきます。
しかし、「弁護士や不動産鑑定士、司法書士といった難関資格は無理だけど、宅建士なら合格できそうだし、一応士業だから自分自身のプライドも満たすことができるかな」といった理由で不動産業界への転職をご検討中の方は、悪いことは言いませんので、再考されたほうがよいと思います。
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