悪質な「囲い込み」とその見分け方を不動産会社社長が解説! 2025年1月に始まった囲い込み規制は救世主となりうるのか?

2025年1月24日公開(2025年1月29日更新)
高田一洋:一心エステート株式会社代表取締役CEO

不動産仲介会社が売却物件を自社で独占的に取り扱おうとする行為を「囲い込み」と呼びます。囲い込みにもいくつかパターンがあり、売主の利益を損なう悪質な手法もあります。売主は、どんな点に気を付ければいいのでしょうか。また、2025年1月から施行された国土交通省による囲い込み規制についてもお伝えします。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)

不動産売買の「囲い込み」は2種類ある

 不動産取引における「囲い込み」とは、仲介会社が売却物件を自社で独占的に取り扱おうとする行為を指します。一般的に、売主から媒介契約を受けた仲介会社は、レインズ(不動産流通標準情報システム)に物件情報を登録し、広く買主を募ることが求められます。

 しかし実際には、さまざまな理由や手法で物件情報の公開や他社への紹介を制限する「囲い込み」が行われているのです。

 この「囲い込み」には、大きく分けて2つのパターンがあります。それぞれの目的や手法、そして消費者への影響は大きく異なります。2つのパターンについて、次章で解説していきます。

不動産取引の囲い込み
【参考】不動産売買仲介業者を対象にした「囲い込み」の調査結果。約6割が実際に囲い込みを受けたり、見聞きした経験をしているという。(出所:イタンジ株式会社プレスリリース

パターン1:優良物件の両手取引を目指す「囲い込み」

 1つ目は、仲介会社が自社の利益を最大化するために、売却物件を他社に紹介せず、自社の買主で成約を目指すケースです。不動産取引では、売主・買主双方の仲介を行う「両手取引」の場合、仲介手数料を両方得られるため、収益は2倍になります。

 月間のノルマに追われている営業社員からすれば、両手取引が成立すれば一度の取引で手数料が2倍になるため、そこを目指すために動くというのは、心情的に理解できないこともありません。お客様から媒介契約をいただいてから1~2週間は、自社のお客様を優先して案内したい気持ちも理解できます。

 私たち不動産事業者にとってはよくある話ですが、購入のお客様の物件を探している際、レインズだけではなく、ポータルサイトや大手不動産会社の自社HPまで新規物件が出ていないかチェックして、ポータルサイトで新規物件(レインズ非掲載)を見つけて元付会社に紹介可能か電話します。すると、電話に出た物件担当者は、「レインズに掲載されるまでは紹介できません」と普通に言われたりします。

囲い込みの一例
優良物件なら両手仲介で早期に売却が決まるケースも(出所:PIXTA)

 この場合も「囲い込み」と言えますが、そもそも他社に頼らずに両手仲介ができると営業担当者が判断したということは、労せず売却できる優良物件である可能性が高いです。どちらにせよ早期に成約できるため、売主に大きな不利益は生じる可能性は低いとも考えられます。むしろ、仲介会社が責任を持って対応することで、スムーズな取引につながるケースも少なくありません。

 また、優秀な営業社員が担当する物件ほど、不可抗力のような形で他社からの紹介を断ってしまうケースも多いです。優秀な社員は、週末は常に物件案内で予定が埋まっているものです。

 そのため、例えば木曜日になって他社から「今週末に内見したい」という依頼が入っても、対応できないことが多々あります。売主との日程調整、営業担当者の立ち会い、その他の予定など、さまざまな要素を調整する必要があるためです。

 このような状況は、必ずしも意図的な囲い込みとは言えません。しかし、結果として内見のハードルが上がり、取引の機会が制限されてしまう可能性はあります。不動産取引の主役は、あくまでも売主と買主です。両者にとってベストな取引を実現することが、仲介会社の本来の役割です。

パターン2:物件価格を下げるための「囲い込み」

 私がより問題視しているのが、価格を下げさせることを目的とした囲い込みです。業界用語で「干す」と呼ばれるこの手法は、他社からの問い合わせを意図的に遮断し、売主に値下げを迫るというものです。

 他社からの内見依頼に対して「担当者が不在」「連絡がつかない」などと対応を引き延ばしたり、FAXやメールを「受け取っていない」と主張したりします。

 こうして物件を市場から隔離し、売れない状態を作り出すことで、売主に値下げを促します。最終的には仲介会社自身による買取や、関連会社への売却に持ち込まれるケースも少なくありません。これは明らかな「囲い込み」であり、売主の利益を著しく損なう行為と言えるでしょう。

 悪質な囲い込みを行う仲介会社の中には、売主側の仲介手数料が無料といったことをうたって、売主に付け入ろうとする会社もあります。そういった甘言にはつられないように注意が必要です。

より巧妙化する囲い込みの手法

 最近では、より巧妙な囲い込みの手法も登場しています。例えば、月1回だけ内見日を設定し、その日に全ての案内を集中させるというものです。一見、効率的な運用に見えますが、実際には自社の買主を優先的に契約に結び付けるための手段となっています。

 また、媒介契約の締結日を調整することで、レインズへの登録を遅らせる手法もあります。休業日を含めることで、実質的な非公開期間を延長するのです。さらには、契約書の日付を空欄にしておき、後から都合の良い日付を入れるといった、より露骨な手法を取る業者も存在します。

売主は囲い込みに気づくことはできる?

 こうした悪質な囲い込みに、どうやって売主は気づくことができるのでしょうか。

 まず注目すべきは、問い合わせの件数です。不動産ポータルサイトでの反響が多いにもかかわらず、他社からの内見依頼が皆無というのは不自然です。10件の問い合わせがあって、他社からの内見依頼が1件もないというのは、明らかに不自然な状況でしょう。

 また、近隣相場と比べて明らかに安い価格設定なのに案内が入らないというのも要注意です。広告の質が極端に悪い、写真が不鮮明、情報が不足しているといった点も、意図的な囲い込みのサインかもしれません。

 こうした状況に気付いた場合は、まず仲介会社に問い合わせの状況を確認しましょう。何件の問い合わせがあり、そのうち何件が内見につながったのか。内見できなかった理由は何か。具体的な数字と理由を確認することが重要です。また、3カ月の専任媒介契約が満了する際は、更新を見送ることも検討しましょう。

2025年1月から囲い込みの規制強化スタート

 こうした状況を受け、宅地建物取引業法の改正で、2025年1月から不動産の「囲い込み」に対する規制が強化されました。宅建業者はレインズへの物件の取引状況の登録が義務付けられ、その登録内容に虚偽があれば、処分される対象となります。

 例えば、「売主都合で一時紹介停止中」と偽って他社からの案内を断ったり、実際の状況と異なる情報を登録したりする行為が発覚すると、宅地建物取引業法の指示処分の対象となり、処分が科されることになります。

 ただ、この程度の取り締まりで囲い込み問題がなくなるとは考えにくく、買主側の仲介会社からの問い合わせに「担当者が休みです」「連絡がつきません」「本日は退社いたしました」といった対応は、今後も続くでしょう。また、個々の営業社員の対応を会社として完全に管理することは難しく、規制の抜け道は必ず残ると考えられます。

囲い込み規制で囲い込みがなくなるのか
【参考】不動産売買仲介業者を対象にした「囲い込み」の調査結果。「囲い込みを規制強化することで、取引が活発化する」と回答したのは約半数。法改正だけでは改善が難しいと考えていることがうかがえる。(出所:イタンジ株式会社プレスリリース

不動産取引の本質を理解することの重要性

 仲介会社は、双方にとって最適な取引を実現するためのサポート役に過ぎません。「囲い込み」や「業者の都合」によって、取引の選択肢が制限されることは、あってはなりません。

 その一方で、売主自身も当事者意識を持って、売買取引に臨むことも重要です。私自身が取引の現場で実際にお客さんにやってもらうのが、自身の物件を自分で価格査定するというものです。ポータルサイトに掲載されている自身の物件と同じような物件から、㎡単価を割り出し、自身の物件の広さで掛け合わせる。そうすることで、なんとなくの相場観が養われます。

 不動産会社の査定額は、あくまでも「売れる可能性のある価格」に過ぎません。中古車やバイクの買取価格とは異なり、確実な金額を保証するものではないのです。

 取引事例や周辺相場をもとに、売主自身で適正価格を見極める必要があり、不動産会社の提示してきた金額を鵜呑みにするのではなく、主体的に考えることが重要です。

 不動産取引は、多くの人にとって人生最大の取引です。売主も買主も、その重みを十分に理解し、慎重に判断を重ねることが求められます。

 おそらく、宅建業法が改定されて多少はよくなりますが、「囲い込み」はなくなりません。しかし、これまで何でもありだった「囲い込み」に国土交通省が動いたことは、大いなる前進です。

 国が示しているわけですから、大手不動産会社をはじめ、不動産という高額な商品を扱う営業社員の倫理観が向上すれば、不動産業界全体の向上になりますし、より納得感のある取引ができるようになります。

【関連記事】>>大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?! 住友や三井などは40%以上! 売却時は両手比率が高い会社に注意を

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