いよいよ新生活も目前。引越し作業・各種手続きに、大忙しの日々をお過ごしの方も多いのではないでしょうか。会社や学校での年度の節目とも重なり、慌ただしく過ごしてしまう時期ですが、理想の新居づくりは初めが肝要です。漫然と購入した家具に旧居から運んだ荷物をギュウギュウと詰め込んでいたのでは、散らかってしまうのも時間の問題。戦略的に荷解きを進めましょう。(整理収納アドバイザー・米田まりな)
単に段ボールから荷物を出すのが「荷解き」ではない
「引越しは荷造りがメインで、新居に荷物が届いてさえしまえば、あとは機械的に荷物を出せばいいや」と捉えている方が少なくありません。段ボールの回収期限や部屋のスペースの兼ね合いもあり、1週間程度の短期間で荷解きを完了される方が大半です。
しかし、荷解きを単なる「荷物を出す作業」として侮るなかれ。入居時の短期間で、やっつけ作業で決めた定位置が、次の引越しまでそのまま使われ続けるということ、実は結構多いのです。
荷解きと同時に定位置を決める
収納したものの散らかってしまう”リバウンド”をしない片付けのコツは、荷物一つ一つと向き合った上で、適切な定位置を決めること。引越し作業が落ち着いた後で、再度、家中の荷物を全部出し、定位置を考え直すのは効率が悪いですよね。段ボールから荷物を出すプロセスの中で、最適な定位置を決められるとベストです。
「衣類」「キッチン用品」「本」など、段ボールごとにカテゴリーが記載してあるかと思います。
ここで「衣類はとりあえずクローゼットに、キッチン用品は台所に、入る分だけ押し込んでおこう」と、機械的に進めてしまうのは危険です。
使用頻度が低いものから漫然と空間を埋めてしまうと、肝心の毎日使うものに居場所がなくなり、常に物が出しっ放しの散らかった家ができてしまいます。
カテゴリーごとに進めるのではなく、各カテゴリーの中で、使用頻度の高いものから優先的に定位置を決めていきます。使用頻度の高いものの定位置が定まってから、頻度の低いものの定位置決めに移ります。
段ボールを空にするスピードは、機械的に出していくよりも遅くはなります。ですが、その分リバウンドのない片付いた部屋を一発で作ることができるので、長期的に見ると効率が良いはずです。平日忙しく時間を作れない方は、何週かに分けて荷解きに取り組むとよいでしょう。
洋服収納のコツ
例えば洋服であれば、今月着る予定のある服だけ、まずはハンガーラックやタンスに収めていきます。今月着る予定のない服は、いったん段ボールに入れたままで問題ありません。
使いやすい定位置を決められたら、季節外の洋服や頻度の低いイベント用の服などを収納していきます。ここで使用頻度の低いものを、使用頻度の高いものの出し入れの邪魔になる位置に置くのはNGです。
頻度の高いものは2割の余裕を持たせて、片手でも楽に出し入れできる位置に。頻度の低いものは箱に詰め込んで、密度にメリハリを持たせて収納しましょう。
忙しい毎日でも手が届きやすい場所にスペースが十分にあれば、出しっ放しにせず片付いた状態をキープできますよね。
押し入れの「開かずの段ボール」、何箱ありますか?
引越し前から使用頻度が低い状態で新居に持ってきた段ボールや紙袋を、次の引越しまで一度も開けなかったという経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
宅配収納サービスを運営する株式会社サマリーが行った調査によると、7割以上もの方が「持っていること自体を忘れていたモノ・何が入っているか分からない箱」が押し入れに1箱分以上あったとのこと。特に都市部のマンション・アパートにお住まいの方は、収納スペースが限られている中で、何が入っているかも分からない空間を作るのはもったいないですよね。
使用頻度が低いものと向き合う
使用頻度が高いものから順に荷解きをしていく中で、「すぐに使う訳ではないがとりあえず持ってきた」という箱が見つかったら、いったん荷解きの手を止めましょう。前の家で使った回数を思い出します。
使用頻度が低いものも、愛着があれば捨てなくてOK。しかし1年間で一度も手に取らなかったものは、本当に愛着があるのでしょうか? もし前の家で全く手に取っていなかったものをそのまま持ってきてしまったのであれば、今の家でも同じことが繰り返される可能性が高いです。
思い出を詰めた箱も中身を一度全て出してみて、本当に全てのものを置いておく必要があるのか今一度向き合いましょう。「とりあえずスペースが余っているし、入れておこう」と思ったら最後、新居の一角が永遠にデッドスペースと化してしまいます。
荷解き時に処分する
粗大ゴミのスケジュールが合わなかったり、捨て方が分からず、なんとなく新居に持ってきてしまったものも処分するのは荷解きが最後のチャンスです。
例えば、使いかけのスプレー缶。そのままゴミ箱には捨てられないので、処理しそびれて、新居に持ってきてしまった方もいるでしょう。「いつかやろう」と玄関に置いておけば、次の引越しまで放置されかねません! 新しい家具・家電を買う前にまずやるべきは、ゴミの処分です。
屋外に保管する
引越す前の家より新居の収納スペースが小さい場合、持ってきた荷物が全部入りきらない、という事態も起こるでしょう。ここで使用頻度高く使っているものと混ぜる形で無理して詰め込んでしまうと、部屋全体の収納スペースが死蔵化し、本末転倒です。
季節外の洋服や来客布団、推し活のアイテムなど、精査した上で「どうしても捨てられない!」と判断した段ボールは、自宅の外で保管しましょう。
スポーツ用品やアウトドアグッズなど頑丈なものは、ベランダやガレージに小型コンテナを置くのがおすすめです。我が家では無印良品のポリプロピレン頑丈収納ボックスをベランダに置き、テニスラケットや電化製品の空き箱、防災用の水などを屋外で保管しています。
衣類・書類などデリケートなアイテムは、「サマリーポケット」など箱の単位で利用できる外部収納サービスを利用するのも手です。
家具・家電は一気にそろえず、レンタルの活用で段階的に
荷解きもそこそこに、「週末に家具・家電を買いに行こう!」と浮足立っている方は要注意。丁寧に進めれば、荷解きにも一定の時間がかかるはずです。家具・収納グッズを買うのは、荷物の定位置が一通り決まり、何が必要かニーズが分かった頃で十分。数週間であれば、収納家具がなくとも、紙袋や箱で代用して保管することで問題ありません。
高額な家具・家電の購入は、意思決定に労力を使いますし、店舗に足を運べばあれこれ欲しくなってしまいます。購入後に部屋に運び込んで、「なんだか部屋が狭いな」と後悔しても後の祭り…。大きな買い物は、部屋と心が落ち着いた引越し1カ月後以降に後ろ倒しするのが賢明です。
家具・家電レンタルサービスを試そう
大きな買い物を後ろ倒しする際の強い味方として、レンタルサービスを活用しましょう。
家具レンタルサービスの「CLAS」では、洗濯機・冷蔵庫、デスク・オフィスチェア、ダイニングテーブル・チェアセットなど、新生活に最低限必要な家具・家電を低価格でレンタルできる「新生活セット」を提供しています。「ソファを買うか迷っている」「食洗機はあった方が便利なの?」など、新生活を機に試してみたい家具・家電も、レンタルなら気軽に一歩踏み出せますよね。
大きな家具から小さな雑貨、ネット上のサブスクサービスまで、新生活をよくしようと財布のひもが緩みがちな引越し直後ですが、お得情報を見つけても引越し直後の1カ月間は、ものをとにかく増やさないことを意識します。
近所のスーパーやドラッグストアを視察がてら、トイレットペーパーやお菓子など、いつも以上に買い込んでしまうことも。まずは、前の家から持ってきたものの整理に意識を集中させて、暮らしが最低限回りはじめた頃に「暮らしをより良くするために必要なものは何か?」を考える二段階戦法でいきましょう。大型のショッピングモールに行くのは、ある程度生活が落ち着いてからでも遅くないですよ。
インテリアを考える上での注意点
引越し直後に物を買いすぎないこととも通じますが、新生活直後はとにかく「足し算」に意識が向きがちになります。「リビングを癒やしの空間にするには何を置こうかな?」「コーヒーメーカーを買ったら、朝の時間が充実するかな?」など、普段以上に「素敵な生活」への憧れ意識が高まるのです。
インテリア雑誌や暮らし系のSNSを食い入るように見てしまうのもこの時期でしょう。普段以上におしゃれな人の部屋が気になり、「自分もまねしたい」と雑貨やインテリア品に興味を持ち始めます。
「足し算」より「引き算」を意識
新居をより良くしたいという考え自体が悪い訳ではないのですが、引越し直後はただでさえ慌ただしい中なので、とにかく「引き算」思考で過ごすのが、片付けの観点では吉です。
部屋を撮影するという目的ではおしゃれな雑貨が映えますが、実際生活をするにあたっては、雑貨・インテリアグッズが手の届きやすい場所を全てふさいでしまうと荷物を出しっ放しにする原因になります。前の家から持ってきたインテリアグッズがある方は特に、新しいものはしばらく買わないこととしましょう。
部屋で使う「色」の決め方
家具・収納グッズを買い足すにあたって、インテリア上で注意したいのは「色」です。グレーやベージュなど「メインカラー」を1色決め、青、茶色など「サブカラー」を2色決めます。
新しいものを買う時は、極力3色に当てはまるようにし、色を増やしすぎないよう注意するだけで、同じものの量でもスッキリとして見えます。ラベルが派手な日用品はラベルをはがしたり、カバーをかけて使うなど、目に見える色を極力減らす工夫で部屋はあか抜けていきます。
いかがでしたでしょうか。「とりあえず段ボールから大急ぎで荷物を出す」「家具・家電を一気に買いそろえる」という行動が、片付かない部屋を作る元凶となりえます。まずは引越し後1カ月間は、頻度の高いものの定位置づくりに集中し、ものの居場所と暮らし方のイメージができた上で、暮らしを良くするアイテムを少しずつそろえていきましょう。
不動産ディベロッパーで会社員として勤務しながら、副業で整理収納アドバイザーとして活動。本業・副業に加え、一橋大学大学院MBAに夜間コースで通学し、2022年に経営学修士号を取得。その後も宅地建物取引士を取得するなど次々と目標を達成してきた著者。
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