不動産会社の友人から売れ残りの物件を安く譲ってもらったことがきっかけで大家業を始めた、飲食チェーン経営者の宮光男さん。そこから、持ち前の商売センスを活かし、不動産会社との関係を築いてきた。今回は、宮さんが過去遭遇してきた入居者トラブルについて語ってもらった。<前編>はこちら
女性専用アパートで起こった、想定外の騒音トラブルとは?
――宮さんは、これまでどんなトラブルに遭遇してきたのでしょうか?
家賃滞納者と直接対決したことがありました。二宮町の戸建てに入居していた4人家族だったんですが、すでに3ヶ月滞納していて。いくら通知を出しても解決する気配がありませんでした。その後、内容証明を送っても音沙汰がなかったので、直接その家に行くことにしたんです。
すると、そこに住む父親が出てきたので、「人間として約束は守ってもらわないと困る」と、まずは相手の心情に訴えかけました。ただ、あまり響いていない様子だったので、内容証明を無視し続けるなら、差押えを実行すること、さらにあまりに悪質な場合は、明け渡しの強制執行の手続きをすることを、実際の事例を交えて淡々と伝えたんです。すると、分が悪いのを認識したのか、「もう退去する!」の捨てゼリフとともに、3カ月分の現金を荒々しく渡してきました。
また、滞納交渉に弁護士は使わないことが多いですね。いちいち手続きが必要なため、退去まで長引くリスクがあります。それに今時、弁護士が登場してもビビる人はあまりいないです。
――もし退去していなかったら、さらに悩まされていたかもしれませんね。ほかには、どんな経験をしてきたんでしょうか?
航空会社が借り上げているアパートは、女性専用の社員寮なのですが、ある日、「ものすごい声が聞こえてくる!」と苦情が寄せられました。相談主の話を聞いてみると、「窓を開けっ放しのまま、性行為をしているようだ。声が大きすぎて本当に困っている…」と、かなり深刻な様子。まずは、騒音の通知をポストに投函して様子を見ることにしました。
ところが、効き目がなかったようで、また同じ方から苦情の電話がかかってきました。あまりにも困惑していたので、私も現地に行って様子を見てみることに。すると、日中のさなか、本当にびっくりするくらいの声が聞こえてきて…。どの部屋からかは分からなかったので、廊下にいれば男性が出てくるだろうと思って待つことにしました。ところがしばらくしても誰も出てきません。相談主の方と「今日は、部屋に泊まっていくのかもしれませんね」と話して、その日は終了しました。
――なかなか大変な状況ですね…。結局、解決できたのでしょうか?
騒音は定期的に発生していて、また別の日に私がアパートに行くことに。その日は、ほぼ1日中いたんですけど、不思議なことに相手の男性がまったく出てくる気配がない。そこで、相談主の方がふと「あれ…もしかして、そもそも相手がいないのは??」と言ったんです。すると、いろいろ合点がいって。お互い「なるほど、そういうことか!」と納得し、その日は退散することにしました。
その後、通知内容をより具体的に書き換えて投函したところ、その声はピタリと止みました。「日中、女性の大きな声がして近隣が大変迷惑している」「苦情主がすでに録音していて家主もそれを把握している」「(借主である)会社にもすでに報告済み」の文言を入れて作成したんです。
――女性専用物件でも、意外とトラブルがあるんですね。
ありますよ。特に、男女関係に関わるクレームが多いです。「女性専用なのに、男性のイビキが聞こえてきてうるさい」という苦情もありました。ふたを開けてみると、同じ社内の既婚男性と不倫していることが判明しました。
ただ、女性入居者のクレーム対応には、とても気を遣いますね。直接訪問は、トラブルのもとになるので絶対にしません。強硬手段ではなく穏便に解決する方法を模索する必要があります。
とはいえ、トラブルそのものは別に嫌ではないんですよ。トラブルが起こるのは、入居者が住んでくれている証拠ですからね。大家業で、1番キツイのはやはり空室ではないでしょうか。私は今まで最長半年くうしつだったということがありましたが、かなりの痛手ですよね。
「幸せに暮らせる家」を増やしていきたい
――今後は、どのような方向性を考えていますか?
今所有している物件は、築15~20年になる前に売却する予定です。ちょうど大がかりなリフォームが必要になる前段階での売却を考えています。
ただ、今はテレワーク需要で、私の物件のある茅ヶ崎や二宮など、海に近いエリアの人気が急上昇しています。ここは、タイミングを逃さないように、近いうちに売却を検討していきたいですね。
茅ヶ崎のマンションの部屋は、目の前に海が見えて、富士山もよく見えるんですよ。プレミア感のある物件は、購入者が価値を決めるので、ある意味相場がないともいえます。海が見える部屋とそうでない部屋では、家賃が倍ほど違いますから。
―――新規の不動産も購入もする予定ですか?
はい。今後は、新築分譲マンションに絞っていくつもりです。特に、モデルルーム兼事務所や、5~6戸の同時販売で1戸だけ残ってしまったケースで、相場より安く買うのを目指しています。
新築なので入居者は決まりやすいですし、管理人常駐のため自動的に共用部が綺麗に保たれるのが利点です。建築技術の進化にともない、建物のあらゆる部分のクオリティーが上がっていて、メンテナンスも楽ですからね。そして、築15年くらいで売却する。このような購入・売却のサイクルを回していこうと思います。
私は、基本的に「自分が住んだら、幸せになれそうか」で物件を買うかを決めています。楽しい生活がイメージできなければ、入居者だってそこに住んでも楽しくないですからね。私の選んだ住まいで、幸せに暮らしてもらえるように。今後も大家業を真剣に楽しんでいきたいと思います。
―――最後に、読者がお得に不動産を買うための秘策はありますか?
ズバリ、買うときに10%値引を求めることです。新築も中古も、どちらでも値引きを求めることです。物件の目利きはなかなか難しいものです。であるなら、誰でもできるお得に購入する方法は、「値引き」です。
安く買えばその分、リスクが減ります。5000万円の物件を500万円引きで買えば4500万円になります。月々の返済も15万円から、13.5万円になります。
値引き交渉が苦手という人もいますが、であればメールで交渉してもいいんです。「1割引かないなら買いません」と言ってみればいいんです。
(取材・文/猿渡彩乃)
<前編>「不動産投資でお宝物件を手に入れるには、不動産会社、入居者との「三方良し」が重要」はこちら
副業として、不動産投資を10年ほど前にスタート。8世帯のアパート1棟と、ファミリー向け区分マンション2戸、戸建て1棟を所有。徹底した安値での不動産購入をモットーとする。