中古住宅のリフォーム・リノベーションでは、予算によってはすべての希望がかなえられないこともあります。せっかくお金をかけるのですから、後悔しないリフォームがしたいですよね。物件の状態にもよりますが、多くのケースで重視すべきなのは「快適さ」を確保するためのリフォームです。
住宅のリフォーム、何から手を付けたらいい?
いざ、リフォームをしようとなったとき、「あれもやりたい、これもやりたい!」と希望が次々に出てくる人もいれば、「どうしたらいいのかまったく分からない!」という人もいるでしょう。
どちらにしても、物件の状態によって絶対にやったほうがいいことや、できること、できないことがあります。ただ、せっかくお金をかけるのだから、失敗したくないですよね。ということで、リフォームがうまくいくコツを、一級建築士で住宅リフォームコンサルタントのYuuさんに伺いました。
中古物件のリフォームは「家の性能を上げる」ことを第一に!
中古のマンションや戸建てを購入してリフォームをする場合、多くの人がまず考えるのが、「とにかく水回りを新しくしたい」ということ。前の住人が使っていたトイレやお風呂を交換したいと思うのは当然です。水回りが新品になると、リフォームしたことを実感できますし、気持ちもいいですよね。
ただ、まだ十分使える状態なのに「なんとなく嫌だから……」という理由だけで、リフォームする場所を決めてしまうのはおすすめしません。予算には限りがあることが多く、すべてを希望通りにかなえることができないこともあります。ここで考えてほしいのは、生活の中で何が一番重要なのかということです。
Yuuさんは、「絶対にやったほうがいいのは、家の性能を向上させるリフォームです」と断言しています。
車に性能があるように、住宅にも性能があり、それによって毎日の快適性や安全性が異なります。性能が低い家に住み続けていると、健康を損なう恐れがあるという調査結果もあります。住宅性能の中でも、毎日の暮らしに大きな影響を与えるのが、1.断熱性能 2.耐震性能 3.バリアフリー性能の3つです。
最優先で行うべきは、断熱リフォーム!
なかでも「断熱性能」は健康的な観点からも重要視されています。見た目がどんなに格好よくても、家の中が寒くてたまらず体調を崩しがちになってしまっては、元も子もありません。
実際に、国土交通省が2014年度から進めてきた調査によると、室内環境が血圧などの健康に影響を及ぼすという以下の7つの知見が確認されています。
1. 室温が年間を通じて安定している住宅では、居住者の血圧の季節差が顕著に小さい。
2. 居住者の血圧は、部屋間の温度差が大きく、床近傍の室温が低い住宅で有意に高い。
3. 断熱改修後に、居住者の起床時の最高血圧が有意に低下。
4. 室温が低い家では、コレステロール値が基準範囲を超える人、心電図の異常所見がある人が有意に多い。
5. 就寝前の室温が低い住宅ほど、過活動膀胱症状を有する人が有意に多い。 断熱改修後に就寝前居間室温が上昇した住宅では、過活動膀胱症状が有意に緩和。
6. 床近傍の室温が低い住宅では、様々な疾病・症状を有する人が有意に多い。
7. 断熱改修に伴う室温上昇によって暖房習慣が変化した住宅では、住宅内身体活動時間が有意に増加。
出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)」
つまり、家の中が寒かったり、部屋と部屋の間で温度差が大きかったりすると、コレステロール値や血圧が高くなるというのです。部屋の温度が健康に影響を及ぼしてしまうなんて聞いたら、断熱リフォームをしないわけにはいかないですよね。
マンションなら断熱工事は必要ない、は間違い!
断熱性能の話をするとマンションには必要ないと思われがちですが、その考えは大きな間違い。実は、コンクリートのほうが木材よりも熱伝導率が高く、蓄熱する特徴があります。
「マンションだから大丈夫だと考えるのは早計です。断熱性能が低いマンションだと、冬は寒く夏は暑い。夏になると、マンション最上階の部屋は天井からの暑さの放熱があり、壁にも蓄熱するので、夜になっても室温が30℃というようなことが起こります。逆に冬は、いったん冷えたコンクリートがそのまま寒さをたくわえ、壁がいつまでも冷たい。北側の壁に囲まれている部屋は、冷蔵庫にいるような状態になることもあります」(Yuuさん)
特に、築古のマンションの場合、断熱性能が低いところが多いため、注意が必要です。マンションは暖かいものと思い込んでいる人が多いのですが、物件の状態によっても異なるので、きちんと断熱性能を確認しましょう。
また、断熱性が低いことが原因で結露が発生することもあります。結露はカビと家の腐食を招きます。黒カビはアレルギー反応を引き起こす、発がん性があるというようなことも言われているほか、家が腐食した場合は、さらにリフォーム費用がかかります。断熱性能を高めるということは、健康にも良く、家の劣化をゆるやかにするので余分なリフォーム費用がかからなくなるということなのです。
【関連記事】>>「結露」が引き起こす、住宅と健康への被害とは?!結露ができる原因と対策を紹介
断熱性能を高めるためのリフォームとは?
住宅の断熱性能を高める方法としては、「内窓をつける」「断熱サッシへの交換」「壁や床、天井に断熱材を施工する」といったことが考えられます。
マンションの場合は、内窓の取り付けや室内側から断熱材を貼り付ける施工が主流です。最近はマンションでも標準管理規約の改正で、窓やガラスが交換可能なマンションもありますので、管理組合に確認してみてください。
戸建ての場合は、床下や天井裏に潜って、はめ込むだけの断熱材があります。もちろん窓の対策も忘れずに。断熱リフォーム成功のポイントは、開口部と壁や天井などをバランスよく断熱し、気密性と通気を確保することにありますので、信頼のおける施工店を選ぶことが重要です。
断熱リフォーム工事費用の相場は、窓の大きさや床面積の広さによって変わりますが、だいたい以下のような金額です。
・断熱サッシへの交換:25万円~(カバー工法・樹脂サッシ)
・床の断熱工事:30万円~(床の貼り替えなし、20坪程度の場合)
また、地球環境への配慮という観点から、断熱性能が高い住宅へリフォームする場合は国や自治体が補助金を出してくれる場合もあります。補助金を受け取る際には、各種要件を満たしていることや、申請手続きが必要になるので、事前に確認しておきましょう。
【関連記事】>>断熱リフォームの費用相場、工期の目安は? 注意すべきポイントやリフォーム業者の選び方も解説!
【関連記事】>>最新版!リフォームをするなら、減税・税制優遇・補助金制度を利用しよう! 適用条件や制度内容を詳しく解説
次に考えたいのは、耐震工事とバリアフリー工事
暮らしの安全性を高めるためには、耐震性能とバリアフリー性能を向上させることも大切です。
戸建ての場合は、耐震基準を満たしているかも重要
耐震性能は地震から命や財産を守る大切な性能です。
まずは、住宅の耐震性能をチェックするために「耐震診断」を行いましょう。耐震診断を受ける場合は、まずは住んでいる自治体や各種団体の相談窓口に連絡しましょう。築年数や条件によっては無料で診断を受けられます。有償で診断を受ける場合の費用の目安は精度によって異なり、5万円~が目安です。
耐震診断の結果、耐震性に不安があるとなれば、耐震工事を行います。耐震性を高めるリフォームには、「耐震金物の取り付け」「壁に筋交いを設置し、補強する」「外壁の柱や土台に耐震パネルを取り付ける」などがあります。それぞれの工事の相場も確認しておきましょう。
・1981年より古い住宅全体の耐震補強:150万円~200万円(目安)
また、耐震工事をする際には、自治体からの補助金が受けられたり、税制優遇が受けられる可能性があります。さらに、耐震性を高めた結果「耐震性住宅割引」が適用されて、地震保険料が安くなるといったメリットもあります。万が一の時のためにも、耐震リフォームは優先度を上げておきましょう。
【関連記事】>>耐震リフォームの費用相場、工期の目安は? 注意すべきポイントやリフォーム業者の選び方も解説!
将来に備える、バリアフリーリフォーム
厚生労働省の「人口動態調査」によると、高齢者の不慮の事故による死亡者数で最も多いのが「転倒・転落」。それも、自宅内での事故が半数以上を占めています。熟知しているはずの自分の家でも、筋力の衰え、老眼や白内障などによる視力の低下によって、ほんのわずかな段差につまずくことが増えるのです。そのため、将来を見据えて家の中の段差をなくしておくことが大切です。
バリアフリーリフォームには、段差をなくすほかに、「手すりの設置」「設備の変更(和式トイレを洋式トイレに替えるなど)」「間取りの変更」などがあります。長く住んでいれば、年を取ったころに、いずれバリアフリー対応をする時がきます。間取りについても、老後を考えて変更しやすいものにしておくといいでしょう。
それぞれの工事の相場は、以下のようになります。
・手すりの設置:5万~10万円
・トイレの変更(和式から洋式へ):40万~60万円
また、先ほどの耐震リフォームと同じように、バリアフリーリフォームにも補助金制度などがつかえます。住んでいる地域のホームページなどを確認して、使える制度があれば利用しましょう。
【関連記事】>>介護・バリアフリーのリフォーム費用相場、工期の目安は? 注意すべきポイントやリフォーム業者の選び方も解説!
【関連記事】>>リビングは1階と2階、どっちがいい? 老後の生活を想定して、2階リビングの不安を解消しよう
築古マンションであれば、水回りや配管のリフォームも考えよう
築25年を過ぎた築古マンションの場合は、配管の状態も確認しておきましょう。配管を古いままで放置していると、定期的に行われる高圧洗浄の際に水漏れしてしまうこともあり得ます。
個人で管理するのは、キッチンやトイレなど家の中の水回りや、そこにつながった専有部分を通る配管です。床下を通っていることが多いので、床のリフォーム工事をする場合は配管もチェックし、古くなっているのであれば新しくすることをおすすめします。
マンションの場合は、水まわりの移動が難しい構造もありますので、中古マンション購入の際には、移動ができるか事前に確認しておきましょう。
自分のこだわりは何か?
譲れること、譲れないことをはっきりさせる
家族全員で「暮らしの要望リスト」を考える
リフォームで最も重要なのは「住宅性能の向上」だという話をしてきましたが、実際にリフォームをしようと思うと、どんなデザインや雰囲気にしようか、リフォーム会社をどこにしようかと、頭がいっぱいになってしまう人が多いもの。
もちろん、リフォーム会社と一緒にゼロから考えて、リフォームの内容を決めていくという方法もあります。ですが、リフォームをスムーズに進めるためには、業者に相談する前にこちらの希望をきちんと固めておくことです。自分自身が暮らしのどんなことにこだわっているのか、どういうライフスタイルを送りたいのか。見える場所だけでなく、自分の幸せについてよく考えることが大切です。
Yuuさんのおすすめは「要望リスト」を作ること。普段の生活で困っていること、もっとこうだったらいいなと思うことを、一緒に暮らす家族で話し合って、全員の夢や希望をまとめます。
「ここで大事なのは、それぞれのやりたいことに対して理由も書いておくこと。理由を書いておくと、リフォーム会社に頼んだときに、その理由ならこの方法では解決できないですよ、こっちの方法のほうがいいですよ、というようなアドバイスをもらえます」(Yuuさん)
例えば、キッチンが狭くて使いにくい、窓際が寒い、コンセントが足りない、洗剤のストックが多すぎて棚に入らない、靴の収納が足りないなど、細かいことを思いつくだけ書き出してみます。ささいなことでもなんでもかまいません。まずは、家族がどんな暮らしを希望しているのか、といったことを洗い出しておきましょう。
リフォームの定義は、「古くなった建物の状態を修復・改善すること」なのですが、実際にはそれだけではなく、自分たちの暮らしをより良くするために行うことでもあるのです。
「おうち時間が増えた今、家の快適さが、人生の幸せを左右するぐらいの大きな問題になってきています。家は人生を支える重要な土台です。家にいる時間が長くなればなるほど、家の環境によって人生の充実度が変わります。家は屋根と床と壁があればいいというものではありません。家が我々にもたらしてくれるものの大切さを見直していただきたいですね」(Yuuさん)
理想のイメージをつかむためにショールームを利用しよう
ショールームは、いろいろ勧められそうで気が進まないと思っている人も多いかもしれませんが、Yuuさんは、「ショールームには、計画が具体的でない検討中の段階と、プランが決まった後に商品を選定する段階の2つのタイミングで訪れるのがおすすめです」と言います。
ショールームは単なる商品の展示ではなく、製品を実際に使った生活をイメージできるような仕掛けがたくさんあり、まるでアミューズメントパークのような楽しさがあります。自分の希望や夢があまり思いつかないという人は、ぜひ一度ショールームに行ってみてはいかがでしょうか。
これまで、大規模なショールームは自由に見ることも可能でしたが、最近ではコロナ禍の影響で、来場予約が必要なことが多いようです。また、オンラインでの見学や相談も増えてきています。ショールームに足を運ぶ前には、一度、WEBサイトなどで詳細を確認しましょう。
【関連記事】>>リノベーション成功のカギは、徹底的な情報収集と、理想の住まいを具体化すること!
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運営会社 | 株式会社エス・エム・エス(東証プライム上場・資本金23億1022万円) |
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紹介会社数 | 最大3社 |
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リフォーム比較プロ(リフォーム一括見積もりサイト) | |
登録業者数 | 500社以上 |
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