注文住宅を建てるにあたって必要なのは、自分の要望にあった土地を探すこと。そこで、土地の探し方とチェックポイントを徹底解説する。注文住宅は、自分や家族の希望に沿って建物を細かくオーダーできるのが魅力だが、いくら建物にこだわってもその良さを活かせる立地でなければ魅力は大幅にダウンするはずだ。注文住宅の魅力を活かすも殺すも土地次第といえる。(住宅・不動産ライター、宅地建物取引士 椎名前太)
土地と建物は必ず同時進行で検討する
注文住宅の土地探しから購入までの流れは、以下のような4ステップで進む。
1.住みたい土地と建物のイメージを具体的にする
注文住宅の土地探しでもっともやってはいけないことは、建物のことを考えずに契約をしてしまうことだ。先に土地を決めてしまうと、注文住宅の建築費が足りなくなることもあり得る。そうならないためには、土地と同時に建物の検討もスタートしておくことが重要だ。
2.資金計画を立てる
現在の貯蓄額、親などからの贈与額、毎月返済可能な額などから用意できる総予算を算出する。毎月の返済額から借入可能額を算出するには「住宅ローン借入可能額シミュレーション」などを利用すれば便利だ。
例えば、毎月10万円の返済で金利1%、35年ローンを組んだ場合(元利均等返済)の借入可能額は約3500万円だ。これに加えて1000万円の頭金を用意できるのであれば、総予算は4500万円ということになる。
【関連記事はこちら】>>わずか10秒で試算可能!「借入可能額シミュレーション」
3.土地探しと建築依頼先探しを開始する
土地探しと建築依頼先探しは同時に開始する。土地探しはHOME’SやSUUMOといった不動産ポータルサイトを利用する方法がポピュラーだが、業者に依頼するという手もある。依頼先はハウスメーカーなどの「建築依頼先」と「不動産会社」の2種類がある。
それぞれのメリット・デメリットには次のようなことが考えられる。
「建築依頼先」に土地探しを依頼するメリット・デメリット
・建物の建築費を熟知しているので、予算内で希望を満たした建物が建てられる土地を紹介してもらえる
・土地と建物の相談窓口を一本化できるので、それぞれの住宅ローン手続きの窓口も一本化できる
デメリット
・あくまで建築の専門家であり、土地探しのプロではないので一般に出回っていない土地情報の入手は不得意
「不動産会社」に土地探しを依頼するメリット・デメリット
・大手や地元に根付いた不動産会社であれば、売主が情報公開を拒むような物件情報も把握していることが多いので、お宝物件に出合える可能性が高くなる。
デメリット
・建築のプロではないので、建物と合わせると予算オーバーになる土地を紹介されることがある。
以上のように、それぞれにメリット・デメリットがあるので、両方に依頼するのが無難だろう。
4.土地の契約・引き渡し
注文住宅は、先に土地を購入してからでないと建築工事に着手することはできない。ここで問題となるのが住宅ローンだ。
ほとんどの住宅ローンは、建物が完成して引き渡されるときに実行(入金)される。したがって土地の購入費用に利用することはできない。
また、一般的に家の建築代金というものは、着工時、上棟時、引き渡し時といったように複数回に分けて支払う。この支払いにも住宅ローンは利用できないことになる。
そこで利用するのが「つなぎ融資」だ。これは土地の購入費用や家の建築中に支払う費用を立て替えるための住宅ローン。つなぎ融資は、一般的に住宅ローンを借り入れる金融機関で申し込む。そして建物が引き渡された時点で住宅ローンの実行によって完済される。
【関連記事はこちら】>>「土地代金」「注文住宅の工事代金」はどう借りる? 住宅ローンの「分割融資」「つなぎ融資」を完全解説
注文住宅の土地探し、12のチェックポイント
では、具体的な土地探しのチェックポイントを解説しよう。これら12のチェックポイントを満たせば、理想の注文住宅の建築に近づけるだろう。
1.予算・交通
いくら理想的な土地が見つかっても予算内に収まらなければ買えない。したがって、まずはどのエリアなら買えるかを調べる。通勤や通学時間を考え、どの駅周辺に住みたいかを決めよう。
ターゲットの駅が決まったら、周辺の土地の相場を調べる。方法は国土交通省のサイト「不動産情報ライブラリ」やSUUMO、HOHE’Sなどの不動産ポータルサイトを利用すれば便利だろう。
2.土地の形状
一般的に土地の形状は、正方形に近いほど人気があり、高額になる。しかし、安価な変形地でもメリットを感じる場合もある。例えば、家の敷地と道路に接する出入り口部分が細い通路上になっている旗竿地(はたざおち)の場合は、建物が道路に面していないため静かでプライバシーを保ちやすい。
3.建ぺい率・容積率
日本の住宅地には建ぺい率と容積率が設定されている。建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合のことだ。そして容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合のこと。
仮に建ぺい率50%、容積率100%の地域で30坪の土地を購入した場合、延べ床面積40坪の家は建てることができない。建てられるのは、建築面積15坪、延床面積30坪(つまり総2階建ての家)だ。こういったことから土地を探す際は、常にこの建ぺい率と容積率を確認すべきだろう。
4.接道状況
建築基準法では、家を建てる土地は4m幅以上(6m幅以上の地域もあり)の道路に2m以上接していなければならないことになっている。消防車などの緊急車両を入りやすくするためだ。
ところが世の中には幅が4m未満の道路も少なくない。そのうち、建築基準法第42条第2項の規定によって、道路とみなすことができる「みなし道路」であれば、建築は可能だ。ただし、通行可能な幅が4m以上になるように建物をセットバック(後退)して建築する必要がある。
このような土地を購入してしまうと敷地面積の割に小さな家しか建てられなくなるので要注意だ。
5.スーパー、コンビニなど商業施設
必要な商業施設は人それぞれ。例えば「どうしても近くにスーパー銭湯が欲しい」という人もいるだろう。また、それらへの理想の距離も、移動手段が徒歩か自転車か自動車かによって異なる。実際に住み始めた状態をリアルに想像して必要な商業施設とその距離を確認したい。
6.金融機関、病院、交番など公共施設
これらの施設の必要度も人それぞれ。例えば持病がある人は、専門医がいる病院が近くにあった方がいいだろう。
7.幼稚園、小中学校など教育施設
子どもがいる世帯なら評判のいい学校が近くにあるのか、入学の難易度はどのくらいか、などが気になるところ。これらは周辺の不動産業者に聞くか、ネットで調べればいいだろう。
8.周辺の交通量
普段から渋滞しているか、平日と休日で差があるのか。特に小さな子どものいる世帯は安全のために注意したいところだ。
9.犯罪率
地域によって空き巣など犯罪の発生率に差がある。所轄の警察や市町村のホームページなどで確認してみよう。
10.嫌悪施設
嫌悪施設とは、家の近くにあるとあまり良い気持ちがしない施設すべてだ。例えば競輪・競馬場など公営ギャンブルの施設、火葬場、風俗店などがある。
11.地歴
ガソリンスタンドや工場の跡地などは、土壌汚染の危険性がある。各市区町村の役場で過去の用途が確認できるので心配なら調べてみよう。
12.地盤の強度
埋め立て地など地盤が弱い土地に家を建てる場合、地盤改良に数百万円かかることもある。各地域の調査結果は「ジオダス」などのサイトで確認できる。購入予定の土地の近くが軟弱地盤だった場合は、建築依頼先と相談して地盤改良の費用も予算に入れておきたい。
住む土地がその後のライフスタイルを大きく左右する
土地を探す際は、上記12項目をチェックすれば大体は満足できるはずだ。しかしそのうえで便利さだけでなく、精神的な豊かさにもこだわりたい。
例えば「借景など景色が良い」「海の近く」といった個人的な好みの部分だ。住む土地の選択は、その後のライフスタイルに大きく影響する。
このようなこだわりを実現することで毎日がより充実するはず。注文住宅を建てる際は、建物だけでなく土地探しにもこだわってほしい。
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