経済産業省と国土交通省、環境省は連携して、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅である、ZEH(ゼッチ)の推進に向けた取り組みを行っている。政府は2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すという目標を掲げており、補助金事業を展開。これから家を建てようとしている人は、この「ZEH補助金」について知っておくといいだろう。
ZEH(ゼッチ)住宅とは
ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称であり、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅のこと。経済産業省の資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」によると以下のように定義されている。
【ZEHの定義】
外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現(省エネ基準比20%以上)した上で、再生可能エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅
※引用元:経済産業省資源エネルギー庁「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に関する情報公開について - 省エネ住宅」
上図のようにZEHは、建物の断熱性を高め、高効率な設備を導入することで、従来より20%以上もの省エネを達成する建物とする。さらに太陽光発電設備などを加えることで、年間のエネルギー収支がゼロとなる住宅を目指している。
水道光熱費がゼロ円になるというものではなく、あくまでもエネルギー収支がゼロとなるのがZEHである。
ZEHでは、発電した電力のうち余剰電力は売電可能となる。よって、余剰電力を売電した結果、実際の水道光熱費もゼロ円になるというケースはあり得るだろう。
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特徴 | ・坪単価は55万〜85万円とコストパフォーマンスが良い ・完全自由設計で将来の間取り変更なども想定したプラン作成が可能 ・耐震性、耐熱性、耐風性に優れた設計に注力 ・ZEH住宅や子育てエコホーム支援事業に対応 |
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対応エリア | 関東1都6県/関西2府2県/東海4県/中国2県 |
坪単価 | 55万〜85万円 |
ZEH住宅は省エネ性能で3種類に分かれる
ZEH住宅は、省エネ性能のグレード別に「ZEH」と「Nearly ZEH」、「ZEH Oriented」の3種類があり、それぞれの内容は下表のようになっている。なお、上から順にグレードが低くなっている。
種類 | 内容 |
---|---|
ZEH | 太陽光発電等によって、消費エネルギーの100%をまかなえるもの。 |
Nearly ZEH | 太陽光発電等によって、消費エネルギーの75%以上まかなえるもの。主に寒冷地や低日射地域、多雪地帯などの地域に限り適用される。 |
ZEH Oriented | ZEHの基準を満たす断熱性と省エネ性を備え、太陽光パネル等の再生可能エネルギーの発電装置がないもの。主に都市部狭小地の二階建て以上および多雪地域に限り適用される。 |
経済産業省資源エネルギー庁によると、「ZEH」と「Nearly ZEH」、「ZEH Oriented」の定義は以下のように定められている。
【ZEHの定義】
ZEH
以下の(1)~(4)のすべてに適合した住宅
(1) ZEH強化外皮基準(地域区分1~8地域の平成 28 年省エネルギー基準(ηAC 値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA 値[W/㎡K] 1・2地域:0.40以下、3地域:0.50以下、4~7地域:0.60以下)
(2) 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減
(3) 再生可能エネルギーを導入(容量不問)
(4) 再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減
Nearly ZEH
以下の(1)~(4)のすべてに適合した住宅
(1) ZEH強化外皮基準(地域区分1~8地域の平成 28 年省エネルギー基準(ηAC 値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA 値[W/㎡K] 1・2地域:0.40以下、3地域:0.50以下、4~7地域:0.60以下)
(2) 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減
(3) 再生可能エネルギーを導入(容量不問)
(4) 再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から75%以上 100%未満の一次エネルギー消費量削減
ZEH Oriented
以下の(1)及び(2)のいずれにも適合した住宅
(1) ZEH強化外皮基準(地域区分1~8地域の平成 28 年省エネルギー基準(ηAC 値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA 値[W/㎡K] 1・2地域:0.40以下、3地域:0.50以下、4~7地域:0.60以下)
(2) 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量削減
これらのグレードによって、補助金(2.補助金の種類と特徴で解説)が異なるため注意が必要だ。
補助金対象者と主な要件
ZEH住宅補助金の対象となるには、以下の要件を満たさなければならない。
【対象者】
- ・ZEHを新築する人
- ・新築ZEHを購入する人
【主な要件】
- ・SII※に登録されたZEHビルダー/プランナーが設計、建築、販売を行う住宅であること。
- ・住宅は申請者が常時居住する専用住宅であること
- ・交付決定日以降に本事業に着手すること
- ・各事業の要件を満たすものであること。
※SII(Sustainable open Innovation Initiative)とは一般社団法人環境共創イニシアチブのことを指す。技術革新と市場創出を主導することを目的に設立された団体であり、ZEH補助事業などを行っている。
上記のとおり、ZEH住宅の補助金の対象者は、ZEH住宅を新築する人とZEH住宅を購入する人です。新築する場合、ZEH住宅に適合するプランで建築確認申請の提出が必要となります。
ハウスメーカーで建てる場合、ZEH住宅に対応する会社を選ぶのがおすすめです。下表でZEH住宅対応のハウスメーカーを紹介します。
ハウスメーカー | ||||||
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会社名 | 株式会社AQ Group | ミサワホーム株式会社 | 株式会社ヤマダホームズ | 大和ハウス工業株式会社 | 住友林業株式会社 | パナソニック ホームズ株式会社 |
坪単価(目安) | 55万〜85万円 | 60万~75万円 | 50万~80万円 | 60万~80万円 | 70万~90万円 | 60万~100万円 |
構造 | 木造 | 木造 | 木造 | 木造、鉄骨造 | 木造 | 鉄骨造 |
対応エリア | 関東1都6県/関西2府2県/東海4県/中国2県 |
全国 | 全国(東北、中部、中国、四国、九州の一部、沖縄県を除く) | 全国 | 全国 | 全国(北海道・東北の一部を除く) |
特徴 |
・完全自由設計で建築可能 |
・独自の木質パネル接着工法で耐震性や断熱性の高い家を建築 ・世界初の「ゼロ・エネルギー住宅」を開発。省エネ設計に注力している |
・長期優良住宅が求める4つの性能基準(耐震、断熱性能、劣化など)で最高等級を確保 ・希望や予算に合わせて選べるラインアップがそろっている |
・平屋、多層階、併用住宅など多種多様なプランに対応 ・設計、インテリア、施工まで一貫した自社体制で行う |
・木造住宅に特化。木の質感にこだわった住宅を提供 |
・超高層ビル建築用の技術を採用した制震フレームの使用で倒壊やゆがみを防止 |
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6つの補助金の種類と特徴
ZEH補助金は、省エネ性能のグレードごとに以下の2種類に分かれており、それぞれ補助額が異なる。
- ZEH支援事業
①ZEH 補助額55万円+直交集成板等で最大90万円
②ZEH+ 補助額100万円+ハイグレード仕様10~25万円+直交集成板等で最大90万円
それぞれの補助額と内容を解説していこう。
①ZEH 補助額55万円+直交集成板等で最大90万円
ZEH支援事業(ZEH)の概要は以下のようになる。ZEH支援事業の、いちばんシンプルな形態だ。
項目 | 内容 |
---|---|
補助額 | 55万円/戸 【追加補助額】 ・蓄電システム:上限20万円 ・直交集成板(CLT):90万円/戸 ・地中熱ヒートポンプ・システム:90万円/戸 ・PVTシステム:65万円/戸、80万円/戸、90万円/戸 ・液体集熱式太陽熱利用温水システム:12万円/戸、15万円/戸 |
対象となる住宅 | ZEH Nearly ZEH ZEH Oriented |
主な要件 | ・ZEHロードマップにおける『ZEH』の定義を満たしていること ・SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与(設計、建築又は販売)する住宅であること |
公募方式 | 先着方式 |
②ZEH+ 補助額100万円+ハイグレード仕様10~25万円+直交集成板等で最大90万円
ZEH支援事業(ZEH+)の概要は以下の通りだ。ZEH+とは、再生可能エネルギーの自家消費拡大を目指したZEHのことを指す。
項目 | 内容 |
---|---|
補助額 |
100万円/戸 【追加補助額】 |
対象となる住宅 | ZEH+ Nearly ZEH+ |
主な要件 |
|
公募方式 | 先着方式 |
【関連記事はこちら】>>住宅の新築・取得時の減税・優遇制度・補助金制度を解説! 100万円以上のメリットが多数あり!
2023年版の各補助事業のスケジュール
ZEH補助金を得るには、公募期限内に申請を行い、期限内に代金を支払い終える必要がある。ZEH各補助事業のスケジュールは下図を参照してほしい。
ここでは、ZEH支援事業(一次公募期間)のスケジュールについて解説する。
情報公開は毎年4月に行われる。4月中にZEHを建てられる工務店を探し、見積もりを取ることが望ましい。
5月に入ったら、請負工事契約と建築確認申請を行い、工務店にZEH補助金の申請を行ってもらう。同時に住宅ローンの審査なども申し込む。
6月〜7月は補助金の審査期間となる。審査が通れば、交付決定通知書が発行される。
戸建て住宅の工期は3カ月程度であるため、8月に着工すれば12月には竣工する。工事代金の支払いが終わったら、補助金の実績報告書を提出する。
補助金は、竣工後の3~5カ月後に振り込まれるため、翌年の3~5月に入金される見通しとなる。
なお、ZEH補助金事業は、2021(令和3)年〜2025(令和7)年度まで継続される予定となっている。
ZEH住宅のメリット・デメリット
ZEH住宅のメリットには、以下のような点が挙げられる。
【ZEH住宅のメリット】
- ・光熱費を節約できる。
- ・省エネ住宅として資産価値を上げることができる。
- ・売電収入を得ることができる。
省エネ住宅であるため光熱費が節約でき、将来も売却しやすくなるなど資産価値を上げることができる点がメリットとして挙げられる。また、余剰電力を売電することで収入を得ることもできる。
対してZEH住宅のデメリットには、以下のような点が挙げられる。
【ZEH住宅のデメリット】
- ・初期コストが割高となる(一般的な住宅よりも300万円程度プラスになるイメージ)。
- ・施工会社がSIIに登録されZEHビルダー/プランナーに限定される。
- ・設計プランに一定の制約が発生する。
デメリットとしては、初期コストが多く発生し、施工会社やプランが限定されてしまうという点が挙げられる。建築コストが割高となりやすいため、補助金制度を賢く活用する必要がある。
ZEH補助金まとめ
以上、ZEH補助金について解説してきた。
【ZEH補助金まとめ】
- ・経済産業省と国土交通省、環境省は、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指すために、ZEH補助金事業を実施している。
- ・省エネ住宅として資産価値を上げることができる。
- ・ZEH補助金とは、SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与する住宅に対し、原則として55万円/戸が支給される補助事業である。
ZEHは今後普及が見込まれる住宅となる。興味のある方は、ぜひ補助金制度も活用してみてほしい。
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