不動産業界へ転職を考えているけれど、「休みが取りにくく、長時間労働」「ブラックな会社が多い」といったイメージがあり、なかなか踏み出せないという方が多いのではないでしょうか。現在の不動産業界はどうなのか、株式会社レコの梶本幸治が解説いたします。(不動産会社向けの集客&教育コンサルタント・梶本幸治)
統計調査から見る、不動産業界の勤務日数と勤務時間
不動産業界というと「休めない」「帰れない」というイメージを持っている方が多いように感じます。
不動産営業の仕事は個人の裁量によるところが大きいので、本来は自分が帰ろうと思えば帰れるはずですし、自分が休もうと思えば休めるはずです。
では、実際の不動産業界で、休日と帰宅時間の問題はどうなっているのでしょうか。厚生労働省がまとめた統計から、不動産業界の休日と帰宅時間の問題を見てみましょう。
厚労省がまとめた「労働統計要覧(D 労働時間)」の産業別月間出勤日数によると、不動産産業の月間出勤日数は下記のとおりでした。参考までに調査産業計の総計の数値も併記しています。
事業規模5人以上 | 事業規模30人以上 | |
---|---|---|
平成27年 | 19.2日 | 18.8日 |
平成28年 | 19.1日 | 18.7日 |
平成29年 | 19.1日 | 18.8日 |
平成30年 | 19.0日 | 18.9日 |
令和元年 | 18.6日 | 18.7日 |
事業規模5人以上 | 事業規模30人以上 | |
---|---|---|
平成27年 | 18.7日 | 18.8日 |
平成28年 | 18.6日 | 18.8日 |
平成29年 | 18.5日 | 18.7日 |
平成30年 | 18.4日 | 18.6日 |
令和元年 | 18.0日 | 18.2日 |
事業規模5人以上、事業規模30人以上ともに「不動産業、物品賃貸業」は「調査産業計」よりも月間労働時間が長いようですが、不動産業界は他業界よりも長時間労働というほどの違いはないように感じます。
次に、同じく厚労省がまとめた産業別月間実労働時間数から、不動産業の月間労働時間(総実)を見てみます。
事業規模5人以上 | 事業規模30人以上 | |
---|---|---|
平成27年 | 153.1時間 | 147.4時間 |
平成28年 | 152.4時間 | 146.9時間 |
平成29年 | 152.4時間 | 147.7時間 |
平成30年 | 149.4時間 | 147.0時間 |
令和元年 | 146.1時間 | 144.2時間 |
事業規模5人以上 | 事業規模30人以上 | |
---|---|---|
平成27年 | 144.5時間 | 148.7時間 |
平成28年 | 143.7時間 | 148.5時間 |
平成29年 | 143.3時間 | 148.4時間 |
平成30年 | 142.2時間 | 147.4時間 |
令和元年 | 139.1時間 | 144.5時間 |
事業規模5人以上では、「不動産業、物品賃貸業」は「調査産業計」よりも、やや労働時間が長いようですが、事業規模30人以上では逆に「不動産業、物品賃貸業」は「調査産業計」よりも、やや労働時間が短くなっています。
このことから不動産業界は他業界に比べ、休みが取りにくい訳ではなさそうだと推測できます。
実際のところ不動産業界はブラックなのか?
上記の通り、統計で見る限りは不動産業界がとりわけブラックな職場であるとは言えないようです。
では実際、私が不動産業界で見聞きしたお話をさせていただきますね。
結論から申し上げますと、不動産業界の「休日」と「帰宅時間」の問題は大幅に改善されつつあると私は感じています。
冒頭で申し上げましたとおり、不動産営業の仕事は個人の裁量によるところが大きいので、いつ帰ろうと、いつ休もうとあまり文句を言われないはずなのです。
しかし、個人の裁量が大きいということは逆に考えた場合、何でもかんでも自分自身に責任があるということにもなります。
つまり、業績が好調で契約予定を何件も抱えている場合は、契約準備に忙殺されて早めに帰宅したり、休みをしっかり取る余裕がなくなってしまいます。
それとは逆に、業績が低迷しノルマに遠く及ばない場合は、夜遅くまで残って仕事を行い、休日返上でノルマ達成を目指すことになります。
この場合、ノルマ達成のために自ら進んで積極的に休日返上することもあれば、「私はこんなに頑張っていますので、ノルマに達しなくても見捨てないで下さいね」と上司にアピールする為、嫌々出勤する場合の2通りのケースがあります。
このような仕事のほかにも、まだまだやるべきことはたくさんあります。
広告チラシの作成や印刷、営業会議、契約書作成、重要事項説明書作成、お客様への追客電話等、これらの仕事を昼間のオンタイムに行うと、「営業が昼間っから営業所にいるとは何事か! さっさと外で営業してこい」と怒鳴られてしまいますので、どうしても夕方以降に行うことになります。
そうすると帰宅時間が大幅に遅くなってしまうのです。「さっさと外で営業してこい」と言われてもそうそう仕事もありませんので、漫画喫茶などで時間をつぶしてから、頃合いを見て帰社することとなりますので、全くの無駄なのですけどね。
このような不動産業界の「休日」と「帰宅時間」のエピソードをご紹介しましたが、こられのエピソードは昔話になりつつあります。
働き方改革で不動産業界も変わりつつある
不動産業界にも遅ればせながら働き方改革の波が押し寄せておりまして、帰社時間は本社で管理され、少しでも残業をしようとすると、正当な理由と上長の許可が必要となる会社が増えてきています。
また、契約書や重要事項説明書の作成は、社内の調査部門が担うケースも多くなり、現場の営業担当者が必死になって書類を作ることも減りつつあります。
さらに、大手売買仲介会社の中にはポスティング広告(チラシ)を全面的に廃止する会社も出てきましたので、これまた現場の営業担当者が必死になってチラシを作ることも、今後はどんどん減っていくと思われます。
ご覧いただいたように、不動産業界も以前のような休みが取りにくく、長時間労働というイメージから脱却しつつあるのです。
自らのプライベートな時間を大切にしつつ、不動産業界にチャレンジしようとお考えの方も、不動産会社の休日や勤務時間をしっかりとチェックして、あなたのご希望に合う会社を探してみてください。
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