人が亡くなった物件、どうする? 事故物件専門「成仏不動産」の特殊ビジネスの裏側

2025年2月6日公開(2025年2月13日更新)
山本久美子:住宅ジャーナリスト

「成仏不動産」という珍しい名称の不動産サイトがあるのをご存知だろうか? マークスライフ株式会社が運営するサイトで、成仏物件(事故物件)の情報が検索できる。本サイト成仏物件とは何か、こうしたサイトが登場したのはなぜか、詳しく調べてみた。

人の死が発生した物件は事故物件?

 住宅であるからには、そこで人が亡くなることも起こりうることだ。一方で、人が亡くなった家には住みたくないという人もいる。

 賃貸借や売買の契約時に、人の死について告知するかどうかについて、以前は明確なルールがなかった。不動産会社によってばらばらな取り扱いをしていたこともあり、国土交通省が2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表した。

 このガイドラインでは、告知するかしないか、告知するならいつまでか、などについて基本ラインを提示している。原則は以下の通りだ。なお、特殊清掃とは、遺体が長期間放置されたことで臭気や部屋の損傷が激しいときに特殊な清掃やリフォームをすることをいう。

■ガイドラインの骨子

(1)孤独死を含む自然死や不慮の死などの場合は告知不要
(2)(1)の場合でも特殊清掃が行われた場合は告知が必要
(3)(1)以外の死(自殺や他殺など)の場合は告知が必要
ただし、賃貸では告知期間は3年間、売買では告知期間を定めない
(4)社会的に与えた影響等が高い(近隣の人によく知られた大きな事件など)事案は告知が必要

注)告知とは、契約前の重要事項説明として告知義務があるもの。借り手から質問されても3年経ったら説明しなくてよいということではない。

 つまりは、厳密にいうと、告知の対象となる「特殊清掃が行われた場合」や「自殺・他殺などの場合」、「大々的に事件として報道されたような場合」がいわゆる事故物件と言えるだろう。事故物件は、広く買い手や借り手を探すために、相場よりも価格を抑えるのが一般的だ。

【関連記事】>>自然死なら賃貸・売買契約時に告知の必要なし! 国土交通省が「人の死」に関するガイドラインを策定

事故物件を成仏させて適性に売る「成仏不動産」とは?

「成仏認定書」サンプル(成仏不動産のサイトより転載)
「成仏認定書」サンプル(成仏不動産のサイトより転載)

 さて、成仏不動産について、マークスライフの山口滋さんに話を聞いた。辞書をひくと“成仏”の意味はいくつかあったが、「死んで、この世に未練を残さず仏となること」の意味が近いだろう。  

 成仏不動産の場合、成仏させたいのは“物件”だ。住宅市場で取り扱われない物件を再生して、次の住み手につなげることで、物件を成仏させたいと考えている。

 同社では、事故物件を高い技術力で特殊清掃したうえで、寺社で供養やお祓いを行い、このことを証明する「成仏認定書」を発行しており、認定書を発行した不動産を成仏物件と呼んでいる。

 そもそも成仏不動産が誕生したきっかけは、同社の代表・花原浩二さんが不動産会社を立ち上げた数年後に、事故物件について相談され、その査定が難しかったことにある。事故物件は、一般の不動産より売り主の困り度が高いにもかかわらず、不動産流通市場に乗りづらい。

 一方で、事故物件を買いたたいて再販して儲けている事業者もいると聞いた。そこで、事故物件を適正に流通させて、困っている売り主の役に立ちたいと考えて、2019年から事故物件を対象にしたビジネスを始めたのだという。

 同社では、事故物件を成仏認定させて(1)「仲介」する方法、(2)自社で買い取って売り主として販売する「買取再販」の方法で、流通市場に乗せている。「仲介」と比べて「買取再販」は、売却に至るスピードが速いことや遺品整理も含めてワンストップで任せられることがメリットだが、相場より価格がやや低くなる可能性のあることがデメリットだ。どちらの方法にするかは、物件の所有者の希望によるという。

成仏不動産サイトトップページ(公式サイトより)
成仏不動産サイトトップページ(公式サイトより)

 実は、事故物件に関する問い合わせは年々増えている。同社では、事故物件が増えたというより、相談できる不動産会社が明確になったことで、問い合わせが増えていると見ている。直近の取扱戸数は、2023年10月期に対して2024年10月期では2.33倍に伸びた。こうして事故物件の取り扱いを積み重ねていくと、査定の方法や住宅の損傷を回復させる方法などのノウハウも蓄積できる。

安く買えるなら事故物件でもかまわない?

 売り主にとっては、事故物件という特殊性を考慮した対応で、適正に売ってくれる不動産会社というメリットは大きいが、買い主にとってはどうだろう?

 マークスライフがGMOリサーチに依頼して調査したところ、「事故物件に住めますか」という質問に対して、「いいえ」は62.9%、つまり4割程度が状況によっては事故物件に住めると回答している。

 「どんな条件であれば住めるか?」という質問には、「リフォームされていてキレイ」(83.1%)、「安い」(82.3%)、「便利な場所」(66.9%)の順となった。事故物件に抵抗がある人は最初から選ばないだろうが、リフォームなどできれいな状態で、かつ安ければ、あるいは立地がよければ、事故物件を選ぶという人も一定数いるわけだ。

 むしろ買い主側がもっとも困るのは、どういった事故物件かを隠されることだろう。成仏不動産では、成仏物件の情報掲載時に、心理的な抵抗が生じる程度に応じて5段階に区分して、どれに該当するかを明示している。

■心理的瑕疵に応じた5段階の区分

事故物件ならではの対応も

 実は、住宅の損傷の程度は、どこでどう亡くなっていたかでかなり異なるという。畳や床の上かベッドの上か、夏か冬かでも違う。特殊清掃の方法も臭気の根源を断つようにしなければいけない。薬剤で表面を清掃するだけでなく、フローリングなどを切り取って除去する場合もあり、適切な対応が必要。表面だけの清掃で済ませたり、不必要に過剰なリフォームで高額を請求したりする事業者もある。適切な特殊清掃事業者と提携することも重要となる。

 また、事故物件を嫌う金融機関が多く、かつては金融機関が住宅ローンを貸してくれないということもあった。同社との交渉により、今では取り扱う金融機関も増えてきたという。

 住宅ローンで苦労するのは買い主だけではない。計画的に売却するのとは違い、想定外のタイミングで売却したいが、事故物件となって価格が下がってしまい住宅ローンを完済できない、だから身動きできないこともある。だから価格査定への影響は大きい。成仏不動産では、個別要因も加味しながら、これまでの実績を基に適正価格を想定して、査定額を出している。

 このように事故物件ならではの対応が求められることもあり、ノウハウの蓄積と地道な交渉といったものが、事故物件の対策ではカギになっている。

相続や問題物件…多様な困りごとへと拡大

 成仏物件への対応を始めると、葬儀事業者と連携をするようになり、「遺品整理や荷物の撤去をしてほしい」というニーズに応えて、遺品整理などの事業者とも連携もしていくことになる。さらに、「成仏物件にするために相続の問題にもかかわる必要がある」と、営業スタッフ全員で相続診断士の資格を取得したり、司法書士や税理士などとの提携も行ったりしている。

 かたや、物件の所有者が困るのは、事故物件に限らない。違法建築(建築基準法に違反している)や再建築不可(建築基準法の条件を満たしておらず、建て替えができない)の物件、なにがしかのトラブルを抱えている物件など、いわゆる「問題物件」で困っている人も多い。

 過疎化が進む地域では空き家や耕作放棄地などの売却が難しい不動産もある。こうした取り扱いの難しい「負動産」を救うビジネスも展開を始めている。

 このように、成仏不動産から端を発し、周辺ビジネスへと展開していった結果、いまでは成仏不動産が占める取り扱い件数は、全社の2割り程度になっているという。

取り扱い対象外の物件はあるか?

 困りごとにさまざまなビジネスで対応してきたマークスライフだが、取り扱わない不動産はあるのだろうか?

 まず、どんな不動産でも相談に応じているという。結果として、売却に至らない事例はある。1円でも売れないという物件の要因もあれば、関係者の合意が取れないという人的な要因もある。では、エリアはどうか? 全国どこからでも相談に応じているという。他県でも最寄りの営業所が対応しているほか、全国に営業所を増やしているそうだ。

 また、所有者の手持ち資金が0円でも相談に応じる。不動産を買い取って売却し、特殊清掃や遺品整理、相続の手続き費用などの諸費用を売却代金から相殺するサービスも用意している。

 ただし、事件を引き起こした加害者が困っている不動産は取り扱わないという。あくまで被害者側に立って困りごとを解決したいからだとか。

 そうはいっても、実際に困っている不動産を売却に至らせるには、とても手間がかかるものだ。億ションを1物件だけ仲介するだけで多額の仲介手数料が入る昨今でも、こうしたビジネスに携わっているのは、困っている人ほど解決したときの感謝の度合いが高いからだという。ようやく肩の荷が下りた、とてもありがたい、こうした声がモチベーションになっているからこそ、手間を惜しまないということのようだ。

【関連記事】>>事故物件や違反建築など「訳あり物件」の売却ポイントを解説! 業者買い取りは最後の一手!?

【関連記事】>>事故物件(孤独死、自殺、他殺物件)不動産の相場と高く売却するための方法は?

【関連記事はこちら!】>>不動産一括査定サイト&査定業者32社で比較! 売却におすすめのサービスや特徴などを徹底解説

  • RSS最新記事
おすすめ不動産一括査定サイトはこちら

※不動産一括査定サイトとは、売却したい不動産の情報と個人情報を入力すれば、無料で複数社に査定依頼ができます。査定額を比較できるので売却相場が分かり、きちんと売却してくれる不動産会社を見つけやすくなる便利なサービスです。

◆SUUMO(スーモ)売却査定
SUUMO(スーモ)
 無料査定はこちら >>
 
特徴 圧倒的な知名度を誇るSUUMOによる一括査定サービス
・主要大手不動産会社から地元に強い不動産会社まで2000社以上が登録
対応物件 マンション、戸建て、土地
紹介会社数 10社(主要一括査定サイトで最多)※査定可能会社数は物件所在地によって異なります
運営会社 株式会社リクルート住まいカンパニー(東証プライム子会社)
>>SUUMO(スーモ)の詳細記事はこちら
◆リビンマッチ
特徴

・マンション、戸建、土地のほか、工場、倉庫、農地の査定にも対応可能

1700社の不動産会社と提携

対応物件 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫
紹介会社数 最大6社(売却6社、賃貸、買取)
運営会社 リビン・テクノロジーズ(東証グロース上場企業)

◆すまいValue
不動産一括査定サイトのすまいValue
簡単60秒入力、大手6社に査定依頼できる!
特徴 大手不動産会社6社が運営する一括査定サイト
対応物件 マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート、一棟ビル
対応エリア 北海道、宮城、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、愛知、岐阜、三重、大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山、岡山、広島、福岡、佐賀
運営会社 大手不動産会社6社(東急不動産、住友不動産販売、三井のリハウス、三菱地所の住まいリレー、野村の仲介+、小田急不動産)
>>すまいvalueの詳細記事はこちら
◆マンションナビ
マンションナビ
 無料査定はこちら >>
 
特徴

マンションの売却に特化
・マンションを賃貸に出したい人の賃料査定にも対応
900社以上の不動産会社と提携

対応物件 マンション
紹介会社数 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社)
運営会社 マンションリサーチ
>>マンションナビの詳細記事はこちら
◆HOME4U(ホームフォーユー)
HOME4U
 無料査定はこちら >>
 
特徴 悪質な不動産会社はパトロールにより排除している
・20年以上の運営歴があり信頼性が高い
・1800社の登録会社から最大6社の査定が無料で受け取れる
対応物件 マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所
紹介会社数 最大6社
運営会社 NTTデータ・スマートソーシング(東証プライム子会社)
>>HOME4Uの詳細記事はこちら
◆いえカツLIFE
いえカツLIFE
 無料査定はこちら >>
 
特徴

・対応可能な不動産の種類がトップクラス
共有持ち分でも相談可能
訳あり物件(再建築不可物件、借地権、底地権など)の査定も対応可能

対応物件 分譲マンション、一戸建て、土地、一棟アパート・マンション・ビル、投資マンション、区分所有ビル(1室)、店舗、工場、倉庫、農地、再建築不可物件、借地権、底地権
紹介会社数 最大6社(売買2社、買取2社、リースバック2社)
運営会社 サムライ・アドウェイズ(上場子会社)
>>いえカツLIFEの詳細記事はこちら
◆おうちクラベル
おうちクラベル
 無料査定はこちら >>
 
特徴

・AI査定で、査定依頼後すぐに結果が分かる
・SREホールディングスが運営する一括査定サイト

対応物件 マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート
紹介会社数 最大15社
運営会社 SREホールディングス株式会社(東証プライム上場企業)
>>おうちクラベルの詳細記事はこちら
◆イエウール
イエウール
 無料査定はこちら >>
 
特徴

掲載企業一覧を掲載、各社のアピールポイントも閲覧可能
2000社以上の不動産会社と提携
・対応可能な不動産の種類が多い

対応物件 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
紹介会社数 最大6社
運営会社 Speee
>>イエウールの詳細記事はこちら
◆LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)
LIFULL HOME'S
 無料査定はこちら >>
 
特徴

日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営
2400社以上の不動産会社と提携
匿名査定も可能で安心

対応物件 マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件
紹介会社数 最大6社
運営会社 LIFULL(東証プライム)
>>LIFULL HOME'Sの詳細記事はこちら

 

不動産一括査定サイトを比較
評価・評判を実際に一括査定して検証!

サイトロゴ suumo売却査定 home4u マンションナビ おうちクラベル イエウール ライフルホームズ リビンマッチ いえカツLIFE HowMa RE-Guide マイスミEX イエイ すまいValue
サイト名 suumo売却査定 HOME4U マンションナビ おうちクラベル イエウール ライフルホームズ リビンマッチ いえカツLIFE HowMa RE-Guide マイスミEX イエイ すまいValue
提携社数 2000以上 1800以上 2500 不明 1900以上 3691以上 1700以上 500以上 6400以上 29 800以上 1700以上 6
最大紹介社数 10
※物件所在地によって異なる
9 6 6 6 6 6 6 6 6 10 7 6
主な対応物件 マンション、戸建て、土地 マンション、戸建て、土地 マンション マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地 マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など
対応エリア 全国 全国 全国 全国 全国 全国 全国 東京、千葉、神奈川、埼玉 全国 全国 全国 全国 全国
記事を読む 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら

【不動産仲介会社の評判を徹底調査!】
・「SREリアルティ(旧ソニー不動産)」の評判
・「三井のリハウス」の評判
・「住友不動産販売」の評判
・「東急リバブル」の評判
・「野村の仲介+」の評判
・「明和地所」の評判
・「京王不動産」の評判
・「オークラヤ住宅」の評判
・「小田急不動産」の評判

TOP