マンションの売却期間が半減し、売却価格も高くなる方法とは? 
家具や生活雑貨をレンタルしてできるホームステージングがおすすめ

2017年12月25日公開(2021年6月3日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

マンションを早く、高く売却するテクニックに、「ホームステージング」という手法がある。売りに出す物件に家具や生活雑貨を設置し、モデルルームのような演出をすることで買い手の第一印象を良くする効果がある。ホームステージングによって、売却期間が大幅に短縮され、売却価格がアップしたというデータもあるほか、値下げ交渉をさせない効果が期待できるという。大手不動産会社もこぞって取り入れているホームステージングの活用方法を解説しよう。

売却期間が、平均2分の1になる!

 ホームステージングとは、インテリア性の高い家具や生活雑貨をレンタルし、売りに出すマンションに設置して物件を演出する手法のことだ。

 モデルルームのように演出することで、他物件と差別化を狙う。なにもしない物件に比べて、より短い期間で、価格も高く売却できる効果がある。すでに欧米では一般的なやり方で、日本でもここ数年、大手不動産仲介会社を中心に浸透してきた。

 ホームステージングにはどのような効果があるのだろうか。日本ホームステージング協会(東京・江東区)が、会員向けにおこなった調査を参考にしてみよう。

 調査では、マンションを売却する時にホームステージングを活用した場合の効果を測定。ホームステージングをすると、平均130日で売却できたという。不動産ポータルサイト・アットホームの調査では、不動産の売却期間が平均8カ月(マンション6カ月、戸建て11カ月)となっており、ホームステージングを活用したことで、販売期間を約半分にできたようだ。それも、ホームステージングをした物件の大半は、なかなか売れないことからホームステージングを導入した物件が多く、最初からホームステージングをしていればさらに売却期間が縮まったかもしれない。

 さらに売却価格は、平均査定金額から約0.5%増加したという。調査した全168件(戸建て住宅も含む)のうち、最大で0.9%の価格上昇効果があったという。マンション売却では、「実際の制約価格は、売り出し時の価格から5%前後下がるのが一般的」(都内の不動産コンサルタント)というから、0.5%の価格アップであっても大きなメリットになる。

粗探しをさせないためにもホームステージングは有効

 ここからは、ホームステージングの効用を細かく見ていこう。

 ホームステージングをすると、内見に来た際の買い手の第一印象が良くなるのはわかる。しかし、売却決定にまで効果があるものなのか、と疑問に思う人もいるかもしれない。

 実は、内見に来た人のほとんどは、買うか買わないかを、最初の数秒で決めてしまうとも言われる。マンションは大きな買い物だが、意外に直感を重視しているものなのだ。だから、ピカピカの家具や雰囲気の良い雑貨で悪い印象を与えない工夫は重要だ。

 さらに、中古マンション売買につきものの値下げ交渉をさせないという意味でも有効だ。

 「ほとんどの住宅購入者は物件を見る経験が少ないため、内見にきても数分で見るところがなくなってしまう。そうなると部屋の傷などばかりに目がいってしまうようになります」(杉之原理事長)

 つまり、粗探しがはじまってしまうわけだ。そうなると床の傷や、小さな汚ればかりが目につき、後々で値下げ交渉の材料になってしまうのだ。先の調査では、0.5%の売却価格アップとなっていたが、値下げ交渉をさせないことによるプラスはもっと大きい。家やマンションは、売れないと平均査定額を割り込んでしまうことが多いが、ホームステージングすることで値崩れさせずに適正価格で売ることができるようだ。うまく活用すれば、多大な効果をもたらしてくれるのだ。

大手各社は専任媒介契約なら無料

 では、マンション売却時にホームステージングをするにはどうしたらよいのか。

 最も簡単なのは不動産仲介会社に依頼する方法だろう。全国規模の売買仲介会社の多くが、ホームステージング会社と提携しているほか、自社の社員にホームステージングの認定資格「ホームステージャー」を取得させる動きも出てきているという。同協会によるとこれまでに約1500名が講習を受け、ホームステージャーの認定を付与されており、ホームステージングの知識をもった人員が増えている。

 不動産仲介会社の中には、専任媒介契約仲介(業務を1社だけに依頼)を結べば、無料でホームステージングが利用できる会社もある。積極的に使いたい。

 現在、野村不動産アーバンネットや東急リバブル、小田急不動産などが無料(※諸条件あり)でホームステージングを提供している。しかし「専任媒介はちょっとな」という人や、大手ではない会社に仲介を依頼したい人もいるだろう。そうした人は、自分で依頼してもよい。

 日本国内にはホームステージング専門会社が10社ほどある。こうした専門会社は個人からの依頼であっても、対応可能だ。

買い手を意識したプランを活用

 ではホームステージング専門会社はどんなサービスを、いくらぐらいで提供しているのだろうか。

 ホームステージング専門会社は売却するマンションの立地やデザインを考慮して、次なる買い手を意識しながら、家具やインテリアを決定してくれる。豊富な実績をもとにコンサルティングしてくれるので、自分でホームステージングを試みるよりも、的確なサービスを提供してくれる。

 ホームステージングをするのは、原則として、リビングを中心とした部屋。ソファとテーブルに加えて、水回りにもいくつかの小物を設置する。価格は広さや地域によって違いはあるが、約20万円からが相場だ。

 例えば、ホームステージング専門会社のホームステージングジャパン(東京都品川区)では3つのプランを提供している。

①20万円プラン
シンプルプラン(リビング、ダイニングに、家具のみ設置)
参考家具:ダイニングセット、ソファー、ローテーブル

②30万円プラン
スタンダードプラン(リビング・ダイニングに加えて水回りまで演出)
参考家具:ダイニングセット、ソファー、ローテーブル、ラグ、フラワー

③40万円プラン
アップグレードプラン(スタンダードプランより質の高いものを使用。香りや音楽、照明の演出あり)
参考家具:ダイニングセット、ソファー、ローテーブル、ラグ、フラワー、演出小物類、香り、音楽、照明

 その他に、ホームステージングジャパンではオプションでテラス・ベランダなどを飾り付けも追加できる。費用は5万円からだ。どこまで費用をかけるかは、予算との相談だが家具や小物を増やせば、見た目の印象は大きく変わる。

 どのプランでも設置期間は3カ月で、プロカメラマンによる撮影も料金に含まれる。撮影した写真は物件チラシや不動産ポータルサイトで使用できる。

 「鉄則なのは生活感を消すこと」というのが、複数のホームステージング会社の見解だ。目指すのはモデルルームのあの雰囲気だ。

ホームステージングの5カ条を公開

 では具体的に、どういったやり方が効果的なのだろうか。ホームステージング専門会社であるホームステージング・ジャパン(東京・品川)に聞いてみた。同社によるとホームステージングを成功させるためのポイントは次の5つだ。

 それぞれ解説していこう。

1.「広く」「明るく」みせる

 「広さ」と「明るさ」は誰にでも好印象を与えるために必要な要素だ。

 ホームステージング・ジャパンが行った調査によると、内覧後にいい印象として残っていることとして、「明るさ(49.6%)」、「広さ(48.4%)」をあげた人が約5割にのぼったという。

 中でも重要なのは、内覧者がリビングに入った瞬間に広さや明るさを感じさせること。そのための工夫として、物件にあった適切なサイズの家具を配置することが大切になる。

 実例を見てみよう。

写真① 幅200cmのソファとアームチェアを置いてもまだ部屋には余裕があることをアピールした例。写真提供:ホームステージング・ジャパン、以下同。
写真② コンパクトなLDでも、小さすぎる家具を置くのは逆効果

 写真①の部屋はファミリータイプの間取りでLDの広さがポイントになる。そのため幅200cmのソファとアームチェアを置いてもまだ部屋には余裕があることをアピールする。あえてソファを壁側に配置し、テレビボードは置いていない。このまま住むとなると実用的な配置とは言い難いが、見栄えを優先しているのだ。

 広い部屋をより広く見せるためには、導線や視界を家具で遮らないようにすべきだろう。

 また、写真②はLDがコンパクトなタイプのマンションだ。広さに自信がないと、実際以上に狭く見えないよう小さな家具でスペースを確保したくなる人が多い。しかし、このケースで適切な大きさの家具を置くことが大切になる。なぜなら、内覧者は「このサイズの家具でも十分だな」と実感することで購入意欲が高まっていくからだ。小さすぎる家具を設置してしまうと、「家具が置けない狭さ」と、失格の烙印を押されかねない。あくまでも適切な大きさを守ろう。

 また、写真②の部屋のように、ダイニングスペースとリビングスペースの距離が近い場合は、ラグを使ってスペースの区切りをはっきりと認識させることで広く感じさせることができる。

 また、ソファやダイニングテーブルは明るい色を使用するようにし、濃い色の家具を使用するならディスプレイや素材を工夫し、部屋全体が明るく見えるよう調整しよう。

2.生活の「シーン」を想像させよう

 ホームステージングで大切なのは「そこでどんな暮らしができるのか」と具体的な生活をイメージさせることだ。そのためにはストーリーを見せるのが効果的。物件の立地条件・価格帯・間取りから購入層を考え、設定したターゲット層にとって、「憧れの生活」をイメージさせれば購買意欲が高まる。

 内覧者はインテリアに興味がある人ばかりではない。使い勝手を細かく確認する人は少ないので、とにかく部屋に入って感じる印象を第一に考えよう。あくまでわかりやすい演出が肝心だ。あまり個性的すぎるスタイルは避けよう

 設定したターゲット層の中の8割に好まれれば十分。腹八分を意識して、自分のこだわりは抑えよう。

 例えば、キッチンなら、きれいにしておくのは当然だが、何も置いていないのも不自然。写真③のように果物や高級食器を見えるように置いておくといい。また写真④のように、リビングのテーブルには、ティータイムのようにティーポットを置いたり、高級なお菓子を置いておくと、素敵な暮らしをイメージしやすいかもしれない。

写真③ 女性が必ずチェックするキッチンには、さりげなく果物を置いておく
写真④ 家族だんらんをイメージできるよう、ティーポットやお菓子を置いておくといい

3.色を効果的に使う

 「色彩」は視覚情報の80%を占めていると言われる。そのため、ホームステージングでは色の使い方はとりわけ大切だ。

 想定したターゲット層の気に入る空間を表現するためにはどんな色が最適なのかを意識し、部屋ごとにポイントとなるカラーを決めよう。あくまで統一感を損なわないようにするのが王道だ。

 小さな子どものいるファミリー層なら、ピンクやオレンジなど「暖色系」が有効。写真⑤のように黄色を配置することで、温かみが感じられる。

写真⑤ ファミリー向けのプラン。こちらはポイントカラーとして黄色を採用。部屋の広がりを感じやすくなる

 ディンクスや子育てが終わったファミリーは、青やグリーンなど「落ち着いた色」を好む傾向がある。写真⑥のように、部屋全体が締まった感じがするだろう。

写真⑥ ディンクスか少人数のファミリー向けプラン。空間に統一感を出すために、ポイントカラーとして青を配置。視線を大きく動かす効果もある

 また、色の配置も大切になる。一般に人は同じ色を目で追うといわれていて、部屋の各所に統一したポイントカラーを配置して、内覧者が無意識に部屋全体を見回すように誘導する。空間に統一感を出すだけではなく、視線が大きく動くことで、部屋が広く感じられる効果がある

4.三角を意識すれば、そつなくまとまる

 家具や雑貨を三角形に配置するディスプレイは「三角構成」と呼ばれ、安定感があり、簡単にまとまりが出せる写真⑦は三角構成の典型例だ。遠くから視線が誘導され、そこに「生活シーン」を想定した雑貨などでディスプレイを作れば内覧者の興味を惹くことができる。

写真⑦ 三角構成を作ればまとまりを演出しやすい

 その他にも、写真⑧のように、似たような形や色を繰り返し見せるという「リピート構成」も視線を集める効果がある。見ていてリズム感が出てくるので、自然と部屋を見てしまう効果がある。また、視線がとまるポイントを要所に作っておくことで、空間にメリハリがでる。

写真⑧ リピート構成は視線を集める効果がある

 「三角構成」「リピート構成」ともに簡単にプロのような演出ができるので、覚えておこう。

5.水回りは必ずステージングしよう

 家のなかでどこをステージングするか迷う人も多いようだ。リビングは必須だとしても、寝室やキッチン、ベランダなどどこまでやるかは人それぞれだ。建物ごとにセールスポイントは違うので、周囲のアドバイスも聞きながら、2.で取り上げたターゲットを意識して決めよう。

 それでも水回りだけは必ず、ステージングするようにしよう。中古物件の内覧者は、水回りの清潔さを気にする傾向が強い。リフォームやクリーニングをしていても、中古物件を購入する際、「痛みやすい水回りが不安」というマイナスイメージがあるのだ。不安を払拭するための、ひと工夫が必要となる。

 写真⑨のように、明るい色のタオルでホテルライクな清潔感を演出したり、植木鉢で爽やかさと健康的な印象を与えたりするだけで、簡単に生活感を消すことができる。特に風呂やトイレは家具の設置が必要ないため、簡単にステージングできる。

写真⑨ 風呂は、植木鉢で爽やかさと清潔感を演出するといい

 内覧者のマイナスイメージをプラスイメージに変えられれば、ホームステージングの効果が存分に発揮できる。水回りは必ずホームステージングしよう。

最低限のリフォームとの組み合わも効果的

 先述の通り、ホームステージングは各種、不動産会社が取り入れている注目の手法だ。専門会社に頼めば20万円くらいから導入できる。会社によっては、経験豊富なコーディネイターが多くの事例をもとに最適なプランを提案してくれるだろう。個別の要望も聞いてもらえるので、不動産売却時に時間や手間がかけられない人は専門家に頼むといい。

 本稿で紹介したテクニックを用いれば個人でも可能な点は多い。新たに購入しなくても所有する家具や雑貨だけでも、ある程度の演出は可能だ。積極的に取り入れてみよう。

 また、あまりにも水回りなどが汚れている場合は、その個所だけリフォームしてもいい。汚れている個所は目につきやすいだけに、ポイントを絞ってリフォームすることで、ホームステージングの効果がより高まるだろう。

ホームステージングは居住中でも利用可能

 ホームステージングは、売却するマンションにまだ居住中でも利用できることも知っておきたい。

 居住中であれば、新しい家具を設置することはできないが、使用中の家具を掃除したり、隠したりするだけでも見た目に大きな違いがある。

 「モデルルームのように見せるために、生活感を消します。そのためには、個人の持ち物や趣味のものを隠すことが鉄則です。これだけでも、大きな効果があるはずです」(杉之原代表)

 ゴルフコンペのトロフィーや趣味の楽器などは段ボールにしまっておこう。どちらにせよ引っ越すのだから、思い切って片付けることが肝要だ。すっきりした室内に、雑貨を置くだけで、ずいぶんと第一印象がよくなるという。

 この場合は家具などのレンタルが必要ないので、約5万円から利用できる。

【関連記事はこちら】>>マンションを売るのに「ホームステージング」は効果があるのか、編集部員が試した結果は?

知名度が低い今こそ、ライバルに差をつけやすい

 不動産業界内では、急速に注目が高まっているホームステージングだが、まだ一般での知名度は低い。ライバルが気づく前に導入して、賢くマンションを売却しよう。また、あまりにも汚れが目立つ個所だけはリフォームすることで、物件の魅力をさらにアップさせるという方法もある。

 以下はホームステージング利用の際のポイントだ。

ホームステージングのポイント
・売却期間が約2分の1に短縮できる
・売却価格が多少アップする可能性があるほか、値下げ交渉をさせない効果が期待できる
・ライバルが少ない今こそ効果大

【関連記事はこちら】>>マンションを高く売るなら、リフォームしよう! 「必要最低限に抑える」「相見積もりをとる」など、成功するためのリフォーム5カ条を紹介!

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<不動産売却の基礎知識>
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