中古マンションの価格は10年以上も値上がりし続けており、近年はマンション売却の注意点も変化してきました。新築時価格より高く売れることも多くなっている一方で、近年のマンション売却では価格が高いことから、売却期間が長期化するという新たな問題も出てきました。本記事では「最新のマンション売却の注意点」を解説します。(竹内英二・不動産鑑定士)
中古マンションは売却価格が高騰するも、販売は長期化
最初に、近年の中古マンション価格の推移をグラフで示します。直近、過去10年間の首都圏における中古マンション価格の推移は以下の通りです。
中古マンション価格は上昇し続けており、近年は新築当初の価格よりも高く売れる物件が多く出始めています。
2024年3月に日銀は金融政策の大幅な方針転換を示しましたが、実際には低金利環境は当面継続すると思われ、マンション価格は引き続き上昇していくものと推測されます。
一方で、中古マンション市場で近年生じている現象は、販売期間の長期化です。首都圏における中古マンションの在庫件数と販売日数の関係を示すと、下図のようになります。
2020~2021年にかけては新型コロナウイルスによる緊急事態宣言等の影響で物件数が少なくなった時期がありましたが、総じて見ると在庫件数は上昇傾向にあります。
在庫件数に連動するのは、販売日数です。販売日数とは、売りに出してから売買契約を締結するまでの期間ですが、2023年は平均で80.1日(約3カ月弱)となっています。
中古マンションは価格が上昇することで売れにくくなっており、販売日数が長期化することで在庫件数も増えているのです。
マンション売却の5つの注意点
中古マンションの価格高騰下で売却する際には、以下の5つの注意点があります。
各注意点について解説していきましょう。
価格高騰下では売却期間に余裕を持つ
前述の通り、最近のマンション売却では、売却期間に余裕を持つことが最も重要な注意点となってきました。
統計上は、首都圏のマンションの平均販売日数は80.1日ですが、肌感覚ではもっと多くの時間を要している物件が増えています。
ここ1~2年のマンション売却では、売りに出してから半年以上経っても売れ残っている物件も珍しくありません。
販売期間が長期化している原因は、価格の高さです。中古マンションは、物件の近所の人が購入するケースも多いですが、近所の人はマンションの相場をよく知っています。
新築当時の価格も覚えており、新築時よりも高く売りに出されていることを知ると、なかなか購入を決断しないのが実態です。
中古マンションは以前ほどすぐには売却できない状況になってきていますので、売却するには焦らずに売ることが重要となっています。
高過ぎない価格設定をする
近年の中古マンションの売却では、高過ぎない価格設定をすることも注意点です。長期間売れないマンションを見ると、やはり価格が高過ぎる印象があります。
時間に余裕があるなら別ですが、標準の3カ月程度で売却したいのであれば売り出し価格は適正な水準で決定すべきです。
適正な価格水準は、査定を複数社に依頼すると自ずと見えてきます。1社だけの査定結果だと、その価格が高いのか安いのかの判断がつきません。4~5社程度の価格を比較すれば、高過ぎる価格や安過ぎる価格が見えてきます。
複数社に査定依頼するなら、不動産一括査定サイトが便利です。査定結果のうち、高過ぎる価格は排除し、標準的な査定結果の価格を売り出し価格とすることをおすすめします。
【関連記事】>>不動産一括査定サイトおすすめは? ランキング、評判、特徴など19社を徹底比較!
築40年以上の物件は買取も検討する
築40年以上の物件は買取も検討することが望ましいです。買取とは、再販を目的とした不動産会社に下取り価格で売る売却方法のことを指します。
買取による売却価格は、仲介で売ったときの8割程度の価格水準です。買取は、価格は安くなりますが、すぐに売却することができます。
以前は築40年以上の物件は価格が非常に安かったことから、買主が購入後にリフォームできる余力があり、リフォームせずとも売却できました。
一方で、近年は築40年以上の物件でも価格が高くなっており、買主が購入後にリフォームする余力が生まれにくいことから、リフォームしていない物件は売却しにくくなってきています。
そのため、最近では築40年以上の物件は、売却のためにはリフォームが必須になりつつある状況です。
【関連記事】>>築40年のマンションでも売れる? 急激に価値が下がる理由と対処法、注意点などを解説!
しかしながら、売主側でコストを抑えながら上手くリフォームすることは非常に難しく、リフォーム費用を価格に転嫁できずにコストを回収できないリスクもあります。
リフォーム費用を回収できなければ、売却しても損をしてしまいます。そのため、築40年以上の物件はリフォームせずに買取を利用して早期に売った方が賢明です。
確かに買取は価格面で損をしますが、リフォームで失敗して損をするリスクを鑑みれば、損失は最小限に食い止められます。
近年は買取業者も増えてきましたので、買取に関しても複数社に査定を依頼し、高く買ってくれる買主を見つけることが適切な対処法となります。
【関連記事】>>不動産買取の注意点やデメリットは? 仲介とどちらがおすすめか判断ポイントも解説!
ハウスクリーニングを徹底する
ハウスクリーニングを徹底することも注意点です。ハウスクリーニングとは、専門の清掃会社による家の有料掃除サービスのことを指します。
近年は中古マンションの価格が高いため、買主の期待値も高くなっています。新築当時の価格よりも高いにも関わらず、新築時よりも汚れた物件は買主もなかなか買う気がしません。
例えば、キッチン周辺の床が油汚れで少しベタついているだけで、購入しない買主もいます。中古マンションは高級品ですので、高級品を売るからには少しでも商品はきれいにすべきです。
そのため、ハウスクリーニングはキッチンやバスなどの水回りだけでなく、床やクロスも含めて部屋全体を行うことが望ましいといえます。
なお、ハウスクリーニングの有無は査定価格には影響しないため、不動産会社と媒介契約を締結後、購入希望者に家の中を見せる内覧の前のタイミングで行うことが適切です。
一般媒介契約も検討する
仲介で売却する場合、湾岸のタワーマンションなど、人気があり、売れるのも早い物件については、同時に複数の不動産会社に売却を依頼できる「一般媒介契約」も積極的に検討することが望ましいといえます。
理由としては、一般媒介を選択した方が早く売れる可能性が高まるからです(媒介契約については後述します)。
不動産会社に支払う仲介手数料は成功報酬であるため、一般媒介で複数社に依頼しても仲介手数料の支払先は売却を決めた1社だけとなります。
そのため、複数の不動産会社に仲介を依頼しても、売主が経済的に不利になることはありません。
仲介手数料は成功報酬であることから、複数の不動産会社に依頼すると不動産会社同士で競争原理が働き、各社は「より早く・より高く」売ることを目指そうとします。
近年は販売日数が長期化していますので、早く売るためには最初から一般媒介で複数社に依頼することも一つといえます。
【関連記事】>>不動産売却の契約方法は、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介どれがおすすめ? メリット・デメリットを解説!
マンション売却の流れ(気を付けたいポイント)
ここで、マンション売却の流れについて見ていきます。イベントごとに気をつけたいポイントも示しているので、確認しておきましょう。
1.査定の依頼
マンションの売却では、最初に査定を依頼することから始めます。中古マンションを売る場合、「いくらで売るか」を決めなければなりません。
いくらで売れるかを知るために、不動産会社に査定を依頼します。 不動産会社への査定依頼は無料です。
査定依頼時の注意点としては、適正な価格を把握するためにも、不動産一括査定サイトなどを利用して複数社に依頼することが望ましいといえます。
2.媒介契約の締結
売却を依頼したい不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。媒介契約とは、不動産会社に依頼する仲介の契約のことです。
媒介契約には、一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
専任媒介契約 1社だけにしか依頼できない
専属専任媒介契約 1社だけにしか依頼できない(売主が自分で買主を見つけてくる自己発見取引が禁止)
不動産会社の多くは、自社にしか依頼できない専任媒介をすすめてきます。そのため、ハウスクリーニングやインスペクションを無料でつけてくれる会社も増えています。
ただし、前述しましたが、近年の好調な中古マンション市況において、人気のエリアの物件などであれば、早期売却を目指せる一般媒介契約も望ましいでしょう。
3.売却活動の開始
媒介契約を締結したら、売却活動を開始します。マンションは、売りに出してから売買契約を締結するまで、3カ月程度の時間がかかることが一般的です。2023年の平均販売期間は、首都圏では80.1日でした。
【関連記事】>>不動産を売却するまでの流れを解説! 「3カ月で売却できます」には要注意!?
4.売買契約の締結
買主が決まったら、売買契約を締結します。売買契約はあくまでも書面で契約内容を約束する行為であるため、所有権が売買契約時に移転するわけではありません。所有権が移転するのは、あくまでも引き渡しの時点となります。
不動産の売却では、売買契約と引き渡しを1カ月程度空けることが最大の特徴です。売買契約時は、契約が成立した証として売主は買主から手付金(売買代金の10%程度)を受領します。手付金は、引き渡し時に売買代金の一部として充当されます。
また、売買契約時は、不動産会社に対して仲介手数料の50%を支払うことが一般的です。
【関連記事】>>不動産売却にかかる仲介手数料や費用の相場はいくら? 印紙税、司法書士報酬、測量費など多数の項目があるので注意
5.引き渡し
引き渡しは、所有権が移転する日です。買主からは手付金を除く残金が振り込まれ、売主は所有権移転に必要な書類を買主へ引き渡します。
注意点としては、住宅ローンが残っているマンションを売る場合には、住宅ローン残債は引き渡し時に同時に完済する必要があります。 引き渡し当日は、所有権移転と抵当権抹消の2つの登記手続きが必要です。
通常は不動産会社が手配した司法書士が同席しますので、登記手続きは司法書士に依頼します。また、引き渡し時は、不動産会社に対して残りの仲介手数料の50%を支払うことが一般的です。
6.確定申告
不動産の売却では、必要があれば確定申告を行います。確定申告の時期は、売却の翌年の2月16日から3月15日までの間です。
不動産の売却では、売却益(譲渡所得という)が発生したときに税金が生じます。譲渡所得が発生する場合は、確定申告が必要です。また、マンション売却時にはさまざまな税金の特例があります。この特例を利用する際にも確定申告が必要になるので忘れないよう注意してください。
【関連記事】>>マンション売却で税金はいくらかかる? 計算シミュレーションと節税できる特別控除を解説
マンション売却の注意点のまとめ
以上、マンション売却の最新の注意点について解説してきました。
近年はマンション価格が高くなってきていることから、販売日数が長期化しています。そのため、売却期間に余裕を持つことが最大の注意点です。
また、高過ぎない価格設定をすることや、一般媒介契約も検討することも売却期間を長期化させないための注意点となります。
売り出したマンションがなかなか売れないと、不安に陥りやすいです。売却期間を長期化させないためにも、ここで解説した注意点を意識していただければと思います。
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