不動産を売却する際、仲介手数料を支払うことになりますが、値引き交渉をしてもいいということはご存知でしょうか。ちょっとした不動産の売却であれば100万円を超えることもザラなので、その気持ちも分かります。ただし安易に値切ると、失敗することもあるのです。
不動産売却時の必要諸経費のなかで、大きなウエイトを占めるのが「不動産仲介手数料」です。
不動産仲介手数料の金額は次のように定められています。
◆不動産仲介手数料はいくら?(消費税を除く) | |
200万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
200万円超400万円以下の部分 | 取引額の4%以内 |
400万円超の部分 | 取引額の3%以内 |
売買価格が400万円を超える場合は、上記の表では分かりにくいので、即算法として「取引額の3%+6万円(税別)」の計算式で仲介手数料の金額を算出することができます。
つまり、取引金額が3000万円の場合、仲介手数料は103万6800円(税込)となりますので、なかなかの高額ですよね。

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そこで売り主としては「仲介手数料を値切れる不動産会社に売却を依頼したい」という気持ちになると思いますが、同時に「仲介手数料って値切っても良いの? 何か不利益を被ることはないの?」と疑問や心配も浮かんできます。
今日はそんな「売却を依頼する不動産会社を決める際、仲介手数料って値切っても良いのか否か」に関して解説して参ります。
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人気があり高額な物件は、値切れる可能性あり
「解説して参ります」と申し上げましたが、今回はまず結論から申し上げます。
・仲介手数料を値切れる可能性がある場合とは、売却予定の物件が「人気があり」かつ「高額」な案件
・仲介手数料を値切ることが難しい場合とは、売却予定の物件が「人気がない」もしくは「低額」な案件
つまり、人気のタワーマンションや、地域では有数の高級住宅地の物件を売却し、取引金額が5000万円以上になるような場合は、不動産会社も「しぶしぶ」仲介手数料の値切りに応じてくれるでしょう。
しかし、築40年以上経過したマンションや、人口の流出が続いているエリアの物件を売却する場合や、取引金額が1000万円を切るような場合は、不動産会社は仲介手数料の値切りには応じず、「気に入らないなら、ほかの不動産会社へ行ってください」といった態度を取ることでしょう。
一昔前なら、「仲介手数料を値切ってくるようなお客さんは相手にしない」という不動産会社がほとんどでしたが、最近は「ある程度儲けられるのなら、手数料の値引きもやむを得ない」と考える会社が増えてきたようです。
値引きせず、営業担当をうまく乗せる
しかし、不動産会社の営業担当も人の子です。感情に左右されます。「仲介手数料を負けてくれるなら、私が所有する不動産の販売を任せてやる」といった態度では「カチン」とくることもあるでしょう。
ここで、私が先日出くわしたお話を披露させていただきます。
お盆前の暑い日、私が懇意にしている不動産会社の事務所へお伺いしたときのことです。
同社の社長と情報交換を兼ねてお話をしているとき、男性営業担当者が事務所へ帰って来られました。
Tシャツ短パン姿に空の紙袋を持ったその姿は、「クールビズ」と呼ぶにはあまりにも軽装であったため、私はその営業担当者に「どこへ行っておられたのですか?」と尋ねたのです。
すると彼は「実は昨日、新規に物件の販売を受託させていただいたので、その物件の近隣へチラシ配りに行っていました」と、額から玉のような汗をかきながら答えてくれました。
手に持った空の紙袋には1000部ほどのチラシが入っていたらしいのですが、そのチラシはすべてまき終わったとのこと。
日頃の彼はどちらかというとクールな営業スタイルで知られており、こんな炎天下にTシャツ短パン姿でチラシまきをするような方ではありません。
そこで私が「この暑い中チラシまきをするなんて、よほど営業成績が低迷して焦っているのですか?」と混ぜっ返すと、彼は笑いながらこう答えたのです。
「梶本さん、違いますよ。営業成績はいたって好調です。実は昨日受託したこの物件ですが、実はほかの不動産会社と競合していて、その不動産会社から売り主様へは手数料値引きの提案もあったのです。しかし、売り主様は私のことを信頼して下さり、私に販売を任せてくださいました。もちろん、仲介手数料の値引きはありませんよ」
そして、真顔に戻った彼はこう続けます。
「手数料を値引く会社を断って、手数料値引きには応じない当社に販売を任せてくださるなんて、なんだか感動してしまいまして。この売り主様の信頼に応える為にも、1万円でも高く成約したいという気持ちになり、今日は柄にもなくチラシ配りを頑張ってしまいました。いっぱい汗もかきましたし、今夜のビールは美味いと思いますよ」
いかがですか?
不動産の営業といえば「お金のことばかり考えている」ように思われがちですが、意外と(?)、純粋な方も多く、お客様からの信頼に応えたいと考えているものなのです。
今回の例に挙げた彼も、いつもは「肉体を動かすのではなく、頭を使って不動産を売る」タイプであるにも関わらず、売り主様から「仲介手数料を値引いてくれなくとも、信頼した君に任せる」と言われてしまうと、思わずTシャツ短パン姿で駆け出してしまったのです。
逆に考えると、この売り主は「営業担当を使うのが上手い」と言えるのではないでしょうか?
「最終的な手取り」が多いかどうかが重要
ここからは単純に損得勘定のお話をいたします。
売り出し価格5000万円の不動産を売却した場合、仲介手数料(上限)は156万円(税別)となります。もしも、仲介手数料を半額にしてくれる不動産会社に依頼したとすると、78万円得する事になります。
そのあと、この5000万円の売り出し価格に対し100万円の値引き要請があり、営業担当者が粘らずに値引きを安易に受け入れ、結局100万円引きで妥結してしまうと、仲介手数料半額によって得た利益はなくなってしまいます。
具体的な数字を上げますと4900万円で成約した場合、仲介手数料は153万円。その半額なら76万5000円。売り主の手取りは4900万円-76万5000円=4823万円5000円(手数料は税別。ほかの諸費用は考慮しておりません)となります。
しかし、営業担当者が「やる気」になって5000万円満額で成約した場合は次のようになります。
5000万円で成約した場合の仲介手数料は153万円。売り主の手取りは5000万円-153万円=4847万円(手数料は税別。ほかの諸費用は考慮しておりません)です。
仲介手数料(上限)を満額支払った場合でも100万円高く売れれば、23万5000円も手取りが増えることとなります。たった100万円の価格交渉でもこの違いですので、価格交渉が200万円、300万円となれば、仲介手数料(上限)を満額支払った場合の手取りはさらに増えることとなります。
上記計算を見てお分かりいただけたと思いますが、「仲介手数料の値引きには言及せずに営業担当者のやる気を引き出し、結果として手取りを増やす」という方法も一考の余地ありと言えるのではないでしょうか。
あなたの不動産売却に際しては「仲介手数料が安い会社は良い会社」、「仲介手数料が高い会社は悪い会社」と安易に判断されずに、その不動産会社の提案を総合的に判断し、「手取りが多くなる不動産会社」に依頼されるようおすすめいたします。
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【注目の記事はこちら】 【査定】相場を知るのに便利な、一括査定サイト&業者"25社"を比較 【業者選び】売却のプロが教える、「不動産会社の選び方・7カ条」 【査定】不動産一括査定サイトのメリット・デメリットを紹介 【業界動向】大手不動産会社は両手取引が蔓延!? 「両手比率」を試算! 【ノウハウ】知っておきたい「物件情報を拡散させる方法」 |
<不動産売却の基礎知識>
相場を知るために、まずは「一括査定」を活用!
不動産の売却に先駆けて、まずは相場を知っておきたいという人は多いが、それには多数の不動産仲介会社に査定をしてもらうのがいい。
そのために便利なのが「不動産一括査定サイト」だ。一括査定サイトで売却する予定の不動産情報と個人情報を一度入力すれば、複数社から査定してもらうことができる。査定額を比較できるので、不動産の相場観が分かるだけでなく、きちんと売却してくれるパートナーである不動産会社を見つけられる可能性が高まるだろう。

ただし、査定価格が高いからという理由だけでその不動産仲介会社を信用しないほうがいい。契約を取りたいがために、無理な高値を提示する不動産仲介会社が増加している。
「大手に頼んでおけば安心」という人も多いが、不動産業界は大手企業であっても、売り手を無視した手数料稼ぎ(これを囲い込みという)に走りがちな企業がある。
なので、一括査定で複数の不動産仲介会社と接触したら、査定価格ばかりを見るのではなく、「売り手の話を聞いてくれて誠実な対応をしているか」、「価格の根拠をきちんと話せるか」、「売却に向けたシナリオを話せるか」といったポイントをチェックするのがいいだろう。
以下が主な「不動産一括査定サイト」なので上手に活用しよう。
【注目の記事はこちら】 【業者選び】売却のプロが教える、「不動産会社の選び方・7カ条」 【査定】相場を知るのに便利な、一括査定サイト&業者"主要25社"を比較 【査定】不動産一括査定サイトのメリット・デメリットを紹介 【業界動向】大手不動産会社は両手取引が蔓延!? 「両手比率」を試算! 【ノウハウ】知っておきたい「物件情報を拡散させる方法」 |
■相場を知るのに、おすすめの「不動産一括査定サイト」はこちら! |
◆SUUMO(スーモ)売却査定(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地 | |
掲載する不動産会社数 | 約2000店舗 | ![]() |
サービス開始 | 2009年 | |
運営会社 | 株式会社リクルート住まいカンパニー(東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 不動産サイトとして圧倒的な知名度を誇るSUUMO(スーモ)による、無料の一括査定サービス。主要大手不動産会社から、地元に強い不動産会社まで参加しており、査定額を比較できる。 | ||
◆HOME4U(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所 | |
掲載する不動産会社数 | 1500社 | ![]() |
サービス開始 | 2001年 | |
運営会社 | NTTデータ・スマートソーシング(東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、日本初の一括査定サービスであり、運営会社はNTTデータグループで安心感がある点。提携会社数は競合サイトと比較するとトップではないが、厳選されている。 | ||
◆イエウール(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地 | |
掲載する不動産会社数 | 1600社以上 | ![]() |
サービス開始 | 2014年 | |
運営会社 | Speee | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、掲載する会社数が多く、掲載企業の一覧も掲載しており、各社のアピールポイントなども見られる点。弱点は、サービスを開始してまだ日が浅い点。 | ||
◆LIFULL HOME'S(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件 | |
掲載する不動産会社数 | 2399社 | ![]() |
サービス開始 | 2008年 | |
運営会社 | LIFULL(東証一部) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】強みは、匿名査定も可能で安心であるほか、日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営している点。弱点は大手の不動産仲介会社が多くはないこと。 | ||
◆イエイ(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地 | |
掲載する不動産会社数 | 1700社 | ![]() |
サービス開始 | 2007年 | |
運営会社 | セカイエ | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、サービス開始から10年以上という実績があるほか、対象となる不動産の種類も多い。「お断り代行」という他社にないサービスもある。弱点は、経営母体の規模が小さいこと。 | ||
◆マンションナビ(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション | |
掲載する不動産会社数 | 900社超、2500店舗 | ![]() |
サービス開始 | 2011年 | |
運営会社 | マンションリサーチ | |
紹介会社数 | 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社) | |
【ポイント】 強みは、マンションに特化しており、マンション売却査定は6社まで、賃貸に出す場合の査定は3社まで対応している点。弱点は、比較的サービス開始から日が浅く、取り扱い物件がマンションしかない点。 | ||
◆おうちダイレクト「プロフェッショナル売却」(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート、店舗、事務所 | |
掲載する不動産会社数 | 9社 | ![]() |
サービス開始 | 2015年 | |
運営会社 | ヤフー株式会社、SREホールディングス株式会社(ともに東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大9社 | |
【ポイント】ヤフーとソニーグループが共同運営する一括査定サイト。不動産会社に売却を依頼後も、ヤフーとおうちダイレクトのネットワークを使い、購入希望者への周知をサポートしてくれる。 | ||