円安によって不動産もインバウンドのニーズが急増している。海外の富裕層を相手にすれば、相場の3割増しで売れることも珍しくない。海外との不動産取引に詳しい著者が、都心のマンション所有者に向けて高値で売却する方法をお伝えする。第5回は、海外の買主に向けた売却活動について解説。日本の仲介業者が海外取引に消極的な理由についても考察する。【Property Access株式会社代表取締役 風戸裕樹 著:書籍『確実に儲けを生み出す不動産売却の教科書』(新流舎)から転載】<前回の記事はこちら>

海外富裕層に受けるマイソクを作る

仲介業者に売却活動を依頼すると、マイソクと言われる物件の販売資料を作成される。フォーマットに決まりはなく、100社あれば100通りのデザインが出てくるが、これも仲介業者の実力を推し量る指標となる。
1億円を超える高級物件なのに安っぽいデザインのマイソクがつくられている例も珍しくない。特に海外富裕層は、高級感を大事にする。部屋がセンスの良さを感じるデザインに見せられているか、何を訴求したら買主がたくさん来るか、物件の価格に見合った内装のこだわりが感じられるか、自分なりに考えて納得いくマイソクを作ってもらおう。
書籍『確実に儲けを生み出す不動産売却の教科書』の中では、良いマイソク、悪いマイソクのサンプル画像を載せているので、ぜひ参考にしてほしい。
仲介業者がマイソクを完成させたら、ホームページやポータルサイトにマイソクの情報を掲載する。同時にメールや電話でハウスリストに営業をかけて物件情報を周知する。
日本では、買主は不動産会社に依頼する場合もあるが、個人でもポータルサイトを調べたり、ポスティングされたチラシを見て、物件の販売会社に直接問い合わせをするケースがある。
しかし、海外ではエージェントに「こういう条件の物件を探してほしい」と依頼して物件を紹介してもらう形になっている。
このため、海外富裕層への日本の物件紹介は、海外エージェントが直接つながりのある国内エージェントから収集してきたものか、国内のポータルサイトに掲載されている情報に限られる。海外のエージェントはレインズを見ることができないので、一般の人と同じようにSUUMOなどのポータルサイトから探すしかないのだ。
だから、マイソクは多言語である必要がある。日本語だけのマイソクは、海外エージェントが独自に英訳して買主に渡さなければならないなど、時間も手間もかかるので敬遠されがちである。大体、マイソクの作成に3時間程度、掲載に1時間程度の時間がかかる。
当社では英語、中国語、韓国語と顧客に応じてマイソクを使い分けている。いくらAIで翻訳の手間がなくなったとはいえ、高い買い物をするときには母国語で表記されている情報のほうが信用できるはずだ。
なぜ日本の仲介業者は、海外の買主にアプローチしないのか

国内の仲介業者も海外の顧客に対するアレルギーがある。言語の壁を乗り越えて、海外のエージェントから問い合わせが入ったとしよう。
しかし、海外取引の実績がなければ、契約の流れ、送金の流れ、レートの決め方、内見の仕方など細かい業務がわからない。買主がビザを欲しがっていると言われても対応できないだろう。
蛇足だが、海外に買主がいる場合、内見は大抵オンラインでおこなわれる。エージェントが画面通話しながら、室内を映すのだ。直接内見しなくてあとからクレームにならないか不安になるかもしれないが、日本は不動産契約がしっかりとしているので、物件についての細かい説明が重要事項説明書以外にも物件状況報告書として記載されている。
この内容に間違いがあれば仲介業者の責任になるが、そんなことはほとんど起こらない。「中古物件のため、細かい傷は必ずある」という前提でサインをしてもらうので、購入後にトラブルになるのは水漏れが急に起きたといった突発的なケースだけで、「内見とはイメージが違った」というクレームはない。
両手取引を望む日本の仲介業者
仲介業者が基本的にめざしているのは両手取引だ。買主を自分たちの手で見つければ、手数料3%が買主と売主の両方から手に入る。
そう考えると、海外の顧客をもっていない時点で自社のハウスリストにいる日本人が営業対象となる。つまり、海外富裕層に高く売れる可能性があってもアプローチすらしない。
実際、海外富裕層の出す金額は、国内の買主と比較しても圧倒的に高値だ。肌感覚として100件の取引のうち、80パーセントは海外富裕層のほうが高値で物件を買っていく。それのくらい海外富裕層の購買力は強い。
当社(プロパティアクセス)だけでも1年弱で海外から現状5000件ほどの引き合いがあるので、それだけ日本の物件を欲しがっている海外富裕層は多い。
売主の利益最大化を考えれば、まず海外富裕層にアプローチするべきである。しかし、国内の仲介業者からしてみれば、煩わしい海外対応をする手間を考えると、多少は安値でも自社のリストで買い手を見つけたほうがラクだし、両手取引ができるので得なのだ。
マンションの値付けは、相場より3割高く

実際にいくらの値付けをすればいいのか? わたしが提案したいのは、相場の3割増しである。同じマンションの一室や近隣マンションの価格を調べて、30パーセント上乗せしよう。
「同じような部屋が3割も高く売りに出ていて買い手がつくのか?」と疑問に思うかもしれない。しかし、為替レートの違いがあるので海外富裕層狙いなら十分に売れる見込みがある。
もちろん、国内顧客しか取り扱わない仲介業者に「相場の30パーセントアップで」と伝えても渋々ながら売却活動を進めてもらえるだろう。ただ、結局買い手が見つからず、過去の成約事例を引っ張ってきて値下げを提示するだろう。
国内にしか顧客がいない仲介業者は、海外の富裕層を顧客にもつ仲介業者と比べて旗色は悪い。価格を下げていかなければ売れない確率が高いのだ。
契約は、専任媒介か一般媒介
聞いたことのある人も多いと思うが、仲介業者との契約には、「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3つの形態がある。
専属専任媒介の場合
専属専任契約は、1社に専属で売却活動を依頼する契約である。この場合は、売主が買主を見つけてきても必ず手数料を取られる。「知り合いに買ってもらうことにしました」「子どもに譲ることにしました」と伝えても(自己発見取引)、買主と売主両方から手数料3パーセントずつが発生するのが専属専任契約だ。
その代わり、仲介業者は販売報告の義務があり、書面に残すような形で7日以内に1回、売主に販売状況を報告しなければならない。
昔は専属専任だと営業担当者のモチベーションが上がって広く顧客を見つけようとするという利点があったかもしれないが、ネットが発達した現代では専属専任にしたからといって買主へ広く情報が広がるわけではないし、専属専任にする利点はまったくない。
契約は1社or複数、どちらが良い?
売主が選ぶべき契約は、専任媒介か一般媒介のどちらかだ。専任媒介は1社との契約になるが、14日以内に一度の販売報告義務がある。自己発見取引は、手数料を取られない。
一般媒介では、複数社との契約ができる代わりに販売報告義務はない。ただ、一般媒介の場合、3社に依頼したら、それぞれからマイソクの確認や内見の依頼がくる。これは思った以上の手間である。
たとえば、A社から「土曜日に内見ができますか? 10時ごろはどうでしょう?」と連絡が入ったあとすぐにB社から「2件ほど内見の申し込みがありまして、まとめたほうがお手間ではないと思いますので、土曜日の時と時はご都合いかがでしょうか?」と言われる。
そして、C社から「日曜日は空いていますか?」と言われると土日がほとんど潰れてしまう。もし1社だけに依頼すれば、最初から同じ日、同じ時間帯で調整してくれる。
忙しい方にとって媒介契約は、仲介業者を主治医選びだと思って、1社のみと結ぶのが賢明である。それならば最初から専任媒介にするか、一般媒介でも1社に絞って依頼すればいい。専任媒介の場合、報告義務のほかに、7日以内にレインズに載せなければならない。一般媒介はレインズに載せる義務はない。
これは裏を返すと、名前が出たら困る人は、一般媒介しかないということだ。たとえば、自宅を売却していることが世間に知られると株価に影響するような大企業の経営者や役員である。オフマーケットで売却活動をする場合は前述したとおり、仲介業者の人脈がモノを言う。担当者がどれだけのネットワークをもっているか見極めよう。
海外富裕層にアプローチするなら?
ポータルサイトに物件が載って、売却しようとしていることが世間に知られてもかまわなければ、広く告知したほうが効果的なのは言うまでもない。
ただ、海外富裕層にアプローチしようと思ったら、一般媒介で最初はレインズに載せないほうがいい。なぜなら、オフマーケットでは「非公開物件です」という情報の出し方がいちばん効果的だからだ。海外富裕層は「あなたしか知らない預かったばかりの情報」と聞いた途端に目の色が変わる。
海外顧客をもつ仲介業者は国内にいくつかある。財閥系の大手不動産会社、KENコーポレーション、プラザホームズなどに加えて、フリーランスのエージェントもいる。ただ、大手であっても海外チームは限られた人数で、数百人組織のなかで数人というケースも珍しくはないため、どこまで海外対応に力を入れているのか見極めは重要だ。
次回(最終回)は、仲介業者と契約を結んだあと、営業活動をしっかり行っているか、見極めるためのチェックポイントをお伝えする。売却活動を任せきりにしないためにも、売主が営業活動の進捗を把握して改善してもらうことが重要となる。
「不動産売却の教科書」記事一覧
【第1回】>>世界の富裕層が相手なら、都心のマンションは相場より3割高く売れる!
【第2回】>>日本の不動産が外国人富裕層に人気なのはなぜ? 販売価格より高くても購入するケースも!
【第3回】>>高値売却のために、どの不動産仲介会社を選ぶべきか? 業者を見極めるポイント10項目
【第4回】>>マンション売却の訪問査定で、この質問をすれば担当者の実力が分かる!
(風戸裕樹 著・新流舎)
海外との取引に強い不動産会社を経営する著者が、都心マンションを相場より3割増しで売る方法を解説する!各国の富裕層の特徴や売却活動のポイントを詳述。実際の売却事例も紹介している。
また、売却で得た資金をどのように運用すると、大きくお金を増やせるのか。富裕層の資産運用を知る著者ならではの戦略を伝授!
40年に一度の不動産売却チャンスを活かして、富裕層の仲間入りを果たそう。
【関連記事】>>不動産一括査定サイトおすすめは?ランキング、評判、特徴など19社を徹底比較!
【関連記事】>>不動産売却はどこがいい?判断ポイントや注意点、大手仲介会社の口コミ・評判を徹底解説!
※不動産一括査定サイトとは、売却したい不動産の情報と個人情報を入力すれば、無料で複数社に査定依頼ができます。査定額を比較できるので売却相場が分かり、きちんと売却してくれる不動産会社を見つけやすくなる便利なサービスです。
◆SUUMO(スーモ)売却査定 | |
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特徴 | ・圧倒的な知名度を誇るSUUMOによる一括査定サービス ・主要大手不動産会社から地元に強い不動産会社まで2000社以上が登録 |
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対応物件 | マンション、戸建て、土地 |
紹介会社数 | 10社(主要一括査定サイトで最多)※査定可能会社数は物件所在地によって異なります |
運営会社 | 株式会社リクルート住まいカンパニー(東証プライム子会社) |
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◆リビンマッチ | |
特徴 |
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対応物件 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫 |
紹介会社数 | 最大6社(売却6社、賃貸、買取) |
運営会社 | リビン・テクノロジーズ(東証グロース上場企業) |

◆すまいValue | |
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特徴 | ・大手不動産会社6社が運営する一括査定サイト |
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対応物件 | マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート、一棟ビル |
対応エリア | 北海道、宮城、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、愛知、岐阜、三重、大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山、岡山、広島、福岡、佐賀 |
運営会社 | 大手不動産会社6社(東急不動産、住友不動産販売、三井のリハウス、三菱地所の住まいリレー、野村の仲介+、小田急不動産) |
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◆マンションナビ | |
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特徴 |
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対応物件 | マンション |
紹介会社数 | 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社) |
運営会社 | マンションリサーチ |
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◆HOME4U(ホームフォーユー) | |
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特徴 | ・悪質な不動産会社はパトロールにより排除している ・20年以上の運営歴があり信頼性が高い ・1800社の登録会社から最大6社の査定が無料で受け取れる |
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対応物件 | マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所 |
紹介会社数 | 最大6社 |
運営会社 | NTTデータ・スマートソーシング(東証プライム子会社) |
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◆いえカツLIFE | |
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特徴 |
・対応可能な不動産の種類がトップクラス |
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対応物件 | 分譲マンション、一戸建て、土地、一棟アパート・マンション・ビル、投資マンション、区分所有ビル(1室)、店舗、工場、倉庫、農地、再建築不可物件、借地権、底地権 |
紹介会社数 | 最大6社(売買2社、買取2社、リースバック2社) |
運営会社 | サムライ・アドウェイズ(上場子会社) |
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◆おうちクラベル | |
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特徴 |
・AI査定で、査定依頼後すぐに結果が分かる |
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対応物件 | マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート |
紹介会社数 | 最大15社 |
運営会社 | SREホールディングス株式会社(東証プライム上場企業) |
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◆イエウール | |
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特徴 |
・掲載企業一覧を掲載、各社のアピールポイントも閲覧可能 |
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対応物件 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地 |
紹介会社数 | 最大6社 |
運営会社 | Speee |
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◆LIFULL HOME'S(ライフルホームズ) | |
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特徴 |
・日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営 |
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対応物件 | マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件 |
紹介会社数 | 最大6社 |
運営会社 | LIFULL(東証プライム) |
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対応エリア | 全国 | 全国 | 全国 | 全国 | 全国 | 全国 | 全国 | 東京、千葉、神奈川、埼玉 | 全国 | 全国 | 全国 | 全国 | 全国 |
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