マンションの価値は住み続けるほど下がっていくものだが、なかには将来的に価格が大きく下落する可能性が高いマンションもある。売却を迷っているうちに、大損する可能性があるのなら、今すぐ売りに出したほうがいいだろう。そこで、「売れるマンションと売れないマンションの差」について考えよう。
売れるマンション、売れないマンションの差は?
終の住処にする気がないなら、今のうちに売却してしまったほうがいい物件もある。なかでも「耐震性」「立地」「規模」「管理費等」に問題を抱えるマンションは時間の経過とともに、大幅に価格を下げないと売りづらくなっていくのだ。
そんなマンションでも、問題が表面化する前に売り出せば、値下げ幅も最小限に食い止められ、売れないで塩漬けになることも防げるだろう。売り時を誤らないように、以下の4つのポイントをチェックしてみよう。
■「売れるマンションと売れないマンション」を判別できる「4つのポイント」
ポイント①「旧耐震基準のマンションではないか?」
ポイント②「駅まで徒歩10分圏内の立地か?」
ポイント③「郊外の大規模マンションではないか?」
ポイント④「総戸数30戸以下ではないか?」
それでは、4つのポイントを解説していこう。
ポイント①「旧耐震基準のマンションではないか?」
過去の震災で被害を受けたマンションの多くは、旧耐震基準によるもの。現在の新耐震基準が導入されたのは1981年6月1日のことだ。この日以降に役所で「建築確認申請」を受理された建物は新耐震基準のマンションとなる。
旧耐震基準と新耐震基準の違いは、揺れに対する強度。旧耐震基準が「震度5強程度の揺れではほぼ建物が損傷しない」構造なのに対し、新耐震基準は「中程度の地震では軽度なひび割れ程度、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しない」とされている。このように耐震基準は下限を定めているだけなので、旧耐震基準のマンションがすべて危険というわけではないが、買い手にとって不安要素になることは言うまでもない。
注意したいのは、新耐震基準かどうかは建物が完成した「竣工年」では判断できないことだ。1981年6月1日以降に完成したマンションでも、建築確認申請がそれ以前に受理されている場合は旧耐震基準となる。マンションは完成まで1年から2年程度の時間がかかるので該当するケースも少なくない。自分のマンションが新耐震基準か旧耐震基準かわからない場合は、管理会社に確認してみるといい。
旧耐震基準のマンションは住宅ローンの審査にも影響する。買い手がフラット35を利用する場合、耐久性や耐震性の審査を受け、住宅金融支援機構の適合証明書を取得する必要がある。審査に通らないとローンを組めないため、旧耐震基準のマンションでは、大規模修繕などで柱と柱の間にX字型の鉄骨を組むなど、耐震補強工事が完了していることが不可欠となる。
また民間金融機関では、旧耐震基準のマンションに融資はしてくれるものの、融資期間を短くするケースもある。そのため買い手の頭金や毎月返済額の負担が大きくなり、売却価格を下げても購入しづらいことも。今後、こうした傾向がさらに強まっていくことは確実のため、今のうちに売りに出したほうが賢明だろう。
例外的に、前述のように耐震補強工事が済んでいて、「立地が駅前など利便性が高い」「都心のブランドマンション」「周囲に競合物件が少ない」などの場合は旧耐震基準のマンションでも、高値で売れることもある。
ポイント②「駅まで徒歩10分圏内の立地か?」
新築マンションであれば、豪華な設備等に心を奪われ、「駅から少し離れていてもしょうがない」と立地に目をつぶる人も少なくない。しかし、中古マンションの買い手は、大半が立地を重視する。そのため、駅から徒歩10分超のマンションは不利になりがちだ。
2017年に分譲された首都圏のマンションを見ると、徒歩7分以内が60.2%を占めている。徒歩11分以内だと86.4%を占める。(東京カンテイのデータより)。もともとマンションは立地が重視されるものであり、実際、駅から近い物件が大半を占めるのだ。こうした数値を見る限り、古いマンションで徒歩10分を超えるような物件は、競争力があまりないと言える。
駅から離れたマンション同様に、郊外のマンションも売却が難しくなってきている。ディンクス世帯や一人っ子家庭が増えたこともあり、サラリーマンは通勤時間を短縮して、時間を有効に使えるよう「職住近接」のニーズが高まっているのが理由のひとつ。また、高齢者世帯では郊外での暮らしが負担になって、もっと都心や駅近くの利便性の高いマンションに住み替える「都心回帰」の流れも強まっているからだ。
特にバス利用が前提となるようなマンションは人気の低下が顕著だ。
さらに近隣に空き家や更地、建設中のマンションが多いと、将来的に競合物件が増えることになるため、年々売りづらくなっていく。また最寄りの大型スーパーが撤退するなど、利便性が損なわれているのなら早めの売却を考えたほうがいいだろう。
ポイント③「郊外の大規模マンションではないか?」
次に注意したいのが、郊外にある総戸数100戸以上の大規模マンションである。駅からの距離や利便性もそうだが、管理状態の悪化リスクが高いからだ。
管理組合の理事は若年層から高齢層までバランスよく構成されるのが理想だ。けれども、大規模マンションでは、築後20~30年も経つと居住者が高齢化し、管理組合の総意が取りにくくなることが多い。なぜならば、若年層はこれから長く住むため大掛かりな修繕にも賛成票を投じるが、高齢者は受ける恩恵が薄いため、一時金などの出費を伴うと、反対に回りがちだからだ。
結果として、入居者が減って空き部屋が増えると、競合物件の増加と印象の悪化のダブルパンチに見舞われ、価格を下げても買い手がつきにくくなる。ゴミ置き場が荒れていたり、ポストからチラシがあふれていたり、エレベーター内が汚れたりしているようなら、一刻も早く売却を検討したほうがいいだろう。
ポイント④「総戸数30戸以下ではないか?」
大規模マンションとは反対に、総戸数30戸以下の小規模マンションにも注意が必要だ。その理由は、戸数の多い大規模マンションに比べてスケールメリットが出ないため、1戸当たりの管理費や修繕積立金が割高になりがちだからだ。
一般に、新築マンションの販売においては、お得感を演出するために、管理費や修繕積立金を低めに設定していることが多い。新築時の管理費や修繕積立金はディベロッパーが自由に設定できるためだ。
その歪みを補うため、段階的に修繕積立金を値上げしたり、修繕を実施する際に一時金を徴収するなどして帳尻を合わせることになる。よくあるのは、大規模修繕工事の前に一時金(100万円以上のケースも)を徴収するケース。また、築後10~15年後に行われる1回目の大規模修繕後に、修繕積立金が倍くらいに跳ね上がることも多い。
一方で、こうした一時金の徴収や修繕積立金の値上げに全世帯が対応できるとは限らない。総戸数30戸以下のマンションとなると、1戸当たりの負担割合が大きくなるためなおさらだ。中古マンションを求める層には、新築マンションを購入するだけの資金力がない人が多く、毎月の修繕積立金が高ければ、購入しづらくなることは言うまでもない。
また、前記した高齢化の問題も、大規模マンションほどではないにしても同じように起こり得る。値上げしようにも反対の声が上がったり、値上げしても滞納者が出たりすると、管理や修繕が機能不全に陥り、次第に退去者が増えてスラム化していく恐れもあるのだ。
これらの要件に自分のマンションが当てはまる場合は、マンション管理組合の「決算書」や、管理会社が作成する「重要事項に係る調査報告書」という書類を入手しよう。重要事項に係る調査報告書には、修繕積立金の貯蓄額、滞納者の有無および滞納額、修繕計画の概要などが記されている。まずは現状を正しく把握したい。
なかでも、注意が必要なのは滞納金があるケースだ。問題が大きくならないうちに売却に動くのが得策だろう。逆に問題がなければ、買い手に重要事項に係る調査報告書を提示して、心配のないことを証明すれば、購入してもらいやすくなる。
なお、金融機関によっては、20戸未満で自主管理の中古マンションについては、住宅ローンが下りなかったり、金利を高めに設定したりするところもある。徒歩10分圏内でも売却に難航するケースもあるので注意したい。
まとめ〜市場価格を定期的にチェックしよう
以上、売却を急いだほうがいいマンションの特徴を4つ挙げた。いずれにしても、今のマンションを終の住処にすると決めていないなら、市場価格を定期的にチェックしておくことをおすすめする。
さらに、近隣でどれくらい売出物件があるか、売出価格はどれくらいか、新築マンションの建設が増えていないかなど、日頃からウォッチしておくことで、実際に売りに出す際も、価格設定等を的確に行えるはずだ。気がついたときには、市場が飽和状態で売れなかった、などということにならないようにしよう。
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