売れる戸建て、売れない戸建ての差は?
旧耐震、違反建築、既存不適格、徒歩15分超の戸建ては、価格下落しやすいので早期売却の検討も!

2018年12月19日公開(2021年5月11日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

「戸建てを売りたい」「将来、売るかもしれない」と考えているのなら、「売れる戸建て」と「売れない戸建て」の差を知っておいたほうがいい。特に、建築基準法に違反していたり、古い耐震基準で建てられていたりすると、将来どんどん売りにくくなっていくので、できるだけ早く売却してしまったほうがいいのだ。そこで「売れる戸建て」を判別できる5つのポイントを紹介しよう。

売れる戸建て、売れない戸建ての差は?

 終の住処にする気がないなら、今のうちに売却してしまったほうがいい物件もある。なかでも「耐震性」「立地」「規模」「管理費」などに問題を抱えるマンションは、時間の経過とともに、大幅に価格を下げないと売りづらくなっていくのだ。

 もし、近いうちに現在住んでいる戸建てを売却したい、相続で手に入れた実家が必要ないのでいずれ売りたい、などと考えているのであれば、その戸建てが「売りやすい物件」なのか、「売りにくい物件」なのかを調べておいたほうがいい。戸建ての中には、「価値がある戸建て=売りやすい戸建て」と、「価値がない戸建て=売りにくい戸建て」がある。特に売りにくい戸建の場合は、早めに売却などの処分を考えるべきだろう。

 そこで今回は、「売れる戸建て」と「売れない戸建て」の差を説明する。売れる戸建てと、売れない戸建てを判別するには、以下の5つのポイントをチェックすべきだ。

■「売れる戸建て」を判別できる「5つのポイント」
ポイント①「旧耐震基準の戸建てではないか?」
ポイント②「違反建築ではないか?」
ポイント③「既存不適格ではないか?」
ポイント④「駅まで徒歩15分圏内の立地か?」
ポイント⑤「災害リスクのある地域ではないか?」

 それでは、5つのポイントを解説していこう。

ポイント①「旧耐震基準の戸建てではないか?」

 耐震基準とは、一定の強さの地震が起きても住宅が倒壊または損壊しないように、建築基準法が定めている構造の基準のこと。1981年5月31日までの基準を「旧耐震基準」といい、それ以降の基準を「新耐震基準」と呼んでいる。どちらの基準が適用されているかは、建物の完成年月ではなく、着工前に役所に提出する建築確認申請が受理された日で判断する。

 旧耐震基準は「震度5強程度の地震で倒壊せず、破損しても修繕可能な構造」であるのに対し、新耐震基準は「震度6強~7程度の地震でも、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じない構造」とされている。旧耐震基準の建物すべてが危険とは限らないが、震度6以上の大きな地震はそもそも想定されていないということだ。

 そのため、住宅ローンを借りる際の担保価値も、旧耐震基準の戸建ては低く見積もられる。築年数が経っているため、返済期間を短く設定されることも。結果的に、融資額が制限されたり、毎月返済額が大きくなったりするなど、新耐震基準の戸建てに比べると、条件は厳しくなる。

 特にフラット35では、中古住宅の場合は旧耐震、新耐震を問わず、住宅支援機構の定める基準を満たしていることを証明する適合証明書(物件検査)を取得する必要がある。同検査では耐震面の基準もあるため、後から耐震補強工事を行うなどしてない場合、旧耐震基準の戸建ては不合格になるケースが多くなる。

 将来的には、民間の金融機関でも、審査の厳格化が進む可能性は高い。また、旧耐震基準の戸建ては、耐震補強工事を行っていないと、住宅ローン減税を受けられないというハンディキャップがある。さらに、今後、空き家が増えて供給過剰になりそうなことを考えても、売りに出すなら早く動いたほうがいいだろう。

ポイント②「違反建築ではないか?」

 建築基準法や都市計画法などの法令・条例に違反して建てられた建物を「違反建築物」と言う。特に問題になりやすいのが、建ぺい率や容積率が定められた上限をオーバーしているケースだ。

 建ぺい率は「建物面積÷敷地面積×100(%)」、容積率は「延べ床面積÷敷地面積×100(%)」で算出する(延べ床面積とは、玄関やベランダ、ロフトを除く各階の「床面積」を合計した面積)。この建ぺい率と容積率は、その土地の「用途地域」によって上限が決まっていて、規定を超えると違反建築物となる。

 違反建築には、斜線制限(道路境界線や隣地境界線からの距離に応じた建物の高さ制限)を守っていないなど色々あるが、建ぺい率や容積率が問題になりやすいワケは、通常、住宅ローンの審査ではこの2点をチェックするためだ。

 10~15%程度のオーバーであれば、審査を通す金融機関もあるが、年々、住宅ローンを組むのが難しくなってきている。審査に通ったとしても、金利が高めに設定されるのが一般的だ。そのため、違反建築している場合、速やかに売却を検討したほうがいいだろう。

 こうした違反建築の戸建ては、数多く存在している。「家を建てる前には、役所に建築確認を受けているはずなのになぜ?」と思う人もいるかもしれないが、それには理由があるのだ。

 原則として、建物の完成後、自治体に申請して完了検査を受けることになっている。そして検査により、前記「建築確認」通りに建てられていることが証明されると、検査済証が交付される。

 現在は新築住宅で住宅ローンを借りる場合、この検査済証がないと審査に通らないことが多い。そのため、9割以上の物件で検査済証を取得するが、かつては建築済証がなくても住宅ローンを借りられたため、取得した人は1998年時点だと4割程度といわれている。

 そこで行われていたのが、建築確認は受けるものの、建ぺい率や容積率の基準を超えた建物を建てて、最後の完了検査は受けないという行為だ。たとえば、床面積に算入されないロフトとして申請していたのに、実際には中2階として建築するようなことが珍しくなかった。

 また、建築後、思いがけず、違反建築物になってしまうケースもある。建築後に敷地の一部を売ってしまったり、増築する際も建築確認申請が必要なことを知らず、2階建てでの建物に3階を重ねたりしたような場合だ。工務店は申請の必要性を知っているが、建築確認が通らなければ仕事を失うため、わざと話さないところもある。

 このように違反建築となっている戸建ては思っている以上に多い。一度、違反していないか確認してみることをおすすめする。なお、検査済証は新築時に取得していないと基本的に再発行はできないが、紛失した場合は役所で「台帳記載事項証明書」を取得すれば検査済証の代わりにすることができる。

 以下は住宅ローン「フラット35」の技術基準(戸建て)だ。これをクリアしていないと借りられないのだ。確認しておこう。

接道 原則として一般の道に2m以上接すること
住宅の規模 70㎡以上
(共同建ての住宅は30㎡以上)
住宅の規格 原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)
ならびに炊事室、便所及び浴室の設置
併用住宅の床面積 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上
戸建型式等 木造の住宅は一戸建て、または連続建てに限る
住宅の構造 耐火構造、準耐火構造、または耐久性基準に適合
住宅の耐震性 建築確認日が昭和56年6月1日以後であること
(建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合は、
耐震評価基準などに適合)
劣化状況 土台、床組等に腐朽や蟻害がないこと等
参考:「フラット35」の技術基準

ポイント③「既存不適格ではないか?」

 違反建築物と似ているものに、「既存不適格建築物」がある。既存不適格とは、建てた時点では法令の規定を満たしていたが、建築後の法律や都市計画などの改正により、現行の法律に適合しなくなってしまった建物のことだ。

 旧耐震基準が新耐震基準に変わったのもその一つ。このほか用途地域の変更により、建ぺい率や容積率が変わってしまったり、準防火地域に指定されてしまったため、屋根の素材が違反しているケースもある。

 既存不適格建築物も違反建築物と同じく、買い手が住宅ローンを借りるときに不利に働くため、住宅ローンの審査基準が厳しくなる前に売却を検討したほうがいいだろう。

【関連記事はこちら】
>>「権利未登記」「違法建築」「境界未確定」など"不動産の売却"でよくあるトラブルの解決法とは?

ポイント④「駅まで徒歩15分圏内の立地か?」

 新築であれば、子育てを重視して、駅から多少遠くても広くて静かな住環境を求める人も少なくない。けれども、中古戸建てでは、駅から徒歩15分を超えると売却にかなり不利になる。クルマ社会が常識になっている地方を除けば、実際に取引されるケースは極端に減っている。

 郊外にある戸建てを見ると、2階の雨戸が閉まりっぱなしになっている家も少なくないことに気づくだろう。住人が高齢化すると、階段の昇り降りや、独立した子供部屋の掃除、庭の手入れなどが負担になって、都心のマンションなどに利便性を求めて住み替えをするケースが増えているためだ。

 国土交通省の調査を見ても、駅から遠くなるほど、空き家が目立つ傾向は明らかだ。ただでさえ駅から遠いほど売りにくくなるが、空き家が多いと、さらに売りにくくなる。

駅から遠いほど空き家(戸建て)は目立つ
駅から500m以内 33.2万戸
駅から1000m以内 41.9万戸
駅から2000m以内 52.7万戸
駅から2000m以遠 119.5万戸
出典 : 住宅・土地統計調査(総務省)、空家実態調査(国土交通省)

 また、近年はディンクス世帯や一人っ子家庭が増えたこともあり、時間を有効に使えるよう「職住近接」を望む傾向も強まっている。駅から距離のある住まいは中古戸建てに限らず、年々、需要が減っていくことは間違いないだろう。

ポイント⑤「災害リスクのある地域ではないか?」

 地震や台風、洪水など、災害リスクのある地域では、不動産を買うのを避けようという意識が働き、物件を売りづらい傾向が強まっている。特に東日本大震災以降、大きな災害が起きるたびに住居への被害が問題となっていることもあり、「災害ハザードマップ」や「水害ハザードマップ」などで立地状況を確認する買い手が増える傾向にある。

 実際に災害に遭う確率は低いとしても、「リスクのある地域」に含まれていれば、売却に不利に働くことは否めない。当然、今後も災害リスクを重視する傾向は強まっていくと考えられる。

 ただし現状、幸か不幸か、まだ十分にハザードマップによるチェックが浸透しているわけではない。自分でも住んでいる地域の災害リスクについて早めに調べてみて、リスクが高いようなら、早めに売却に動き始めたほうがいいだろう。

 各都道府県や市町村がハザードマップを作成しているが、国土交通省のハザードマップは全国を網羅しているので便利だ。洪水、土砂災害、津波、道路防災情報などについて見られるので、チェックしておこう。

まとめ〜戸建ての価格を、定期的にチェックしよう

 以上、「売れる戸建て」を判別できる5つのポイントを挙げた。

 いずれにしても、将来、住み替える可能性があったり、相続などで不要な不動産を所有しているのであれば、早期の売却に向けて、価格査定をしてみたり、中古戸建ての販売状況や地価を定期的にウオッチしておきたい。

 今後、ますます空き家が増えていくことは確実なので、ぜひ手遅れにならないようにしよう。

【関連記事はこちら】
>>「空き家」になった実家を、上手に売却する方法は? 一戸建ては"空き家の譲渡所得3000万円特別控除"や自治体が補助してくれる"解体助成金"を活用しよう!

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