「相続」や「離婚」にともなう不動産の売却では、仲介による売却ではなく、不動産会社による”買い取り”を希望される方もいらっしゃいます。今回は、買取価格の相場や注意点、おすすめの相談先について解説したいと思います。
「相続」や「離婚」で家を売りたい人が
不動産会社による”買い取り”を選ぶ理由

最近は「不動産一括査定サイト」を用いて、不動産の価格査定を申し込まれる方が増えましたが、その売却理由の多くが「相続」か「離婚」です。しっかりと統計をとったわけではありませんが、感覚的には「相続」もしくは「離婚」を売却理由とされる方は全体の7割くらいでしょうか。以前は多かった「子供が大きくなったので、今の家を売却して買い替える」という方は、とても少なくなりました。
【※関連記事はこちら】>>不動産一括査定サイト&仲介業者25社で比較! メリット・デメリット、掲載不動産会社、不動産の種類で評価しよう
このような「相続」や「離婚」が原因で不動産の売却を検討される方の中には、仲介による売却ではなく、不動産会社による即金での”買い取り”を希望される方が一定数いらっしゃいます。
「相続」の場合、田舎のご実家を相続されたものの、ご自身は都心部にお住まいで腰を据えてじっくり売却を行うことができない方が、不動産会社による買い取りを希望されているようです。
また、「離婚」にともない、住まいの売却を考えておられる方は、売却手続きの簡略化を希望される事が多く、この場合も不動産会社による買い取りを検討されます。
しかし、若くして離婚される場合、いまだ住宅ローンの残額が多く、不動産会社の提示する買取価格では住宅ローンの残りを返し切れないため、「不動産会社による即金での買い取りで、売却の手続きを簡略化」とはいかないケースも見受けられます。
不動産会社による買取価格は、
市場価格の何割減?
今、何気なく「不動産会社の提示する買取価格では、住宅ローンの残りを返し切れない」と申しましたが、不動産会社による買い取りの場合は、仲介で一般の市場に出す場合よりも、当然ながら売却価格は下がります。
【関連記事はこちら】>>不動産を「買取」で売るメリット・デメリットとは? 仲介との違いから、買取業者の選び方、注意点まで、マンション・戸建ての買取で損しない方法を徹底解説
「では、不動産会社による買取価格は、市場価格の何割減なのか?」と、ときどき聞かれますが、これも各地域、各不動産会社によって考え方がまちまちで、一概に申し上げる事は難しいところです。
例えば、都心部の分譲マンションなどは人気があり、早々に売却できる可能性が高いため、買い取る不動産会社としては「売れ残るリスク」が低くなります。
また、買い取った分譲マンションを不動産会社が再度販売する際も、売り主として負うべき「瑕疵担保責任」の範囲が一戸建てに比べて狭くなります。(※分譲マンションでは瑕疵の発生場所が共用部分である場合、売り主は瑕疵担保責任を負いません。その点、一戸建ては瑕疵担保責任の範囲が広いと言えます。)
売れ残るリスクが低く、瑕疵担保責任が発生するリスクも低いとなると、ある程度「薄利多売」を狙うことも出来ますので、高い価格で買い取って利益が少なくても「件数で勝負しよう」となります。
また、人気があることは売り主もご存じであることから、安い価格での買い取りが難しいことも事実です。
「都心部の分譲マンション」と「郊外の一戸建て」では
買い取り業者が背負うリスクに大きな差
その点、人口減が進んでいる郊外の一戸建てでは、まったく事情が変わってきます。
以前は「タダの不動産は無く、どんな田舎の不動産でも値段が付くもの」などと言われていた時期がありますが、少子高齢化の影響からか、今は「タダでも要らない」と言われてしまう不動産が増えてきました。
人口減が進んでいるエリアの住宅地では、価格が付かないとまでは言えないものの、「いったいいくらで売れるのか?」「いつ頃までに売れるのか?」が想定出来ない一戸建て物件が、数多く売りに出されています。
このような一戸建てを不動産会社が買い取る際には、不動産会社サイドも相当なリスクを覚悟して買い取る必要があります。場合によっては「買い取ったものの、一年以上売れない」といったリスクも考慮する必要があるのです。
そのような市場で不動産の買い取り事業を進めようとすると、「10件買い取ったら、2~3件はずっと売れないかも知れない」という想定で買取価格を決める必要があり、買取価格が極端に低くなる場合があります。
実際に私が懇意にしている某不動産会社の商圏では、「一戸建ての買取価格が30~50万円」なんて事例も出てきています。
このケースでは、不動産会社の「再販売価格」は400万~500万円程度でしたので、もともとの売り主からすれば「暴利だ!騙された!」と思われるかも知れませんが、「売れないリスク」も高いため、一概に不動産会社が暴利を貪っているとは言いにくいのが現状です。
ご覧頂きましたように都心部と郊外、一戸建てと分譲マンションでは不動産会社の買い取りの方針もまったく異なります。
大手不動産仲介会社に相談する際は要注意!
”買い取り”で、おすすめの相談先は?
では、買い取りの相談を誰に行えばよいのでしょうか。
一般的には全国展開している大手不動産仲介会社に依頼し、その大手不動産仲介会社が懇意にしている買い取り業者数社に声を掛けてもらった上で、最も買取価格の高い会社に買い取って貰う流れになりますが、ここで要注意!
大手不動産仲介会社は「買い取り後、好条件で再販売を任せてくれる買い取り業者」を勧めてくる場合があります。つまり、一般の売り主の利益よりも、営業担当者の営業成績を優先するケースが散見されるのです。
そのような不利益を被らないためにも、地域の不動産会社のホームページを見て、買い取りに力を入れていそうな複数社に依頼し、買取価格を出してもらう方法をおすすめします。
この方法なら、売り主は仲介会社に手数料を払う必要もなく、また、買い取り業者側も仲介会社に手数料を払わずに直接、不動産所有者から買い取れるため、経費を抑えることができます。
経費を抑えることができれば、買取価格自体も上がる可能性があり、売り主にとっても嬉しい限りですよね。
少しでも高い価格で、あなたの大切な不動産を買い取ってくれる会社が見つかることを願っています。
【関連記事はこちら】>>不動産の「買取」に対応した"一括査定サイト"の中で
全国~東京などで展開する主要4サイトを徹底比較!
【注目の記事はこちら】 【査定】相場を知るのに便利な、一括査定サイト&業者"25社"を比較 【業者選び】売却のプロが教える、「不動産会社の選び方・7カ条」 【査定】不動産一括査定サイトのメリット・デメリットを紹介 【業界動向】大手不動産会社は両手取引が蔓延!? 「両手比率」を試算! 【ノウハウ】知っておきたい「物件情報を拡散させる方法」 |
<不動産売却の基礎知識>
相場を知るために、まずは「一括査定」を活用!
不動産の売却に先駆けて、まずは相場を知っておきたいという人は多いが、それには多数の不動産仲介会社に査定をしてもらうのがいい。
そのために便利なのが「不動産一括査定サイト」だ。一括査定サイトで売却する予定の不動産情報と個人情報を一度入力すれば、複数社から査定してもらうことができる。査定額を比較できるので、不動産の相場観が分かるだけでなく、きちんと売却してくれるパートナーである不動産会社を見つけられる可能性が高まるだろう。

ただし、査定価格が高いからという理由だけでその不動産仲介会社を信用しないほうがいい。契約を取りたいがために、無理な高値を提示する不動産仲介会社が増加している。
「大手に頼んでおけば安心」という人も多いが、不動産業界は大手企業であっても、売り手を無視した手数料稼ぎ(これを囲い込みという)に走りがちな企業がある。
なので、一括査定で複数の不動産仲介会社と接触したら、査定価格ばかりを見るのではなく、「売り手の話を聞いてくれて誠実な対応をしているか」、「価格の根拠をきちんと話せるか」、「売却に向けたシナリオを話せるか」といったポイントをチェックするのがいいだろう。
以下が主な「不動産一括査定サイト」なので上手に活用しよう。
【注目の記事はこちら】 【業者選び】売却のプロが教える、「不動産会社の選び方・7カ条」 【査定】相場を知るのに便利な、一括査定サイト&業者"主要25社"を比較 【査定】不動産一括査定サイトのメリット・デメリットを紹介 【業界動向】大手不動産会社は両手取引が蔓延!? 「両手比率」を試算! 【ノウハウ】知っておきたい「物件情報を拡散させる方法」 |
■相場を知るのに、おすすめの「不動産一括査定サイト」はこちら! |
◆SUUMO(スーモ)売却査定(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地 | |
掲載する不動産会社数 | 約2000店舗 | ![]() |
サービス開始 | 2009年 | |
運営会社 | 株式会社リクルート住まいカンパニー(東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 不動産サイトとして圧倒的な知名度を誇るSUUMO(スーモ)による、無料の一括査定サービス。主要大手不動産会社から、地元に強い不動産会社まで参加しており、査定額を比較できる。 | ||
◆HOME4U(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所 | |
掲載する不動産会社数 | 1500社 | ![]() |
サービス開始 | 2001年 | |
運営会社 | NTTデータ・スマートソーシング(東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、日本初の一括査定サービスであり、運営会社はNTTデータグループで安心感がある点。提携会社数は競合サイトと比較するとトップではないが、厳選されている。 | ||
◆イエウール(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地 | |
掲載する不動産会社数 | 1600社以上 | ![]() |
サービス開始 | 2014年 | |
運営会社 | Speee | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、掲載する会社数が多く、掲載企業の一覧も掲載しており、各社のアピールポイントなども見られる点。弱点は、サービスを開始してまだ日が浅い点。 | ||
◆LIFULL HOME'S(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件 | |
掲載する不動産会社数 | 2399社 | ![]() |
サービス開始 | 2008年 | |
運営会社 | LIFULL(東証一部) | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】強みは、匿名査定も可能で安心であるほか、日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営している点。弱点は大手の不動産仲介会社が多くはないこと。 | ||
◆イエイ(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地 | |
掲載する不動産会社数 | 1700社 | ![]() |
サービス開始 | 2007年 | |
運営会社 | セカイエ | |
紹介会社数 | 最大6社 | |
【ポイント】 強みは、サービス開始から10年以上という実績があるほか、対象となる不動産の種類も多い。「お断り代行」という他社にないサービスもある。弱点は、経営母体の規模が小さいこと。 | ||
◆マンションナビ(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション | |
掲載する不動産会社数 | 900社超、2500店舗 | ![]() |
サービス開始 | 2011年 | |
運営会社 | マンションリサーチ | |
紹介会社数 | 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社) | |
【ポイント】 強みは、マンションに特化しており、マンション売却査定は6社まで、賃貸に出す場合の査定は3社まで対応している点。弱点は、比較的サービス開始から日が浅く、取り扱い物件がマンションしかない点。 | ||
◆おうちダイレクト「プロフェッショナル売却」(不動産一括査定サイト) | ||
対応物件の種類 | マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート、店舗、事務所 | |
掲載する不動産会社数 | 9社 | ![]() |
サービス開始 | 2015年 | |
運営会社 | ヤフー株式会社、SREホールディングス株式会社(ともに東証一部子会社) | |
紹介会社数 | 最大9社 | |
【ポイント】ヤフーとソニーグループが共同運営する一括査定サイト。不動産会社に売却を依頼後も、ヤフーとおうちダイレクトのネットワークを使い、購入希望者への周知をサポートしてくれる。 | ||