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リノベとリフォームはどう違う? 大規模なインフラ更新ならリノベーション!連載『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』

【第1回】2023年8月31日公開(2023年9月19日更新)
ちきりん

「リノベーション」と「リフォーム」……どちらも同じ自宅の修繕・改修を指す言葉ですが、実は公式な定義はありません。一般的に、壁や天井をすべて取り払い、躯体だけを残して工事をするような大規模修繕の場合は、リノベーションと呼べるでしょう。ただし、工事業者はかっこよく大きめの言葉を使いたがるので、リノベーション会社と謳っている会社も多いのが事実です。【ちきりん著:書籍『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』(ダイヤモンド社)から転載】

徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと
自身のマンションリノベ経験をつづった書籍『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』著:ちきりん(ダイヤモンド社)

リノベのきっかけと、実際にやってみて気づいたこと

リノベのきっかけとは?
リノベのきっかけは人それぞれ。ちきりんさんの場合は…?(出典:PIXTA)

 築20年余り、60平米ほどの自宅マンションをリノベーションしました。きっかけは海外旅行の前々日に洗濯機が壊れたこと。購入から13年目だったので寿命での故障ですが、洗ってスーツケースにつめようとしていた大量の衣類を前に呆然! 急いでコインランドリーに走りました。

 なんとか旅行には間にあったもののパッキングで忙しいのに余計な時間がかかり、かつ、帰国後の洗濯にも一苦労。生活家電が突然壊れることの不便さを思いしったのです。

 考えてみればその時点で冷蔵庫は18年目、新築でマンションを購入して以来、一度も交換していない給湯器やクーラー、キッチン設備やトイレ、ユニットバスも20年超えと、どれもこれも「いつ壊れてもおかしくない」状態でした。

 その後は「リフォーム」「リノベーション」というキーワードでネット上の情報を検索しまくり、同時に大量のリノベ本を読みました。それらは間取りやインテリアのヒントを得るためにはとても役立ったし、「私もこんな部屋に住みたい!」という夢を膨らませてくれました。

 でもその一方、知りたいのに見つからない情報もたくさんありました。「こんな重要なことを理解しないままリノベを始めるのは無茶だよね!?」と思えるようなコトもあったのです。

 私は「ちきりん」というペンネームで文筆活動をしていたので、こうして得られた多くの学びを「これからリノベする人」にも共有したいと考え、本を書くことにしました。そうしてできたのが徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』(ダイヤモンド社)です。

 この書籍ではリノベ会社選び、契約から設計、施工、引渡までの各プロセスについて詳述しており、「リノベしたい。でもどこから始めればよいのかわからない」という1年前の私のような方や、新築か中古+リノベかで迷っている方にはとても役立つ実用本になったと思います(私がリノベしたのはマンションですが、戸建てリノベを検討中の方にとっても、参考になることはたくさんあるはずです)。

そもそも「リフォーム」と「リノベ」はどう違う?

 リノベを検討している人の中には「リフォームとリノベって、そもそも何が違うの?」と思う人もいるでしょう。実は、リノベーションにもリフォームにも公式の定義はありません。法律で決まっているわけでも設計や工事の専門用語でもないのです。

 リノベーションはリフォームより大規模な工事を意味することが多いのですが、どの程度以上であればリノベーションと呼ぶのかも決まっていません。

 本コラムでは主にリノベーション、もしくはその略語としてリノベという言葉を使いますが、そもそも住宅の改修工事にはどのようなレベル(規模)のものがあるのでしょう。まずはそうした用語の整理をしておきましょう。

「DIY」「交換」、それとも「リフォーム」?

 棚をつけたり壁紙を貼りかえたりするだけなら自分でDIYする人もおり、必ずしも業者に依頼する必要はありません。でもユニットバスやキッチン、トイレ(これらを住設備、もしくは住宅設備と呼びます)を新しくしたり床を張りかえたりする場合は、大半の人が専門業者に依頼するでしょう。

 それでもこのレベルでは「リフォームをした」ではなく「お風呂を新しいものに交換した」と表現する人もいます。

 一方、壁を壊したり新たに作ったりすれば、ほとんどの人が「リフォームをした」と言い始めるはずです。そのリフォームには、和室をフローリングにしてリビングと一体化する、1つの個室を2つの子供部屋に分ける、といった部分リフォームと、住居全体の工事をするフルリフォームがあります。

 このレベルになると「設計」というプロセスが必要になるので、施主(せしゅ)は設備や資材を選ぶ前に「このスペースをどう変えたいのか」をプランナーや設計士に伝えて図面を描いてもらい、具体的な工事内容について合意してから工事を依頼します。

リフォームの規模は「インフラの更新」が大きな境界線

 住居全体をフルリフォームする場合も2つのレベルがあります。それは、インフラを更新(新規交換)するか否かという違いです。

壁や天井をはがすと現れるダクトや配管、給水管など
(写真1)壁や天井をはがすと現れるダクトや配管、給水管など

 社会のインフラといえば電気や水道などのライフライン、もしくは、港湾や道路、鉄道を意味しますが、マンションにおけるインフラとは換気ダクトや給排水管、ガス管、電気配線などを意味します(写真1)。

 これらは通常、天井裏、床下、もしくは壁の裏を通っており、日常生活で目にすることはありません。しかし何十年も使用すればそれらも確実に老朽化するし、時には漏水や漏電といった事故を引き起こします。

 分譲マンションは大きく分けると、住民全員の共有財産である共用部分と、区分所有者が個人で所有する専有部分に分かれます。

 インフラと呼ばれる配管や配線も同じで、マンションの外から各戸のメーター(設計図でMB=メーターボックスと記されている場所にあります)までのガス管や水道管などは共有財産ですが、そこからトイレやお風呂、キッチンへとつながる配管や配線は区分所有者の個別財産です。

 区分所有者はそれらを丸ごと取りかえて新しくする「権利」をもつと同時に、それらの不具合から問題が生じないようにする「義務」も負っています。なので、もし床下の給排水管が老朽化し漏水して階下の家に損害を与えたら、その部屋の住民から損害賠償を請求されることもありえます。

 このためマンション保険(火災保険にマンション特有の特約を付加できる損害保険)には、自室からの漏電や漏水で他者に損害を与えた場合、その賠償費用をカバーするための特約が用意されています。

 とはいえ、そういう事態をさけるため、区分所有者はインフラ部分もきちんとメンテしておく必要があるのですが、そもそも自分にも見えていない部品をタイムリーにメンテするなんて不可能ですよね。

 しかもこれらインフラに不具合が出てくる時期は、築後20年なのか30年なのか、一概には言えません。マンションが建てられた時期により使われている部品の素材や性能も異なれば、使い方やメンテナンス状況によっても傷み方は変わります。つまり自室マンションのインフラがどのような状態なのかは、「床や天井、壁をはがしてみないとわからない」のです。

 なので(今回の私のように)築20年超のマンションを居住者が自分でリフォームをするなら、その機会に(まだそこまで傷んでいなかったとしても)インフラもすべて交換してしまうのが極めて合理的だし、実際、大半の人がそうします。

 でも、「もう自分はこのマンションには住まないので、リフォームして貸し出そう」と考えていたり、不動産会社が私からマンションを買い取り、ほかの客に再販売するためにリフォームするのであれば、必ずしも同じ結論になるとはかぎりません。

 「築年数から考えてまだ大丈夫そう」であれば、「わざわざコストをかけてインフラまで更新するより、一目で新品とわかるキッチンやお風呂、壁紙にお金をかけたほうが貸しやすいし売りやすい」と考える可能性もあるでしょう。

 だから、リノベずみ物件として売られているマンションの中には、外から見える部分だけを新しくした物件と、インフラまで交換した物件が混在しているのです。

スケルトンにしたら「リノベーション」!

 電気配線や給排水管などインフラを全面的に交換するには、床や天井、壁をすべて撤去しなければなりません。写真2のように、躯体(くたい)コンクリートだけを残した状態=躯体あらわし、もしくはスケルトン(骨格・骨組み)と呼ばれる状態にする必要があります。

これがスケルトン状態。住みなれた我が家が丸裸に!
(写真2)これがスケルトン状態。住みなれた我が家が丸裸に!

 こうしてスケルトンにしてインフラも交換すれば、まちがいなく「リフォームではなくリノベーション」と呼べるようになります。そして(後述するような制限はあるものの)間取りを大きく変えたり、水回りを移動することも可能になります。

 反対に、「間取りを大きく変えたいなら、スケルトンにすることが必要」ともいえます。キッチンやトイレなどの住宅設備や壁紙、床材はスケルトンにしなくても取りかえられ、それらをすべて新品にすれば「見た目は新築」になります。でも生活動線は間取りを変えないと変更できません。

 家族の人数や形、働き方が変わり、暮らし方が変わった、だから間取りも大きく変えたいと思うなら、スケルトンにして間取りまで変えるリノベーションでないと目的が達成できないのです。

住宅性能の大幅な向上も

 スケルトンリノベでは「住宅性能の向上」を目的とする工事が付加される場合もあります。

 外部に面した窓に内窓をつけて二重窓にしたり、高機能断熱材を追加する省エネ工事、段差を解消するバリアフリー工事、さらに今後はIoT(Internet of Things)によるスマートハウスを実現するための工事も増えるでしょう。戸建てなら太陽光パネルをつけて自然エネルギーで暮らせる家にする場合もあるし、耐震化、耐火性能の向上などもおこなわれます。

 私も今回、真冬の冷気や西日による紫外線被害(家具がすぐに色褪せてしまう)、それに交通量の増加による騒音を軽減するため、すべての窓に内窓をつけ、二重窓にしましたが、その効果は絶大で驚きました。

 このように住まいの改修にはさまざまなレベルが存在するのですが(図表1)、本コラムではスケルトンにしてゼロから作り直すレベルの工事をリノベーション(略してリノベ)と呼び、主にこのレベルの工事について説明していきます。

図表1:マンションにおけるリノベ・リフォームの規模レベル

ちきりん リノベ リフォーム違い
(図表1)今の家で何をしたいのか?を考えましょう

 ちなみにリフォーム会社はこれらの言葉を一段階ずつインフレさせて使っているように感じます。これは「老朽化した設備を交換しましょう!」より「水回りをリフォームしましょう!」のほうが消費意欲を刺激できるし、「リフォーム代金」より「リノベーション代金」のほうが高額のプロジェクトを意識させられるからでしょう。

 もしくは、「うちは見かけだけでなく、見えない部分のインフラもきちんと交換しています!」とアピールするため「リフォーム会社ではなくリノベ会社です」と言うのかもしれません。

まとめ「リノベーションとリフォームの違いとは?」

・住まいの修繕工事は「DIYでも可能な内装や収納の工事」「住宅設備の交換」「部分リフォーム」「フルリフォーム」「リノベーション」などにわかれます。

・リフォームやリノベという言葉に明確な定義はないので、言葉より工事の中身が大切です。リノベ会社や工事業者は常に「かっこよく」「大きめの言葉」を使いたがります。

・マンションの場合、スケルトンにしてインフラもすべて交換すると「新たに生まれかわる=リノベーション」といえるでしょう。

徹底的に考えてリノベをしたら、
みんなに伝えたくなった50のこと

(ちきりん著・ダイヤモンド社)

 
徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと

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