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リノベの「現地調査」では何をするの? 最終的な業者選びのポイントも解説連載『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』

【第6回】2023年8月18日公開(2023年9月20日更新)
ちきりん

リノベの見積もりを出してもらう前には「現地調査」というものがありますが、具体的にどんなステップで進むものなのでしょうか? 今回は「現地調査のリアル」と、その後の業者選びのポイントについて紹介します。【ちきりん著:『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』(ダイヤモンド社)から転載】

徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと
自身のマンションリノベ経験をつづった書籍『徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと』著:ちきりん(ダイヤモンド社)

リノベ見積もり前の「現地調査」が始まった!

 リノベ工事の見積もり前には、必ず「現地調査」というものがあります。リノベ会社の担当者が家までやってきて、希望通りのリフォームができそうか、他に修繕するべき箇所はないかなど、細かな部分をチェックする作業です。

 7つの会社と初回の個別相談を終え、そのなかから4つの会社に自宅まで現地調査に来てもらうことなりました。現地調査を依頼する際に気をつけたのは、各社が現地調査に来る日をバラけさせないということです。 (※個別相談の詳細は、記事「実録・リノベ会社個別相談のリアル! 相談前にやっておくべき準備と、業者選びの基準を解説」で紹介しています。)

 というのも、現地調査が終われば次は各社から提案プランが出てくるのですが、ここで1社だけを先行させてしまうと、その会社からはなんども提案を受けているのに、比較している他社からの案は来週まで出てこない、といった状況に陥るからです。

 それでは横並びでの比較がむずかしくなるので、私はすべての個別相談が終わったあと、一斉に各社と現地調査のスケジューリングを始めました(図表1)。

図表1:現地調査のスケジューリング

リノベ スケジュール 徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと ちきりん

詳細なリノベ希望の伝え方

 現地調査を申しこむと、詳しいリノベ希望を聞きとるための調査フォームを送ってくる会社もありました。そこには、キッチンはL字型がよいかI字型がよいかとか、床には無垢材を使いたいか否か、洗面台はどういうタイプがいいか(イラストで選ぶ)など、さまざまな質問が書いてあります。

 ただ、私の場合は文章だけでなく希望のインテリア写真なども多数貼りつけたA4で14ページものリノベ要望書を自分で作り、現地調査の数日前に各社にメールしました。その主目的はリノベ希望の伝達でしたが、ほかにも目的がありました。

 1つは私がどういうタイプの客(人)なのか理解してもらうためです。また各社を比較するにあたり、提供する情報レベルをそろえたほうがフェアだとも考えました。

各社による現地調査をレポート!

 次は現地調査のときの様子です(来訪順)。最終的には4社に現地調査を依頼しました。文中に一級建築士、二級建築士という言葉がでてきますが、前者はタワーマンションからオリンピック競技場まで「設計する建物に制限がない」国家資格で、後者は主に住宅を設計する人に求められる資格です。

 マンションのリノベ設計であればいずれでもよく、資格の違いよりはむしろ「中古マンションのリノベの設計・施工の経験がどれくらい豊富か」ということのほうが重要だと思います。

B社の現地調査

 個別相談のときに話した営業担当者と、一級建築士の設計担当者が来られました。全体で1時間半。到着直後から家中をメジャーや測定器で計測。お風呂の上にある点検口やベランダの給湯器、排気の位置などを確認。あとはあらゆる部分の写真を撮影。クローゼットの中や靴箱の中まで(もちろん私の許可を得て)写していかれました。

 調査時間の大半は部屋の測定や写真撮影で、生活スタイルなどの確認はごくわずかでした。この点はちょっと不思議な気がしました。いま住んでいるマンションをリノベーションするのだから、寸法を測るだけでなく施主の生活についてもっと興味を持ち、提案に活かせばいいのにという気がしたのです。

 でも、これはあとから現地調査に来たほかの会社もみな同じでした。おそらく計測にかなりの時間がかかるため余裕がないのと、この段階であまり客のプライバシーにつっこむのはよくないと思われているのかもしれません。

C社の現地調査

 新たに担当になったという二級建築士の方を含め、3人で訪問されました。建築士の方は全体の構造を確認。ほかの2人があちこちの寸法を測り、写真を撮っていかれました。1人はあとから管理人事務所を訪れ、竣工図(設計図)の写真もデジカメで撮影されました。

 建築士の方は私が送った長い資料を読んでおられ、生活動線などに少しは興味もあるようでしたが、その部分は最低限。やはりメインの興味はマンションの構造の把握です。今の段階ではそこがいちばん大事だということなのでしょう。

 1つ驚いたのは、個別相談で2時間以上もお話しし、これまで何度も連絡をとっていた方が来られず、いきなり担当から外れられたことです。担当者の変更ってこんな簡単に起こるのねとびっくりしました。

※残り2つの会社(A社とG社)の現地調査の詳細については割愛しています。書籍には載せてあるので、詳しく知りたい方はこちらをご確認ください。

現地調査とプラン提案は無料だった

 以上、この時点ではC社とG社(ここでは割愛しましたが、G社は対応が良かった会社です)が一歩リードというところです。そしてこのあと現地調査から2〜3週間で、各社から最初の提案が出てきます。どこも2パターンの間取り図と概算の見積書を作成、1時間ほどかけて説明してくださいました。

 ちなみに、私はここまで一切お金を払っていません。しかも初回提案のあと、各社ともプランを修正し、2回目の提案まで無料で作ってくれます。大きなプロジェクトとはいえ、営業活動のためにここまで無料でおこなうのは相当に大きな負担でしょう。

 こうして各社から提案された間取りは一長一短で、この頃の私は毎晩多くの間取り図をひろげ、それぞれの提案を比べたり、いいとこ取りでオリジナルのよい案が作れないかと思案していました。また、私のリクエストが多すぎてみなさん苦労されており、もっと優先順位を明確にした資料を送ればよかったとも思いました。

見積もりも提案プランも判断基準にはならない!?

自分なりの基準を持って会社を選ぼう
自分なりの基準を持って会社を選ぼう(出典:PIXTA)

 さて、いよいよ「どこにお願いするか」を決めなくてはなりません。書籍『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社 2011年)にも書いたとおり、意思決定には「判断基準」と「情報」が必要です。「情報」は各社とのかかわりのなかで得られますが、判断基準は自分で考える必要があります。

 今回のリノベ会社選択における私の判断基準は、「向こう半年、1000万円規模のプロジェクトを一緒に進めていくパートナーとして不安はないか。ともに働きたいと思え、問題が起こっても協力して解決していけそうな人や会社か」ということでした。

 この段階では共同プロジェクト型の取引だと明確に意識できていたわけではありません。でもスケルトンでのリノベはものすごく複雑なプロジェクトなので、途中で予期せぬ問題が起こることは(どこに頼もうと)明らかでした。なので、最初から「問題が少なそうな会社」ではなく「一緒に問題解決を進めていくパートナーとして信頼できる人や会社」を選びたいと考えたのです。

 ちなみに私はなんであれ「問題が起こること」をあまり深刻に捉えていません。だって問題は(仕事だろうと個人生活だろうとリノベだろうと)必ず起こります。だから大事なのは、問題が起こったときに「うまく解決できるか」「解決のプロセスが合理的で納得性の高いものになりそうか」のほうです。

 別の言い方をすれば、私には提案された間取りや見積もり額で依頼会社を選ぶつもりはまったくありませんでした。個別相談や現地調査、提案を受ける機会を通してずっと考えていたのは、「この会社やこの人と一緒にプロジェクトを進めたらどんな感じになるだろう?」ということであり、特に「大きなトラブルが起こったとき、この人やこの会社はどんな対応をしそうかな?」ということだったのです。

ガス温水式ミストサウナが分かれ道!

 各社からの話が大きく異なり、驚いたこともありました。それは「お風呂にガス温水式のミストサウナをつけたい」という要望についてです。

 これに対する4社の回答はさまざまで、「問題ないです」と言い切る会社から、「給湯器を外してみないと分からない」「(言及なし)」というところまでありました。結果的には給湯器を外してみて確認しないと分からなかったので、問題ないと言い切った会社は間違っていたことになります。

 同じようなことはほかでもありました。二重窓にして断熱をやり直したいと伝えたところ、勧められた断熱の方式も大きく異なっていました。「キッチンには魚グリルをつけず、1口だけのガスコンロをつけたい」というリクエストにたいして提案された方法も各社バラバラです。

 ここで私が理解したのは、「一般的でないリクエストをすると回答や対応がばらけ、結果として複数企業の比較が容易になる」ということでした。定番の対応策がなく、イチから考える必要があるからでしょう。

 また、やはりリノベの際には必ず複数の会社に見てもらったほうがいいとも思いました。もちろんリノベ本や雑誌にも「複数の会社から提案をしてもらい、内容をよく比較せよ」と書いてあります。それはそうなのですが、比較すべきは見積もり額や間取り図がどれくらい気に入ったか、という単純な話ではないのだと、あらためてその意味が理解できたのです。

リノベ業者選びは「絶対基準」で

 最後に残ったC社ですが、初回は間取り図だけが提示され、2回目に見積もりの説明を聞くことになりました。そしてこの2回目の説明日には、私はすでにほかの3社をすべて断ってしまっていました。

 だからといってその時点でC社に頼むと決めていたわけでもありません。見積もりの説明になにか大きな問題があれば、C社もお断りするつもりだったのです。つまり私は最初から「4社のうちいちばんよい=マシなところに依頼しよう」とは考えていなかったということです。4社間の相対評価で決めるのではなく、自分が「ここなら大丈夫!」と思える絶対基準を充たす企業にお願いしたかった。

業者の選定基準は「ここなら大丈夫!」と思えるかどうかだった
業者の選定基準は「ここなら大丈夫!」と思えるかどうかだった(出典:PIXTA)

 でも、もう一度いろいろな会社に個別相談を申し込み、現地調査に来てもらうのはかなりめんどくさいことでもありました。だからC社の方が説明に来られる日には「頼むから私を失望させないで!」と朝から祈るような気持ちで待っていました。

 無事に説明が終わり担当者の方が帰られる際には(そのときはまだこちらの結論は伝えていませんでしたが)、心の中でとても感謝していました。「これでどこにお願いするかが決まった。もう同じプロセスを繰り返さなくていい!」と本当にほっとしたのを覚えています。

 なお、もしC社の提案に納得できなかった場合には、事前調査と提案に5万円かかりますと言われた設計事務所に提案をお願いするつもりでした。あとは最初に排除してしまった大手企業系列のリノベ会社や、我が家から少し遠い場所にある会社にも相談してみようと思っていました。

 これだけ多くの選択肢があること自体、東京に住んでいるメリットではありますが、それでも最終的な依頼企業を決めるのは簡単ではありません。数十社から選んだ7社に相談に行き、そのうち4社に提案をしてもらい、依頼できると思ったのはC社だけです。私の絞り込み基準に問題があったのかもしれませんが、ここまでの会社数を比較しないと納得できる業者を見つけられないのかと驚きました。

 ときどき「雑誌に載っていた施工事例が気に入って(他社と比べることなく)すぐに○○社に依頼し、すべてうまくいって大満足!」というリノベ体験談を読むことがあります。

 疑り深い私には「他社と比べられたくない会社側の眉唾宣伝体験談なんじゃないの?」とも思えるし、その一方、1社しか知らなければ、それはそれでハッピーなのかもねとも思います。このあたり、結婚相手選びや就職先選びとまったく同じなのかもしれません(←完全に余談ですね。すみません……)。

複数企業にプラン提案を依頼すべき理由

 冗談はさておき私としては、いくら個別相談の段階でものすごく信頼できる担当者や会社と出会えたとしても「一定規模以上のリノベをする場合は複数企業に提案をお願いすべきだ」と思います。それは、各社を競わせて値段を下げるためではなく、いろいろな人に提案してもらい、質問し、説明してもらううちにどんどんリノベに関する理解が深まるからです。

 複数社から提案をしてもらえば、間取りについても工法についても、また、内装アイデアについても、さまざまな案を検討できるようになります。最終的にお願いする1社以外にはお金を払わないので申し訳ない気もしますが、お金をとる、とらないは先方の判断なので気にしなくてもよいでしょう。ただ、マナーに反することは慎むべきで、図面を他社に見せたり、気に入った図面を各社に提示してコストだけを競わせたりするのは論外です。

 また、今回はお断りした3社すべてから理由を教えてほしいと言われたので、かなり詳細に、どういう理由でお願いできなかったかを説明しました。我が家のリノベのために労力を費やしてくださった方々へのせめてもの御礼です。

 ちなみに、お断りした3社から初回提案料の請求書が届けば、私は躊躇なく料金を払ったでしょう。終わってみれば、十分にそれだけの仕事はしていただけたと感じるからです。 

まとめ「現地調査とリノベ会社選びのポイント」

・各社の提案を同じタイミングで比較できるよう、現地調査に来てもらう日はできるだけそろえましょう。

・提案プランに反映してほしい要望は全社に同じように伝えましょう。その要望に対する先方の「理解度」がリノベ会社選びの判断材料になります。また、要望が多い場合は優先順位も明確に。

特殊なリクエストをすると各社の対応の違いが際立ち、比較が容易になります。むずかしいかもと思えるリクエストでも、この目的のために伝えてみる価値があります。

・間取り図や見積書の単純比較ではなく、「この会社(担当者)と何カ月もの複雑なプロジェクトを進めていけそうか」という視点で比較しましょう。

徹底的に考えてリノベをしたら、
みんなに伝えたくなった50のこと

(ちきりん著・ダイヤモンド社)

 
徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと

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