最近、上場不動産会社元会長の薬物事件による逮捕などでも話題になったように不動産会社が絡んだ犯罪やコンプライアンス問題がSNSでも注目されています。「不動産会社=悪いことをしている」という先入観を持つ方も少なくないでしょう。不動産業を取り締まる法律としては、宅地建物取引業法があり、違反に対する行政処分も行われています。この行政処分は、どのようにして行われているのでしょうか。不動産業界の内側から見た、行政処分・コンプライアンス違反の実態について、現場の声をもとにご紹介します。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)
宅建業法に基づく行政処分の種類
宅地建物取引業法に基づく行政処分には、軽い順から「指示処分」「業務停止処分」「免許取消処分」の3つがあります。
「指示処分」は、違反状態の解消や改善を命じる最も軽い処分です。「業務停止処分」は、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じる処分。「免許取消処分」は最も重い処分で、宅建業の免許そのものを取り消すものです。

宅地建物取引業者の処分については、大臣免許の場合は国土交通大臣が、知事免許の場合には各都道府県知事(これらを「免許権者」と言います)によって行われます。
処分が実施されれば、業者の商号・所在地・名称・代表者名などのほか、処分理由についても国土交通省が運営する「ネガティブ情報等検索サイト」や都道府県のサイトで公開されます。
処分を受ける代表的な違反行為には、事務所不確知、営業保証金未供託、専任の宅地建物取引士の不在、重要事項説明義務違反などがあり、取引の公正を害する行為が対象です。
後ほど解説しますが、重要なのは、これらの違反のほぼ100%が消費者からの相談(通報)がきっかけで発覚しているということです。消費者が免許権者に対して、「これはおかしいのではないか」と相談が入り、そこから事実確認の後に処分が決まるという流れになっています。
悪意のある違反は、実は少ない?
日本には、宅建業者が約13万社あります。年間で処分の件数が多くても数百件程度であることを考えれば、違反の割合としてはかなり少ないでしょう。
さらに、悪意をもって業法違反を行う業者は、そのなかのごくわずかだということを強調しておきます。実際の行政処分事例を見ると、その多くが悪意のない知識不足やケアレスミスであることがわかります。代表的な例をみていきましょう。
書面交付の遅延
「売買契約書の遅滞なき交付」や「媒介契約書の交付義務違反」などは、その最たる例です。契約書を取り交わす際、書類確認を社長が行っている場合。その日、たまたま社長が出張していたため、「後日送付します」と約束したものの、担当者がそれを忘れており、送らずに放置してしまうといった場合も、通報されれば処分の対象になってしまいます。
古いひな型の使い回し
本部から支店に新しい契約書のひな型が配布されても、営業担当者が見落として古いものを使い続け、たまたま顧客に指摘されて発覚するケースも後を絶ちません。忙しさにかまけて昔の媒介契約書を使ってしまうパターンです。
手数料計算の間違い
不動産の売買仲介における手数料額は、税抜きの売買価格(土地は非課税)に手数料率を乗じて計算しますが、税込金額に乗じてしまうケースも散見されます。これも、明確な業法違反となりますが、経験の浅い担当者や宅建免許を持っていない社員の場合、ついこのような初歩的ミスを犯してしまうのです。
不動産会社が消費者から通報される理由
先述のように、これらの業法違反は、消費者からの通報によって発覚します。ただし、考えてみれば、(あってはならないことですが)書類を送るのを忘れていたり、手数料の計算を間違っていたといった、言わば見落としや不注意のミスが発生しただけで、わざわざ免許権者に通報するというのは、程度にもよりますが、少し過敏に反応しているようにも感じられないでしょうか。
顧客との関係性が築けていれば「すみません!すぐに対応します!」の一言で解決するかもしれません(ただし、指摘が入って、即対応の約束を守らないのは論外なので、指導が入るべきだと思います)。
つまり消費者に通報されるという状況の裏側には、取引の過程で顧客の不満がたり、担当者との関係性が悪化(崩壊)してしまっている、ということが大きな要因になっているのです。
顧客と担当者のモチベーションの差
なぜ、これらの軽微なミスが行政処分にまで発展してしまうのか。その背景には、営業担当者と顧客の間に存在するモチベーションの温度差があります。

上のグラフにあるように、営業担当者のモチベーション曲線は、契約時でピークになり、その後下がっていきます。営業目標やノルマを契約までに設定している不動産会社が多いためです。
一方、顧客は契約から引き渡しまでに、期待が段々と高まっていきます。契約して一仕事終えた気になっている担当者がたくさんいますが、顧客としてはそこからが本番なのです。
この温度差があるため、担当者からの連絡が遅くなったり、対応が後手後手になってしまったりすると、顧客は不満を募らせます。そして、要望が通らなかったり、頼んでいたことをやってくれなかったり、自分の意に反することが起きると、トラブルにつながるのです。
一方で、営業担当者は常に数字に追われる身。次々と顧客と接触して契約を取っていくことを優先してしまうために、フォローが甘くなってしまうという不動産業界特有の利益至上主義やノルマ体質と顧客との板挟み状態になってしまうのです。
当社では、そういった営業担当のモチベーションを高めるという意味でも、顧客から紹介をもらうことをスタッフの一つの目標にしています。
一番紹介が発生しやすいのが、契約から引き渡しまでの間です。その間に、職場の同僚と「最近家を買ったんだ」「うちも考えてるんだよねー」といったような会話が生まれるためです。
契約後も、顧客にきちんとしたサービスを提供してくれたと満足してもらうことで、「うちが契約した不動産会社は良かったよ」と、初めて紹介が生まれるのです。だから、弊社では顧客からの連絡にはできるだけ早く、丁寧に対応し、寄り添ってあげなさいと伝えています。
悪意のある顧客による通報
もう一つ、消費者側の通報の動機が必ずしも純粋な問題の指摘ではないケースもあります。
たとえば、手数料の減額交渉の材料として、業法上の瑕疵(かし)を探し出してクレームを入れるといったケースです。いわば消費者による戦略的なクレームによって、本来であれば大きな問題にならなかったはずの軽微なミスが行政処分につながることもあります。
不動産売買の取引では、媒介契約を結び、そのあとに重要事項説明を行い、売買契約を締結するという流れが業法上のルールです。しかし、それらの契約内容を説明するためにはかなり時間がかかるため、時間短縮のために流れ作業で一度に行うケースもあります。
その際、媒介契約を締結する前に、重要事項説明書に押印してしまう。重要事項説明の前に売買契約書を締結してしまうと、これも立派な業法違反となってしまいます。
私の聞いたケースでは、この押印の順番が間違っていたことを突いて、手数料の減額を要求する顧客がおり、その要望を拒否したため免許権者に通報が入り、行政処分に至ったということがありました。
不動産会社を見極める3つの基準とは

では、消費者としてはどのような基準で不動産会社を選べばよいのでしょうか。3つの視点から考えてみましょう。
まず最初に確認したいのが、過去の処分歴です。一般の方が不動産会社に依頼しようと思った時に、先ほど紹介したネガティブ検索で過去に指示処分や業務停止があったかどうかは見た方がいいでしょう。できれば、処分歴のある会社は避けた方が無難です。
実績があり、きちんとした対応を行っている会社は、ケアレスミスなどもなく、行政処分は受けていないはずだからです。ただし、皆さんが知っているような大手仲介会社でも処分事例は出てきます。取引件数が多ければある程度は避けられない面もあるため、処分の内容や頻度も含めて総合的に判断する必要があります。
次に重要なのが、営業担当者の姿勢です。契約完了で満足してしまう営業担当者ではなく、決済まで、そしてその後の関係まで考えてくれる営業担当者を選ぶべきです。契約後のフォローをしっかり考えているか、事前準備を徹底しているかを見極めることが大切です。
最後に確認したいのが、会社の教育体制です。教育体制が不十分だと、契約書の記載日や日付が抜けていて問題が発生し、指導を受けます。さらに、繰り返し指導を受けたり、複数の取引で同様の不備が確認されたりすると、免許権者から指示処分を受けるということを知らない、といったことがあります。
従業員が多く取引数が多い会社でも、コンプライアンス違反は起こりえます。業務量の多さや、ルールの進化に対応できない古い組織体質、キャパシティーの不足なども要因として考えられるため、会社がこれらの課題にどう対処しているかを確認することが重要です。
まとめ
不動産業界の行政処分の多くは、故意の不正行為ではなく、知識不足やケアレスミス、そして顧客との関係悪化が原因で起こることがほとんどだと思います。
確かに、問題のある業者も一部には存在します。しかし、それで不動産業界全体を悪者のイメージで見てしまうことは、その業界で働く身として悲しく思います。大部分の不動産会社は、法令を遵守し、顧客のために誠実に業務を行っていることは、忘れないでほしいところです。
重要なのは、不動産会社側は顧客との関係を大切にし、基本的な業務を確実に行うこと。そして消費者側は、行政処分の背景を理解し、適切な基準で不動産会社を評価することです。顧客と不動産事業者、お互いが理解し合い、信頼関係を築いていくことで、不動産業界全体の健全な発展が実現できると考えています。
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