【国交省が規制強化】リースバックをおすすめできない理由は? リスクやデメリット、不動産業者が利益を得やすい構造を解説

2026年10月6日公開(2026年10月6日更新)
高田一洋:一心エステート株式会社代表取締役CEO

リースバックは、老後の資金確保や相続前に不動産を整理する手段として、この数年で広がってきた仕組みです。利用者が増える一方、契約後に「こんなはずではなかった」とトラブルにつながるケースもあり、国交省による取引ルールの明確化が進んでいます。実際にリースバックの相談を受けてきた筆者がリースバックに潜むリスクについて解説します。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)

リースバックの仕組みとは。告知義務化が進む背景

 リースバックは、自宅を不動産会社などに売却し、売却後もそのまま家賃を払いながら同じ家に住み続けられる仕組みです。売却によってまとまった資金を一度に得られる一方、住み続ける限りは家賃を払い続けなければなりません。所有権はその時点で完全に手放す形になります。老後の資金確保や、相続前に不動産を整理する手段として、この数年でリースバックの利用が広がってきました。

リースバックの仕組み
自宅を売却して資金を確保後、賃貸で住むリースバックの仕組み(編集部作成)

 このリースバックをめぐっては、売却後の賃貸借契約に関する重要事項について、契約時に説明すべき内容を明確化する方向で制度整備が進められています。国土交通省は、契約時に不動産業者が重要な情報をあえて伝えない「事実不告知」を禁止する方針を打ち出し、解約条件や家賃、更新の可否などの告知を宅建業者に求めるガイドラインを今年7月に策定、10月1日から施行しています。

 禁止事項(事実不告知など)はガイドラインで明確化されており、違反した場合は宅建業法に基づく指示・業務停止・免許取消しなどの対象となり得ます。※参考:国土交通省「住宅のリースバック取引における 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 (リースバックに関するガイドライン)」

 背景にあるのは、これまで賃貸借契約に関する不告知が横行してきたことです。宅地建物取引業法では、買取業者が買主となる売買契約において、重要な判断材料となる事実を告知しないことは禁じられています。ところが、業者自らが貸主となり仲介を挟まない賃貸契約については、この規制の対象外でした。

 リースバックは売買契約と賃貸契約が事実上ひとつになった取引ですが、業者はこの抜け穴を利用し、賃貸借部分に関する重要な情報を告知しないまま契約を結んでいたケースが少なくありませんでした。

 売却額が相場より低いことや家賃の負担、更新の可否、原状回復の負担といった住み続けられるかどうかを左右する条件が、十分に説明されないまま契約が進んでいたということです。契約の形式が、貸主の判断で更新を拒める「定期借家」かどうかの説明を求める点も、今回の規制の柱のひとつになっています。

リースバックによるトラブルが増加

 実際、トラブルは数字にも表れています。国民生活センターに寄せられたリースバック関連の相談は、2023年度以降、年間200件を超え、5年前と比べて約10倍に増えました。契約内容を十分理解しないまま契約してしまい、あとになって売却額が相場より低かった、家賃が想定より高かったと気づくケースが目立ちます。

 国交省が2025年に公表した実態調査では、およそ半数の事業者が買い取り価格を相場の6割から7割程度と回答し、賃貸契約のおよそ半分が定期借家だったこともわかっています。 

 修理費についても民法上は本来貸主が負担すべきものですが、約4割の業者が借主負担としている実態が明らかになっています。国交省は消費者向けにチェックリストを盛り込んだ啓発資料もつくる方針で、契約時に確認すべき項目を可視化する動きも進んでいます。 

リースバックのリスク・デメリットは契約書では見えにくい

リースバックのデメリット
リースバックのリスクとは(出所:PIXTA)

 私自身、これまでリースバックの相談や取引に関わったことがあります。実際の経験から率直に言うと、リースバックは「必ずしも消費者にとって悪いわけではないが、良くないことが起こりやすい取引」であるということです。リースバックのリスクについていくつかの観点から解説します。

家賃滞納こそ不動産業者の狙い、という構造

 リースバックでは、売却後も家賃を支払い続ける必要があるため、家計の状況によっては家賃の負担が重くなり、滞納につながるケースも見られます。ここで厄介なのは、家賃滞納が発生すると、契約解除や物件の再活用につながるケースがあり、結果として事業者側の利益になる場合があります。

 リースバックで締結されている賃貸借契約には、3カ月以上の滞納があれば契約を解除できると特約が結ばれているケースも多く、業者からすれば、入居者を退去させたうえで物件を転売したり別の形で活用したりするほうが利益になります。極端に言えば、ぎりぎり払える金額ではなく、ぎりぎり払えなくなる家賃設定にしておいたほうが、業者にとって好都合という構造になっているのです。

 本来、賃貸借契約は借主の権利が強く、正当な理由なく貸主の都合だけで解約できるものではありません。それにもかかわらず、契約上いつでも解約できるかのような内容になっているケースが見られるのも、リースバックの不自然なところだと感じています。

転売と買い戻し請求権という落とし穴

 リースバックで自宅を買い取ったあと、その物件がリースバックの経緯と切り離された形で、オーナーチェンジ物件として第三者に転売されてしまうことがあります。

 本来であれば将来的に自宅を買い戻せる権利があってしかるべきですが、売買契約書に買戻し特約や再売買予約が定められていないケースも多く、その保証がないのが実情です。つまり、住み続けられている今の状態がいつまで続くのか、そもそも買い戻すという選択肢が本当に残っているのか、契約書のうえでは保証されていないことが多いといえるのです。

地方の戸建てが高利回りビジネスに利用されている

地方の戸建てのリースバックで投資商品に
地方の戸建てが投資商品として扱われることも(出所:PIXTA)

 こうした構造は都心の物件に限った話ではありません。地方の戸建てでも、リースバックは高利回りが狙える取引として利用されています。

 たとえば100万円ほどで戸建てを買い取り、元の所有者には月3万円ほどの家賃で住んでもらう。これだけで表面利回りは30%を超えます。ここに数百万円を乗せて別の投資家に転売すれば、買取価格の何倍もの利益が生まれることもあります。困っている人の住まいが、投資商品として扱われているケースもあるのです。

修繕費も退去のリスクも入居者側に

 契約の細部にも注意が必要です。設備が故障した場合の修繕費を元の所有者である入居者側の負担とする特約が入っているケースもあります。また、定期借家契約になっているために、更新のタイミングで突然退去を求められることもあります。

 安く売って、高い家賃を払い続ける。これがリースバックの実態に近いと感じています。同じように自宅を担保にするリバースモーゲージと比べても、所有権そのものを手放してしまうリースバックのほうが、リスクの重さは上だと考えています。

リースバックをおすすめできるケースはほとんどない

 ここまで厳しい話をしてきましたが、リースバックを選ぶ方の背景には、それだけの事情があることも理解しています。

 相談に来られる方の多くは、生活資金に本当に困窮していたり、他に選択肢がなかったりする方たちです。お子さんに障害があって環境を変えられない家庭や、親の介護の都合でその場所を離れられない家庭など、やむを得ない事情を抱えたケースを実際に見てきました。

 今その場所にいなければならない理由がある方ほど、他の選択肢を取りづらく、リースバックのような手段に頼らざるを得なくなっていく。ここがこの取引の厄介なところです。

 そして、私はリースバックを積極的におすすめできるケースはほとんどないと考えています。理由はシンプルで、取引の相手が不動産のプロだからです。買取価格の設定から契約条件まで、どうしても業者側に有利な形でまとめられやすく、こちらが不利な立場でうまく扱われてしまう可能性が高いというのが実感です。

 生活資金に困った際の選択肢としてリースバックが語られることは多いですが、本来は他に手段がないときの最後の手段と位置づけるべきものだと思っています。使わずに済むのであれば、それに越したことはありません。

 告知義務化という規制強化は、これまで見えにくかったリースバックの実態にようやく光が当たり始めた結果だと捉えています。ただ、ルールが整っても、取引そのものの構造が持つリスクがなくなるわけではありません。家賃を払い続けられなくなるリスク、転売されて買い戻せなくなるリスク、修繕費や突然の退去といった負担。これらは契約書のどこかに、静かに組み込まれています。

 本当に困ったときの最後の手段として検討することはあっても、それ以外の選択肢を十分に検討したうえで慎重に判断してほしいというのが、これまで多くの取引を見てきた率直な思いです。

【関連記事】>>不動産のプロ集団が語る!高齢者を狙うリースバックの闇、NOT A HOTELは買いか、TERASS問題の本質とは

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