今年度(2026年度)の税制改正で、住宅ローン減税制度が2030年末まで5年間延長されたのと同時に、住宅の床面積要件が原則「50㎡以上」から「40㎡以上」へ緩和されました。減税対象外だったコンパクト住宅にも住宅ローン減税が適用されることで、「住み替え」を前提にしたマンション購入が増えていくと想定しています。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)
床面積40㎡~50㎡未満の中古住宅も住宅ローン減税の対象に
令和8年度(2026年度)税制改正により、住宅ローン減税制度が2030年末まで5年間延長されるとともに、大きな制度変更が加わりました。なかでも注目すべきは、中古住宅でも床面積要件が原則「50㎡以上」から「40㎡以上」へ緩和された点です。
この変更によって、これまで減税対象外とされていた既存のコンパクト住宅も新たに住宅ローン減税の適用対象となります。単身者向けの1LDKや夫婦二人暮らしのコンパクトマンションでも、住宅ローン減税が受けられるようになります。ただし、40〜50㎡未満の物件に適用されるのは、合計所得金額1,000万円以下の方に限られ、1,000万円を超える年は控除が受けられない点は押さえておく必要があります。
今回の改正は、不動産取引の現場から見ても、住まいの購入行動に変化を与えるインパクトがあると思っています。
住宅ローン減税の改正内容をおさらい
住宅ローン減税改正の主なポイントを整理しておきましょう。令和8年(2026年)1月1日から令和12年(2030年)12月31日に入居した場合に適用され、床面積要件が新築と同様に中古住宅でも40㎡以上へ緩和されました(ただし合計所得1,000万円超の方は従来通り50㎡以上。なお、新築住宅は令和3年度税制改正で床面積40㎡以上に緩和されています)。
また、中古住宅においても省エネ基準適合住宅であれば、控除期間が10年から13年に延長され、借入限度額も引き上げられています。子育て世帯・若者夫婦世帯への上乗せ措置も維持されており(床面積50㎡以上の場合)、若い世代の住宅取得を後押しする設計が随所に見られます。
控除率は年末ローン残高に対して一律0.7%。仮に借入残高が4,000万円あれば年間28万円の控除が受けられる計算です。これが最大13年間続くとなると、累計で相当な金額になります。
なぜ40㎡への緩和が必要だったのか
40㎡以上の中古物件に対して緩和に至った背景には、消費者・不動産事業者それぞれの事情があります。
消費者目線から見ると、まず都市部での住宅価格の高騰があります。東京23区の中古マンション平均価格は1億円を超え、特に都心部では一般的なサラリーマンが広めの住戸を取得するハードルが高くなっています。そうした状況で、住居費を抑えながらも都心に住もうとすれば、必然的にコンパクトな住戸のニーズが増えます。
加えて、単身世帯や夫婦2人のDINKS世帯の増加という時代の変化もあります。「家族で住む広い家」という従来型の住まいニーズだけでは、もはや市場の実態とかみ合わなくなってきています。
不動産事業者側でいえば、都市部での用地取得競争の激化と建材費・人件費の高騰が続くなか、坪単価を抑えて広い住戸を供給し続けることが難しくなっています。コンパクトな面積で1戸あたりのコストを抑え、かつ住宅ローン減税の対象となる物件を供給できる環境が整えば、事業の収支も組みやすくなります。今回の面積緩和は、供給側にとっても歓迎すべき改正だといえます。
国土交通省の住生活基本計画によれば、最低限必要な居住面積は単身者で25㎡、2人世帯で30㎡、3人世帯で40㎡、そして両親と未就学児2人の4人世帯でも40㎡とされています。数字だけ見れば「40㎡でファミリーが住める」という計算になりますが、これに関しては実際のところどうなのか疑問が残ります。
都心では「軽やかに住み替える」が前提になる
正直、両親と子どもが40㎡で長期間快適に暮らすのはかなりきついと思います。この広さを「終の棲家としての40㎡」として捉えるのは少し無理があるのではないでしょうか。
私がこの改正に期待しているのは、「住み替えを前提にした1件目の購入」がしやすくなる点です。若いうちに40㎡台のコンパクトなマンションを購入し、結婚し子どもが生まれたり、家族構成が変わる段階で売って、より広い物件にステップアップしていくという住み替えが想定できます。
私は会社を立ち上げた時から「軽やかに住み替える時代にしよう」と言い続けてきました。それがいよいよ実現しつつあります。 かつて不動産は、売りたくても思うように売れないものでした。ほとんどのケースで、買った価格より低くしか売れず、住宅ローンの残債を下回る価格でしか売却できなかったのです。
そのため、住み替えの難易度はとても高いものでした。ところが、リーマンショック以降の2010年代から不動産価格が右肩上がりで推移し、ローン残債以上で売れる状況が当たり前になってきました。今では、購入から数年後に売却しても利益が出るケースも珍しくありません。住み替えの心理的・経済的ハードルが、この15年ほどで劇的に下がっています。
2026年は「コンパクト1LDK元年」になる
また、住宅購入のトレンドで見ると、ここ数年はおもしろい変化が続いています。2024年はペアローンが急拡大した「ペアローン元年」、2025年は「40年・50年の超長期ローン」が注目された年でした。
そして、2026年は、40〜50㎡の1LDKが本格的に市場のプレイヤーになる年なのではないかと見ています。都心部では以前から40㎡台の1LDKや50㎡台の2LDKに対する需要は根強くありました。
一方、地方では70㎡以上の物件が中心で、コンパクト住戸の流通はほとんどありません。これは都市部特有の事情で、東京・横浜・大宮といった都市部のマンション市場では多様な面積帯の物件がもともと存在しています。
今回の床面積緩和によって、40〜50㎡未満の物件がローン減税適用対象に加わったことで、購入を検討していた方々の背中が押されやすくなります。「税制上の恩恵があるなら買っておこう」という判断が、特に20〜30代の単身者や若いカップルの間で広がることが予想されます。
ただし、年収要件には注意が必要です。先述したように、40〜50㎡未満の物件で適用されるのは、合計所得1,000万円以下(年収にすると約1,195万円以下)の方に限られます。金融機関や金利にもよりますが、仮に1,000万円の年収で組める借り入れが、だいたい8,000万円前後とすると、都心であれば8,000万円以内で購入できる目黒区・世田谷区・江東区エリアの1LDKあたりが現実的な選択肢になってくるかもしれません。
資産となるマンション住み替えの原則とは
住み替えで資産を育てていくうえで、私が実感しているひとつの原則があります。それは「住み替えで都心に向かって内側に入っていくのは難しいが、外側に広げていくのは比較的スムーズ」だということです。
たとえば、港区の1LDKからスタートして大田区の2LDKへ住み替え、次に川崎市の3LDKへ移行するというシナリオです。このルートだと、各段階で面積が広くなりながら、資産価値が大きく下がるリスクも抑えられます。川崎・横浜エリアまで広げれば、価格帯の選択肢が増えますし、中古住宅の流動性も高いです。
逆に、最初から都心のど真ん中で広い物件を買おうとすると、初期投資が大きすぎてローン返済に追われ続けるリスクがあります。資産形成としての住まい購入を考えるなら、「最初の1件を小さく・都心に・安く買い、住み替えで広げていく」のはおすすめです。今回の40㎡緩和は、起点となる最初の1件を取得しやすくする制度整備といえます。
【関連記事】>>年収400万円でも都内マンション購入を目指せる!「住み替えロードマップ」の描き方
住宅ローン減税が、若年層のコンパクトマンション購入の後押しに
「住宅ローン減税があるから家を買った」という方は、特に地方・郊外で数多く見てきました。年間10〜20万円の控除は、月換算すると約1〜2万円の負担軽減に相当しますので、10年間で100〜200万円規模になります。同じ分を残業で稼ごうとすれば所得税・住民税が引かれるため、実質1.3〜1.4倍以上の労働対価と同等の価値があります。
近年は資産形成意識の高まりとともに、NISAの普及と同じ文脈で「不動産も資産の一部」という感覚が若い世代に広がっています。投資信託や株だけでなく、実物資産として不動産を持つことの意義が理解されるようになってきたのです。
住宅ローン減税はその入口のハードルを下げる仕掛けとして機能しています。 「税制があるなら、金利を払いながら貯金するより不動産を持った方が得かもしれない」という発想は、ある意味で正しい合理的な判断です。取得層が増えることは流通量が増えることを意味し、長期的には住宅価格が下がりにくい要因にもなります。
今回の40㎡緩和によって、これまで「ローン減税が使えないから」と踏みとどまっていた層が不動産市場に加わる可能性は十分あります。国が住宅ローン減税の対象をコンパクト住戸にまで広げた背景には、若年層に早期から住まいを取得させ、経済を刺激するという明確な意図があると私は見ています。
住宅購入という行動は、家具・リフォーム・家電・引越しといった周辺の消費を一気に動かす大きな経済活動です。景気刺激策としての効果は非常に大きく、国もそれを十分に計算したうえで制度設計を行ったと考えられます。 「軽やかに住み替える時代」が本格的に始まろうとしています。
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淡河範明さん
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