不動産の売却価格(成約価格)が見られないため、
日本ではどんな不都合なことが起こっているのか?

【第5回】2018年3月6日公開(2020年6月10日更新)
風戸裕樹:PropertyAccess.co CEO & Founder

不動産取引において一般消費者が判断に困るのは「不動産価格」でしょう。自分が買いたい住宅に付けられている値段が、市場価格と比べて高いのか安いのか。株式や為替のように実際に取引されている市場価格が公開されていれば、誰もが判断しやすくなります。成約価格の情報開示が進んでいるシンガポールと、情報開示が遅れている日本を比較すると、プロばかりが得する日本の現状が見えてきます。

日本では不動産取引の成約価格が公表されない

 日本の不動産取引では、売買も賃貸も実際に契約した成約価格は公表されません。それが当たり前だと思っているかもしれませんが、シンガポールでは一般消費者が購入するコンドミニアム(分譲マンション)など住宅価格は全て公表されていて、誰もがインターネットで調べることができるのです。

 シンガポールの政府系機関であるURA(都市再開発庁)のホームページには、過去3年分の取引データが公開されています。シンガポールでは、不動産取引時に支払う印紙税の報告義務があり、取引額に応じて印紙税の金額が細かく区分されています。実際の取引価格が公表されているわけではありませんが、印紙税の金額から取引価格が細かく分かる仕組みとなっているのです。

 日本でも不動産取引の時には印紙税を支払いますが、区分は1000万円、5000万円、1億円、5億円と大まかです。これでは印紙税から取引価格を推計することは不可能です。

 さらにシンガポールでは、物件の住所、マンション名、階数、単位面積当たりの価格なども公開されています。物件を特定して取引価格が判れば、より詳細に価格を比較できるのです。

 なぜ、日本では不動産取引の成約価格が公表されないのでしょうか。

 実は日本では不動産に関する価格データがきちんと収集・管理されていないのが実態なのです。

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「専任媒介契約」の物件はレインズへの情報登録が義務

 例えば、貸家の「成約した家賃」は、もともと国や地方自治体などに報告する義務がありません。日本銀行などが家計調査に基づいて統計データは出していますが、実際に家賃相場がどのように動いているのかは把握できていないのです。貸家の空室率も、民間調査会社が募集広告などから推計しているデータがあるだけで、実際のところは分からないのです。

 不動産売買については、成約した価格(売却価格)は、2つの方法で情報収集が行われています。

 ひとつは、国土交通省が中心に整備し、全国4ブロックで運用している宅地建物取引業者向けの不動産情報システム「レインズ」を通じて成約価格を報告する制度です。不動産仲介会社(宅建業者)は、「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を結んだ物件については、レインズに情報登録することが義務付けられており、成約した場合には成約価格を登録しなければなりません。不動産仲介会社であれば、レインズの情報を閲覧することができるので、成約価格を知ることができますが、個人は見ることができません。ただし、「一般媒介契約」についてはレインズへの登録義務がないので、成約価格もレインズでは分かりません。

 もう一つは、国土交通省が不動産登記簿の異動情報に基づいて新しい所有者に対して郵送で行っているアンケート調査です。このアンケートで回答のあった成約価格は、公示地価調査などの参考とするために不動産鑑定士のみに提供されますが、回答は任意なので全ての情報を把握できているわけではありません。当然、個人は成約価格を見ることができません。

売買契約前に一般媒介契約に変える「専任外し」が横行

 成約価格(売却価格)情報が最も揃っているレインズですが、問題もあります。成約価格の登録義務を回避するために、売買契約の前に媒介契約を登録義務のない「一般媒介契約」に変更する手法が使われているのです。業界用語で「専任外し」と呼ばれるもので、有名芸能人などが自宅などを売却した時に、成約価格を知られたくないという時に使われてきました。

 ただでさえ成約価格情報は個人は見られないのに、制度の穴を悪用すれば不動産仲介会社ですら成約価格が見られないようにできるのです。

 最近では、中古マンションなどの物件を買い取り、リノベーションして販売する「買取再販」物件が増えており、買取時点での成約価格を開示しない目的で「専任外し」が一部の不動産会社で行われていると聞きます。下記の図を見てください。

 不動産仲介会社は、売り主と買い主の両方から仲介手数料を得られる両手取引で、まず一般の売主から、仲の良い買取再販業者に売らせます。買取再販業者がリノベーションを終わらせたら、今度は消費者に売らせることで、同じ物件で4回分の手数料を得ることができます。1回の手数料が約3%ですから、実に約12%もの手数料が得られるわけです。

 そこでリノベーションした後も専任媒介契約を契約することを条件に、買取再販業者に不動産情報を流す不動産仲介会社が少なくありません。買取再販業者の方も、物件を獲得するために、不動産仲介会社やその営業担当者にバックリベートを渡すことが日常茶飯事のように行われています。

 こうなってくると、不動産仲介会社は「売主の味方」ではなくなります。買取再販会社が買い取りやすいよう、「売り主になるべく不動産を安く売らせよう」というインセンティブが働きます。

 一方で、売り主は、不当に安値で買い取られそうなのかどうか、チェックするのが難しいでしょう。相場(成約価格情報)がオープンになっていれば、不当に安値で買い取られそうなのかどうか、ある程度チェックすることができるのですが、現在の日本ではそれが難しい。

 買い主にしても、最初の買取価格とリノベーションした後の売却価格の両方を知ることができれば、あまりにも価格差が大きく、買取再販業者が「儲け過ぎている」「リフォーム代金が高すぎる」と感じれば、取引を敬遠するかもしれません。

 不動産仲介会社や、買取再販業者としては、「美味しい取引」を継続したいがために、「専任外し」の手法を使い、成約価格が知られないようにしているのです。

 こうした不動産取引の実態を知れば、一般消費者はどう思うでしょうか。

不動産取引の成約価格の透明性をいかに高めていくか

 一般消費者が不動産取引を行う場合、一般消費者と不動産仲介会社で圧倒的な情報格差があります。シンガポールでは法律で不動産仲介会社による両手取引が禁止されているうえに、コンドミニアムなどの住宅価格は全て開示されています。一般消費者も市場価格を知ったうえで、安心して不動産取引ができるのです。

 日本では不動産仲介会社が中立公正な立場で不動産価格を査定しているはずですが、一般消費者はその価格が妥当であるかどうかをどのように確認すればよいのでしょうか。

 最近は、売り主に対しては、不動産仲介会社がレインズで得た周辺の成約価格情報を教えてくれるのが一般的になってきましたが、教えてくれるのはごく一部の情報だけですし、それは義務ではありません。

 さらに「専任外し」のような手法で、成約価格情報の登録義務さえ有名無実化しているのが日本の実態です。

 少なくとも、レインズの情報を一般消費者にも開示しようという議論が昔からあります。日本でも不動産取引価格の透明性を高めていくために、こうした情報の公開は検討されるべきでしょう。

(編集協力=ジャーナリスト・千葉利宏)

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