固定資産税や都市計画税は、都税事務所や市町村の税務担当から通知が郵送されてきて、何も考えずに支払っている人が多い。だが、課税当局が法規制や状態を誤って認定したため、課税額を間違えていることがごく稀に発生する。間違いとして見かけるものに「住宅用地の特例の適用漏れ」、「建物の構造別区分の認定間違い」が多いことから、この2つのケースを中心に詳細に解説しよう。(不動産鑑定士・公認会計士 冨田建)
固定資産税は勝手に通知が来るので無頓着
固定資産税や、それと連動する都市計画税は、課税当局、即ち、東京23区であれば都税事務所から、それ以外であれば各市町村の税務担当から「あなたの土地や建物、有形償却資産の税金はこの額だよ」と通知されて支払う形態だ。
そこには、対策を講じることによる節税の要素はあまりない。また、土地や建物に課せられるので税制のみならず不動産の知識にも強くないと何か反論しようにも対応できない。そして、何より申告書を作成しないので、その分野に強い税理士が少ない。
故に、語り部となる税理士が限られる。結果、情報過疎で、皆、税負担の軽減に無頓着なのだと思われる。
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計算過程の間違いより、「認定の間違い」が多い
ここで筆者は読者の皆様に問いたい。
「あなたが支払っている固定資産税・都市計画税の額はどうやって決定されているかを言えますか?」
「間違いがないと言い切れますか?」
課税当局の方々だって間違いのないように日々努力されている。そして、各種の計算の段階ではシステム化し、できる限り計算間違いがないような体制が構築されているのも筆者は知っている。
だから、計算過程では間違いはまずないと言ってよい。
実は筆者も固定資産税や都市計画税の過大徴取の回収や是正に幾度か関与してきたのだが、経験則上、課税の間違いの原因は「認定の間違い」の場合ばかりだ。
要するに、「この不動産はこのような規制でこのような状態なのに、課税当局が法規制や状態を誤って認定したため、課税額を間違えた」というパターンだ。
なので、固定資産税や都市計画税の税負担を減らすことができるパターンとは、課税当局の「認定の誤り」を原因として、課税額に誤りがあった場合と考えればよいだろう。
ちなみに、筆者は不動産の鑑定評価の案件でその不動産の固定資産税や都市計画税の課税明細を拝見する時も、税理士としてもその内容をチェックすることにしている。ごく稀に誤りがあるからだ。勿論、何かあればお客様に是正の提案をするが。
※なお、基本的な宅地の固定資産税・都市計画税の税額の求め方は、下記のようになる。
固定資産税路線価(過疎地の場合は標準宅地)をベースに、一定の補正を経て「価格(固定資産税評価額)」を査定
▼
負担水準や負担調整措置を考慮して、「固定資産税課税標準額」を算出
▼
税率を考慮して、固定資産税額や都市計画税額を決定(自治体の条例で軽減される場合もある)。なお、固定資産税の税率は多くの自治体では1.4%である。また、都市計画税は自治体によって異なるが筆者の知る限りは通常0.2~0.3%である。
よくある「住宅用地の特例の適用漏れ」
固定資産税・都市計画税を決定する際、誤りが起こりがちなのが、「住宅用地の特例の適用漏れ」だ。
住宅用地の場合は、負担調整措置として価格(固定資産税評価額)に固定資産税の場合は1/6を、都市計画税の場合は1/3を乗じて、これに基づき固定資産税課税標準額を算出する。
ところが、うっかり住宅用地であるとの認定を失念して負担調整措置の適用を落とす結果、1/6倍や1/3倍が反映されず本来より高額の税額を課税していることがある。
あるいは別の誤りのケースとして、「一体性の認定の誤り」も挙げられる。
例えば、登記簿上は2筆で構成されているが、実態として一体利用されていた駐車場をある時、一体利用をやめて更地化したのに、固定資産税が見直されないという誤りがある。本来は下図のように、2筆それぞれの路線価が異なる場合は、それぞれの路線価に基づき評価すべきなのだ。その是正を失念して、本来より高額の税額を課税していることが、少なくとも都税事務所管轄の範囲ではある。
「建物の構造別区分認定」の誤りが多い
また、建物については「構造別区分の認定」の誤りが多い。
建物の税額は「固定資産税課税標準額×税率」に基づき算定される。
固定資産税課税標準額の算定段階では、その建物の構造別区分が影響する。このため、構造別区分の認定が何等かの理由で間違っている場合に、税額の過大徴収という事態が起こり得る。
間違っている場合としては、例えば、以下のケースがある。
- ① 鉄骨造と鉄筋コンクリート造の複合形態の古い建物がある場合において、現行の複合形態の建物の取扱いと異なる取扱いで建物に占める鉄骨造部分と鉄筋コンクリート部分の割合を算定していたため、過大徴収していた
- ② 鉄骨造の建物で耐火被覆の有無の判断を誤った結果として、過大徴収していた
- ③ 建物の基礎部分がブロック造であったのに、鉄筋コンクリート造と判断し、過大徴収していた
- ④ 単なるコンクリート造か、鉄筋コンクリート造かの判断を誤って、過大徴収していた
- ⑤ 構造別区分の認定の誤りの話ではないが、建物の一部を取壊したのにそれを登記簿に反映しなかった結果、課税当局が建物の延床面積が減少したのを把握できず、過大徴収していた
以上が、筆者の知る限りにおいて挙げられる。
なお、建物の固定資産税課税標準額は、実際には建物を調査の上で個別に決定するため明確な目線を提示しづらいが、もし無理やりにでも目線を知りたいという場合の一つの考え方としては、各法務局の新築建物課税標準価格認定基準表がある。以下は東京都の基準表だ。この基準表に基づき、経年減点補正率を掛け合わせる方法が参考程度にはなるだろう(ただし経年減点補正率は、総務省が様々なケースについて仔細に渡って開示しているので、より正確に計算する場合は参考にしてほしい)。
東京都の「新築建物課税標準価格認定基準表」 (基準年度:平成30年度、1平方メートル単価・単位:円) |
|||||||
構 造 | |||||||
木造 | れんが造・コンクリートブロック造 | 軽量鉄骨造 | 鉄骨造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨鉄筋・コンクリート造 | ||
種類 | 居宅 | 95,000 | - | 104,000 | 116,000 | 143,000 | - |
共同住宅 | 100,000 | - | 104,000 | 116,000 | 143,000 | - | |
旅館・料亭・ホテル | - | - | - | 133,000 | 144,000 | - | |
店舗・事務所・百貨店・銀行 | 70,000 | - | 57,000 | 137,000 | 139,000 | - | |
劇場・病院 | 77,000 | - | - | 133,000 | 144,000 | - | |
工場・倉庫・市場 | 47,000 | 53,000 | 41,000 | 83,000 | 84,000 | - | |
土蔵 | - | - | - | - | - | - | |
附属家 | 56,000 | 63,000 | 49,000 | 99,000 | 100,000 | - | |
※ 本基準により難い場合は,類似する建物との均衡を考慮し個別具体的に認定することとする 出典:新築建物等課税標準価額認定基準表 (PDF形式 : 64KB):不動産登記における評価額のない建物の課税標準について:東京法務局 |
(参考)経過年数による木造建物減価補正率 (東京都) | ||||||
経過 年数 |
経年減点 補正率 |
経過 年数 |
経年減点 補正率 |
経過 年数 |
経年減点 補正率 |
|
1年 | 0.8 | 11年 | 0.48 | 21年 | 0.25 | |
2年 | 0.75 | 12年 | 0.45 | 22年 | 0.24 | |
3年 | 0.7 | 13年 | 0.42 | 23年 | 0.23 | |
4年 | 0.67 | 14年 | 0.39 | 24年 | 0.22 | |
5年 | 0.64 | 15年 | 0.37 | 25年 | 0.21 | |
6年 | 0.62 | 16年 | 0.34 | 26年 | 0.21 | |
7年 | 0.59 | 17年 | 0.32 | 27年 以上 |
0.2 | |
8年 | 0.56 | 18年 | 0.3 | |||
9年 | 0.53 | 19年 | 0.28 | |||
10年 | 0.5 | 20年 | 0.26 | |||
※ 非木造建物減価補正率は割愛した 出典:経年減価補正率表 (PDF形式 : 81KB) :不動産登記における評価額のない建物の課税標準について:東京法務局より |
但し、これらはあくまでも一般的な目線に過ぎず、実際の固定資産税課税標準額と全く異なる水準という事態もあり得る点、ご注意頂きたい。
固定資産税や都市計画税の誤りを調査するなら税理士
こうして見ていると、やはり専門知識がないと、誤りを指摘することは難しいだろう。
しかも、固定資産税や都市計画税の「認定の間違い」の調査やアドバイザリーといった税務関連業務をする場合は、納税者本人か税理士でなければならない。万が一、これを納税者本人でもないのに「税理士以外の者」が行ったら税理
なので、固定資産税や都市計画税で違和感を覚えたら、数は少ないが、固定資産税・都市計画税をはじめとする不動産に強い税理士に相談されることを推奨したい。
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