家やマンションを売却する際に、自分の手で相場、売出価格を調べるにはどうすればいいのだろうか。土地、建物の査定方法や、最近話題のオンライン価格査定サイトの
戸建てとマンションで異なる、売却価格の計算方法
不動産仲介会社の提示する査定価格は、価格の相場を正しく反映しているとは限らない。なかには、媒介契約を勝ち取るためにわざと高く査定したり、すぐに売上が立つように低く査定したりするところもあるからだ。
査定価格が適正かどうかを判断するためには、売主のほうでも相場を調べておく必要がある。もし相場と査定価格の差が大きければ、不動産仲介会社に理由をたずね、納得のいく説明がなされるかを確認したい。
とはいえ、自分で相場を調べるには、多少の知識がいる。まず知っておきたいのは、戸建てとマンションでは、評価基準に違いがある点だ。
評価基準に違いがあるということは、戸建てとマンションで相場の調べ方が違うということ。まずは戸建ての「土地価格」の調べ方について見ていこう。
戸建ての「土地価格」は、「路線価」をもとに計算
土地価格を算出するための、いわば”単価”は一つではない。いくつか種類がある。一般の土地取引の指標とされるのが「公示地価」。相続税や贈与税の計算のもとになる「路線価(相続税路線価)」。このほか、固定資産税や不動産取得税の計算に用いられる「固定資産税評価額」などがある。「公示地価」の土地価格に対して、「路線価」はその8割程度、「固定資産税評価額」は7割程度の価格となっている。
◆主な公的地価の特徴 | ||
価格の種類 | 公表元 | 特徴 |
公示地価 | 国土交通省 | 一般の土地取引における価格の指標となり、適正な地価形成を目的として、毎年1月1日を基準日として、3月下旬頃に公示される |
路線価 (相続税路線価) |
国税庁 | 相続税にかかる課税標準額を求めるために、毎年7月1日を基準日として公示される |
固定資産税評価額 | 市町村 | 市町村等が固定資産税の課税標準額のベースとなる評価額を決めるために、3年に1回、1月1日を基準日として公示される |
前記のとおり、土地取引の指標となるのは「公示地価」だが、地価がつけられているのは、全国の代表的な26,000地点(平成30年)に限られる。
これに対して「路線価」は全国の市街地をほぼ全域網羅している。こうした事情から、「実勢価格」(=実際に売買される価格の相場)の算出には、「路線価」を用いるのが一般的だ。
具体的には、次の計算式で求める。
◆実勢価格=路線価÷80%×110%
計算式の「路線価÷80%」の部分は、路線価を公示地価に換算するためのもの。また、一般に実勢価格のほうが公示地価よりも1割程度高いため、ここでは110%(※)を掛けた。(※超都心では300%、一部地方では50%という場合もありえる)
路線価の調査は、オンライン上で行える
では、路線価そのものはどのように調べればいいのだろうか。下記のようにインターネットの使える環境にあれば、誰でも簡単に調べることができる。
(1)国税庁のホームページや、一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」にアクセスする。
(2)売却する物件の住所を含む「路線価図」を探して、対象となる土地の路線価を見つける。
※路線価図は各地の税務署に出向いても調べられる。
(2)について補足すると、下図のような地図が表示されるので、売却対象となる土地に面して表示されている数字(ここでは350D)をチェックする。この数字が、1㎡あたりの土地の路線価(単位は千円)、このケースでは35万円となる。

路線価が判明したら、前出の実勢価格の計算式「路線価÷80%×110%」にあてはめ、その結果に土地面積を掛ければ、土地の広さに応じた価格相場を知ることができる。
「算出結果の裏を取りたい場合は、国土交通省の『土地総合情報システム』にアクセスして、過去の類似物件の取引価格を調べてみるといいでしょう。不動産取引の結果がすべて掲載されているわけではありませんが、目安としては十分です」(不動産コンサルタントで、価値住宅代表の高橋正典氏)
ただし、同じ路線価でも、土地の形が三角形やL字型になっているなど、不整形地の場合、多少評価が下がる。逆に角地であれば、評価は上がる。
このように土地の個別的要因によっても、評価は違ってくる。そのため、不動産仲介会社の査定を軽視するわけではなく、前記したようにその根拠を確認することが大切だ。その際の基準となるのが、売主自身が調べた実勢価格にもとづく相場観となる。
戸建ての「建物価格」は、「再調達価格」と「築年数」がポイント
一方、戸建ての「建物価格」については、「再調達価格」をベースに算出する。「再調達価格」とは、売却予定の建物を、同じ規模や仕様で新築した場合にかかる費用のことだ。計算式は以下のようになる。
◆再調達価格=建物の構造別の1㎡あたりの基準単価×延床面積
「建物の構造別の1㎡あたりの基準単価」は、不動産仲介会社や銀行によってまちまちだが、下記の表のとおり、木造住宅であれば15万円前後としているところが多い。
また、再調達価格は新築(再築)を前提としているため、現在の建物価格に換算する場合は、経年劣化した分を割り引いて考える必要がある。建物の構造によって、「価値がゼロになる年数」=「法定耐用年数」は決まっていて、まとめると次のようになる。
建物の構造 | 1㎡あたりの 基準単価の目安 |
法定耐用年数 |
鉄筋コンクリート造(RC) | 20万円/㎡ | 47年 |
重量鉄骨造 | 18万円/㎡ | 34年 |
木造 | 15万円/㎡ | 22年 |
軽量鉄骨造 | 15万円/㎡ | 19年or27年 ※鉄骨の厚みによる |
具体例で見てみよう。築15年、再調達価格2000万円の木造住宅の場合、すでに15年分の価値は消費したものと考える。つまり、「22年-15年=7年」ぶんの価値だけ残っているものとして、下記の計算式で現在の建物価格を割り出す。
◆建物価格=再調達価格×[(耐用年数-経過年数)÷耐用年数]
前記の例に沿えば、建物価格は
2000万円×{(22年-15年)÷22年}=約636万円
となる。
ただし、この価格には、建物の個別的要因は考慮されていない。現実の内外装の傷み具合や設備の様子、瑕疵保険への加入の有無などによって、価格は上下することになる。
マンション価格の調査は、オンライン査定サイトを使い倒す!
次にマンションの価格相場を見てみよう。こちらは冒頭で触れたように、「市場価格」によって決まってくる。
もっとも身近な情報源は、「スーモ(SUUMO)」や「ライフルホームズ(LIFULL HOME’S)」などの大手不動産検索ポータルサイトだ。近隣エリアの類似物件を検索して、その一つひとつをチェックしていく。
また、意外に役立つのが「オンライン査定サイト」だ。後述するように、本来は自分の氏名等を登録し、不動産仲介会社選びに利用するものだが、情報源として活用できるサイトもある。ここでは、マンションの情報に特化している「マンションナビ」のサイトを例に見ていこう。
マンションナビでは、一般のオンライン査定サイトと同様に、個人情報を入力して無料査定を依頼できるのはもちろんのこと、マンション名を入力するだけで「売却予想価格」「賃貸に出した場合の賃料や利回り」「当該物件の過去の売却実績(年度別の件数と価格帯)」といった情報が表示されるようになっている。
さらにメールアドレスを入力して、無料メンバーに登録すると(査定の依頼は不要)、「当該物件の売却・賃貸事例」「近隣マンション(総戸数±30%の範囲内、築年数5年以内、半径1キロ以内)の売却事例」も閲覧できるほか、住戸の専有面積や階数、部屋の向きなど、条件が違った場合の価格の動きも調べられるようになっている。
また、マンションナビの別ページでは、都内に限定されるが、各鉄道沿線の駅ごとに「間取り別」「面積別」の1㎡あたりの単価も閲覧できるようになっている。直接の競合物件となりやすい、最寄り駅前後1駅の価格相場を知るうえで役立つだろう。
ただし、こうしたサイトで扱う物件情報には限りがあり、また表示される価格は、実際に取引された「成約価格」ではなく、「売出価格」がベースになっていることが多い。成約価格を知りたければ、不動産仲介会社に価格査定を依頼し、査定価格とは別に、「レインズ(REINS)」のデータを調べてもらえば間違いないだろう。
(※関連情報はコチラ!)
⇒家を高値で売りたいのなら、絶対に知っておきたい「売主のためのレインズ活用法」 売主が損しても分かりにくい仕組みなので注意を!
物件チラシも貴重な情報源
情報量では、インターネットに敵わないが、新聞の折り込みチラシ等も大切な情報源の一つだ。売出価格はもちろんのこと、キャッチコピーなどから競合物件がどんな点を”ウリ”にしているかも掴むことができる。
また、日頃からチラシをこまめにストックしておき、1㎡あたりの単価を割り出しておけば、ここ数カ月間の価格の動きも、おぼろげながら見えてくるだろう。
注意したいのは、「あなたと同じマンションの部屋が○○○万円で売れました!」などと謳ったポスティングチラシ。価格相場とかけ離れた”騙し”のケースが少なくないからだ。
いずれにせよ、戸建てにしてもマンションにしても、家の売却は持っている情報の質や量の違いで、結果に大きな差が出る。不動産仲介会社からすれば、「人のいい売主」よりも「口うるさい売主」に力を入れるのが現実だ。戦略の違いで、売却価格が数百万円単位で変わってくることを肝に銘じておこう。
<不動産売却の基礎知識>
相場を知るために、まずは「一括査定」を活用!
不動産の売却に先駆けて、まずは相場を知っておきたいという人は多いが、それには多数の不動産仲介会社に査定をしてもらうのがいい。
そのために便利なのが「不動産一括査定サイト」だ。一括査定サイトで売却する予定の不動産情報と個人情報を一度入力すれば、複数社から査定してもらうことができる。査定額を比較できるので、不動産の相場観が分かるだけでなく、きちんと売却してくれるパートナーである不動産会社を見つけられる可能性が高まるだろう。
以下が主な「不動産一括査定サイト」なので上手に活用しよう。
◆SUUMO(スーモ)売却査定 | |
特徴 | ・圧倒的な知名度を誇るSUUMOによる一括査定サービス ・主要大手不動産会社から地元に強い不動産会社まで2000社以上が登録 |
---|---|
対応物件 | マンション、戸建て、土地 |
紹介会社数 | 10社(主要一括査定サイトで最多)※査定可能会社数は物件所在地によって異なります |
運営会社 | 株式会社リクルート住まいカンパニー(東証プライム子会社) |
|
|
|
◆HOME4U(ホームフォーユー) | |
特徴 | ・悪質な不動産会社はパトロールにより排除している ・20年以上の運営歴があり信頼性が高い ・1800社の登録会社から最大6社の査定が無料で受け取れる |
---|---|
対応物件 | マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所 |
紹介会社数 | 最大6社 |
運営会社 | NTTデータ・スマートソーシング(東証プライム子会社) |
|
|
|
◆マンションナビ | |
特徴 |
・マンションの売却に特化 |
---|---|
対応物件 | マンション |
紹介会社数 | 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社) |
運営会社 | マンションリサーチ |
|
|
|
◆いえカツLIFE | |
特徴 |
・対応可能な不動産の種類がトップクラス ・共有持ち分でも相談可能 |
---|---|
対応物件 | 分譲マンション、一戸建て、土地、一棟アパート・マンション・ビル、投資マンション、区分所有ビル(1室)、店舗、工場、倉庫、農地、再建築不可物件、借地権、底地権 |
紹介会社数 | 最大6社(売買2社、買取2社、リースバック2社) |
運営会社 | サムライ・アドウェイズ(上場子会社) |
|
|
|
◆ズバット不動産売却 | |
特徴 | ・厳選した不動産会社のみと提携 ・比較サイト運営歴20年以上の会社が運営 ・情報セキュリティマネジメントシステムの国際認証基準である「ISO27001」の認証を取得しており安心感あり |
---|---|
対応物件 | マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟ビル |
紹介会社数 | 最大6社 |
運営会社 | ウェブクルー |
|
◆イエウール | |
特徴 |
・掲載企業一覧を掲載、各社のアピールポイントも閲覧可能 |
---|---|
対応物件 | マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地 |
紹介会社数 | 最大6社 |
運営会社 | Speee |
|
|
|
◆LIFULL HOME'S(ライフルホームズ) | |
特徴 |
・日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営 |
---|---|
対応物件 | マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件 |
紹介会社数 | 最大6社 |
運営会社 | LIFULL(東証プライム) |
|
|
|
一括査定サイトと合わせて
利用したい査定サイト!
◆ソニーグループの「SRE不動産」売却査定 | |
特徴 | ・両手仲介・囲い込みを行わない ・上場企業のソニーグループが運営 ・売却専門の担当者がマンツーマンで高値売却を追求 |
---|---|
対応物件 | マンション、戸建て、土地(建物付きを含む)、収益用不動産 |
対応エリア | 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県 |
運営会社 | SREホールディングス株式会社(ソニーグループ) |
|