「カウル」に不動産売却を依頼しても大丈夫? 一定条件で売却手数料が半額になるがデメリットもある

2018年12月17日公開(2023年10月5日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

スマホを使って不動産売買が簡単にできる不動産仲介サービス「カウル」に、不動産売却を依頼しても大丈夫なのか? こんな疑問にこたえるために、記者が実際に自分の住んでいるマンションの売却相談をするという覆面取材を行った。レインズでの物件登録時に、他社に対して広告掲載を開放して情報を拡散しているのと、売却は専任媒介で3000万円以上の場合に手数料が半額になるのが魅力だ。

「カウル」はネット上で不動産売買の場を提供

 不動産仲介サービス「カウル」は、人工知能を活用した価格査定や、ネット上で不動産売買を手軽に行うことができる、新たな不動産仲介サービスだ。

 サービス開始は2016年で、株式会社Housmart(ハウスマート)が運営している。ネット上で展開されている多くの不動産サービスのなかでも注目株のひとつだ。ハウスマートは「カウル」以外にも、不動産メディア「マンションジャーナル」や中古マンションデータベース「マンションライブラリー」の運営も同時に手掛けている。

 現在は、不動産の「買手」向けサービスを中心に運営しているが、「売手」向けサービスも提供しており、一部で手数料を値引きしているとの情報があることから、記者が覆面調査で実際に不動産の売却を相談し、仲介手数料についても聞いてみた。

不動産仲介サービス「カウル」不動産仲介サービス「カウル

首都圏のマンションに特化

 カウルの不動産仲介は、首都圏のマンションに特化したサービスだ。

 現在は「買主」向けサービスを中心に展開。東京23区、三鷹市、武蔵野市、西東京市、横浜市、川崎市のマンション数万棟について、売り出し価格、周辺環境データなどを多数持っており、マンション名を入れれば、おおよその相場がリアルタイムに分かる。

 さらに会員になると、売却中の物件については、売値だけでなく、過去の売り出し事例や、カウル独自の価格推計による「カウル推計価格」まで知ることができる。売値よりも「カウル推定価格」の方が高い場合は、実際には割安に売られている、つまりお買い得な物件であることが分かる仕組みだ。このサービスがあれば、ある程度、マンションの高値づかみを防ぐことができそうだ。

 こうした独自のビジネスモデルをベースに事業を拡大。最近は「売主」向けのサービスも拡充しつつある。

 その特徴の一つが、仲介手数料の値引きだ。会員登録して、手数料体系について聞いてみた。2018年10月以降の手数料は以下のようになっている。

●基本は3%+6万円+消費税
●ただし、買主の手数料が「値引き」となるのは、一部のケース
●ただし、売主の手数料が「半額」となるのは、専任媒介で物件査定価格が3000万円以上のケース

 買主の手数料が「値引き」になるのは、建て売りの戸建てや、リノベーションしたマンションなどを不動産分譲会社から購入したケースだ(取材当時であり、現在は値引きの対象外)。購入するマンションの金額が高い、見学回数が少ないなど、一定の条件を満たすケースや、購入と売却を同時に依頼するケースについては、手数料を値引きする場合もあるので、相談してみるといいだろう。

 一方、売主については、仲介手数料は基本、3%+6万円+消費税となっている。しかし、公表はしていないが、専属契約を結び、かつ査定価格が3000万円以上の物件については、仲介手数料が半額になるだけでなく、ハウスクリーニングや売却後の設備保証を付けるなど、充実したサービスも用意しているという。

 手数料を10%程度割り引く業者は多いが、半額というのはかなりの値引き率といえるだろう。

【関連記事はこちら】
>> 不動産の仲介手数料って値切ってもいいの? 「人気のある高額物件」なら値切ってもいいが、「不人気物件」だと、営業が手を抜く可能性も!

業務コストを2~3割まで圧縮

 カウルが仲介手数料の値引きをなぜ実現できたのだろうか。チャットで質問したところ、すぐに担当者から返信が届いた。

「端的に申し上げますと、不動産仲介にかかわる業務コストを一般の不動産会社様の2~3割程に圧縮できているので原則半額でご案内させて頂いております」

「弊社はコミュニケーションを全てウェブで完結できるシステムを自前で作っているため実現できた次第となっております」

 ここでいう業務コストとは、従来の不動産会社がしている営業や契約に関する交渉を電話やFAXなど、アナログ的手法で行っていることを指す。いまだに、メールより紙のDM配布にこだわったり、内覧時の顧客の送迎などが最良サービスだとしている不動産会社もあるが、カウルでは無駄と思える業務を徹底的にカットしているのだ。

売却サポートはどうなっているか?

 手数料が半額になるケースがあるのは嬉しいが、「安かろう悪かろう」ではよくない。

 例えば、所有するマンションを売却したい場合、果たしてどのくらいのサポートを受けられるかが不動産会社選びでは重要になる。いわゆる営業力の高さを指しているわけだが、「営業力=会社規模」ではない。営業マン個人の人柄やネットワークにも大きく左右される。多くの不動産業者が顧客に訴えるのは、近隣での販売実績だが、それによって顧客物件が少しでも高く売却できるわけでもない。それよりもいかにスピーディーに、高値で売却できるか、そのための販売サポートが整っているのかが大切だろう。

 では、どうやって売却物件のセールスサポートをするのだろうか。その点についても訊ねると、次のように答えてくれた。

 「集客力は売却活動でも最重要ですので、弊社では以下のように集客をさせていただく方針でございます。
① SUUMOなどの大手ポータルサイト(弊社と媒介契約を締結した場合、無料で掲載いたします)
② 中古マンション購入アプリ「カウル」ユーザー2.3万人への優先ご紹介
③ 他の不動産会社様に対して、広告掲載をフリーにしている

カウルの売却3つのポイントカウルの売却3つのポイント

 それぞれ解説しよう。

 最初のポイントでもある「① 大手ポータルサイト(での物件告知)」は、他社も行なっていることなので、大きなアドバンテージがあるとは言い難い。とはいえ、物件情報の公開という意味では一定の効果は見込めそうだ。

 また、「② カウル・ユーザーへの優先的な紹介」はどうなのだろうか。ネットで調べてみると、大手の東急リバブルの「Myリバブル」会員の数が8.3万人程度であり、一方でカウルの会員は2.3万人。会員規模としては中堅不動産会社並みだと考えられる。実際、カウル・ユーザーの会員数は増えているようで、一定のアドバンテージはありそうだ。。

 また、カウルの自社サイトのユニークユーザー数は28万人/月(首都圏マンションのみカバー)と、中堅不動産会社並みの自社媒体力があり、こちらはある程度期待できそうだ。

※月間訪問者数は、similar webにて2018年10月調査

 そして、「③ 取扱物件の広告掲載をフリーにしている」ことが最大のセールスポイントだろう。実は多くの不動産会社は、業者間物件情報ネットワーク「レインズ」に登録する際、取扱い物件の広告掲載をフリーにしていないケースが大半だ。なるべく自社で買主を見つけたほうが手数料を多く取れるからだ。しかし、そのせいでなかなか物件が売れず、売主は売却期間が長くなったり、値下げを強いられたりなど不利益を被る場合が非常に多い。そこで、物件情報を囲い込みせず、拡散することによって早期契約を目指そうとしているのだ

 広告掲載をフリーにしていれば、他の不動産会社のサイトでも物件が掲載されるようになる。もしカウルに依頼した場合は、本当に情報が拡散しているのか確かめるため、どのサイトに掲載されたのかを担当者に聞くといいだろう。

【関連記事はこちら】
>> 家を高値で売りたいのなら、絶対に知っておきたい「物件情報を拡散させる方法」 不動産会社はレインズ登録で手を抜くので注意を!

 ただし、デメリットもある。

 やはり、ほとんどがウェブでのやり取りになるため、担当者の力量が測りにくいという点だろう。サイト上では営業担当者などが紹介されておらず、どんな人が担当してくれるのかがイメージできない点がマイナスポイントだ。実際の売却時は、売れなければ値下げを検討したり、値引き交渉にどう応じるべきか相談するなど、さまざまな判断を迫られる。もう少し担当者の情報がほしいところだ。

■不動産仲介サービス「カウル」の詳細
売主の手数料 半額(専任媒介で、3000万円以上)
買主の手数料 3%+6万円+消費税
掲載サイト数 不明
自社サイトのユニークユーザー 28万UU/月
営業エリア 東京23区、三鷹市、武蔵野市、西東京市、横浜市、川崎市のマンション
両手取引 ○(ただし、囲い込みせず、広告転載区分はOKに)
特徴 人工知能で中古マンションの適正価格を推計しているほか、不動産売買に伴う様々なやり取り・手続きを、ネット上で対応可能にした。売却(専任媒介、3000万円以上)なら仲介手数料が半額。
※ユニークユーザーは、similar webで、2018年10月に計測

いい条件で売却するための要件は?

 カウルは、独自の価格推計による「カウル推計価格」など独自のサービスで、買主の基盤を固めつつあり、売主向けのサービスも徐々に拡大している。ハウスクリーニングや売却後の設備保証も付帯するようになり、サービスとして充実しつつあるようだ。

 ただし、営業担当者の顔がまだ見えにくいという点があり、自分である程度売買の知識がある人が使う分には、手数料が安くなることもあり、オススメといえるだろう。

 

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