不動産の売主として、業者間ネット「レインズ」をどう利用すればいいの? 悪質業者に騙されない方法を伝授!

【第12回】2018年11月1日公開(2023年8月23日更新)
梶本幸治:株式会社レコ 取締役・コンサルティング本部長

不動産を売却する際、不動産会社は業者間物件情報ネットワーク「レインズ」を活用して、物件情報を広めようとします。しかし、一部の悪徳業者はこのレインズを悪用して、売主の売却機会を奪っていることがあります。そこで今回、「レインズ(REINS)」について解説したいと思います。

 一括査定サイトや大手不動産仲介会社のサイトの「不動産売却の流れ」に関する説明を見ていると、「レインズ登録は不動産会社の義務なので、必ず報告を受けましょう」「レインズに登録しない囲い込み業者に気をつけましょう」などとよく書かれています。売り主からすれば、「どうやら、この“レインズ”というものは私たち売り主の味方っぽいな」と漠然と感じることはできても、実際に「レインズ」がどのように役に立つかは分かりにくいものです。では「レインズ」とは何でしょうか?

そもそも、「レインズ」って何だろう?

「REINS」トップページ 出典:不動産流通機構

 「レインズ(REINS:Real Estate Information Network Systems)」とは、不動産会社同士が物件情報を交換し合うサイトで、不動産会社は売り主から販売の依頼を受けた(媒介契約締結)後、必ずレインズに登録しなければならないものです(※ 専属専任媒介なら媒介契約締結の翌日から5日以内、媒介契約締結の翌日から7日以内、一般媒介の場合は任意)。

 売り主からすれば、多くの不動産会社に物件情報を共有してもらい、それらの不動産会社から買い主を紹介いただけることは心強いですよね。

 このように、レインズは「売り主の売却機会損失を防ぐ」意味からも、大切な制度ということはご理解いただけましたか?

不動産会社は「レインズ」をどう思っているのか?

 では、売り主にとって大切なレインズを、不動産会社ではどのように思っているのでしょうか。

 基本的に不動産の営業担当者は、自身の担当物件をレインズに掲載することを嫌がります。法律の規定がなければ、レインズに掲載したくないというのが本音だと思います。

 レインズに掲載してしまうと他社の買い主を受け入れざるを得なくなり、いわゆる「両手取引(売り主および買い主の両者から仲介手数料を得る契約)」ができなくなるからです。

 このような傾向は大手不動産仲介会社に多く、地域密着型の中小不動産会社では比較的少ないように感じます。大手不動産仲介会社はノルマもきつく、不動産購入希望顧客からの新規問い合わせも多いため、「長期間物件を囲い込んでおけば、両手契約の可能性が高まる」と考えがちです。

 しかし、地域密着型の中小不動産会社は地域内の他の不動産会社との繋がりが強く、物件の囲い込みばかり行っているとエリア内で「村八分」になる恐れがあることから、大手不動産仲介会社に比べて囲い込みを行ない難いのかも知れません。

 ここまで読んでくださった方のなかで、不動産業界に少し詳しい方は次のような疑問を持たれたかもしれません。

 「囲い込みって、今はもうできないのではないの? だって、レインズは売り主も閲覧できるようになったのでしょ?」

 確かに、2016(平成28)年1月から売り主もレインズを閲覧できるようになり、不動産会社から受け取る「登録証明書」に記載されたID・パスワードでレインズの売主画面にアクセスすれば、取引状況を確認できるようになりました。

 取引状況には「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」のステータスがあり、不動産会社が恣意的に「物件の流通」を止めることができなくなった――が、現状はまだまだ「囲い込み行為」は横行しています。

【関連記事はこちら!】
>> 家やマンションを高値で売却したいなら、「囲い込み」「両手取引」に気をつけよう! 悪徳不動産業者の「騙しのテクニック」を公開

売り主としてレインズをどう活用すれば良いのか?

 それでは、売り主としてレインズをどう活用すればいいのか、どのようなことに注意すればいいのかについてご説明します。

 今、不動産会社(特に、大手不動産仲介会社)サイドは「極力、レインズに登録したくないが、昔のように恣意的な囲い込みが難しくなった」ことに悩んでいます。

 そこで、彼らは次のような抜け道を考えつきました。

【抜け道1】一般媒介で媒介を取得し、レインズへの登録義務を免れる

 このような場合、不動産営業担当者は、売り主に対して次のような説明を行います。

 「専任で媒介を受託すると、レインズというサイトに登録しなくてはいけません。しかし、レインズに登録すると『出回り物件』『希少性の低い物件』になってしまうので売れ難くなります。したがって、あえてレインズに掲載しない作戦をとるため、一般媒介で販売をお任せいただくことにしました。しかし、一般媒介だからと言って他の不動産会社に依頼しないで下さい。私が立案した販売計画が台なしになってしまいますからね」

 出回り物件が売れ難いのは事実ですが、これは「価格の設定が高すぎて売り時を逃したため、結果として出回り物件のようになったしまった」ことが主な原因であり、価格設定さえ正しければ「出回り物件」「希少性の低い物件」ということはありません。このような営業トークを展開する営業担当者は「両手契約ばかりを狙っている」可能性が高いので、売り主としては注意が必要です。

【抜け道2】あえてステータスを「書面による購入申込みあり」に設定すると提案

 本来、売出し中の物件は「公開中」のステータスにあります。そして、書面による買付証明(購入申込書)が差し入れられると「書面による購入申し込みあり」のステータスに上がり、その物件は「商談中(一番手交渉者あり)」という扱いになりますから、基本的に物件の流通はストップします。

 しかし、両手契約を狙う営業担当者は、売り主に対し次のような歪曲した説明を行います。

 「私は物件を高く売るため、戦術的に『書面による購入申込みあり』というステータスを活用したいと考えています。このステータスにしておけば、物件自体が商談中という扱いになり、他の不動産会社がチラシに掲載したり、ネットに載せたり出来なくなるため、物件の情報が出回らなくなります。その結果、物件の希少性が高まり、物件が売れやすくなるのです。しかし、もしも他社に購入希望者がいた場合は、『二番手でも良いのでお客様を紹介させてもらえませんか?』との連絡が入るルールになっています売り主様の「売却機会の損失」は生じません。このような理由により、レインズ上のステータスは『書面による購入申込みあり』にしておきますが、決して物件囲い込みといった違法な行為をしているのではありませんから、どうぞご安心下さい」

 どうぞご安心下さい……と言われても、これでは安心できません。

 なお、「書面による購入申込みあり」のステータスにあっても「二番手紹介の連絡が入る」なんてルールはありませんから気をつけて下さい。

 「書面による購入申込みあり」のステータスで物件が固定されてしまうと、これは今まで問題になっていた「レインズに登録せず囲い込む」ことと、実質的に同じことになってしまいます。

 そして、この手法は【抜け道1】でご紹介した「一般媒介方式」よりも悪質です。

 「一般媒介方式」の場合、不動産会社サイドには他社にも販売を依頼されてしまうリスクがつきまといます。しかし、「書面による購入申込みあり方式」では、不動産会社サイドに何のリスクもなく、売り主が一方的に不利益を被るばかりなのです。

「王道」を貫いてくれる不動産会社を選ぼう

 売り主としては「レインズを法律通りに運用してくれる不動産会社」を選ぶことが必要です。

 そして、イレギュラーな手法を、さも「高等テクニック」であるかのように提案してくる不動産会社には気をつけて下さい。

 大型事業用地や、大規模一棟物件ならいざ知らず、通常の実需居住用物件の販売に際し、奇をてらった手法は不要ですので、レインズ活用に関しても「王道」を貫いてくれる不動産会社を選びましょう。

【関連記事はこちら!】
>> 不動産が売れないのは、不動産会社が問題?「レインズに登録」「詳細な報告があるか」など、販売活動をチェックする4つのポイントを紹介

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