住宅価格の高騰により、2024年に自宅を売却した世帯の6割以上が、購入時の価格よりも高く売却でき、利益が出ているそうだ。その売却益を新居の自己資金に充てれば、余裕をもった買い換えができるだろう。ただし、買い換え先が売却価格以上に上がっている可能性もあるため慎重な資金計画が求められる。(住宅ジャーナリスト・山下和之)
自宅を売却した6割以上の世帯が売却益が出ている
不動産仲介大手・中堅の業界団体である不動産流通経営協会では、毎年、住宅を購入した世帯を対象にした調査を行っている。その中で、買い換えした世帯に対して、自宅を売却したとき、売却益が出たかどうかを聞いている。その結果が図表1だ。
図表1 調査年度別売却差額の発生状況(単位:%)
2025年度の調査(発送数:3,207票 回答数:1,169票 回答率:36.5%)は、2024年度に自宅を購入した世帯が対象となる。そのうち自宅を売却して買い換えた世帯の61.0%が、「プラスの売却差額発生」と回答している。
反対に、売却差額が購入時価格よりマイナスの世帯は、図表1にあるように34.1%。およそ3世帯に1世帯にとどまっている。
2019年度の調査(2018年度に買い替え)では、「プラスの売却差額発生」は37.8%、「マイナスの売却差額発生」は55.2%。売却損が出た世帯が多かったわけだが、それに比べると2024年度に買い換えした人は、住宅価格高騰の恩恵を享受できた人が多かったわけだ。
購入から一定の年月が経過していれば、住宅ローンの返済が終わっているか、残債が少なくなっている。つまり、売却で得た資金を買い換え資金に充てることができる。
自宅の売却では売り時の把握が重要
実際のところ、どれくらいプラスの売却差額が発生しているのかといえば、平均すると627.2万円だが、図表2にあるように売却時の築年数によって売却益の金額は大きく異なってくる。
図表2 売却住宅の売却時築年帯数別、売却差額の発生状況 (単位:万円)
もっとも売却差額が大きいのは「10年超~15年以内」の2187.8万円で、その次が「5年超~10年以内」が2098.7万円」だった。築年数の浅い物件ほど高く売れて、売却差額が大きくなる傾向がハッキリしている。
一方、築年数が長くなると売却差額が少なくなって、「築25年超」ではマイナスになってしまうので、より有利に売却するためには、売り時を把握しておく必要がある。
買い換え先の住宅も価格が上がっている
市場環境や築年数による売却タイミングを把握した買い換えならば、有利な買い換えができる。しかし、手持ちの住宅が高く売れるということは、買い換える住宅も高くなっているということだ。
不動産経済研究所の調査によると、図表3にあるように、首都圏の新築マンションは2024年度には8,135万円まで上昇している。2018年度は5,927万円だったので、6年間で42.3%も上がっている。
中古マンションには多少の割安感があるが、2018年度の3,354万円が2024年度には4,939万円になっていて、6年間の上昇率は47.3%に達している。価格水準は新築マンションに比べて低いものの、上昇率は高くなっているのだ。
図表3 首都圏新築マンション発売価格と中古マンション成約価格(単位:万円)
仮に2021年度に6,350万円の新築マンションに買い換えるに当たって、売却代金から1,350万円を自己資金に充てることができるとすれば、5,000万円の借入れが必要になる。金利1%、35年元利均等、ボーナス返済なしの条件では、毎月返済額は14万1,142円になる。
それが2024年度に売却、売却益が増えて2,135万円を自己資金に回すことができたとしても8,135万円の新築マンション購入には6,000万円の借入れが必要で、やはり金利1%、35年元利均等・ボーナス返済なしだと毎月返済額は16万9371円に増えてしまう。
売却で得た金額が増えて、そのなかから自己資金に回せる金額が1,000万円ほど増えても、購入先の価格上昇で相殺され、むしろ返済負担が増えてしまう可能性があるわけだ。
中古住宅への買い替えで負担を減らすという選択肢
買い換えをする場合、初めて購入した時期から年齢があがっているので、住宅ローンの返済期間はできるだけ短くしたいところ。
そこで注目したいのが中古住宅。中古も価格が上がっているものの、新築に比べると割安感があって、返済負担を減らすことができる。
前出の試算上では35年返済となっているが、20年返済、25年返済などに短くしなければならない状況もあるだろう。図表4にあるように、築年数によって価格帯を選ぶことができるメリットがある。
図表4 マンションと戸建住宅の築年数帯別の成約価格(単位:万円)
東日本不動産流通機構によると、中古マンションは築5年までだと平均9,000万円台で、新築並みかそれ以上の価格帯だ。しかし、築15年までは7,000万円台、築25年までは6,000万円台、それ以降は4,000万円台に下がっている。
ただし、築年数が増えるにつれてリフォームやリノベーションが必要になっていくため、全体の予算と見合わせた範囲での物件選びが肝要になってくる。
自宅の売却は3,000万円控除の特例がある
売却益が出た場合、まず税金の対象になる課税譲渡所得を算出する必要があり、その計算式は以下のようになる。
まず、収入金額(売却で得た金額)から、その住宅を買ったときの代金(取得費)、売却にかかる費用(譲渡費用)を差し引く。譲渡費用とは売却に当たって支払う必要がある仲介手数料や契約書に添付する印紙税などである。
また、購入から売却までの経過年数に応じた減価償却費相当額を差し引くことができる。減価償却というのは実際にお金を支払うわけではないが、経過年数に応じて価値が低下する分を考慮して、利益から差し引いてくれる制度と考えればいいだろう。
さらに、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」※が適用される。一定の条件を満たす住宅を売却して得た代金から取得費や譲渡費用などを差し引いた金額が3,000万円以内であれば、収入金額がマイナスになるため、税金はかからないということになる。
※参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
しかも、売却した物件が夫婦などの共有名義になっている場合、共有名義の人数分の3,000万円控除を利用できる。夫婦2人の共有名義なら、合計6,000万円まで税金がかからない計算だ。
これなら、売却価格がかなり上がっているとはいっても、税金がかからなくなるケースが増えるのではないだろうか。
なお、3,000万円特別控除の適用を受けた場合には、買い換えで住宅ローンを利用したとしても、住宅ローン減税は利用できなくなるので注意が必要だ。
売却による収入が少ない場合、譲渡所得税を支払って、ローン減税の適用を受けるか、反対に譲渡所得税額が多くなりそうなときには、3,000万円控除を利用して譲渡所得税を節税するほうが得策になる可能性がある。
【関連記事】>>不動産売却時に活用したい特別控除を解説! マイホームの買い替えでは「3000万円特別控除」と「住宅ローン控除」どちらがお得?
自宅の売却・買い替えはタイミングや税制などを把握する
3,000万円控除を利用しても住宅価格の高騰で、収入が発生して税金がかかる場合がある。その際には、所有期間などに応じて税金がかかることになる。
自分たちの条件ではどれくらいの税額になるのかあらかじめつかんでおかないと、買い換えの資金繰りに齟齬をきたすことになるのでしっかりと理解しておきたい。
なお、買い換えであれば、所有期間が10年を超えていれば一定の条件を満たす場合、「特定の居住用財産の買い換え特例」※を利用する方法もある。
※参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
こちらは、次回の買い換えまで税負担を繰り延べられる制度。あくまでも繰り延べだから、当面の税負担をゼロにできても、将来の売却時に税金が重くのしかかってくるので、将来設計を綿密に立てて対応策を準備しておく必要がある。
以上のように、売却価格が高くなったと喜んでばかりはいられない。税金の仕組みなど、知っておかなければならないことが多いので、しっかりとチエックしておきたいところだ。
【関連記事】>>首都圏の中古マンションは年収500万円でも購入可能! 価格は新築の6割でも今後は高騰して買えなくなる?
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