古家付き土地の売却時は、解体する?しない? 確定申告時の税金や特別控除についても解説

2023年7月12日公開(2024年12月10日更新)
竹内英二:不動産鑑定士・宅地建物取引士

建物を解体して土地を売却する場合、解体費用が発生します。解体費用は金額が大きいため、取り壊すべきか迷っている人も多いと思います。一方で、売却のための解体費用は経費になるため、売却時の税金を節税する効果があります。解体するのであれば、税金についてもしっかり把握しておきたいところです。

土地売却のための解体費用の相場

古家付き土地の解体費用は大きい
土地売却のための住宅の解体費用は大きい(出所:PIXTA)

 まずは、売却したい土地に建つ古家(古い家)の解体費用について見てみましょう。住宅の解体費用の相場は下表の通りです。

構造 坪単価
木造 4万~6万円/坪
鉄骨造 6万~8万円/坪
鉄筋コンクリート造 8万~10万円/坪

 一般的な住宅の広さは30~35坪程度であるため、木造住宅なら解体費用は150万~200万円程度が相場となります。

 ただし、解体費用は敷地条件によって金額が大きく異なるため注意が必要です。

 例えば、重機が入らないような土地では高くなりますし、周辺にガードマンを多く配置しなければならないような立地条件でも高くなります。

 解体費用を交渉して安くするには、まずは複数の解体会社から相見積もりを取り、金額を比較することがおすすめです。

解体して更地にすべきかどうかの判断ポイント

 上記のとおり住宅の解体費用は高額なため、更地にして売却すべきなのか判断に迷うところ。

 解体が必要となる家について、解体してから売った場合と解体せずに売った場合の理論的な売却価格は以下のようになります。

【解体してから売った場合】
売却価格 = 更地価格

【解体せずに売った家の価格】
売却価格 = 更地価格 - 解体費用

 なお、解体せずに売る場合、買主が解体費用を負担することになります。

 解体することで更地と同じ価格になるため、売却価格は更地価格より低くなり、更地価格から解体費用を控除した価格が理論的な売却価格目安です。

 そのため、更地価格が解体費用よりも低ければ、売却価格がマイナスとなります。

 つまり、更地価格が解体費用よりも低いような物件は、買った人が損をする状態となるため、解体しないと売却ができません

 地方で土地価格が著しく低い物件の場合には、売主が解体しないと売れないケースがあります。

 一方で、都市部の地価が高い物件であれば、売主が解体しなくても売却できるケースも多いです。

 解体が必要かどうかは、理論的には更地価格と解体費用の関係によって決まります。

解体すべきかどうかは査定してから判断する

建物を解体して更地で売却する
古家付きで査定してから更地で売るか判断する(出所:PIXTA)

 更地価格の情報も必要となるため、取り壊すべきかどうかは自分で判断せず、不動産会社に査定を依頼してから判断することが適切です。

 まずは古家付きの状態のままで査定を依頼し、不動産会社の意見を聞いてから取り壊しを判断すべきだといえます。

 また、取り壊すべきかどうかの判断は、不動産会社によって意見が分かれることも多いです。

 そのため、査定は複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。その際「不動産一括査定サイト」の利用が便利です。

 取り壊さなくても売れるという不動産会社が多ければ、多数決の結果として取り壊さなくても大丈夫です。

 査定は無料ですので、無駄な解体費用を生じさせないためにも、先に複数の不動産会社に査定を依頼するようにしましょう。

更地にして土地を売却したときの税金

 ここからは、更地にして売却したときの税金について解説します。

不動産売却と譲渡所得の基礎知識

 不動産を売却したときの税金は、譲渡所得が生じたときに発生します。譲渡所得の求め方は、以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

 譲渡価額とは、基本的には売却価格のことです。

 取得費は、土地の購入額になります(建物を残して売る場合には、建物購入額から減価償却費を控除した価額が建物取得費です)。

 譲渡費用とは、仲介手数料などの売却に直接要した費用になります。

 計算の結果、譲渡価格がマイナスとなるようであれば譲渡所得が発生しなかったものとみなされ、税金はかからないことになります。

 また、古い物件で取得費が不明な場合には、概算取得費を用います。概算取得費とは、「譲渡価額の5%」で計算されるものです。

 税金に関しては、譲渡所得に税率を乗じて求めます。

税金 = 譲渡所得 × 税率

 税率には、長期譲渡所得と短期譲渡所得の2種類が存在します。

 長期譲渡所得とは売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のとき、短期譲渡所得は売却する年の1月1日時点において所有期間が5年以下のときの税率です。

 それぞれの税率は下表のようになります。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

 復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

【関連記事】>>不動産を譲渡(売却)した時の税金の計算方法とは? 節税特例や減価償却の考え方なども解説!

確定申告における経費か取得費かの仕訳の判断ポイント

 いざ確定申告をしようとすると、解体費用は経費(譲渡費用)なのか、取得費なのか迷うケースがあります。

 まず、売却のためにその土地の上にある建物を取り壊した場合の解体費用は、譲渡費用です。国税庁のホームページでは、以下のような表現となっています。

土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
【No.3255 譲渡費用となるもの】

 一方で、売却する物件を購入した当時に、古い家があってその建物を取り壊していた事実がある場合、その取り壊し費用は土地の取得費です。

 国税庁のホームページでは、以下のような表現となっています。

建物付の土地を購入して、その後おおむね1年以内に建物を取り壊すなど、当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
【No.3252 取得費となるもの】

 つまり、売却するために要した今の解体費用であれば譲渡費用(経費)、購入のために要した昔の解体費用であれば取得費ということになります。

マイホームの解体なら、消費税も譲渡費用に含めることができる

 では次に、解体費用で支払った消費税は、譲渡費用に含めることができるかどうかの疑問が出てきます。

 結論からいうと、個人が生活用の資産を解体して売却した場合は、解体費用の消費税も譲渡諸費用に含めることができます。

 国税庁のホームページでは、以下のように解説しています。

課税事業者が生活用の資産を譲渡した場合または免税事業者や事業者でない者が資産を譲渡した場合・・・(中略)・・・取得費や譲渡費用の金額は消費税等の額を含んだ価額により譲渡所得の金額を計算します。
【No.6931 消費税等と譲渡所得】

税金のかからない土地の売り方、3,000万円特別控除とは

 不動産を売却したときの節税特例として、3,000万円特別控除があります。

 3,000万円特別控除を適用した場合の譲渡所得は以下のように計算され、場合によっては税金がかからないこともあります。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

 3,000万円特別控除を適用した結果、譲渡所得が0円以下となれば、税金は生じません。

 3,000万円特別控除ができる場面は、「マイホームを売った場合」と「相続空き家を売った場合」の2通りがあります。

マイホームを売った場合

 マイホームを売った場合には、「取り壊した日から1年以内に売買契約を締結し、かつ、その家から転居して3年後の12月31日までに売却」すると3,000万円特別控除を利用できます。

 ただし、解体後に土地を貸し付けたり、事業の用に供していたりすると適用を受けられなくなります。

 詳しい要件は、国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」を参照してください。

相続した空き家を売った場合

 一方で、親が住んでいた自宅(相続空き家)を取り壊して売った場合も、一定の要件を満たしていれば3,000万円特別控除を利用できます。

 相続空き家の3,000万円特別控除を利用するには、建物が「昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること」などの要件を満たすことが必要です。

 また、「相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること」といった期限の要件もあります。

 詳しい要件は、国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を参照してください。

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解体費用を払えないときの対処方法

 土地売却に際して古家の解体が必要なのに、解体費用を払えないときの対処方法について解説します。

解体費用を買主負担にして古家付き土地で売る

 解体費用を払えないときは、そのまま古家付き土地で売ることも方法の一つです。

 古家付き土地の価格目線は「更地価格から取り壊し費用を控除した金額」となりますが、都市部の地価の高い物件であれば売却できる可能性はあります

 ただし、古家付き土地は更地よりも売却しにくく、売れるまで時間もかかり、大幅な値引きをしないと売れない可能性もあります。

 そのため、古家付き土地で売るかどうかは、複数の不動産会社の意見を聞いてから慎重に判断することをおすすめします。

自治体の補助金を利用する

 近年は、2015年に空き家特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)という法律ができたことをきっかけに、解体費用の補助金を出す自治体が増えてきました。

 自治体にもよりますが、解体費用の3分の2または2分の1を補助してくれるところもあります。

 補助金の有無や要件は自治体によって異なります。解体を行う前は、必ず自治体の補助金の有無を確認することが望ましいです。

【関連記事】>>家の解体工事の補助金は? 空き家の解体や売却時に使える節税特例などを解説!

不動産買取会社に売る

 解体費用を捻出できない場合には、買取会社に売るのも選択の一つです。

 買取会社は、取り壊し後、更地を転売して利益を出すことを目的とするため、価格目安は以下のようになります。

買取による売却価格 = (更地価格 × 0.8) - 取り壊し費用

 ただし、更地価格があまりにも低い場合には転売益が出ないため、買取会社も買い取ってくれません。

 買取会社に買い取ってもらうには、更地価格が相応に高いことが条件であり、何でも買い取ってもらえるわけではないということを、知っておく必要があります。

土地売却の解体費用まとめ

 以上、土地売却と解体費用について解説してきました。

・解体費用の相場は、木造住宅であれば坪4万~6万円程度

・解体すべきかどうかは、複数の不動産会社に査定を依頼した後に判断する

・売却のために行った解体の費用は、譲渡費用(経費)となり、一定の要件を満たしていれば、3,000万円特別控除も利用可能

・解体費用を払えないときは、「古家付き土地でそのまま売る」「買取会社に売る」

 解体が必要な不動産を売却する際の参考にしていただけると幸いです。

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