親の家を高く売るには、売却の流れや売り時について知っておくことが重要!『親の家を売る。──維持から売却まで、この1冊で大丈夫!』前編

2023年6月10日公開(2023年6月26日更新)
永峰英太郎:ライター
監修者 高橋正典:価値住宅株式会社 代表取締役

使わなくなった親の家の売却はどのように行えばいいのでしょうか。著者の永峰英太郎氏が、実際に親の家を売却する際に経験した失敗や苦労などを盛り込んだ著書『親の家を売る。──維持から売却まで、この1冊で大丈夫!』(自由国民社)から、ここでは売却の流れと売り時についてお届けします。

『親の家を売る。──維持から売却まで、この1冊で大丈夫!』(自由国民社)
書籍『親の家を売る。──維持から売却まで、この1冊で大丈夫!』著:永峰英太郎(自由国民社)

親の家の売却の流れをつかむ

 私は不動産の売却経験がまったくないなかで、しかも事前の勉強もせずに、親の家を売ることになりました。

 そのため「不動産仲介業者にアポイントを取る」しか思い浮かばない状態でした。その結果、「売り出し価格って?」「瑕疵担保責任って?」「物件状況報告書って?」といった具合に、手探り状態で物事は進んでいきました。

 いま振り返ると、もう少し勉強してから親の家の売却に挑むべきだったと反省しています。

 今回、『親の家を売る。──維持から売却まで、この1冊で大丈夫!』をまとめるにあたり、さまざまな取材を進めた結果、不動産仲介業者の中には、売り主に寄り添わず、自社の都合のいいように売りさばくケースもあることを知りました。

売却までの段取りを知っておく

 そうならないためにも、まずは、親の家を売るときの流れをつかんでおくことが大切です。どのような段取りで、不動産の売買は進められていくのかがわかると、不動産仲介業者と対等に付き合っていけるようになるからです。

親の家を売るための流れ

① 親の家の相場を調べる
② 複数の不動産仲介業者に簡易査定を求める
③ 訪問査定をしてもらう
④ 契約する不動産仲介業者を決める
⑤ 売り出し価格を決定する
⑥ 室内外をきれいにしておく
⑦ 登記変更などを行う
⑧ 不動産仲介業者が販売活動を開始する
⑨ 購入希望者が現れる

 最初のステップは、売るタイミングの見極めです。

 まずは、親の家のエリアに他の売り物件がないかなどをチェックします(「急いで売る必要がなければ、売りどきを見極める」参照)。

 売却するベストなタイミングだと思ったら、親の家の相場を調べます。SUUMOなど不動産情報サイトで、親の家のあるエリアで似た物件の売り出し価格や成約価格を参考にしていきます。

 なお、親の家の相場は、家を維持している段階で定期的に調べておくことをおすすめします。いざ売るタイミングがきたときに、似た物件が売りに出されていない可能性もあるからです。

【関連記事】>>自分の手で不動産相場を調べる方法とは? 公示地価、路線価の調べ方・解読方法と、オンライン査定サイトの活用法を公開!

複数の不動産仲介業者に簡易査定を出す

不動産一括査定サイトで複数社に親の家の査定を求める
不動産一括査定サイトなら、一度の依頼で複数社に査定依頼ができて便利(出所:PIXTA)

 続いて、不動産仲介業者に簡易査定を求めます。査定は、基本的に無料で受けられますので、1社だけでなく、複数の業者に求めるようにします。

 その際、ネットの「不動産一括査定サービス」を利用すれば良いでしう。ただし、簡易査定は周囲の取引実績から金額を出しているので、あくまでも目安となります。

 その後、簡易査定を頼んだ不動産仲介業者から数社程度にしぼり込み、訪問査定をしてもらいます。ここで初めて担当者に会うことになります。

 実際に物件や周囲の状況をチェックし、売り出し価格の目安となる査定価格を出してもらいます。

 すべての業者との訪問査定が終わったら、その中から1社を選んで媒介契約を結びます。その際は「査定額が一番高い=良い不動産仲介業者」とは決め付けないこと。

 相場よりも高い査定額を付けるのは、単に契約を結びたいだけの可能性もあ
ります。担当者の人柄や建物に対する正しい評価、販売戦略など、さまざまな視点から選ぶことが大切になります。

【関連記事】>>不動産一括査定サイト&査定業者33社を比較! おすすめ、メリット・デメリット、選び方などを徹底解説

登記変更は売り主自身が行う

 1社を選んだら、今後の販売戦略などを話し合い、売り出し価格を最終的に決定します。この価格の決定権は、当然、売り主にあります。

 この動きと並行して、親から子供への登記変更など、売り主自身が行うこともあります。不動産仲介業者を通して、測量なども行っていきます。

 また、建物に価値がある場合は、購入希望者に家の中を見てもらう内覧が行われます。そのときは部屋の中をきれいにしておく工夫が必要です。

 媒介契約を結んだら、不動産仲介業者による販売活動がスタートします。自社が持つ顧客リストやレインズ、広告宣伝などを通じて、買い手を見つけていきます。
※レインズ(REINS)とは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのこと

 1カ月程度経過し、買い手が見つからない場合は、売り出し価格の見直しなどを行うこともあります。

【関連記事】>>不動産が売れなくて困っている売主は必見!値下げのタイミングのチェック方法と、買主を呼び込む「効果的な値下げ方法」とは?

買い主が決まったら売買契約を結ぶ

 不動産仲介業者から「申し込みが入っています」などの連絡が入ります。そして買い主が決まったら、不動産会社から「購入申込書」が届き、売買契約の段取りを進めます。

 その後、売り主は「物件状況報告書」や「付帯設備表」を提出し、建物の状況や設備の内容を報告します。最終的に問題がないと買い主が判断すれば、売買契約を結びます。

 以上が一般的な不動産売却の流れになります。

急いで売る必要がなければ、売りどきを見極める

 自分の家の売却であれば「引っ越すので、早く売らなければ」といった事態になりがちですが、親の家の場合は「近隣に迷惑だから」「資金が一刻も早くほしい」といった急ぐ理由がない限り、時間をかけて売り、1円でも高い収益を目指したいものです。

売りどきの見極め方

① 競合物件の有無
② 安値の物件の有無
③ 更地での売り出しの有無
④ 季節の見極め

競合物件の有無をチェックする

 高い収益を狙う場合は、売るタイミングをしっかり見極めることが大切になります。

 一番の見極めポイントは「競合物件の有無」です。同じエリアに同じようなサイズの物件(土地)が出ていないときに売り出せば、高く売れる確率が高まります。SUUMOなど不動産情報サイトで、親の家の周囲の状況をチェックしましょう。その結果、供給過多であると判断したら、待つ選択を取ります。

 マンションの場合は、同じマンション内で、売り物件がある場合は待つべきです。なお、家屋(建物)付きで売る場合は、同じエリア内で「家屋付き」の売り物件がなく、一方で、「更地」での売り物件が多い場合は、待たなくてもOKです。家屋付きの物件を求めている層は確実に存在するからです。

 季節も、見極めポイントになります。転勤などで住居が変わる2〜3月は、住み替えの需要が大きくなり、高値で売却できる可能性も高くなります。

需要の高い2〜3月を外すのも一つの手

 一方で、これらの季節は、不動産仲介業者も売却をすすめるため、売り出し物件も増えます。

 練馬区に住む私の友人は、あえて夏に売り出し、2〜3月の相場よりも高い値段で売り切りました。春先は同じエリアに3件ほど売り物件が出されたので見送り、物件がゼロだった夏に売ったのです。あえて2〜3月を避けるのも、戦略の一つです。

希少性のある物件は、じっくり高く売る

希少性のある物件は、じっくり高く売る
実家が希少性のある物件の場合は、ゆっくりと、高く売る(出所:PIXTA)

 親の家を高く売るためには、売るタイミングを見極めることが大切ですが、希少性のある物件の場合は、365日いつでも売りどきだといって過言ではありません。

 では、どんな物件が、希少性の価値が高いのでしょうか。

希少性のある物件とは?

① 売り物件が出にくい地域にある
② 駅から徒歩5分以内の物件
③ 建ぺい率・容積率に余裕がある物件
④ 発展する可能性のあるエリアの建物

 まずは、売り物件が出にくい地域にあるケースです。こうした地域の特徴としては、評判の良い学校があり、住民の所得水準が比較的高いことが挙げられます。

 このようなエリアは、住環境や治安がよく、行政サービスの質も高めで、人気が高く、長く住む人が多いのです。

駅から徒歩5分以内の物件は大人気

 駅近の物件も希少性があります。特に駅から徒歩5分以内の物件は、人気が高くなります。限られたエリアのため、需要が供給を上回るからです。

 都市部に限らず、少し離れた地域でも、駅周辺にマンションが多くある土地であれば、今後開発される土地は少ないため、駅近の希少性は高くなります。

 都市部において、建ぺい率・容積率に余裕がある物件も、希少性が高いといえます。両方の率の上限ギリギリの建物は多いのですが、その逆は少ないからです。今よりも大きな建物が建てられるため、ニーズが高いのです。

大規模再開発のエリアは地価がアップも

 将来的に発展する可能性のあるエリアの建物も、希少性があります。

 私の知人は北海道北広島市で不動産業を営んでいますが、北海道日本ハムファイターズの新球場が同市にできたことで、地価は大きく上がったそうです。

 親の家のあるエリアが、近い将来、発展する要素はないのか、チェックしてみてください。

 以上のように、実家が希少性のある物件の場合は、ゆっくりと、高く売ることをおすすめします。

>>後編「親の家を売る不動産仲介業者は「大手」がいいとは限らない!」はこちら

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