リバースモーゲージのリスクを不動産のプロが解説! 想定外の利息負担に要注意

2026年10月13日公開(2026年10月13日更新)
高田一洋:一心エステート株式会社代表取締役CEO

リバースモーゲージは、自宅を担保にまとまった資金が借りられるとあって、老後の生活資の目的などで高齢者が契約するケースがここ数年、増加しています。「リバースモーゲージと売却、どちらがいいのか?」と筆者もご相談いただきます。ただ、リバースモーゲージはリスクについて理解しておかないと、契約後に後悔することもあるので注意が必要です。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)

リバースモーゲージの仕組みや特徴は?

 リバースモーゲージは、自宅を担保にして金融機関からお金を借り、契約者が亡くなった時などに自宅を売却して一括返済する仕組みです。毎月の返済は利息のみで済むケースが多く、生きている間は自宅に住み続けながら、まとまった資金や毎月の生活費を確保できるのが特徴です。

リバースモーゲージ
リバースモーゲージの仕組み(編集部作成)

 資金の受け取り方は一括か分割かを選べる商品が多く、毎月一定額を受け取る形にした方が、総受取額としては多くなりやすい傾向があります。老後の資金を住まいを手放さずに確保できる手段として、一定の需要があります。

 ここ数年、リバースモーゲージの利用は急速に広がっています。住宅金融支援機構の集計では、回答があった金融機関だけでも貸出残高は2024年度に約2091億円となり、2020年度比で33%、金額にして約500億円増えました。高齢の単身世帯や夫婦のみの世帯が増えたこと、2022年以降続く物価上昇によって老後資金に余裕を持たせたいというニーズが強まったことが、拡大の背景にあると見られています。

 ただ、利用が広がるにつれて、想定と違ったという相談やトラブルも目立ち始めています。融資額や借り入れる年齢によって、最終的に支払う総利息には大きな差が生じるためです。「想定以上に利息負担が膨らんだ」という後悔につながりやすいのが、今のリバースモーゲージの実情です。

 実際、私のところにもリバースモーゲージか売却かで迷って相談される方は一定数います。相談者の多くは、老後の生活費や医療費などまとまったお金が必要になった高齢の方たちです。

【関連記事】>>《銀行員が解説》リバースモーゲージの具体的な商品は?積極的な銀行と消極的な銀行が存在する

リバースモーゲージの注意すべきリスク・デメリット

 リバースモーゲージには、注意しておくべきリスクがいくつかあります。

 一つは金利上昇局面で不利になる点です。リバースモーゲージは、変動金利型の商品が多く、現在は3%以上の設定が一般的になっています。金利が上がると返済負担が重くなったり、借りられる金額そのものが目減りしたりします。金利が上がるということはインフレが進んでいるということでもあり、そうした局面ではリバースモーゲージ自体の使い勝手が悪くなります。

 一般的な変動型住宅ローンには、金利が上がっても返済額の見直しを5年ごとに抑える「5年ルール」のような緩和措置がありますが、利息のみを払うリバースモーゲージにはこうした仕組みがなく、金利が上がればそのまま返済額に跳ね返ってきます。

 もう一つは、想定以上に長生きした場合のリスクです。契約が長期化するほど利息の負担は積み上がっていきます。

 また、意外と見落とされがちなのが、不動産価格が将来上昇する可能性そのものがリスクになりうる点です。リバースモーゲージは契約時点の不動産評価額をもとに借り入れ枠が決まります。ここで一度契約を組んでしまうと、その後に不動産価格が上がったとしても、借り入れ枠を組み直して増額するのは基本的に難しくなります。つまり、資産価値が上がる局面ほど、先にリバースモーゲージを組んでしまったことが機会損失につながりかねません。

リバースモーゲージを組むと売却できなくなる、という誤解

 リバースモーゲージの相談を受けるなかで、「リバースモーゲージを組むと、その家は売れなくなる」と思われている方が多いと感じますが、それは誤りです。

 リバースモーゲージは自宅に抵当権を設定する仕組みなので、借り入れ残高を返済して抵当権を抹消できれば、契約中でも売却は可能です。売却代金でリバースモーゲージの残債を完済し、手元にお金が残るケースも実際にあります。

リバースモーゲージをおすすめしない理由

リバースモーゲージはおすすめできない
リバースモーゲージのメリットだけを見て判断するのは危ない(出所:PIXTA)

 とはいえ、正直なところ、私はリバースモーゲージをあまりおすすめしていません。理由は、ここまで見てきたリスクに見合うだけのメリットが、多くの方にとってそこまで大きくないと感じているからです。

 融資枠は、自宅の評価額の数割にとどまることが多く、そのうえ契約形態によっては、利息の負担は年々積み上がっていきます。多くの場合、リバースモーゲージより自宅を売却したほうがまとまったお金を手にできますし、利息を払い続ける必要もありません。

 相続人がいる方であれば、なおさらそう思います。利息を払い続けながら住み続けるより、早めに売却して現金という流動性の高い資産に整えておいたほうが、結果として多くの資産を次の世代に残せるケースが多いというのが、たくさんの相談を受けてきた実感です。

 もちろん、最終的に自宅を売却してリバースモーゲージの残債を完済すればいいだけの話なので、それ自体が悪い選択というわけではありません。ただ、積極的に選ぶ理由としては弱いというのが率直なところです。

リバースモーゲージの利用がおすすめの例外的ケース

 例外的にリバースモーゲージをおすすめできるのは、相続人がいない方や、資産を自分の代で使い切りたいと考えている方です。

 「思い出はあるけれど、大切に残したい相手が特にいない」という方にとっては、住み慣れた自宅に住み続けながら資金を確保できるリバースモーゲージは、選択肢として十分に理にかなっています。

リバースモーゲージの賢い使い方もある

 また、理屈の上では、リバースモーゲージの賢い使い方も存在します。たとえば、1億円の物件を持っている方が、5000万円だけリバースモーゲージで借り入れ、数年生活資金として使ったあとに物件を売却し、元本と利息を完済して差額を手元に残す、という運用です。良い物件を持っていれば、こうした形は成立します。

 ただ、現実にはこのように能動的にリバースモーゲージを使いこなそうとする方はほとんど見かけません。実際に相談に来られる方の多くは、今の住まいを離れたくない、住み替える気力もあまりないという方が中心で、資産運用の手段として戦略的にリバースモーゲージを組み替えていくような使い方を望む方は、かなり少数派だと感じています。

高齢者こそ売却して軽やかな住み替えを検討すべき

 ここまでを踏まえて「リバースモーゲージと売却のどちらをすすめるか」と聞かれたら、私は売却をすすめます。住み替えることで得られる利便性・メリットの方が大きいからです。

 団塊の世代はおよそ800万人、65歳以上の高齢者全体で見ると、この世代の持ち家率は84.5%、そのうち76.2%が一戸建てです(出典:内閣府「令和6年版高齢者白書」)。この数字が意味することは、将来的に車を運転できなくなっても、駅から遠い一戸建てに住み続ける方が大量に出てくるということです。

 年齢を重ねると、行政サービスや病院、クリニック、スーパーへのアクセスが暮らしの生命線になっていきます。車が使えなくなれば、駅近で医療や介護サービスを受けやすい場所への住み替えは、いずれ避けられない選択になります。今の家がどれだけ便利で慣れ親しんだ場所だとしても、環境そのものが変化していくことは止められません。

 資産としての不動産は、使わなければ価値を発揮しません。広い郊外の戸建てを売却し、駅近のコンパクトな住まいへ、いわば「ジャストサイズ」に住み替えるという発想が、これからの高齢者の住まい選びには必要だと考えています。

 夫婦2人だけなら2LDKで十分ですし、高齢の夫婦2人で4LDKを維持する必要もありません。子どもが帰省したときの部屋が欲しいという理由であれば、その頻度を考えるとホテルを使うほうが合理的なケースも多いはずです。

 私が相談を受ける中では「軽やかに住み替える」という発想は、20代後半から40代の世代にはすでに定着しています。60代・70代からのサイズダウンも、これから当たり前になっていく時代が来ると見ています。

 スマートフォンの普及によって、コミュニティが特定の場所に縛られにくくなったことも、この流れを後押ししています。かつては祭りや地域の集まりに参加することがコミュニティそのものでしたが、今はつながりの多くがスマートフォンを通じたものに変わりました。人とのつながりを大切にしつつ、場所そのものへのこだわりは手放していい。そう考えられる高齢者が増えていくほど、住み替えのハードルは下がっていくはずです。

「今の自宅に住み続ける理由」に向き合う

 リバースモーゲージは、住み慣れた自宅を手放さずに資金を確保できる、うまく使えば魅力的な仕組みです。ただ、多くの方にとって本当に向き合うべき問いは「リバースモーゲージか売却か」ではなく、「そこまでして今の場所に住み続ける理由が何なのか」だと思っています。

 思い出のある家を離れたくない気持ちはよくわかります。同時に、駅近への住み替えによって得られる利便性や、行政・医療・介護サービスへのアクセスのしやすさは、高齢期の暮らしを大きく左右します。資産を活かしながら、暮らしやすい場所へ軽やかに住み替えていく。その選択肢を、もっと多くの方に前向きに検討してもらえたらと思っています。

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