多店舗化している不動産仲介会社が、「囲い込み」「買い取り」をするのはなぜ? 店舗展開や営業の仕組みからその理由が見えてくる

【第15回】2018年12月21日公開(2024年2月15日更新)
梶本幸治:株式会社レコ 取締役・コンサルティング本部長

全国展開している大手不動産仲介会社や、地域で多店舗展開している不動産仲介会社は、ブランド力や知名度があることから、「売却を任せてみようかな」と思う方も多いでしょう。しかし、多店舗展開をしているがゆえの弊害もあります。違法な「囲い込み」をしたり、安易に「買い取り」したりするケースも見られるのです。どうして囲い込みや買取に走りがちなのか、その理由を説明いたしましょう。

大手の不動産仲介会社は店舗同士の仲が悪い

多店舗展開している不動産仲介会社は、契約数を競っているため、仲が悪いことがある多店舗展開している不動産仲介会社は、契約数を競っているため、仲が悪いことがある(写真提供:ACワークス株式会社)

 全国展開している大手不動産仲介会社や、地域で多店舗展開している不動産仲介会社では、店舗(支店・営業所)同士の仲が悪いという話はよく聞きます。

 実際、私が現役で不動産仲介の営業をしているとき、次のようなことがありました。

 私のお客様が某大手不動産会社α店の直物件(売り主と直接媒介契約を結び販売している物件)を気に入られ、購入申込書(買付証明書)を差し入れることになりました。

 そこで、当該物件にほかの商談が入っていないか確認するため(これを「物件確認」略して「物確(ぶっかく)」といいます)、私がα店の物件担当に連絡を入れたところ、「梶本さん、多少価格交渉が入っても売り主様を説得しますから、とにかく早く買付証明を入れてください」との回答があったのです。

 この某大手不動産仲介会社は「両手契約(売り主、買い主双方から仲介手数料を得るために、ほかの不動産会社に自社直物件を販売させず、自社の買い主で成約をすること)」に固執することで有名でしたので、この回答には少し驚いたものです。

 無事に売買契約が成立したあと、このα店営業担当者に「私からの買付証明を受けてくれてありがとうございました」とお礼を言ったところ、裏事情を語ってくれました。

 「実は、当社β店の営業担当から物確があり、今週末にもこの物件に買付証明を差し入れたいって言ってきたのです。その旨を上司に報告したところ、他店に売られるなんて恥だ。他店の買付証明を受けるくらいなら、他社のお客様で契約しろと指示されまして。そこで梶本さんに今回のようなお願いをしたわけです」と。

 他店舗とは言え、自社のお客様で契約したほうが会社としての業績は上がるのですが、会社としての業績よりも自店のプライド(?)を優先し、他社との契約を選んだようです。

売却が「エリア制」だと、他店に任せたくない

 なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

 他店舗展開している不動産会社の多くは「売りはエリア制、買いはフリー」との方針で営業を行っているようです。これは、仕入れ営業(不動産売却依頼の獲得営業)に関しては当該エリア担当の営業店舗が実施し、買付営業(不動産購入希望のお客様に物件紹介を行う営業)に関しては、エリア制を敷かずどの地域の物件でも取り扱うことができるというものです。

 たとえばA市を担当するA店舗と、B市を担当するB店舗があったとして、A市内に所在する不動産の売却関してはA店舗が担当し、B市内に所在する不動産の売却はB店舗が担当する。しかし、A店舗のお客様がB市内の物件を買いたいと希望されたときは、A店舗はB市内の物件を紹介することができるということになります。

 上記の私が経験した事例を当てはめると、A市内でA店舗が売却依頼を受けた物件に対し、B店舗のお客様が購入されそうになり、あわてて他社のお客様を受け入れたことになりますね。

 A市内を担当しているA店舗からすると、自店エリア内の物件を他店舗に売られることは恥であり、営業会議などで「A店舗の販売力はどうなっているのだ! 自店取扱物件をB店舗に売られるなんて恥ずかしいと思わないのか! それに比べてB店舗はよくやった。よく知らないはずのエリアで契約できるなんて、お客様の内容を把握している証拠であり、素晴らしい営業力だ」と、自店が社内でさらし者になる可能性だってあります。

 また、A店舗とB店舗が営業成績で競っている場合は、B店舗に物件を売られてしまうとB店舗に買い主の仲介手数料が入ることになりおもしろくありません。

 そこで、「他店の買付証明を受けるくらいなら、他社のお客様で契約しろ」ということになるのです。

【関連記事はこちら】>> 不動産仲介の営業の仕事は売却物件探しが7割! 電気メーターによる空き部屋探しが日課で、非効率な仕事のツケは売り主、買い主に押し付け

「自店で売りたい」ので、囲い込みに走るケースも

 ここまで読んでくださった方のなかには、「そんなバカなことをしていては会社全体の不利益になるじゃないか。役員や本部の人間は、なぜそのようなバカげたことを放置しているの?」と思われたことでしょう。

 しかし、営業店同士が競い合うことにより、会社の業績が上がるという側面もあるのです。

 不動産営業店の責任者は「会社のことなんて考えなくていい、ウチの店のことだけ考えろ」と部下にハッパをかけることがあります。このような「過度な店舗間競争」が、各店のプライドに火をつけ結果として会社の業績を向上させる効果があります。

 そんな企業文化の副作用として「他店の買付証明を受けるくらいなら、他社のお客様で契約しろ」といったセリフが出てくるわけです。

 このような企業文化で営業していると、通常の状態では、「自店舗の物件は絶対に自店舗で売りたい」という気持ちが過度に強くなり、そのため「物件囲い込み」に走るケースが見受けられます。

 多店舗展開している会社は「販売力がありそう」な感じがしますので、ご所有物件の売却を任せてみようかなという気持ちになりますが、ほかの不動産会社(1店舗のみで営業している地域密着型の不動産会社)にもあわせて相談し、判断材料を多くそろえた上で販売を依頼する不動産会社を決めてください

【関連記事はこちら】>> 不動産仲介会社は「大手」がいい?「地場」がいい? 家を売る際のそれぞれのメリット・デメリットを解説

センター制の会社の「買い取り」推奨には注意

 しかし、最近ではこのような「過度な店舗間競争」も薄らいできたように思います。

 一部の大手不動産売買仲介会社では最近、店舗の統廃合が進み、都心部の大規模店舗から複数市町村を管轄する「センター制」「支店制」と呼ばれる方式で営業する会社が増えてきました

 一昔前なら各駅前に営業店があったところを、主要駅前に大規模支店(センター)を設け、そこから近隣市町村へ営業担当を派遣するのです。

 この方式では、1つの支店(センター)が広域をカバーすることになりますので、狭いエリアでの店舗ごとの競争や対立が起こりにくくなりました。

 しかし、前述の通り「過度な店舗間競争」が会社の業績を向上させてきた効果は期待できなくなります。

 実際、この「センター制」「支店制」は東京23区内等の大都市部では一定の成果を収めているように聞きますが、地方では苦戦が続いているところもあります。

 また、「センター制」「支店制」では、地域への密着度が「各駅前に営業店があった頃」に比べて希薄になりますので、地域の情報に疎くなりがちで、地域の不動産会社とのパイプも細くなってしまいます。

 このような点からも、主要駅前の大規模支店から近隣市町村へ営業担当を派遣する方法を取っている不動産会社は、販売力が弱っているように私は感じています。

 販売力が弱まった結果、不動産査定の段階で「プロの買い取り価格」での売却へ誘導する営業担当が増えてきました。本来であれば、自社で培った販売力により少しでも高く売却することが「売り主に対する誠意」だと思うのですが、販売力が弱っている不動産会社では「手っ取り早くプロに買い取って貰える価格で売り主に提案し、楽をして儲けよう」と考える営業担当が出てきているのです。この「買い取り」は、相場よりも、かなり安くしか買い取ってくれませんので、注意しましょう。

 不動産査定を依頼した大手不動産売買仲介会社の営業担当が、プロの買い取りばかりすすめてくるようなら、この営業担当は断った方が賢明でしょう。

不動産会社の店舗展開や、営業店の場所もチェックを

 いかがでしたか。

 多店舗展開している不動産会社の場合、過度な店舗間競争があると、自店舗で売りたいがあまり「囲い込み」に走るケースがあります。

 一方で、センター制を採用しているケースだと、「買い取り」を進めることが増えています。

 あなたが不動産を売却される際は、依頼しようと思っている不動産会社の店舗展開や、営業店の場所なども考慮に入れて、さらに地元の密着の不動産会社にも相談してみながら、検討して下さい。

【関連記ことはこちら】>> 不動産一括査定サイトで相場を知って上手に売却! メリット・デメリットと、売却への流れを紹介

  • RSS最新記事
おすすめ不動産一括査定サイトはこちら

※不動産一括査定サイトとは、売却したい不動産の情報と個人情報を入力すれば、無料で複数社に査定依頼ができます。査定額を比較できるので売却相場が分かり、きちんと売却してくれる不動産会社を見つけやすくなる便利なサービスです。

◆SUUMO(スーモ)売却査定
SUUMO(スーモ)
 無料査定はこちら >>
 
特徴 圧倒的な知名度を誇るSUUMOによる一括査定サービス
・主要大手不動産会社から地元に強い不動産会社まで2000社以上が登録
対応物件 マンション、戸建て、土地
紹介会社数 10社(主要一括査定サイトで最多)※査定可能会社数は物件所在地によって異なります
運営会社 株式会社リクルート住まいカンパニー(東証プライム子会社)
>>SUUMO(スーモ)の詳細記事はこちら
◆リビンマッチ
特徴

・マンション、戸建、土地のほか、工場、倉庫、農地の査定にも対応可能

1700社の不動産会社と提携

対応物件 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫
紹介会社数 最大6社(売却6社、賃貸、買取)
運営会社 リビン・テクノロジーズ(東証グロース上場企業)

◆すまいValue
不動産一括査定サイトのすまいValue
簡単60秒入力、大手6社に査定依頼できる!
特徴 大手不動産会社6社が運営する一括査定サイト
対応物件 マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート、一棟ビル
対応エリア 北海道、宮城、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、愛知、岐阜、三重、大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山、岡山、広島、福岡、佐賀
運営会社 大手不動産会社6社(東急不動産、住友不動産販売、三井のリハウス、三菱地所の住まいリレー、野村の仲介+、小田急不動産)
>>すまいvalueの詳細記事はこちら
◆マンションナビ
マンションナビ
 無料査定はこちら >>
 
特徴

マンションの売却に特化
・マンションを賃貸に出したい人の賃料査定にも対応
900社以上の不動産会社と提携

対応物件 マンション
紹介会社数 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社)
運営会社 マンションリサーチ
>>マンションナビの詳細記事はこちら
◆HOME4U(ホームフォーユー)
HOME4U
 無料査定はこちら >>
 
特徴 悪質な不動産会社はパトロールにより排除している
・20年以上の運営歴があり信頼性が高い
・1800社の登録会社から最大6社の査定が無料で受け取れる
対応物件 マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所
紹介会社数 最大6社
運営会社 NTTデータ・スマートソーシング(東証プライム子会社)
>>HOME4Uの詳細記事はこちら
◆いえカツLIFE
いえカツLIFE
 無料査定はこちら >>
 
特徴

・対応可能な不動産の種類がトップクラス
共有持ち分でも相談可能
訳あり物件(再建築不可物件、借地権、底地権など)の査定も対応可能

対応物件 分譲マンション、一戸建て、土地、一棟アパート・マンション・ビル、投資マンション、区分所有ビル(1室)、店舗、工場、倉庫、農地、再建築不可物件、借地権、底地権
紹介会社数 最大6社(売買2社、買取2社、リースバック2社)
運営会社 サムライ・アドウェイズ(上場子会社)
>>いえカツLIFEの詳細記事はこちら
◆おうちクラベル
おうちクラベル
 無料査定はこちら >>
 
特徴

・AI査定で、査定依頼後すぐに結果が分かる
・SREホールディングスが運営する一括査定サイト

対応物件 マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート
紹介会社数 最大15社
運営会社 SREホールディングス株式会社(東証プライム上場企業)
>>おうちクラベルの詳細記事はこちら
◆イエウール
イエウール
 無料査定はこちら >>
 
特徴

掲載企業一覧を掲載、各社のアピールポイントも閲覧可能
2000社以上の不動産会社と提携
・対応可能な不動産の種類が多い

対応物件 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
紹介会社数 最大6社
運営会社 Speee
>>イエウールの詳細記事はこちら
◆LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)
LIFULL HOME'S
 無料査定はこちら >>
 
特徴

日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営
2400社以上の不動産会社と提携
匿名査定も可能で安心

対応物件 マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件
紹介会社数 最大6社
運営会社 LIFULL(東証プライム)
>>LIFULL HOME'Sの詳細記事はこちら

 

 

一括査定サイトと合わせて
利用したい査定サイト

 

◆ソニーグループの「SRE不動産」売却査定
60秒で入力可能! 囲い込みのない不動産会社
特徴 ・両手仲介・囲い込みを行わない
・上場企業のソニーグループが運営
・売却専門の担当者がマンツーマンで高値売却を追求
対応物件 マンション、戸建て、土地(建物付きを含む)、収益用不動産
対応エリア 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県
運営会社 SREホールディングス株式会社(ソニーグループ)
>>SRE不動産の詳細記事はこちら

不動産一括査定サイトを比較
評価・評判を実際に一括査定して検証!

サイトロゴ suumo売却査定 home4u マンションナビ おうちクラベル イエウール ライフルホームズ リビンマッチ いえカツLIFE HowMa RE-Guide マイスミEX イエイ すまいValue
サイト名 suumo売却査定 HOME4U マンションナビ おうちクラベル イエウール ライフルホームズ リビンマッチ いえカツLIFE HowMa RE-Guide マイスミEX イエイ すまいValue
提携社数 2000以上 1800以上 2500 不明 1900以上 3691以上 1700以上 500以上 6400以上 29 800以上 1700以上 6
最大紹介社数 10
※物件所在地によって異なる
9 6 6 6 6 6 6 6 6 10 7 6
主な対応物件 マンション、戸建て、土地 マンション、戸建て、土地 マンション マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地 マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など
対応エリア 全国 全国 全国 全国 全国 全国 全国 東京、千葉、神奈川、埼玉 全国 全国 全国 全国 全国
記事を読む 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら

【不動産仲介会社の評判を徹底調査!】
・「SRE不動産(ソニーグループ)」の評判
・「三井のリハウス」の評判
・「住友不動産販売」の評判
・「東急リバブル」の評判
・「野村の仲介+」の評判
・「明和地所」の評判
・「京王不動産」の評判
・「オークラヤ住宅」の評判
・「小田急不動産」の評判

TOP