不動産売却を依頼する会社は大手か地場どちらがおすすめ? メリット・デメリットを解説!

2018年7月6日公開(2024年3月27日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

不動産仲介会社といっても、地場の小さな会社から大手までいろいろだが、家の売却を依頼した場合、会社の規模によって何か違いが出るものなのだろうか? 大手なら安心して任せられるイメージがあるが、地元密着型の不動産仲介会社の中にも、賃貸物件だけでなく売り物件にも力を入れているところはある。どんな基準で依頼先を決めればいいのか、メリット・デメリットを確認してみよう。

家の売却で頼りになる不動産会社は、大手と地場どちら?

 物件を購入する際は、立地条件や建物の仕様、建設を手掛けたデベロッパーやハウスメーカーの信頼性が重要で、販売窓口となる代理店や不動産仲介会社の名前を気に留めた人は少ないだろう。

 しかし、家の売却では、どの不動産仲介会社を選ぶかで、売却価格や買い手の見つけやすさが変わってくることも珍しくない

 とはいえ、星の数ほど不動産仲介会社があるなか、依頼先を一社に絞るのは容易なことではない。

 そこでまず、地場と大手の不動産仲介会社に分けて、その違いを考えてみたい。

地場の不動産仲介会社の強みは「地域密着の情報網」

 地場の不動産仲介会社に依頼するメリットの一つは相談のしやすさだろう。距離的にも近く足を運びやすいし、土地勘があるため、住所を伝えただけで話が通る。

 通学区の学校の評判など、大手不動産仲介会社が把握し切れない情報も把握していて、買い手へのアピールポイントとして生かしてくれたりもする。

 大手にない独自の人的ネットワークを地域に築いていることも見逃せない。「いい物件が出たら連絡がほしい」と地域限定で物件を探している顧客から依頼を受けていたり、古くから付き合いのある地主や商店街のメンバーのルートで、買い手の情報が入ったりすることも少なくない。

 また、ほとんどの地場の不動産仲介会社は賃貸物件の仲介を主力業務としている。そのため、売り物件についてのノルマもなく、売主に親身になって相談にのってもらいやすい。

 何よりも口コミこそ最大の営業ツールと心得ているので、悪評を招くような言動は少ないはずだ。

 ただ、地場の不動産仲介会社に依頼するうえで問題なのは、売却実績がどれくらいあるのか、わからないことだ。

 店頭にどれくらい売り物件情報が貼られているかを確かめるくらいしか知るすべがない。大手の不動産仲介会社に比べて、自社サイトなどによる集客は不得手なだけに、前記したような独自の情報網を持っていない不動産仲介会社だと、売却が長期化する恐れも出てくる。

買い手への信頼感では大手だが、「ノルマ達成」を優先されるリスクも

 一方、大手の不動産仲介会社は圧倒的なブランド力が強みとなる。中古物件の買い手からすれば、「価格は妥当か」「瑕疵の心配はないか」「入居後すぐに設備が故障してしまわないか」「販売実績のある会社なのか」など、心配が尽きないもの。

 そうした不安感を解消する保証制度を設けているのは、地場の不動産仲介会社にない大きなメリットといえる。

 また、全国に販売ネットワークがあり、買い手のリストを持っているのに加え、自社で物件紹介サイトを設けているので、地場の不動産仲介会社よりも売却情報が的確に伝わりやすい

 だからと言って、大手のほうが地場の不動産仲介会社に比べて、総合的に優れているわけではない。

 たとえば、情報量については大手の不動産仲介会社の圧勝に思えるかもしれないが、特定のエリアに限定した場合、前記の「通学区」の話のように、むしろ地場の不動産仲介会社のほうが詳しいこともある。

 そのうえ、大手の不動産仲介会社の場合、多いところでは、営業担当者1人あたり常時8~10物件程度を担当するため、問い合わせの数だけでも膨大になり、個々の売主への対応が粗くなることもある

 さらに、売主の希望条件での成約をめざして売却を長引かせるよりも、売主を説得して価格を下げさせて効率よく物件をさばいたほうが自分のノルマを達成しやすい、という心理にも陥りがちだ。

 大手であるがゆえに、担当者が他店に人事異動になることもある。引き継ぎがうまくいっていないと、売却に影響が出ることもあり得る。

大手不動産会社の中には「悪慣習」に手を染めている会社も!

 特に大手の不動産仲介会社で注意したいのは、「両手取引」が常態化しているところもあることだ。

 両手取引とは、一つの不動産仲介会社が売主と買主の両方を仲介すること。得られる仲介手数料が2倍になる。両手取引自体は法律違反ではないが、問題なのは、両手取引を成立させるために、「囲い込み」が行われていることだ。

 売主と専任媒介契約を結んだ不動産仲介会社は、「レインズ(REINS)」と呼ばれる業者専用のデータベースに物件情報への登録が義務付けられていて、その情報は他社も検索できるようになっている。

 しかし、この情報登録を故意にしなかったり、情報を見て問い合わせてきた買い手側の不動産仲介会社に対して、「もう売れてしまった」などと偽って門前払いしたりする行為が行われているのだ。

 こうした囲い込みは、売主への媒介契約違反であり、内規によってこれを禁じている会社もある。だが、両手取引を成立させるために、一部の不動産仲介会社で売主の利益を度外視して行われているのが実態だ。

【関連記事】>>大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?! 住友や三井などは40%以上! 売却時は両手比率が高い会社に注意を

 さらに悪質な不動産仲介会社では、こうして買い手がつかない状態を演出して、売出価格を売主に下げさせ、両手取引が成立しやすいように誘導しているところもある。

 地場の不動産会社の中にも、両手取引を行っているところはあるが、自社サイトが弱いぶん、買い手を集める力が弱いため、一般的に囲い込みがしづらくなっている。

地場と大手の不動産仲介会社のメリット、デメリット

 以上、地場と大手の不動産仲介会社のメリット、デメリットをまとめると下表のようになる。

 ただし、このうち確かなのは、大手のほうが担当者一人当たりの取り扱い物件数が多いことと、ブランド力に勝ることくらいだ。

 前述のように、両手取引や囲い込みについても、大手だから心配といっても、地場の中でも皆無とはいえず、決めつけられない。

 それゆえ、あくまで下表は参考程度に受け止め、売主の利益を最大化してくれる信頼できる不動産仲介会社かどうかを、個別に判断していくことが大切だ。

◆大手と地場の不動産仲介会社のメリット、デメリット
  地場 大手
メリット ●地域に根差した独自情報やネットワークを持っている
●売り手の立場になって、親身に相談に乗ってもらいやすい
●買い手情報が限られることが多いという事情もあり、片手仲介に徹してもらいやすい
●自社サイトなどを利用した広告宣伝が得意
●ブランド力があり、信頼性が高い
●買い情報を豊富に持っている
●取り扱い件数が多いため、最新動向をいち早く掴める
デメリット ●自社サイトなどを利用した広告宣伝は大手より弱い
●地元でしか、ブランド力が通用しない
●買い情報や最新動向に関する情報が少ない
●賃貸の仲介を専門にしていて、売買の経験のないところも
●エリアを限定した場合、情報の深度で地場の不動産仲介会社より劣ることも
●1人の営業マンの担当する物件数が多く、売主の利益よりも、売りさばくことが目的になりがち
●売主に不利益となる、両手仲介を目的とした「囲い込み」が常態化しているところも

 さらに言えば、会社の姿勢もさることながら、担当者(営業マン)の能力によっても、売却がスムーズに進むかどうか違ってくる。記事「不動産会社の売却査定額は本当に信用できる?」も参考にするといいだろう。

売却ノウハウのある不動産仲介会社を見極める方法

 では、信頼できる不動産仲介会社を見抜くには、どうすればいいのだろうか。ひとことで言えば、売却についてのノウハウがどれくらいあるかが鍵となる。

 具体的には、以下の3点をチェックするといいだろう。

(1)複数の大手不動産ポータルサイトに物件を掲載してもらえるか

 不動産仲介会社は大手不動産ポータルサイトと年間契約を結んでいることが多い。A社では4つの大手不動産ポータルサイトと契約しているのに対し、B社では2つの大手不動産ポータルサイトとしか契約していない場合、言うまでもなく、多くの購入希望者の目に触れやすいA社のほうが売却を有利に進められるだろう。

 ちなみにこうした大手不動産ポータルサイトへの物件広告の掲載料は仲介手数料に含まれるのが一般的だ。つまり、仲介手数料の金額が同じであれば、より多くの大手不動産ポータルサイトに掲載してもらえる不動産仲介会社を選んだほうがお得ということになる。

 また、掲載する大手不動産ポータルサイトによって、閲覧数や売却の決定率はかなり違う。詳しくは別の機会に譲るが、たとえば「スーモ(SUUMO)」への掲載料は高めで、閲覧数は一番ではないが、決定率だとナンバー1と言われている。

 いずれにしても、「スーモ(SUUMO)」「ライフルホームズ(LIFULL HOME’S)」「アットホーム(at home)」「Yahoo!不動産」「オウチーノ(O-uccino)」などの大手不動産ポータルサイトのうち4つ、最低でも3つには掲載してもらえるか確認しよう。大手不動産仲介会社の中には、費用のかからない自社サイトに情報を掲載して終わりというところもあるので注意したい。

(2)広告のクオリティはどうか

 買い手の多くは大手不動産ポータルサイトを通じて物件と出会う。つまり、実際の物件の評価を受ける前段階として、サイト上のファーストインプレッションがよくないと、買い手を見つけるのに苦戦することになる。

 特に大切なのは、写真のクオリティだ。撮り方一つで、物件の持つポテンシャル以上に良く見えたり、悪く見えたりもする。東向きの物件であれば、お昼ごろには暗めに映ってしまうので、午前中の撮影が必須となる。高層マンションの外観を撮影するのであれば、下からあおるように撮ったほうが、特徴が際立つ。

 また、別途料金がかかるが、「ホームステージング」を行ってくれるところもある。ホームステージングとは、物件を撮影する際、見栄えのよい家具や家電を置いて、室内をモデルルームのように魅力的に見せる方法だ。営業マンが写メで撮ったものとは、格段に差がつくことは言うまでもない。

【関連記事】マンションを売るのに「ホームステージング」は効果があるのか、編集部員が試した結果は?

 そのほか、掲載されている写真の説明コピーや掲載点数、間取り図の見やすさなど、大手不動産ポータルサイトを実際に閲覧すれば、広告制作能力を簡単に測れるはずだ。

 特に地場の不動産仲介会社に依頼を考えている場合、当該エリアの物件を検索して、取り扱い会社をたどっていくと探し出しやすいだろう。

(3)瑕疵保険やリフォームなど、売りやすくするための知識は豊富か

 売却価格を強気に設定するためには、買い手にとって魅力的な物件である必要がある。そうしたセールスポイントの作り方について、的確にコンサルティングしてもらえるところに依頼したいものだ。

 そうした力量を判断するには、売却までの戦略をきちんと説明してくれるところかどうかが一つ。また、瑕疵保険や住宅ローン減税について質問してみるといい。

関連記事】築20年超の古い家でも高く評価させる裏ワザとは? 買主にお得な「住宅ローン減税」を適用させよう!

 そうした話をしたときに、すぐに理解してもらえるようであれば、十分なノウハウがあると判断していいだろう。

 もっとも、瑕疵保険やインスペクションについて、確かな知識を持つ不動産仲介会社はまだ少ないのが実情だ。

 そのため、詳しくないからといってダメの烙印を押す必要はないが、その後に調べた結果の報告があるかどうかで、会社としての姿勢がうかがえる。よく調べもせずに「瑕疵保険なんて不要」と片づけられるようであれば、避けたほうが賢明だ。

 以上のように、不動産仲介会社を選ぶ際は、会社の規模よりも売却ノウハウのほうがはるかに重要である。

 決めかねるようなら、地場から何社、大手から何社と絞り込んだうえで、査定金額や大手不動産ポータルサイトへの登録数、広告制作能力などを総合的に判断するといいだろう。

【関連記事】
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