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相続の相談先は税務署、税理士、弁護士…どれが正解?
不動産を相続するときの基礎知識(2)

2019年1月15日公開(2020年6月10日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

相続」にあたっては、遺産の分割や相続税の申告・納税など、さまざまな手続きが必要となる。しかし、相続は人生においてそう何度もあることではなく、相続人だけで処理するのは難しい。いろいろな専門家に相談したり、サポートを受けたりしながら行うのが一般的だ。相続の相談相手にはどのような専門家がいるのか、それぞれのメリット・デメリットは何か、まとめてみた。

相続に関わる税金全般についての相談は「税務署」へ

 相続税をはじめ、税金のことといえば「税務署」。税務署には国税庁が作成したパンフレットや冊子があり、申告用の書類も入手できる。

 窓口での相談も可能。ただ、事実関係をもとにどのように判断されるのか確認するくらい。役所なので細かい立ち入った内容を聞くには適さないだろう。

 なお、国税庁のホームページでは税金の種類別に基本情報が掲載されていて、事前の確認にはぴったりだ。※参考:国税庁サイト内「タックスアンサー(よくある税の質問)

「税理士」に相談をする場合は、専門分野を確認

 相続税について、個別の事情に応じて細かく相談するなら、「税理士」が適任だ。税理士は税金に関する国家資格であり、税務署への申告手続きなどを代行してくれる。

 ただし、税理士といっても実は専門分野が分かれる。日本には現在、7万7000人ほどの税理士登録者数がいるが、そのうち資産税と呼ばれる相続税・贈与税を専門にしている税理士は5%もいないといわれる。多くの税理士は、依頼案件の多い企業の法人税や個人の所得税を専門に扱っているからだ。

 普段、相続税・贈与税の申告などをやったことのない税理士では、遺産の評価や特例の適用などでミスが発生しやすいといわれる。相続について税理士に相談するなら、相続案件をよく扱っているかどうかを確認すべきだろう。

「弁護士」はトラブルの専門家

 「弁護士」は法律の専門家であり、裁判手続きなどを依頼する。相続においても、遺産分割協議がまとまらず、相続人の間で主張がどこまでも食い違うようなら、最後は弁護士を立てて裁判で決着をつけることになる。

 逆にいうと、相続において弁護士に相談しなければならないような状況は、相続人の間で対立が生じているケースが多く、そもそもそうした状況を避けるよう、遺言を利用したり、遺産を分けやすい形に整理するなど、被相続人が中心になって事前に手を打っておくことが望ましい

 そうした事前の対策において、弁護士に相談することは有効だろう。ただ、その場合も税理士と同じように、相続案件をよく扱っており、実務に詳しい弁護士を選ぶことが重要だ。

 なお、遺産分割協議がまとまらなかった場合、必ずしもすぐ裁判を行うわけではない。遺産分割協議のトラブルを巡る手続きの流れをみておこう。

遺産分割協議】→合意
 ↓不成立
遺産分割調停(家庭裁判所)】→成立
 ↓不成立
遺産分割審判(家庭裁判所)】→確定
 ↓不服
抗告申立て(家庭裁判所)】
抗告審(高等裁判所)】→確定
 ↓不服
特別抗告 申立て(高等裁判所)】→却下(確定)
許可抗告 申立て(高等裁判所)】→却下(確定)
 ↓申立て認定
特別抗告審(最高裁判所)】で審査

 まず、遺産分割についての争いでは、家庭裁判所に「調停」を申し立てることになっている。調停とは、調停委員(弁護士などの有識者)を仲介者とした交渉であり、調停委員が双方の話を聞いて調停案を提示する。この段階ではまだ、弁護士を立てないことも多い。そして、調停案に双方が合意すれば判決と同じ効力が発生する。

 調停が不調になった場合、「審判」の手続きに移行する。審判では、家庭裁判所の裁判官が、双方の主張を聞いたうえで、審判を下す。通常の裁判とほぼ同じ手続きなるので、この段階になると、弁護士を立てるのが一般的だ。

 審判は訴訟における判決と同じ効力があり、これに不服がある場合は、2週間以内に「抗告」の手続きをとることができる。

 抗告が行われると、高等裁判所に争いの舞台は移る。ここで当事者は再度、主張や立証を行うが、裁判所から「和解」がすすめられることもある。和解ができれば和解によって解決するが、そうでなければ高等裁判所が抗告審としての決定を行う。抗告審の決定はやはり、訴訟における判決と同じ効力がある。

 これにも不服があれば「許可抗告」や「特別抗告」という不服申立の手続きもでき、認められれば最高裁での特別抗告審に移る。ただし、「許可抗告」や「特別抗告」が認められるには、即時抗告審の決定に法令違反や憲法違反などの重大な問題があったケースに限られる。遺産分割を巡る争いでは、即時抗告審での決定がほぼ最終となる。

 なお、相続を巡る争いでも、遺産分割ではない法定相続人の範囲や、相続財産の範囲、遺言の有効性などについて争いがある場合は、最初から弁護士を立てて訴訟を提起することが多い。

「司法書士」や「行政書士」のほうが出番は多い

 相続の法律関係の手続きでは、弁護士よりも「司法書士」や「行政書士」のほうが便利であり、利用するケースは多いだろう。

 「司法書士」は登記などの代理、裁判所や法務局などに提出する書類の作成と提出、財産管理業務などを行う国家資格者だ。平成14年に誕生した「認定司法書士」は、簡易裁判所にて取り扱う140万円までの民事訴訟、和解、仲裁、筆界特定についても代理できる。

 相続では、被相続人の戸籍などを調べて相続人の特定をしてもらったり、遺産分割協議がまとまった後は、不動産の移転登記を頼むのも司法書士だ。

 「行政書士」も国家資格者で、官公庁に提出する書類および権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出手続などを行う。

 相続関係では、遺言書の作成、遺産分割協議書の作成、遺留分減殺請求書の作成、相続人調査などを依頼することが多い。

「土地家屋調査士」は不動産の専門家、
「不動産鑑定士」は土地評価で重要

 相続の対象となる不動産、特に土地の測量などを頼むのが「土地家屋調査士」である。

 相続にあたって、なぜ土地の測量が必要になるのだろうかと思われるかもしれないが、都市部でも土地の境界が曖昧なケースは意外に多い。相続の際、遺産に含まれる土地の境界をはっきりさせておくことは、とても重要だ。

【関連記事はこちら!】>> 土地の売却時に起こる「境界問題」とは? 隣家との間に塀があっても、油断は禁物!

 さらに、相続税の計算においても、土地の評価はかなり複雑であり、経験の豊富な土地家屋調査士であれば土地の利用区分ごとに測量するなどして、評価額を合理的に下げるようアドバイスしてくれたりする。

 また、遺産として土地が多い場合は、「不動産鑑定士」も有力な相談先となることがある。

 なぜなら、被相続人が資産価値の高い土地を多数、所有していたような場合、土地の評価によって相続税の負担が大きく変わるからだ。

 相続税の計算上、土地の評価は各地の税務署が毎年公表する相続税路線価を基本に、国税庁の「財産評価基本通達」による各種補正を行うのが一般的である。

 しかし、著しく変形している土地などで適正な時価評価の算定が困難な場合、不動産鑑定士の評価が認められることがある。相続税の申告納税済みであっても、不動産鑑定士の鑑定に基づいて計算しなおして還付を求めることができるケースもある。

銀行などの「金融機関」は顧客基盤の拡大が目的

 以前から、銀行や証券会社など金融機関では、相続関連の相談サービスに力を入れている。これは資産家や富裕層の顧客基盤を拡大するのが目的であり、窓口での相談のほか、セミナーの開催や提携している税理士の紹介などを行っている。

 また、信託銀行では「遺言信託」「相続信託」などといった、より直接的な商品も販売。遺言の作成とその執行や、信託された金銭を指定受取人に受け取らせるものだが、これも目的は同じといっていい。

 無料のサービスならよいが、有料サービスの利用や金融商品の購入ということになると、コストに対してどれくらいメリットがあるのか、よく確認すべきだろう。意外に割高なものも少なくないようだ。

相続の相談先を決める前に、
「何について相談したいか」を明確に

 相続の相談先としては、ほかにも「相続関係のコンサルタント」というのも最近は増えている。国家資格の所有者が相続関連を専門にしているケースや、民間資格で相続コンサルタントを名乗るケースもある。相談するにしても、経験や実績を確認した上で、自己責任で判断すべきである。

 このように、相続に関する相談相手は多岐にわたるが、相談する側の事情や状況、求めるサポートやアドバイスによって選ぶ相手は変わってくる。

 まず、自分たちは何を相談したいのか、何を求めたいのかを明確にすることが最も重要であろう。

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