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相続税対策として「賃貸物件を建てること」は
本当に有効なのか?

2020年9月3日公開(2021年5月25日更新)
白鳥純一:不動産ライター
監修者 大城嗣博:アセットコンサルティングネットワーク 代表取締役

相続税対策としてよく用いられる「賃貸物件を建てる」手法に焦点を当て、陥りやすいトラブルや、それらを避けるための方法についてご紹介します。(協力・監修:株式会社アセットコンサルティングネットワーク 代表取締役・大城嗣博氏)

「相続税対策」に潜むワナ

「相続税対策」として一般的なのが、更地に賃貸物件を建てる手法です。

 更地のままにしておくと、固定資産税を始めとする高額の納税を毎年支払う必要があるだけではなく、相続税の納税額を決める資産の評価額も高めに計算されてしまいます。

 そのため、所有する更地に新たな収益物件を建築することで土地自体の資産評価を抑え、家賃による不動産収益で物件の建設費用を回収しながら、将来的な相続税対策に備える、というのがこの手法です。

 実際に土地評価額や固定資産税が抑えられるため目先の効果を感じやすく、また、相続税対策においても一定の効果は期待できます。

 しかし、将来的に大きなトラブルを招く恐れもあります。

幸せな相続のために考えるべき「納税の財源」

 賃貸物件の建築による相続税対策は、相続税の納税額の引き下げだけでなく、「実際の相続が起こったときに、どのような方法で納税していくか」についても考慮していかなければなりません。

 「相続」は、財産を所有する親族が死亡したときに発生します。そして亡くなった日の翌日から10カ月以内に、相続人は現金や物納可能財産、さらには売却可能財産などによって、相続税を支払います。

 しかし、資産規模が大きすぎる場合には、それに比例するように相続税も高額になり、「どの資産を財源にして税金を支払うか」という納税の財源問題に直面することになります。

 賃貸物件の購入によって、かえって資産評価額が上がった結果、高額に膨れ上がった相続税を相続人が支払うことができず、最終的に自宅や先祖代々伝わる土地を泣く泣く手放す――。本来は不動産の有効活用を目的としていた「相続税対策」によって、このような「策士策に溺れる」結末を招いてしまう可能性もあるのです。

 納税の財源対策として大切なのは、不動産を含めた資産全体のなかから資産価値の高い財産を見極めること。そして、それ以外の「残す必要がない財産」によって、どのくらい納税財源を賄えるのか、想定すること。これらは、相続税額の引き下げのための相続税対策をするよりも前に、検討しておく必要があります。

 自宅を売却しても相続税が支払いきれなかったという最悪の事態を避けるために、資産の権利者がご存命のうちから、「自宅などの必要な財産を守る」という観点で、対策を立てていきましょう。

賃貸物件の運営で求められる「経営者」の視点

更地に賃貸物件を建てる
(画像:PIXTA)

 そもそも賃貸物件を建てるということは、厳密に言うと「不動産賃貸業の経営」に当たります。そのため、単に相続税対策というだけでなく、長期的な需要の見通し、さらには立地や環境特性に基づいたマーケティング、そして収支分析などのような経営者的な視点も併せて求められることになります。

 もし、賃貸物件を建設しても、入居者が集まらずに空室が埋まらないなどの場合は、キャッシュフローの悪化や金利負担の増加、そして不動産価格の値下がりによって、多額の借金だけが残る結末を迎える可能性も考えられます。

 財産を守るための相続税対策が仇となる事態を避けるには、安易に業者の事業計画を信用するのではなく、ご自身でも物件の収益性や定期的に必要になるメンテナンスについて、そして金利の変動や災害などといったような、物件の購入によって発生する潜在リスクについても、十分検討したうえで取り組むようにしましょう。

 賃貸物件を建設する手法は、「相続税対策」として積極的に用いられていますが、誰もが必ず相続税を抑えられる手法というわけではありません。ご自身の資産状況と向き合ったうえで、資産を受け継いでいくために適切な施策を施していくように心がけていきましょう。

「借金」は相続税対策になるのか?

 また、賃貸物件を建てる際に、「借金をすると相続税の対策になる」と言われることがあります。

 相続税は、亡くなった人(被相続人)が保有する財産のなかから、債務を差し引いた額に課税されるためです。(相続では、相続人は、亡くなった人の財産はもちろん、債務も引き継ぎます)

 たとえば、相続税対策で借り入れをしたAさんの事例を見てみましょう。

資産4億円が2億4200万円に!? Aさんの場合

 「2億円の現金預金」と「2億円の更地」を保有しているAさんは、相続のために新たに2億円を借り入れ、更地に賃貸物件を建設しました。

■計算式

貸家: 固定資産税評価額−固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合
貸家付き土地:自用地評価額−自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

※借地権割合、借家権割合、賃貸割合の説明は後述します。

・固定資産税評価額:2億円×0.6=1億2000万円
・貸家:1億2000万円−1億2000万円×0.3×1=8400万円
・貸家付き土地:2億円−2億×0.7×0.3×1=1億5800万円

 結果として、本来であれば4億円の資産に対して税金がかかる予定だった更地の評価額を下げることができたため、Aさんは、2億4200万円の資産に対してかかる税金を支払えばいいことになりました。

 しかし、これはあくまでも賃貸物件が常に満室だった場合で、賃貸物件に空室が出た場合には、結果として支払う税金も増えることになります。

空室が多いと、相続税対策の効果が薄れてしまう

 なぜ物件を賃貸している割合が高いと、相続税の節約に繋がるのでしょうか?

 それは、他人に賃貸している土地や建物部分について、相続税評価額が減額されるためです。

 先ほどの計算式に「借地権割合」と「借家権割合」という項目がありましたが、土地には「借地権割合」、物件には「借家権割合」がそれぞれ設けられており、その賃貸割合に応じて相続税評価額が減額されます。

・借地権割合:土地の更地評価額に対する借地権価額の割合で、国税庁により30〜90%で定められている。市街地などの利用価値の高い土地は、高めの数値が設定される傾向にある。

 

・借家権割合:借地借家法の適用を受ける建物の賃貸借割合。一律30%。

 たとえば「5000万円の建築物と2億円の土地の30%」を他人に賃貸していたケースを想定してみましょう。

 借地権70%のエリアに建築された建物だった場合、2億円の土地は1億5800万円、5000万円の建物は3500万円へと相続税評価額が軽減され、結果として節税に繋げることができます。

 また、不動産を他人に賃貸している部分があれば、「賃貸割合」に応じても相続税評価額を下げることができます。

 賃貸割合は、原則として「(相続税の)課税時期において賃貸されている床面積の合計」に基づいて算定されます。

 ただ、この「賃貸されている状態」を巡っては、「空室期間が5カ月続いた場合には、賃貸されていることにはならない」(大阪高裁平成27年5月11日判決)とされた判例や、国税庁が設けた基準を元にして総合的に判断されます。

【国税庁の判断基準】
 

①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。
②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。
空室の期間が、課税時期の前後の例えば1カ月程度であるなど、一時的な期間であること。
課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。

(出典:国税庁 質疑応答事例

 個々の物件によって条件は異なるので、もし適用されるかどうか気になる場合は、専門家へのご相談をおすすめします。


 ここまで見てきたように、賃貸物件を建てたからといって、必ずしも「相続税対策」に繋げられるかどうかはわかりません。

 また、「相続税対策」になると信じて、資産状況に見合わない借り入れをしてしまうと、借金だけが残る結果に繋がってしまう恐れもあります。

 借金をして更地に賃貸物件を建てる相続税対策は、さまざまなリスクも伴います。ご自身の資産状況と向き合ったうえで、資産を受け継いでいくために適切な施策を施していくように心がけましょう。

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