「マンション売却」築10年で売ると損か得か? 注意点やデメリットについても解説!

2022年5月1日公開(2023年3月22日更新)
竹内英二:不動産鑑定士・宅地建物取引士

マンションは築年数が新しいうちに売ると高く売れます。築10年までのマンションであれば、売却価格はもちろん高くなり、早期売却が見込めますが、デメリットや注意点もあるためよく確認しておきましょう。この記事では「築10年のマンション売却」について解説します。

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築10年以内のマンション価格は、新築から約6%の値下がり

 まずは、マンションの築年数別の価格(1㎡あたり)変化を見てみましょう。東京都における新築マンションに対する築年数別の価格の下落率を示すと、下図の通りです。

図表1 マンション築年数別の価格下落率(東京都)

マンション築年数別の価格下落率(東京都)
築年帯 単価(万円/㎡)  単価下落率
新築 118.50 ▲0.0%
築1〜10年 111.13 ▲6.2%
築11〜20年 97.45 ▲17.7%
築21〜30年 78.77 ▲33.5%
築31〜40年 58.69 ▲50.5%
築41〜50年 56.31 ▲52.5%
築51年〜 56.33 ▲52.4%

出典:新築マンションは株式会社不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2021年まとめ」から筆者が推定、中古マンションは土地総合情報システム「2020年第4四半期~2021年第3四半期(東京都)のマンションのダウンロードデータ」から筆者が作成

 2021年、東京都の築1~10年までの中古マンションの単価は「111.13万円/㎡」で、新築マンションの単価は「118.5万円/㎡」なので、築1~10年のマンションなら、下落率は約6%にとどまっている状況となります。

 なお、一般的にマンションの建物価格は、築40年前後でゼロ円になるとされています。築40年超では価格がほぼ下落していませんが、これは建物価格がほぼゼロ円に達し、土地価格のみで取引されているからです。

築10年以内の中古マンションの市場在庫は少なく需要が高い

 ここでは、築年数別にみる需要の高さについて解説します。図表2に、首都圏の中古マンション市場における築年数別の成約物件と在庫物件の割合を示します。

図表2 首都圏の中古マンションの成約物件と在庫物件の割合

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)」
写真を拡大 出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)

 成約物件(青棒)とは、実際に売買が決まった物件のことを指します。在庫物件(赤棒)とは、売り出し中の物件のことです。

 築10年以内の成約物件の割合は23.8%を占めますが、在庫物件の割合は16.4%しかありません。築10年以内の物件は、市場の中では非常に品薄状態にあり、売りに出すとすぐに売れるという特徴があります。

>>マンション売却の流れや高く売る方法はこちら

築10年以内の中古マンションを売却するメリット

 では、築10年以内にマンションを売却するメリットについて見てみましょう。

売却価格が高く、早期に売れる

 築10年以内の物件は高く売れるという点がメリットです。新築よりは価格が下がるものの、まだ十分に建物価格が残っているため売却価格が高くなります。

 また、中古マンション市場においては、築10年以内で売りに出される物件は少なく希少性も高いので、購入希望者が多く、希望価格で早く売れることが多いといえます。

上昇トレンドに乗ると売却益を得やすい

 築10年以内の物件は価格の下落率が低いため、上昇トレンドに乗ると売却益を得やすい点がメリットです。

 建物価格の下落以上に中古マンションの市場価格が上昇していると、購入価格よりも高く売れます。図表3に、直近の過去10年間における首都圏の中古マンション価格の推移を示します。

図表3 首都圏の中古マンション価格推移(2012年〜2021年)

首都圏の中古マンション価格推移(2012年〜2021年)
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2021年)

 上図の通り、ここ10年間の中古マンション価格は上昇し続けています。購入のタイミングにもよりますが、近年は立地の良いマンションなら10年以内に売却すると売却益が得られることも多いといえます。

築10年以内の中古マンションを売却するデメリット

 では、築10年以内にマンションを売却するデメリットはあるのでしょうか?

手残りが少なくなることがよくある

 築10年以内のマンションは、高くは売れても手残りは少なくなることがある点がデメリットでしょう。

 手残りとは、売却代金から仲介手数料等の諸費用や税金、住宅ローン残債を差し引いて残ったものになります。手残りのイメージを図示すると図表4の通りです。

図表4 築10年のマンションを売却した際の手残り

築10年マンション売却の手残り

 築10年以内のマンションは、まだ住宅ローンを十分に返済しきれていないケースが多いでしょう。

 例えば、築10年目の物件で売却価格が5,000万円でも、住宅ローン残債が4,500万円なら、手残りは500万円となります(簡略化のため諸費用と税金を考慮外とします)。

 一方で、住宅ローンが完済している築40年目の物件を2,000万円で売ったとします。売却価格が2,000万円でも住宅ローン残債が0円なら、手残りは2,000万円です。

 このように手残りを考慮すると、築年数が浅いうちに売却することは必ずしも正解ではありません。築年数が浅いうちに売る方が得というのは、住宅ローン残債をあまり考慮していない考え方です。

 手残りという観点からすれば、たとえ築年数が経過して売却価格が安くなったとしても住宅ローンの返済が十分に進んでから売却したほうが得することもあります。

売るには少しもったいない

 築10年以内にマンションを売るのは、少しもったいないといえます。理由としては、品確法(住宅の品質の確保の促進等に関する法律)の10年保証の権利を放棄してしまうことになるからです。

 新築物件の購入者には、品確法によって10年間の保証が付いています。この保証は新築物件を購入した人のみに与えられるものであり、10年以内に売却したとしても買主に当然に承継されるものではありません。

 保証を引き継げないのであれば保証期間中にわざわざ売る必要はなく、10年を超えてから売っても損はないのです。

築10年以内のマンションを売却するときの注意点

 築10年以内のマンションを売却するときの注意点についても確認しておきましょう。

売却時は複数の不動産会社に査定を依頼する

 築10年以内のマンションは条件の良い部類に属するため、高く売れます。損をせずに売るには、高く売ってくれる不動産会社をしっかりと探すことが重要です。

 高く売ってくれる不動産会社を探すには、複数の不動産会社に査定を依頼し、査定結果をしっかり比較することがポイントとなります。査定結果は、通常、不動産会社によって異なります。査定結果が異なるのは、不動産会社によって売却に対する自信や実績、見込み客の有無などが異なるからです。

 査定を1社だけに依頼し、その結果を妄信して売ると、もっと高く売れる可能性を逃してしまう可能性があります。高く売るチャンスを逃さないようにするには、少なくとも査定は4~6社程度を比較することが望ましいです。

 「不動産一括査定サイト」を利用すれば、無料で6~10社程度の査定依頼を簡単にすることができます。築10年以内の物件は希少性があり高く売れるので、損をしないためにもぜひ複数の不動産会社に査定を依頼するようにしましょう。

【関連記事はこちら】>>不動産一括査定サイト&査定業者33社を比較! おすすめ、メリット・デメリット、選び方などを徹底解説

専任媒介と専属専任媒介を選ぶ場合は囲い込みに注意する

 築10年以内の物件を売るのであれば、一般媒介を検討してみることも効果的です。媒介契約とは、不動産会社に依頼する仲介の契約のことを指します。

 媒介契約には、「一般媒介契約」と「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3種類があります。「一般媒介」は複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる契約で、「専任媒介」と「専属専任媒介」は1社の不動産会社にしか仲介を依頼できない契約です。

【関連記事はこちら】>>家を売るときの契約方法は、「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」でメリットが大きいのはどれ?

 専任媒介と専属専任媒介の違いは、専任媒介は自己発見取引が可能で、専属専任媒介は自己発見取引ができないという点です。自己発見取引とは、売主自身で買主を見つけることを指します。

 専任媒介や専属専任媒介は、1社にしか売却を依頼できないため、囲い込みを受けるリスクがあります。囲い込みとは、不動産会社が自社で買主を見つけることにこだわり、他社からの買主のあっせんを断る行為のことです。

【関連記事はこちら】>>大手不動産仲介は「囲い込み」が蔓延?! 住友不動産販売の「両手比率」は52.26%! 不動産売却時は「両手比率」が高い会社に注意を

 築10年目以内の物件は、売却価格が高いため、それに伴って仲介手数料も高く、不動産会社が囲い込みをしたがる傾向にあります。囲い込みは条件の良い物件ほど生じやすく、築10年目以内の物件を1社だけにしか依頼しないのは、少しもったいない売り方といえます。

 一般媒介で複数の不動産会社に依頼して売れば、早く売れる確率が高まります。理由としては、仲介手数料は成功報酬であり、不動産会社が仲介手数料を得るには他社よりも先んじて条件の良い買主を決めなければならないからです。

 築10年目以内の物件は、売却を決めたときの仲介手数料も大きいことから、一般媒介で依頼しても各社やる気を出して頑張ってくれます。条件の良い物件ほど一般媒介による売り方は効果的となりますので、一般媒介も検討してみてください。

所有期間が5年以内だと税金が高くなる

 マンション売却で売却益が発生したときには税金が生じます。築10年以内の物件は、土地価格が上昇時のときに売ると売却益が生じる可能性があります。

 売却益に乗じる税率は、所有期間によって決まり、所有期間が5年以内だと税率が高くなります。売却する年の1月1日時点において所有期間が5年以下の場合を「短期譲渡所得」、5年超の場合を「長期譲渡所得」と呼びます。

 短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率は下表の通りです。

「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の税率

 長短区分 短期譲渡所得 長期譲渡所得
 所有期間  5年以下 5年超
 税率 39.630%
(所得税 30.63%、住民税 9%)
20.315%
(所得税 15.315%、住民税 5%)
 税率には復興特別所得税として所得税の2.1%相当が上乗せされています

 税率は2倍近く異なるため、売却益が出そうであれば、長期譲渡所得になった段階で売ることをおすすめします

 なお、マイホームのマンションを売る場合、一定の要件を満たすと3,000万円特別控除を利用できます。

 3,000万円特別控除を利用すると譲渡所得(売却益のこと)から3,000万円を差し引けるため、譲渡所得が相当小さくなるか、またはゼロ円(マイナスの場合もゼロ円)となり、大きく節税することが可能です。

 ただし、買い替え(住み替え)をする場合、購入物件で住宅ローン控除を利用するときは、売却物件で同時に3,000万円特別控除を利用することはできません。買い替えの場合には、購入物件の住宅ローン控除か、売却物件の3,000万円特別控除か、いずれか節税効果の高い方を選択することになります。

【関連記事はこちら】>>不動産売却にかかる税金の節税方法を解説! 特別控除は自宅、賃貸、相続した空き家などで異なる

まとめ

 以上、築10年のマンション売却について解説してきました。

【築10年のマンションの特徴】

・東京都の場合、築10年以内のマンションの平均価格は、新築に対して約6%程度の価格の下落

・市場に出回っている物件の数も少なく需要も高いため、早期の売却が期待できる
【築10年のマンション売却のメリット】

・高く早く売れる

・上昇トレンドに乗ると売却益を得やすい

【築10年のマンション売却のデメリット】

・手残りが少なくなることが多い

・品格法の10年保証の権利を放棄することになりもったいない
【築10年のマンション売却時の注意点】

・複数の不動産会社に査定を依頼する

・専任媒介契約や専属専任媒介契約を選ぶ場合は囲い込みに注意する

・所有期間が5年以内に売却する場合は税金が高くなる

 築10年のマンション売却の概要が分かったら、まずは、複数の不動産会社に無料で査定依頼ができる、「不動産一括査定」を利用するのがおすすめです。

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