マンションは築30年になると売却しにくくなります。 ただし、2022年以降は「買主が受けられる税制優遇措置に関する25年ルール」が撤廃されたため、今後は築30年の物件であっても売りやすくなることが見込まれます。この記事では、築30年のマンションを売却する際のメリット・デメリット、注意点などを解説します。
・築30年のマンション価格の値下がり率
・築30年のマンションの需要と供給
・築30年のマンションを売却するメリット
・築30年のマンションを売却するデメリット
・築30年のマンションを売却するときの注意点
・まとめ
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築30年のマンション価格は、新築から約34%の値下がり
まずは、マンションの築年数別の価格(1㎡あたり)変化を見てみましょう。東京都における新築マンションに対する築年数別の価格の下落率を示すと、下図の通りです。
図表1 マンション築年数別の価格下落率(東京都)
築年帯 | 単価(万円/㎡) | 単価下落率 |
新築 | 118.50 | ▲0.0% |
築1〜10年 | 111.13 | ▲6.2% |
築11〜20年 | 97.45 | ▲17.7% |
築21〜30年 | 78.77 | ▲33.5% |
築31〜40年 | 58.69 | ▲50.5% |
築41〜50年 | 56.31 | ▲52.5% |
築51年〜 | 56.33 | ▲52.4% |
出典:新築マンションは株式会社不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2021年まとめ」から筆者が推定、中古マンションは不動産情報ライブラリ「2020年第4四半期~2021年第3四半期(東京都)のマンションのダウンロードデータ」から筆者が作成
図表1のとおり、2021年、東京都の築21~30年までの中古マンションの単価は「78.77万円/㎡」で、新築マンションの単価は「118.5万円/㎡」なので、築21~30年たてば、約34%下落している状況です。
築30年のマンションは市場在庫が多いため売却しにくくなる
中古マンションは、築年数によって売れ行きが異なります。ここでは、築年数別にマンションの需要を見てみましょう。図表2に、首都圏の中古マンション市場における築年数別の成約物件と在庫物件の割合を示します。
図表2 首都圏マンションの成約物件と在庫物件の割合
棒グラフの特徴としては、成約物件(青棒)と在庫物件(赤棒)の割合は、築25年を境に傾向が変わるという点です。
築25年以内の物件は成約物件の方が在庫物件の割合よりも高いですが、築25年を超えると在庫物件の方が成約物件よりも割合が高くなります。
築25年を過ぎると在庫のほうが多くなる傾向があり、マンションは築25年を超えると売却しにくくなっていることが分かります。
ただし、2022年からは「税制優遇の築25年ルールが撤廃されて売りやすくなった」ため、2022年以前よりは売却しやすい状況といえるでしょう。
築30年の中古マンションを売却するメリット
築30年のマンションを売却するメリットについて見てみましょう。
手残りが多く残りやすい
築30年のマンションを売却するメリットには、手残りが多く残りやすいという点が挙げられます。
手残りとは、売却代金から仲介手数料などの諸費用や税金、住宅ローン残債を差し引いた残額のことです。手残りは、次の物件を購入する際の頭金に充てることができます。図表3は、マンションを売却した際のて残りを築20年と築30年で比較した図です。
図表3 築20年と築30年のマンションを売却した際の手残り
手残りの額を大きく左右するのは、売却代金よりも住宅ローン残債の額です。新築で購入したマンションなら、築30年たてば、築10年や20年のマンションよりも住宅ローンの返済が進んでいるため、手残りが増えやすくなります。人によっては住宅ローンが完済していることもあるでしょう。
また、マンションを売却したときの税金は、売却益が出たときのみ生じます。購入時よりも大きく価値が下がる築30年のマンションでは、税金も発生しないことが多いです。
住宅ローンが完済し、かつ、税金が生じないマンションの手残りは、売却代金から仲介手数料などの諸費用を引いた額となります。
仲介手数料は、物件価格が400万円超の場合、「(物件価格×3%+6万円)+消費税」が上限額です。その他、諸費用には印紙代や抵当権抹消費用などがかかりますが、諸費用はトータルで物件価格の3.5~4.0%程度となります。
つまり、住宅ローンが完済し、かつ、税金が生じない物件の手残りは、売却代金の96.0~96.5%程度になるということです。
税制優遇の築25年ルールが撤廃されて売りやすくなった
以前は築25年超のマンションが売却しにくくなるのに明確な理由がありました。それは、マンションのような耐火建築物では、築25年を超えると買主が登録免許税の軽減や住宅ローン控除の適用などの税制優遇を原則として利用できなかったためです。
2021年まではこの25年ルールが存在していたため、マンションは築25年を過ぎると途端に売却しにくくなるという状況でした。
ところが、このルールは2022年の税制改正によって撤廃されています。2022年以降は、築年数ではなく「登記簿上の建築日付が昭和57年(1982年)1月1日以降の家屋」であれば、買主が登録免許税の軽減や住宅ローン控除の適用などの税制優遇を利用できるようになっています。
逆に言えば、「登記簿上の建築日付が昭和56年(1981年)12月31日以前の家屋」は、原則として買主は登録免許税の軽減などの税制優遇を受けられないということです。
2022年時点においては、1981年築となると築41年の建物になります。築30年のマンションであれば、そのまま売っても買主が税制優遇を利用できるということです。
「築30年のマンションは市場在庫が多いため売却しにくくなる」で紹介したデータは、制度改正前の2021年の統計となります。
今後、新しい税制が買主に浸透していけば、築30年のマンションも徐々に売りやすくなっていくものと見込まれます。
築30年の中古マンションを売却するデメリット
では、築30年のマンションを売却するデメリットはあるのでしょうか?
需要が下がるため売りにくくなる
築30年のマンションは需要が下がるため売りにくくなるという点がデメリットです。
2022年以降からは、築30年の物件でも買主は住宅ローン控除などが利用できます。しかしながら、築30年の物件には、「仕様が古い」、「故障部分がある」などの潜在的な問題があることに変わりはありません。
需要は劇的には改善されないため、一定の売りにくさは今後も残るものと予想されます。
契約不適合責任を追及されやすくなる
築30年のマンションは、売却後、買主から契約不適合責任を追及されやすくなる点がデメリットとなります。
契約不適合責任とは、「契約の内容に適合しない場合の売主の責任」のことです。契約不適合責任では、契約内容とは異なる物件を売却した場合、売却後に買主から追完請求(主に修繕の請求)や契約解除、損害賠償などを追及されます。
損傷や不具合が多い築古物件では、欠陥箇所を売買契約書に記載せずに売ってしまうと、契約内容とは異なるものを売ったことになります。欠陥箇所を告知することは、値引きにつながる可能性があるため、売主としては隠したいところです。
しかしながら、欠陥箇所を正直に告知することは、売主自身を契約不適合責任から守ることにもなります。契約不適合責任を追及されないためにも、欠陥箇所は正直に買主へ告知し、売買契約書に記載するようにしましょう。
築30年のマンションを売却するときの注意点
築30年のマンション売却には、上記のようなメリット・デメリットがありますが、売却するときの注意点についても確認しておきましょう。
複数の不動産会社に査定を依頼する
築30年のマンションは需要が少なく、売却しにくくなっているため、少しでも高く売るためには高く売ってくれる会社を探す必要があります。
高く売ってくれる会社を探すには、複数の不動産会社に査定を依頼し、査定結果を比較して選ぶことがポイントです。査定価格は不動産会社が考える売却予想価格であるため、高く売れると考えている会社ほど査定価格は高くなります。
築年数の古いマンションは、近くにある不動産会社が過去に何回も売買を取り扱っている可能性が高いです。そのため、地元の不動産会社も査定を依頼したい会社の一つとなります。
高く売ってくれる不動産会社を探すには、地元の不動産会社や大手の不動産会社に偏ることなく査定を依頼することをおすすめします。
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売却スケジュールに余裕を持つ
築30年のマンションを売る際は、売却スケジュールに余裕を持つことがポイントです。
中古マンションは築25年を超えると需要が弱まることから、築30年のマンションを売却するには時間がかかります。
マンションは売りに出してから買主が見つかるまで、3カ月程度の時間がかかることが一般的ですが、需要の低い築30年のマンションは、この3カ月の期間がもう少し長くなる傾向があります。
買い手が見つかるまでじっくり待つ必要がありますので、売却スケジュールは余裕を持って組み、焦らずに売却活動を行うようにしましょう。
【関連記事】>>マンション売却の流れや注意点、高く売るコツを解説!
ハウスクリーニングを行う
築30年のマンションを売るなら、ハウスクリーニングも検討したいところです。ハウスクリーニングとは、プロの清掃会社による有料の掃除サービスになります。
物件の古さは、キッチンやトイレ、バスなどの水回りの部分に表れがちです。そのため、少なくとも水回りの部分だけでもハウスクリーニングを行っておくと効果的です。
不動産会社がインターネット上に広告を公開すると、購入希望者からの内覧申し込みが来るので、ハウスクリーニングは広告を掲載する前のタイミングで、一回だけ実施すれば大丈夫です。
なお、不動産会社は掃除の有無によって査定額を変えることはないので、査定依頼前にハウスクリーニングを行うことは不要です。あくまでも、一般の購入希望者向けに行うのが効果的となります。
まとめ
以上、築30年のマンション売却について解説してきました。
・東京都の場合、築30年以内のマンションの平均価格は、新築に対して約34%程度の価格の下落
・市場に出回っている物件の在庫数が多く需要が低いため売りにくくなる
・手残りが多く残りやすい
・税制優遇の築25年ルールが撤廃されて売りやすくなった
【築30年のマンション売却のデメリット】
・需要が下がるため売りにくくなる
・契約不適合責任を追及されやすくなる
・複数の不動産会社に査定を依頼する
・売却スケジュールに余裕を持つ
・ハウスクリーニングを行う
築30年のマンション売却の概要が分かったら、まずは、複数の不動産会社に無料で査定依頼ができる「不動産一括査定」を利用して、高く売ってくれる不動産会社を見つけましょう。
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