800万円以下の物件の仲介手数料上限が引き上げ! それでも空き家流通が促進されない理由とは

2024年9月2日公開(2024年9月2日更新)
高田一洋:一心エステート株式会社代表取締役CEO

2024年7月1日、国土交通省の発表で宅建業法の報酬規程の改定が行われました。今回の法改正によって800万円以下の物件の仲介手数料は30万円(税別)となります。今回は、なぜ低価格物件の仲介手数料の上限が引き上げられることになったのか、その経緯について解説します。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)

800万円以下の仲介手数料の上限引き上げの背景

800万円以下の物件仲介の報酬規程の法改正(出所:PIXTA)
800万円以下の物件仲介の報酬規程の法改正(出所:PIXTA)

 2024年7月1日、宅建業法の報酬規程の改定が行われ、低価格物件の仲介手数料の上限が引き上げられました。具体的には、800万円以下の物件の売買を行う際、不動産会社に支払う売買仲介手数料の上限が、これまでの最大で24万円(税別)から30万円(税別)になったというものです。

空き家の増加と社会問題

 この背景には、空き家の増加と、それに伴う社会問題があります。総務省が5年ごとに発表している「住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で全国の空き家は900万戸でした。

 前回2018年の849万戸から5年で51万戸増加しており、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.8%と、2018年の13.6%から0.2ポイント増加して過去最高を記録しています。

 空き家の増加や放置は、防犯・防災面での懸念や、街の景観悪化などを引き起こします。

仲介手数料の上限引き上げが空き家の流通促進につながる

 一方で、これまでの報酬規制下では、不動産業者が低価格の空き家を取り扱うことに経済合理的なメリットが少なく、結果として空き家の流通が滞っていました。国土交通省は、今回の変更により、特に地方や郊外の低価格物件や空き家の流通が活性化することを期待しています。

 また、今回の改正では、売買取引だけでなく、賃貸取引にも変更が加えられています。長期間使用されていない、または将来的に使用の見込みがない物件(長期の空家等)については、貸主から受け取れる報酬の上限が、通常の1ヵ月分の家賃の1.1倍から2.2倍に引き上げられました。

 仲介手数料の上限が上がることで、不動産業者が空き家を取り扱うインセンティブが増加し、結果として空き家の流通促進につながることが今回の狙いです。

800万円以下の物件とはどういった物件か

800万円以下の物件の特徴とは(出所:PIXTA)
800万円以下の物件の特徴とは(出所:PIXTA)

 では、800万円以下の物件とはどういったものなのでしょうか。不動産ポータルサイトのアットホームで東京都の中古マンション・戸建てで800万円以下(検索条件は1,000万円以下)を検索しました。

 2024年7月時点で、ヒットする物件の90%近くが東京23区外(都下)の物件でした。23区内に絞ってみると800万円以下の物件は、築50年以上たっている戸建てや、最寄り駅から徒歩20分以上の狭い築古マンションなど、端的に言って需要がない物件です。都下の物件においても、旧耐震の物件や駅から遠い物件などがほとんどでした。

 投資目的の狭いワンルーム物件などを除けば、800万円以下の物件は、立地が悪かったり、建物の状態が良くないものがほとんどです。駅から遠い古い戸建てや、メンテナンスが行き届いていない古いマンションなどが該当するでしょう。

 物の値段は需給のバランスで決まるとはよく言いますが、800万円というのは、不動産のなかではかなり低価格帯です。つまり、その価格設定自体が需要の低さを反映しています。

 不動産事業者の立場から言うと、800万円という価格がついた時点で、その物件にはもう「買い手がつかない」状態になっていると言えます。

 このような物件の多くは大規模な改修が必要で、購入価格以上のリフォーム費用がかかることもあります。たとえば、800万円のボロボロのマンションを買ったとしても、実際にそこに住むためには700万から800万円ものリフォーム費用がかかってしまうといった理由により売却が困難になります。

800万円以下の物件の手数料引き上げは、空き家流通を促進させる?

 800万円以下の物件に対する仲介手数料の上限を30万円に引き上げるという今回の法改正ですが、正直なところ、その効果は薄いでしょう。800万円以下の物件(=国交省が流通を促進させたい空き家物件)の流通への影響はほとんどないと考えます。

 800万円以下の物件を専門に扱う不動産会社が多数設立されれば話は別ですが、この領域で仕事をして利益率を増やすことができる不動産会社が現れる可能性は低いと予想されます。

 手数料を上げたところで、需要のない物件が突然売れるようになるわけではありません。また、30万円になったことで仲介会社のやる気やモチベーションが上がるとも思えません。

 需要のない物件の売り手を見つけてくるというのはとてつもない労力と手間、そして時間がかかります。たとえ、手数料の上限が50万円になったとしても難しいと思います。

 むしろ、このような施策は物件所有者に誤った期待を抱かせるかもしれないと危惧しています。手数料の上限引き上げが、売却困難な物件でも簡単に売れると錯覚させてしまう可能性もあるのではないでしょうか。

800万円以下の物件の処分方法

 前述の通り、800万円以下の物件は需要が低く、通常の不動産市場での売却が困難な場合が多いです。しかし、これらの物件を持ち続けること自体が、所有者にとって税金や維持コストの大きな負担となるため、どうにかして処分や活用方法を考えなければなりません。

 物件を賃貸として貸すことや、建物を取り壊して更地にして活用する、といった選択肢もなくはないですが、そういった可能性がある物件は、800万円以上の価値があるはずですから、現実的ではありません。

 そうなるとやはり、売却して手放してしまうことが一番でしょう。しかし、一般的な仲介で売り主を探す方法で売りに出しても、売却期間は長期化することはもちろん、売れない可能性も十分にあります。

買取専門の会社に売却する

 売却期間が長期化するような売れない不動産は、買取専門の会社に売却するしか方法がないでしょう。業界では「買取業者におろす」といった言い方もします。全ての買取業者がどんな物件でも買い取ってくれるわけではありませんが、一般の消費者が興味を示さないような物件でも購入する会社というのは存在します。

 ただし、大幅に値下げした価格で買い取られてしまうため、覚悟しましょう。私が少し関与した事例でも、相場が500万円程度だった戸建てが、何年たっても売却できないため、買取業者に依頼したところ、買取金額が50万円だったことがありました。

仲介会社を通じて買取業者に売却する

 このような、どんな不動産でも買い取ってくれる買取業者に一般の消費者が直接出会うことは難しいため、仲介会社を通じて売却されることが一般的です。そうなると、仲介会社には仲介手数料を支払わなければならないのですが、今回の法改正が適用されるため、800万円以下の物件の場合は最大で30万円(税別)の仲介手数料を請求される可能性もあります。

 つまり、買取業者に50万円で売却した場合に手数料が30万円かかるといったことや、仲介手数料分だけ赤字になる、といったこともあり得ます。それでも、固定資産税などの継続的な負担から解放されることを考えれば、私は売却をおすすめします。

【関連記事】>>空き家の対処にはどんな方法があるのか? 賃貸・売却・解体など、立地環境や物件状態に応じてケース別に解説する

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