新築タワマン「引き渡し前の転売で手付金没収」は、効果あり? 不動産売買のプロは三井不動産レジの措置をどう見るか

2025年12月10日公開(2025年12月10日更新)
ダイヤモンド不動産研究所

2025年11月、三井不動産レジデンシャルが販売する新築タワーマンション「セントラルガーデン月島 ザ タワー」(東京都中央区)の購入希望者に、引き渡し前に転売活動をした場合、手付金が没収され、契約も解除されるという案内が届きました。投機目的の売買抑止を目的としたもので、大手デベロッパーがこうした強い姿勢を顧客に示すのは異例として、さまざまなメディアやニュースで取り上げられました。今回の措置は本当に投機目的の売買抑止に効果があるのでしょうか。実際の取引現場にいる立場から、その実効性と問題点について考えていきたいと思います。(一心エステート株式会社代表取締役:高田一洋)

三井不動産レジデンシャルの新築タワマン(中央区)が引き渡し前の転売対策に乗り出した。
東京都中央区勝どきエリアの風景(出所:PIXTA)

新築マンションでは、デベロッパーの利益率は低い

 新築マンションの転売は、デベロッパーの立場から見れば決して愉快なことではないでしょう。

 本当に必要な人のところに届かず、転売目的の購入者が間に入ることで、利益が不当に移転していきます。企業として利益追求は当然ですが、理念の追求もあるはずです。本来住むべき人が買えず、転売業者が利益を得ていくという構図はデベロッパーだけでなく、不動産業に携わる私としても看過できるものではありません。

 そもそも、新築マンションの開発は、利益率がそれほど高くありません。100戸のプロジェクトが完売しても純利益は3~5戸分程度といった話や、全体の売り上げの中で10~15%程度が利益になればいい方だといわれています。

 昨今の建材や人件費の高騰なども相まって薄利になる一方で、転売は購入価格に利益を上乗せして販売しても売れてしまいます。利益率の差は歴然としており、デベロッパーが不満を持つのも無理はありません。

過去には住友不動産が転売対策を実施

 転売対策は、実はこれまでもさまざまな形で講じられてきました。2024年には住友不動産が池袋のタワーマンションなどで、違約金を伴う5年間の転売禁止措置を導入しています。

 5年間の転売禁止は、私の記憶が正しければ「シティタワー品川」(地上43階建て、843戸、2008年4月築)が5年間転売禁止の特約がついた最初のマンションでした。こうした特約は法的に有効で、登記は公開情報のため、所有者の変更があれば転売の事実は必ず判明します。

「転売活動」の定義とは

 今回の三井不動産レジデンシャルの措置では、何をもって「転売活動」というのか、転売活動の定義が曖昧だということも話題になりました。基本的には、売却に向けた媒介契約書の締結が判断基準になると考えられますが、ポータルサイトへの掲載も該当する可能性があります。では、査定依頼はどうでしょうか。これは問題ないと考えられます。売却していないのですから、金額を知りたいだけといえます。

 実際のところ、当社にも引き渡し前のタワーマンションの査定依頼は相当数あります。こうした曖昧さが、実際の運用でどう判断されるのか。デベロッパー側の裁量に委ねられる部分が大きいというのが現状です。一方で、実需で購入する層にとっては、転売目的の投機層が排除されることで、むしろ良い方向に進むと考えられます。

 万が一の転勤や海外赴任といった事情があった場合には、おそらく考慮してくれるものと思われます。今後、人気マンションについては、こうした転売規制がセットで付いてくる可能性が高いと思います。

マンション転売の"含み益"で儲けている層について

 今回の規制は「引き渡し前の転売」に焦点を当てています。新築マンションの場合、引き渡しまで少なくとも1年から3年程度の期間があります。この期間中に物件価格が上昇すれば、購入者は引き渡しを受ける前に転売することで、含み益を得ることができます。この含み益を狙った転売目的購入を規制したいというのが、デベロッパー側の意図です。

 転売目的の購入者、特に資金的に余裕がない層は、手付金を入れた段階ですぐに転売したいと考えています。手付金は契約時に支払う必要があり、1500万円の手付金を支払うと、引き渡しまでの1年から3年間はそのお金が寝てしまうため、早く売りたいのです(ちなみに住宅ローンの支払いは引き渡し時から始まります)。

 報道でよく見るようになった転売ですが、転売を前提として購入しているのは、ほとんどが業者やセミプロだということは押さえておきましょう。後ほど説明しますが、一般の購入者が転売で儲けるのはかなり難しいと思います。

 プロによる転売ですが、以前は1つの法人や1名義で複数戸の抽選に応募できるルールになっていたことも、プロが参入する大きな理由になっていました。「晴海フラッグ」では、1つの法人が200戸以上申し込み、何十戸も当選するという事例が実際にあったと聞いています。

 こうした事態が問題視され、抽選申し込みが法人1名義、個人1名義に制限されるようになりました。2025年3月から販売が開始された「リビオタワー品川」は、当初1人3戸まで応募できましたが、それ以降は1名義、1法人に変更されました。つまり、抽選に登録できる数自体が制限され始めており、入口(抽選制度)の是正も進んでいます。

【関連記事】>>「リビオタワー品川」の予定価格は? 新駅を含む品川駅周辺の超大規模再開発事情と立地を解説

三井不動産レジデンシャルの手付金没収に効果はあるのか

 こうした状況を踏まえ、今回の出口(転売規制)の部分で強化されることになったのが、手付金没収という措置です。手付金は一般的に新築物件の場合は販売価格の10%程度に設定されます。

 「セントラルガーデン月島 ザ タワー」の販売価格は、1億円から5億円台とみられており、手付金は1000万円から5000万円程度だと考えられます。多額の手付金が没収されるリスクは、転売目的の購入者にとって無視できません。これは相当な抑止力になると考えられます。

 手付金は本来、購入の意思を示し、契約を成立させるための証しとして支払うものです。この証拠金を契約違反時の担保として機能させるというのが、今回の措置の焦点となっています。

 厳密に言えば、未完成物件の場合、売買代金の5%を超える場合(完成物件は10%)や、1000万円を超える手付金については保全措置を取らなければならず、デベロッパーが自由に使えるものではありません。ただし、契約違反に対する違約金として特約で定めておけば、没収は可能になるという解釈です。

 これは相当踏み込んだ措置です。宅建業法との整合性について懸念する声もありますが、業界全体がこの方向にかじを切ろうとしています。三井不動産という業界大手が先導する形であり、法的な裏付けがあるからこそ実施に踏み切ったのでしょう。

 さらに、2025年11月18日、不動産協会はマンション引き渡し前の転売禁止を柱とする対応方針をまとめたことを発表しました。三井不動産や三菱地所など大手不動産会社が加盟する業界団体が、こうした方針を打ち出したということは、業界を挙げて転売対策に本腰を入れるという姿勢の表れです。

 この動きを受けて、三菱地所レジデンスは2026年1月より、新たに販売する新築マンションで、引き渡し前の転売活動の禁止や購入戸数を制限する対策を導入すると報じられています。

「セントラルガーデン月島 ザ タワー」は割安な超人気物件

セントラルガーデン月島ザタワー
「セントラルガーデン月島 ザ タワー」の外観イメージ(画像は公式サイトから)

 今回話題になった「セントラルガーデン月島 ザ タワー」は、非常に人気の高い物件です。坪単価850万円程度で販売されており、この立地としては割安感があります。近隣の「パークタワー勝どき」が中古物件でありながら、坪1000万円を超えている中で、新築が坪850万円であればかなり割安です。

 都営地下鉄大江戸線の勝どき駅から徒歩3分、東京メトロ有楽町線の月島駅から徒歩4分という好立地で、2028年9月下旬竣工予定の再開発事業として地上48階建て、744戸を設ける計画です。物件のエントリー者数は約1万4000件に上ったということで、それだけ注目度が高いことがわかります。

まとめ

 今回の三井不動産レジデンシャルの措置、そして不動産協会の方針は、投機的な転売を抑制するという点では一定の効果があると考えます。本当に住みたい人が買えるようになるのか、それとも別の形で投機マネーが流入してくるのか。不動産市場の健全化に向けた取り組みは、まだ始まったばかりです。

 業界にいる立場からすると、こうした取り締まりはやむを得ないと思っています。不動産は本来、人が住むためのものです。物やツールとしか見ていない不動産事業者も多く存在するのは事実ですが、不動産に対して愛着を持ち、その人の人生に関わっていくというこだわりを持つ人、その仕事にプライドを持っている人こそが、良い不動産業者だと考えます。

 そういう意味で、今回の措置は、不動産業界が本来あるべき姿に戻っていくための一歩だと考えています。

【関連記事】>>千代田区のマンション短期転売規制は、価格高騰に歯止めをかけるか? 外国人の不動産”投機”にルールを設けるべき理由

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