不動産を売却する際の「査定価格サービス」は、どうして実態よりも高めになりやすいのか?

【第6回】2018年4月9日公開(2020年6月10日更新)
風戸裕樹:PropertyAccess.co CEO & Founder

不動産物件を売買するときに、インターネットの不動産サービスを利用すると、売り手はどちらかというと実態よりも高めの「査定価格」を知らされる傾向があります。一方で買い手は、販売中の不動産の「市場価格(相場)」が表示されないので、割高なのか、割安なのかが分かりません。シンガポールなどの状況と比べると、一般の売り手、買い手は不利益を被っているように見えます。

シンガポールでは、売り出し価格と市場価格を表示

 日本ならリクルートの「SUUMO(スーモ)」やLIFULLの「HOME'S(ホームズ)」などが有名ですが、シンガポールにも「SRX Property」や、「Property Guru」などの物件検索サイトがあります。SRXは英語だけでなく、日本語、中国語、インドネシア語、マレー語などにも対応しているので、ぜひ一度、アクセスしてみてはいかがでしょうか。

SRX Propertyの物件ページ SRX Propertyの物件ページ(日本語で表示も可能)

 シンガポールの物件検索サイトも、日本と同様に条件を入力すると、物件候補をリストアップしてくれるなど使い方は同じです。しかし、ドローンを飛ばして撮影した外観の映像や、全天球カメラで撮影して室内を360度で見られる画像なども掲載されていて、日本のサイト以上に充実した内容となっています。

 最大の違いは価格の表示方法でしょう。一般的に日本のサイトでは、物件の「売り出し価格」しか表示されていません。しかし、シンガポールの「SRX Property」では、「売り出し価格」に加えて、SRXで独自に査定した相場とも言える「市場価格(相場)」を「X値」として、一緒に公開しています。

 しかもX値は、過去3年間の推移をグラフ化して表示しているので、市場価格が上昇傾向にあるのか、下落傾向にあるのかも一目瞭然です。売り出し価格とX値を比較すれば、お買い得かどうかを簡単に判断することができます。

 第5回記事でも紹介したように、シンガポールでは住宅売買の「成約価格(売却価格)」が公表されており、SRXの「X値」も成約価格のデータを使って算出しています。なんと計算方法も表示されており、かなり正確な「市場価格」が、売り手も買い手も分かるようになっています。

【関連記事はこちら!】
>> 不動産の売却価格(成約価格)が見られないため、日本ではどんな不都合なことが起こっているのか?

日本では、市場価格が高めに出やすい

 一方の日本はどうなっているでしょうか。

 売り手に対しては、2015年頃から「市場価格」を推定する「価格査定サービス」が登場して、大都市圏では中古マンションの市場価格をネット上でも簡単に調べられるようになりました。例えば、HOME'Sを運営するLIFULLは「プライスマップ」という名称でサービスを提供しています。

 現在、日本の価格査定サービスが提供している「査定価格」は、各社とも価格データをどのように収集しているのかを明らかにしていませんが、「売り出し価格」を使って算出していると思われます。結果的に、実際の市場価格に比べてかなり高めの値になっている傾向があります。

 日本だと、売り出し価格に対して、成約価格は5−10%程度、価格が下落すると言われており、売り出し価格だけでは正確な査定ができないのです。日本の「査定価格」は「参考価格」程度と考えた方が良いかもしれません。

 日本では、「成約価格」は不動産会社しか見ることができません。東日本不動産機構などが運営する不動産会社向けの情報ネットワークシステム「REINS(レインズ)」に成約価格が登録され、同機構に加盟している不動産会社だけがデータを見ることができます。

 当初、価格査定サービスを提供する事業者の中には、レインズに加盟して「成約価格」を使って算出していたところもあったようですが、「成約価格を価格査定サービスに利用しないこと」とのお達しが出たことで、現在は使っている会社はないようです。

【関連記事はこちら!】
>> 不動産売却の「査定価格」は本当に信用できるのか? 査定価格の算出方法や、"高額"に査定されるポイント、注意点など、不動産業界のプロの声をもとに徹底解説!

不動産会社は、契約獲得へ“高値”乱発

 では、不動産の売り手は実際にはどうやって売り出し価格を決めているのでしょうか。売り手は、レインズの成約価格を見ることはできませんし、価格査定サービスもあまり正確ではないとなれば、不動産仲介会社が示した査定価格を参考に、最終的に売り出し価格を決めるしかありません。

 最近では売り手も、複数の不動産仲介会社に査定を依頼して、できるだけ高く売ってくれそうな会社と媒介契約を結ぶことが増えています。しかし、不動産仲介会社の中には、媒介契約ほしさに、無理に高めの査定価格を出している会社も多いと言われています。そうした高めの価格は、もはや合理的な市場価格とは言えません。売り出し価格が適正なのかどうかは、売り手自身も判断が難しいでしょう。

【関連記事はこちら!】
>> 不動産売却のプロが教えてくれた、正しい不動産会社・営業担当者の選び方とは? 騙されたくない人向けに「7カ条」を公開!

日本でも成約価格をベースにした査定が増加

 とはいえ、日本でも「成約価格」を活用して、より客観的に「査定価格」を算出しようという動きは強まってきているように思われます。

 LIFULLでは、2017年8月から中古住宅を対象に、建物の状態などを詳しく調べた「住宅評価書」付きの物件の掲載を始めました。住宅評価書では、価格査定、建物検査、シロアリ検査、設備検査の4つの項目が全て基準を満たしていることをLIFULLが確認して認定するという仕組みです。

 このうち価格査定の認定は、国土交通省の外郭団体である公益財団法人不動産流通推進センター(理事長・伊藤博・全国宅地建物取引業協会連合会会長)が策定した「既存住宅価格査定マニュアル」を使った査定が行われているかどうかを確認するというものです。これは近隣にある同種の不動産の「成約価格」をベースに、一定の計算式を使って、客観的に査定価格を割り出すというものです。国交省では、価格査定マニュアルを普及させることで、査定価格に基づいて売り出し価格が適正に設定されることを期待しています。

 価格査定マニュアル自体、まだ完璧なものとは言えませんが、現在は不動産仲介会社の担当者の感性で適当に査定価格を決めたり、無理に高値を出そうとしたりするのに比べれば、ある程度は適切な査定が行われていると言えるでしょう。ただし、売り主に対しては価格査定マニュアルに基づいた査定価格を提示しますが、サイトには掲載をしていないので、買い主が相場をみることはできず、残念なところです。
【関連記事はこちら!】
>> 不動産一括査定サイト&仲介業者25社で比較! メリット・デメリット、掲載不動産会社、不動産の種類で評価しよう

買い手は、市場価格(相場)を見つけにくい

 次に、買い手の環境も見ておきましょう。

 通常、買い手は不動産物件検索サイトにおいて希望のエリアや予算を入力して、物件を検索します。ただし、個別の物件ページにいくと、表示されているのは「売り出し価格」だけです。「市場価格」を並べて表示することはほとんどありません。

 先ほど、ネット上の価格査定サービスでは、多少の誤差はあるにしても「査定価格」を簡単に見られると書きましたが、これは売り手向けのサービスであって、別のサービスです。買い手が、2つの価格を比較するのは面倒な作業です。

 相場よりも割高に売っていると買い手がつきにくくなることが考えられるため、売り手に対する配慮として並べて表示していないのかもしれませんが、買い手にとっては分かりにくい対応です。そのため、買い手は、「査定価格」に対して「売り出し価格」がどのように設定されているのかは分からないまま購入しているケースが大半です。

 両手仲介であれば、売り手のエージェントでもある宅地建物取引士に、売り出し物件がお買い得かどうかを聞くしかありませんが、そもそも売り手のエージェントなので、買い手の立場になって答えてくれるかどうかは怪しいものです。

成約価格を一般人にも公開すべき

 結局、日本の売り手の多くは「市場価格」がよく分からないまま「売り出し価格」を決めています。 買い手も、「市場価格」に対して「売り出し価格」がどのように設定されているのかはよく分からないまま購入せざるを得ません。

 シンガポールと日本では、どちらのインターネット不動産サービスが利用しやすいでしょうか。やはり日本も成約価格の公開に踏み切り、一般の売り手・買い手も「成約価格」をベースとした、正確な「市場価格」を簡単に見られるような市場を作れば、一般人でも安心して売買できる市場になっていくのではないでしょうか。

(編集協力=ジャーナリスト・千葉利宏)

【関連記事はこちら!】
>> 不動産の「両手取引」禁止は世界の常識! 「囲い込み」の概念すらないシンガポール
>> 「中古住宅」は不動産仲介会社で買い、「新築住宅」はデベロッパーから買う、不便な日本! 世界では、仲介会社でどちらも購入可能

  • RSS最新記事
おすすめ不動産一括査定サイトはこちら

※不動産一括査定サイトとは、売却したい不動産の情報と個人情報を入力すれば、無料で複数社に査定依頼ができます。査定額を比較できるので売却相場が分かり、きちんと売却してくれる不動産会社を見つけやすくなる便利なサービスです。

◆SUUMO(スーモ)売却査定
SUUMO(スーモ)
 無料査定はこちら >>
 
特徴 圧倒的な知名度を誇るSUUMOによる一括査定サービス
・主要大手不動産会社から地元に強い不動産会社まで2000社以上が登録
対応物件 マンション、戸建て、土地
紹介会社数 10社(主要一括査定サイトで最多)※査定可能会社数は物件所在地によって異なります
運営会社 株式会社リクルート住まいカンパニー(東証プライム子会社)
>>SUUMO(スーモ)の詳細記事はこちら
◆リビンマッチ
特徴

・マンション、戸建、土地のほか、工場、倉庫、農地の査定にも対応可能

1700社の不動産会社と提携

対応物件 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫
紹介会社数 最大6社(売却6社、賃貸、買取)
運営会社 リビン・テクノロジーズ(東証グロース上場企業)

◆すまいValue
不動産一括査定サイトのすまいValue
簡単60秒入力、大手6社に査定依頼できる!
特徴 大手不動産会社6社が運営する一括査定サイト
対応物件 マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート、一棟ビル
対応エリア 北海道、宮城、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、愛知、岐阜、三重、大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良、和歌山、岡山、広島、福岡、佐賀
運営会社 大手不動産会社6社(東急不動産、住友不動産販売、三井のリハウス、三菱地所の住まいリレー、野村の仲介+、小田急不動産)
>>すまいvalueの詳細記事はこちら
◆マンションナビ
マンションナビ
 無料査定はこちら >>
 
特徴

マンションの売却に特化
・マンションを賃貸に出したい人の賃料査定にも対応
900社以上の不動産会社と提携

対応物件 マンション
紹介会社数 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社)
運営会社 マンションリサーチ
>>マンションナビの詳細記事はこちら
◆HOME4U(ホームフォーユー)
HOME4U
 無料査定はこちら >>
 
特徴 悪質な不動産会社はパトロールにより排除している
・20年以上の運営歴があり信頼性が高い
・1800社の登録会社から最大6社の査定が無料で受け取れる
対応物件 マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所
紹介会社数 最大6社
運営会社 NTTデータ・スマートソーシング(東証プライム子会社)
>>HOME4Uの詳細記事はこちら
◆いえカツLIFE
いえカツLIFE
 無料査定はこちら >>
 
特徴

・対応可能な不動産の種類がトップクラス
共有持ち分でも相談可能
訳あり物件(再建築不可物件、借地権、底地権など)の査定も対応可能

対応物件 分譲マンション、一戸建て、土地、一棟アパート・マンション・ビル、投資マンション、区分所有ビル(1室)、店舗、工場、倉庫、農地、再建築不可物件、借地権、底地権
紹介会社数 最大6社(売買2社、買取2社、リースバック2社)
運営会社 サムライ・アドウェイズ(上場子会社)
>>いえカツLIFEの詳細記事はこちら
◆おうちクラベル
おうちクラベル
 無料査定はこちら >>
 
特徴

・AI査定で、査定依頼後すぐに結果が分かる
・SREホールディングスが運営する一括査定サイト

対応物件 マンション、戸建て、土地、一棟マンション、一棟アパート
紹介会社数 最大15社
運営会社 SREホールディングス株式会社(東証プライム上場企業)
>>おうちクラベルの詳細記事はこちら
◆イエウール
イエウール
 無料査定はこちら >>
 
特徴

掲載企業一覧を掲載、各社のアピールポイントも閲覧可能
2000社以上の不動産会社と提携
・対応可能な不動産の種類が多い

対応物件 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
紹介会社数 最大6社
運営会社 Speee
>>イエウールの詳細記事はこちら
◆LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)
LIFULL HOME'S
 無料査定はこちら >>
 
特徴

日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営
2400社以上の不動産会社と提携
匿名査定も可能で安心

対応物件 マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件
紹介会社数 最大6社
運営会社 LIFULL(東証プライム)
>>LIFULL HOME'Sの詳細記事はこちら

 

 

一括査定サイトと合わせて
利用したい査定サイト

 

◆ソニーグループの「SRE不動産」売却査定
60秒で入力可能! 囲い込みのない不動産会社
特徴 ・両手仲介・囲い込みを行わない
・上場企業のソニーグループが運営
・売却専門の担当者がマンツーマンで高値売却を追求
対応物件 マンション、戸建て、土地(建物付きを含む)、収益用不動産
対応エリア 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、京都府、奈良県
運営会社 SREホールディングス株式会社(ソニーグループ)
>>SRE不動産の詳細記事はこちら

不動産一括査定サイトを比較
評価・評判を実際に一括査定して検証!

サイトロゴ suumo売却査定 home4u マンションナビ おうちクラベル イエウール ライフルホームズ リビンマッチ いえカツLIFE HowMa RE-Guide マイスミEX イエイ すまいValue
サイト名 suumo売却査定 HOME4U マンションナビ おうちクラベル イエウール ライフルホームズ リビンマッチ いえカツLIFE HowMa RE-Guide マイスミEX イエイ すまいValue
提携社数 2000以上 1800以上 2500 不明 1900以上 3691以上 1700以上 500以上 6400以上 29 800以上 1700以上 6
最大紹介社数 10
※物件所在地によって異なる
9 6 6 6 6 6 6 6 6 10 7 6
主な対応物件 マンション、戸建て、土地 マンション、戸建て、土地 マンション マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地 マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など マンション、戸建て、土地など
対応エリア 全国 全国 全国 全国 全国 全国 全国 東京、千葉、神奈川、埼玉 全国 全国 全国 全国 全国
記事を読む 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら 評判や査定内容の検証はこちら

【不動産仲介会社の評判を徹底調査!】
・「SRE不動産(ソニーグループ)」の評判
・「三井のリハウス」の評判
・「住友不動産販売」の評判
・「東急リバブル」の評判
・「野村の仲介+」の評判
・「明和地所」の評判
・「京王不動産」の評判
・「オークラヤ住宅」の評判
・「小田急不動産」の評判

TOP