離婚時の不動産売却の流れ&5つの処分方法を解説!
連帯保証人の外し方から、業者に高値で売るコツ、
「夫婦間売買」まで、離婚の住宅問題のプロが伝授!

2018年5月17日公開(2021年12月17日更新)
ダイヤモンド不動産研究所
監修者 高橋愛子:住宅ローン問題支援ネット 代表理事

離婚時に家(マンション、戸建てなどの不動産)を売却するケースは多いが、焦って売ろうとしたために買い叩かれたり、オーバーローンで売れなかったりなど、苦労する夫婦は多い。そこで離婚時の「不動産売却の流れ」から「上手な処分方法」まで専門家に話を聞いた。

離婚では、家の売却・処分を検討することが多い

 人生の大きな岐路となる離婚。子どもたちの親権や養育費、慰謝料、財産分与など、考えるべきことは多い。中でも、戸建て、マンションなどの「持ち家」がある場合は、売却を検討する人が多い。

 例えば、離婚後も住宅を売却せずに妻がそこで暮らすとしても、元夫が住宅ローンを支払い続けている場合、元夫の支払いがストップしてしまえば住み続けられなくなる。さらに妻が連帯債務者などになっていると、妻に住宅ローンの返済義務さえ発生してくる可能性がある。それだけに、持ち家はなるべく処分してしまおうという人が多いのだ。

 しかし、いざ売却しようとしても、トラブルが多く簡単ではない。住宅売却の理由が離婚によるものだと安値になりがちで、急いで売るために買い叩かれやすい。さらに、自宅を売却したくても、売却価格が住宅ローン残高を下回っている「オーバーローン状態」ならば、ローン残債分の現金を手当てしないと売却できない。

 そこで、離婚時の不動産売却・処分について詳しい専門家に、上手な売却方法・処分方法を聞いた。

まずは、現状認識からスタートすべき

 離婚時の住宅問題について数多くの相談を受けてきた住宅問題支援ネットの高橋愛子代表は語る。

「離婚時はどうしても感情が先立ってしまいます。正しい選択をするためには事前の準備と知識が必要です」

 そこで、売却・処分に向けて、まずは現状を確認することからスタートしよう。以下が、離婚時における不動産売却・処分の流れだ。

 最初に、「【1】住宅ローン残高を確認」しよう。

 自分または相手に住宅ローンが残っている場合、銀行が自宅に抵当権を設定しているため、勝手に売却できないのだ。通常はインターネットで自分の住宅ローンの残高が確認できる。もし、ネットバンキングをしていない場合は「残高証明書」を発行してもらおう。

 次に、「【2】連帯保証人などになっているかを確認」しよう。

 夫婦で住宅を購入している場合、夫がメーンとなって住宅ローンを借りていても、妻が「連帯保証人」や「連帯債務者」になっていたり、ペアローンで住宅を購入していたりするケースがある。権利関係を把握しなければ、売却や処分の方針を決められない。

 もし、夫が主債務者で妻が連帯保証人になっている場合、離婚後も住宅ローンが残っていると、元夫が返済できなくなった時に元妻にも返済義務が生じるのだ。確認方法は簡単だ。住宅ローンの契約書に記載してあるので、それを探せばいい。

 もし見つからなかったり、契約書を見られなかったりした場合はやや複雑だ。

 「連帯債務者」については、不動産登記簿を見ること。現在は登記情報提供サービスのサイトで簡単な登録をすれば誰でも閲覧可能だ。 持ち家の建物・土地どちらでもいいので、登記簿謄本の「乙区」と呼ばれる部分の「連帯債務者」欄を確認しよう。

 「連帯保証人」の場合は、全国銀行協会に自分の信用情報を開示請求する必要がある(銀行から借りている場合)。請求方法は郵送のみ。送られてきた開示資料の「取引種類等」欄に、「連帯保証人」「連帯債務者」と記載されていれば、その人に返済義務があることになる。なんらかの対応をしておいた方がいいだろう。

 そして、「【3】住宅を売却すればいくらになるか、一括査定サイトなどで確認」しよう。不動産会社によって査定価格にばらつきがあるので、複数の不動産会社に価格査定を依頼するべきだが、自分で見つけて依頼するのは大変だ。不動産売却の一括査定サイトであれば、売却する不動産のあるエリアで活動している不動産会社に一括して査定を依頼できる。通常、6社程度まで査定依頼をかけられるので、非常に便利だ。
【関連記事はこちら!】>> 不動産一括査定サイト&仲介業者25社で比較! メリット・デメリット、掲載不動産会社、不動産の種類で評価しよう

 以上の情報がそろったところで、「【4】売却・処分方法を検討」しよう。現在の状況によって売却できる場合もあれば、売却できないために「住宅ローンの借り換え」や「夫婦間売買」などで対応するなど様々な方法がある。以下、解説していこう。

【売却・処分法1】
売却して利益が出るのなら、売却

 まず、比較的簡単なのが、「【売却・処分法1】住宅ローンがない、または売却して利益が出るのなら、売却」というケース。

 不動産会社が査定した売却価格と、住宅ローン残高を比較し、売却して住宅ローンを返済した後に利益が出るかどうか、以下の式を使って確認しよう。

「査定金額」-「住宅ローン残高」-「仲介手数料やその他の費用」

 住宅ローンを返済しても利益が出るときや、そもそも住宅ローンを完済している場合は、持ち家を売却して、財産を分与するのがいいだろう。

 その場合はいかに高く売るかを考えよう。先述の通り、離婚時の不動産売却に焦りは禁物だ。

 離婚時の住宅売買では、すぐに現金化が必要な状況に足元を見て、査定額を安く見積もる不動産会社もいる。さらに、「『どうせ売るなら、早く売ってスッキリしたい』という心理から、安値で売ってしまう夫婦も多い」(高橋代表)のだという。しかし、後述するように「瑕疵(いわゆる欠陥など)」がある物件ではないので、時間をかけてじっくりと売れば、通常の不動産と同様の価格で販売することは可能だ。

 急いで現金化したいがために売り急ぎ、不動産会社に買い取ってもらうと、市場価格から10%~20%ほど安くなってしまうことが多い。それだけに焦らずじっくり時間をかけて売却するようにしたい。

 手元資金や時間に余裕があるなら、リフォームやホームステージングなどの手法の活用を検討してもいいだろう。さらに高く売れる可能性がある。
【関連記事はこちら】
>> マンションを高く売るなら、リフォームしよう! 「必要最低限に抑える」「相見積もりをとる」など、成功するためのリフォーム5カ条を紹介!
>> ホームステージングを使って査定価格が大幅アップ! 家具や生活雑貨をレンタルして置くだけで、売却期間が半減し、売却価格も高くなる効果も!

■離婚物件は、「瑕疵物件」ではない■
 離婚時の住宅売却では「できることなら、誰にも知られず売却したい」という要望が多い。そのため、買い主に対しても「離婚が原因による売却」であることを告知せずに売りたがる。買い主の中には、やはり縁起が悪いと思うのか、「購入することを嫌がる人が一定数いる」(高橋代表)というのも事実だ。

 それだけに、離婚が原因であることを告知せずに売りたいというニーズは強いのだが、法律的な観点からはどうなっているのだろうか。

 多くの専門家は、告知する必要が無いと考えている。離婚はプライバシーに関わることであり、売却理由として聞かれても答える必要はない。なので、「離婚物件」であることはなるべく表に出さずに売るのが正解だ。

 ただし、購入者が「離婚を理由にして売却する不動産ならば購入しない」など明確な意思を表明している時は別になる。購入を決定する上で重要な事実ならば、告知するべきだろう。

【売却・処分法2】
売却しても赤字になるが、返済できるなら、売却

 次に、持ち家を売却したお金だけでは、住宅ローンを返済できない、いわゆる「オーバーローン」の場合はどうすればいいのか。

 もし、手持ちの預金が潤沢にあったり、親や親戚からお金を借りて住宅ローンを完済できたりするのであれば、売却してもいいだろう。元妻からの「連帯保証人を必ず外して欲しい」という要望に応じるために、借金をしてでも住宅ローンを解消するというケースはよくある。

【売却・処分法3】
住宅ローンを借り換えができるなら、借り換え

 「自分または元妻がそのままその家に住み続ける」というケースでは、売却ができない。そういうケースでは、まずは住宅ローンの借り換えを検討しよう。

 通常、銀行は「妻の連帯保証を外して欲しい」と相談しても、簡単に応じてくれることはほとんどない。連帯保証人がいなくなれば、銀行としては住宅ローンを回収できる確率が減少することになるので、理由なく連帯保証人を外すことはない。代わりの連帯保証人を連れて来れば認められることもあるが、銀行としては手間ばかりかかり儲からない仕事なので、認めてくれないことが多い。

 そこで検討したいのが「住宅ローンの借り換え」だ。元々の主な借り手が年収アップなどにより、当初の借入時以上に借入余力が発生しているのであれば、いっそのこと、他の銀行に借り換えてしまった方が、簡単に連帯保証を外せる。 
【関連記事はこちら】
>> 夫婦で一緒に借りた住宅ローンは、離婚すると「思わぬトラブル」の原因になる!連帯保証、ペアローンのデメリットを解説

【売却・処分法4】
以上がダメなら、住み続ける or 賃貸にまわす

 家やマンションを売却しても住宅ローンの残債が残ってしまい、売るに売れないという場合は、そのまま住み続けるか、賃貸に回すしかないだろう。

 売却せずに、住み続けるなら下記の3点を決めよう。

  •  1. 不動産の名義をどちらにするか
  •  2. 夫婦のどちらが居住するか
  •  3. 住宅ローンが残る場合はどちらが負担するか

 住宅ローンが完済されているのなら、話し合いや調停によって不動産をどう分与するかを取り決めればいいが、どうしても返済できない場合は、連帯保証などを残したままにしておくしかない。

 そこでよく問題になるのが、母親と子供だけがもとの住宅に住み続けるケースだ。生活環境の変化、特に子どもの転校を嫌って、こうした処置をする家庭は多い。住宅ローンの返済については、元夫が慰謝料や養育費の代わりとして支払うことが多い。

 しかし、これが後になって問題の原因になりうる。離婚から数年経つと、元夫が約束した住宅ローン返済を履行しなくなってしまうことがよくあるのだ。返済が滞れば、住宅が差し押さえられ母子が立ち退きを強いられる。先述の高橋代表のもとにもこうした相談は頻繁に寄せられるという。連帯保証などが残ったまま、もとの住宅に住み続けるのは実はリスクがあるのだ。

 最近では夫婦共働きの世帯が多いため、共有名義やペアローンで住宅を購入することも珍しい話ではない。住んでいない元パートナーの住宅ローン返済が滞れば、住み続けていた住宅から泣く泣く立ち退くことになる。

 残念だが「離婚時の住宅売却で住宅ローンが残る場合は、対処できる方法は少ない」(高橋代表)のだ。

【売却・処分法5】
どうしても住宅ローンを解消するなら、夫婦間売買も

 先述のとおり、離婚してもどちらかが住み続ける場合は、住宅ローンの支払いが後々になって大きな問題になることもある。そんなときに、離婚時の不動産処理で注目されている手法が「夫婦間売買」だ。

 離婚と不動産売買について詳しいウェルワークス(東京・練馬)の松野誠治代表は離婚後も、どちらかが自宅に住み続けるのであれば「夫婦間売買」をすすめている。夫婦間売買とは、住宅に住み続けるどちらかが、夫婦の持ち分すべてを購入するというものだ。

 例えば、不動産に住み続ける妻が、財産分与および養育費や慰謝料の代わりに所有権を手に入れる。それでは所有権すべてを手に入れられないことが多いので、残りの所有権は住宅ローンを他の銀行から借りて、夫に現金で支払うというイメージだ。妻は現在の銀行とは別の銀行から住宅ローンを借りるのだ。

 借金の額が少ないケースに限られるが、こうしたケースで住宅ローンに対応する銀行・金融機関としてはフラット35がある他、一部の都市銀行と地銀も貸してくれる。住宅ローンは比較的金利が低いので、妻がパート従業員など低い年収しかなくとも、返済プランを立てることが可能だ。

 夫婦間売買はあまり知られていない方法だが、「離婚後も同じ家に住み続けるなら、後で揉めないために有効なやり方」(松野氏)という。

 ただし、夫婦間売買をする場合は、税理士など専門家との打ち合わせも必要。不動産と税金の関係に詳しい税理士法人ファルベ不動産(東京・中央)の木下勇人代表は「離婚時によく相談して財産分与の比率を調整しないと税務上、贈与となって多額の税金が発生する可能性がある」と指摘する。

 住宅ローンを解消するもう1つの方法として、「任意売却」をするという方法もある。こちらは銀行と交渉して、住宅ローンの残債が残ってもチャラにしてもらうよう交渉するというものだ。下記の記事を参考にしてほしい。
【関連記事はこちら】
>> 住宅ローンが破綻したら「任意売却」の検討を! 「競売」よりも高値売却が可能でメリット大 経験が豊富な専門家に早めに相談しよう

まとめ:離婚時の不動産売却・処分は入念な準備を

 これらが、離婚時の不動産問題を考える上で事前に知っておきべき流れだ。よく下調べをした上で、処分方法をじっくりと考えることが重要だ。以下、主な売却・処分方法を振り返っておこう。

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