夫婦で一緒に借りた住宅ローンは、
離婚すると「思わぬトラブル」の原因になる!
連帯保証、ペアローンのデメリットを解説

2018年2月16日公開(2021年10月12日更新)
ダイヤモンド不動産研究所
監修者 山本俊成:ファイナンシャル・マネジメント 代表

共働き夫婦が、夫婦一緒に住宅ローンを借りる場合、契約方法は、「連帯債務契約」、「連帯保証契約」、「ペアローン」の3つがある。収入を合算して借入額を増やせるというメリットはあるが、一方で将来、離婚に至った場合には、思わぬトラブルが待ち受けていることがある。夫婦一緒の住宅ローンには、どんなメリット・デメリットがあるのか、解説しよう(監修:ファイナンシャルプランナー・山本俊成氏)。

年収を合算できるだけでなく、信用力もアップ

 「夫婦で一緒に住宅ローンを借りるメリットは、なんと言っても借入額を増やせること。若くて収入の少ない20代の夫婦や、よりグレードの高い住まいを求める30代の夫婦が借入額を増やしたいために利用するケースをよく見かけます」。

 住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーの山本俊成氏によると、こうした相談が増えているという。

 首都圏マンションの価格は高騰しており、年収に対する物件価格は今や7.2倍(住宅金融支援機構「2016年度フラット35利用者調査」)。住宅ローンを借りようとしても、夫の年収だけでは「年収不足」となってしまうケースは多いだろう。住宅ローンを借りるために、共働き夫婦で一緒に住宅ローンを借りるのはごく当たり前のことになっている。

 「年収不足」だけが理由でない。以下のように「信用に問題がある」ことから、夫婦一緒で借りるケースもある。

  • (1)職業が不安定
  •  
  •  例えば、「夫が自営業で、妻が会社員」というケース。一般的に銀行は、公務員や会社員より信頼度が低い自営業者には審査を厳しくする。そのため、夫が単独で借りるのではなく、働いている妻を保証人などに加えることで、住宅ローンが借りやすくなる。
  •  
  • (2)夫が転職したばかり
  •  
  •  多くの銀行は、「サラリーマンは3年以上、同じ会社に勤務していること」といった勤続年数の条件を課しているため、転職直後だと、年収が十分であっても住宅ローンは借りられない。例えば、夫の収入は800万円ほどあり、1人で住宅ローンを組んでも問題はないと思われた。しかし、IT関連に転職して1年だったために、銀行側が融資を渋ったので、働いている妻を連帯保証にすることで審査が通ったというケースもある。
  •  

 いずれにせよ、夫婦で一緒に住宅ローンを借りる場面は増えている。なお、この記事では一緒に借りるのを夫婦と想定しているが、生計を一緒にしている親子や兄弟で一緒に借りることも原則可能だ。

連帯保証だと、妻が住宅ローン控除を受けられない

 では、実際に「共働き夫婦で一緒に借りる住宅ローン」はどうやって借りればいいのか。

 契約形態としては、契約が1本の「連帯債務契約」「連帯保証契約」と、契約が2本の「ペアローン」の3つがある。それぞれの特徴をまとめてみると、下記のようになる。

■「連帯保証型」「連帯債務型」「ペアローン」の違い
  (1)連帯債務契約 (2)連帯保証契約 (3)ペアローン
契約形態 主債務者 債務者 債務者かつ連帯保証人
連帯債務者 連帯保証人 債務者かつ連帯保証人
住宅ローン減税
(※1) ×
団体信用生命保険
×
(フラット35は、○※2
×
 主な取り扱い先 民間金融機関 フラット35
楽天銀行
三井住友銀行など
民間金融機関
※1 「新規借入」は〇。借り換え(連帯債務型→連帯債務型)なら〇、借り換え(単独債務→連帯債務型)なら×
※2 「デュエット」(夫婦連生団信)に加入した場合

 (1)連帯債務契約(2)連帯保証契約(3)ペアローンともに、夫婦の年収をフルに使って借りられるという点では一緒だ。しかし、「住宅ローン減税(控除)」、「団体信用生命保険(団信)」については、取り扱いが大きく異なるので注意したい。

 まず、(1)連帯債務契約については最大で500万円の税金が戻ってくるという「住宅ローン減税」制度を夫婦2人でフル活用できることは評価できる。

 問題なのは、万が一借り手が死亡・高度障害になった時に住宅ローンが免除されるという「団体信用生命保険」だ。上表のように夫が債務者となっていて、夫が死亡した場合は団体信用生命保険で残りの住宅ローンは全額免除となるが、毎月いくらか支払っていた妻が亡くなった場合は、まったく免除されない。夫はその後、妻の支払っていた分も支払わなければならず、負担が重くなる。

 フラット35なら、「夫婦連生団信(デュエット)」を用意しているため、加入すれば、夫婦のどちらが亡くなっても住宅ローンは全額免除されるが、民間銀行で同様の団体信用生命保険を用意しているのは、三井住友銀行などに限られる。夫婦ともに一定の支払いをしており、民間銀行で借りる場合は、団体信用生命保険でカバーされない配偶者については、民間の生命保険でカバーするのがいいだろう。

 次に、(2)連帯保証契約をみてみよう。多くの民間銀行が取り入れている「連帯保証契約」は、住宅ローン控除をフルに活用できないのが問題だ。夫が中心になって借りた場合、夫しか住宅ローン減税が認められず、妻は減税が適用されない。また、「団体信用生命保険」についても、債務者である夫しか加入できない。デメリットが目立つ制度だ。

 そこで、民間の銀行から夫婦で借りる場合は、多くの人が「ペアローン」を利用することになる。

 (3)ペアローンは、住宅ローン減税を夫婦でフルに享受でき、さらに団体信用生命保険についても夫婦別々に加入できるというメリットがある。契約が2本になるので、事務手数料や印紙代が2倍になるものの、コストとしては10万円程度のアップですむことが多いので、減税分のメリットで十分に補える。民間の銀行で借りるなら、「ペアローン」を選択するようにしたい。

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離婚して売却する場合は、残債が残らなければ問題なし

 一方で、デメリットをよく理解しないでいるとトラブルになるリスクもある。一番問題となるのが、住宅ローンを組んでいた夫婦が離婚した場合だ。

 まずは「売却するケース」を考えてみよう。

 不動産が高く売れて、住宅ローンをすべて返済できれば、さほど問題はない。妻も「連帯保証人」などの支払い責任がなくなるので、後腐れはない。

 「面倒なのは逆の場合です。家の売却価格が残りの住宅ローンより安い場合、その差額分を現金で用意しなければ住宅ローンを完済できません。お金を用意できなければ、住宅ローンを完済できず、そのまま払い続けなければならないことになるのです」(山本氏)

 売却できなければとりあえずは賃貸に回すことになるが、毎月の支払いが賃料よりも少なければ、持ち出しが続くことになる。万が一、支払いが滞れば、元の伴侶に支払いの督促が行くことになる。

 それだけに、なるべく資産価値が落ちにくい、売りやすい不動産を購入することでリスクを抑えたいところだ。

離婚して住み続ける場合は、借り換えが手っ取り早い

 もしも離婚後に、住宅を売却せずに、「夫婦のどちらかが住み続ける」という場合はどうなるのか。次の2つの大きな難関が待ち構えている。

(1)連帯保証・連帯債務外し
(2)所有権の買い取り

 (1)連帯保証・連帯債務外しは、重要な問題だが、非常に困難だ。例えば、離婚後に元妻が家を出ていき、元夫が住み続ける場合でも、債務者である元夫が支払いを滞らせれば、元妻に支払い請求が来る。ペアローンはもっと厄介で、原則お互いに連帯保証しているので、元夫と元妻のどちらが住宅ローンの支払いが滞っても、相手に請求が行くことになる。

 それだけに銀行に交渉して、「連帯債務」や「連帯保証」を外してもらいたいところだが、銀行は、こうした名義変更には簡単に応じてくれない。

 「夫婦で借りる住宅ローンに関しては、離婚した場合のデメリットが大きいことを知るべきでしょう。自分たちは離婚しないと思っているカップルが、夫婦で住宅ローンを契約してトラブルになるケースも少なくありません。そのため、銀行からすれば、ペアローンなど夫婦で組む住宅ローンは積極的にすすめたい商品ではありません」(山本氏)

 財産分与や慰謝料については、離婚の当事者で話し合うことで解決できることだ。だが、夫婦で借りた住宅ローンは銀行が絡むため、名義変更は容易にできないことも理解しておきたい。

 その点、「借り換え」できるのであれば、問題は簡単に解決できる。例えば、元夫の年収が増加していて、元妻の支払い分も十分に支払えれば、借り換えで1本の住宅ローンにすることで、自動的に妻の連帯債務・連帯保証は外れることになる。現在は超低金利であるため、借り換えによって支払額を大きく減らせる人が多いので、別に離婚の可能性がなくても、「一人名義の住宅ローン」に借り換えておいてもいいだろう。

 (2)所有権の買い取りも大変だ。

 「連帯債務」や「ペアローン」の場合、相手にも所有権があるため、その持分を買い取ってもらわなければ、いつまでも元夫婦で同じ物件を持ち続けことになる。

 持分は、数千万円になることもザラであり、買い取りるのはかなりハードルが高い。持ち分買取に対応してくれる銀行が少ないのもネックとなる。もし持ち分について何もしない場合は、夫婦間で持ち分が贈与されたとみなされる可能性もあるので、税理士などの専門家に相談しよう。

 それだけに、高額物件では、夫婦のどちらかが住み続けるという選択肢は、かなり無理がある。なるべく資産価値が落ちにくくて、売りやすい不動産を購入しておき、いざという時は売却も選択肢に入れられるようにしておくのがいいだろう。また、様々なリスクをなるべく避けたいというのであれば、そもそも夫婦で住宅ローンを組むことが最適かどうかをファイナンシャルプランナーなどに相談してもいいだろう。

まとめ〜メリットもあるが、デメリットも把握しておこう

 マイホーム購入は大きな買い物になる。夫婦で住宅ローンを借りる時も、失敗は避けたい。それだけに、夫婦で一緒に住宅ローンを借りるときのポイントを今一度、振り返っておこう。

  • (1)借りる際は、「連帯債務型」「ペアローン」にして、住宅ローン減税のメリットをしっかりと受け取る
  •  
  • (2)夫婦ともに毎月の支払い負担がある場合は、2人とも死亡リスクに備えておく
  •  
  • (3)万が一、売却せざるを得なくなった時に備えて、価格の下がりにくい優良な不動産を購入する
  •  
  • (4)ファイナンシャルプランナーと夫婦で住宅ローンを組むことが最適か相談する
  •  
  • (5)早い段階で借り換えて、連帯債務や連帯保証を外しておいてもいい
  •  

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