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【第8回】2018年7月19日公開(2019年3月20日更新)
風戸裕樹
風戸裕樹

風戸裕樹(かざと・ひろき)氏:ソニー不動産の前身となる「売却のミカタ」を立ち上げ、「不動産売却で売り主だけの味方になる」という新しいコンセプトを打ち出しました。現在は不動産情報サービス「PropertyAccess.co」を設立し、アジアの不動産を国境をまたいで他国の人に紹介するビジネスを展開しています。

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家の売却を依頼した不動産会社は「味方」でなく、
物件情報の拡散にブレーキをかける「敵」だった!
売り主にとって大切な「広告転載」を理解しよう

家やマンションなどの不動産を売ろうとしている人は、できるだけ早く、売り出し価格で購入してくれる買い主を見つけたいはず。そのためには多くの購入希望者の目に留まるように、物件情報がいろいろな物件情報サイトに掲載される方が好ましいはずですが、日本ではそれが難しくなっています。今回は不動産業界の課題である「広告転載」の裏側について解説します。

物件情報は「レインズ」に登録される

 ここで、不動産を売却する際の、主な情報の流れを見ていきましょう。

 売り主が不動産会社に物件の売却を依頼する時には通常、不動産会社と「媒介契約」を結びます。このうち「専属専任媒介」と「専任媒介」の物件情報は、全国4つの指定不動産流通機構(レインズ)に登録することが義務付けられています。より多くの不動産会社に情報提供することで、効率的に買い主を探して取引を成立させるのが目的です

 レインズは業者間の物件情報ネットワークで、加盟している不動産会社であれば、これらの物件情報を自由に閲覧でき、買い主を探してきて取引することができます。ただし、一般の人は見ることができません

 レインズの設立目的を考えれば、レインズ会員の不動産会社が、買い主を探すために、自社サイトに物件を掲載したり、自社のチラシに載せたりすることは問題ないように思われます。

 ところが、物件情報の取り扱いには情報を登録した不動産会社(登録業者)の承諾を得ることが義務付けられているのです

登録された情報の大半は、広告の転載が「不可」

 レインズを見ると、各登録物件には「広告転載区分」という欄があり、最初から「広告可」と表示されていれば、すでに承諾を得たことになり、物件番号などを適正に管理するだけで、広告の転載が可能です。

 しかし、そうした物件はごく一部です。大半の物件は、「広告不可」となっています。

 「広告不可」となっている場合、登録業者に「文書による承諾」を得る必要があり、いまだに物件ごとにファックスでやり取りしているのです。

 以下が、業界団体が作成した「承認依頼書」の雛形です。なんと、代表者のハンコを押す欄まであります。

「業界団体の広告掲載・宣伝告知承諾依頼書の参考様式」、出所:公益社団法人近畿圏不動産流通機構「業界団体の広告掲載・宣伝告知承諾依頼書の参考様式」、出所:公益社団法人近畿圏不動産流通機構

 また、物件を転載させてもらっている業者は、定期的に登録業者に「販売を継続しているのか」を確認する必要もあります。それだけで大変な手間と労力がかかるのです。不動産業界はIT化が遅れているため、この確認作業はほとんど電話で行っています。恐ろしく省力化が遅れている、非効率な業界なのです。

 また、そもそも広告の転載を依頼しても、断られるケースも多いと聞きます。積極的に情報を発信する気がない不動産会社も結構あるのです。

【関連記事はこちら】
>> 家を高値で売りたいのなら、絶対に知っておきたい「売主のためのレインズ活用法」 売主が損しても分かりにくい仕組みなので注意を!

両手取引を狙っているため、広告の転載をさせない

 なぜ、不動産会社は広告転載に消極的なのでしょうか。そう、彼らは、このシリーズで何度も取り上げている「両手取引」を実現させたいので、他の不動産会社にはなるべく広告・宣伝をさせたくないのです

 特に、買い主にとって魅力的な優良物件であればあるほど、物件検索サイトに広告を掲載しなくても、すぐ買い主が見つかる可能性は高くなります。売り主と買い主の両方から仲介手数料を得る「両手取引」に簡単に持ち込めるというわけです。

 顧客情報を多く保有しているため買い主を見つける力がある大手仲介業者ほど、広告掲載の許可を出さないという話も聞きます

広告転載を拒否する理由は、根拠が薄い

 物件情報の転載を厳しくしている根拠は何でしょうか。

 まず、転載広告という行為が規制の対象となるからと説明されています。

 ネットやチラシに物件情報が掲載されるということは、「広告」と同じで、不当景品類及び不当表示防止法(1962年制定)の対象となる「不動産広告」になります。情報を発信する広告主=登録業者には、不動産の表示に関する公正競争規約(公正取引委員会告示)に基づく広告規制が課せられているため、広告を転載するにも許可が必要という理由としているのです。

 しかし、もともとのレインズに掲載する情報は、業者間で見ることができます。業者間は不動産広告に当たらないからといって、いい加減な情報を載せるのは望ましくない行為です。最初から、レインズにも広告規制をかけるべきではないでしょうか。

 また、「レインズ情報取り扱いガイドライン」(不動産流通機構)には、承諾が必要な理由として「売却の依頼者や元付(登録)業者の中に客付業者が広告を掲載することを望んでいない場合がある」と書かれています。ただ、望んでいない理由が何であるかは全く書かれていません。

 売り主は、「どんどん宣伝してもらいたい」というのが基本です。「近所の目もあるから、隠密に売って欲しい」という特殊なケース以外は、情報を拡散して欲しいはずです。

 消費者に正しい物件情報を提供するために広告規制があるのでしょうが、「両手取引のための道具」として利用されてきたとの印象も否めません

契約時に「広告転載可」にしてもらおう!

 媒介契約を結んだ不動産会社は「売り主の味方」だと思っていたが、実際はライバル他社への「広告転載」を認めないで、両手取引を実現させて手数料をがっぽり稼ごうとする「売り主の敵」だった…。こんなことが不動産売却の現場では起こっているのです。

 誰もが公平にできるだけ多くの不動産情報にアクセスできるようにするためにはどうすれば良いのでしょうか。

 まず、売り主ができるのは、契約時に「広告転載区分は『広告可』にしてください」と依頼することです

 また、レインズに登録された物件情報は、会員であれば自由に広告できるようにするべきでしょう。ただし、物件広告がどのサイトに転載されたかを管理するプラットフォームは構築すべきでしょう。そうすれば、業界全体の生産性向上にも寄与するはずです。

 さらに将来は、物件情報を不動産会社だけで共有するのではなく、広く一般公開することも議論していく必要があるでしょう。

(編集協力=ジャーナリスト・千葉利宏)

【関連記事はこちら】
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<不動産売却の基礎知識>
相場を知るために、まずは「一括査定」を活用!

 不動産の売却に先駆けて、まずは相場を知っておきたいという人は多いが、それには多数の不動産仲介会社に査定をしてもらうのがいい。

 そのために便利なのが「不動産一括査定サイト」だ。一括査定サイトで売却する予定の不動産情報と個人情報を入力すれば、最大6社程度から査定してもらうことができる。不動産の相場観が分かるだけでなく、きちんと売却してくれるパートナーである不動産会社を見つけられる可能性が高まるだろう。

 ただし、査定価格が高いからという理由だけでその不動産仲介会社を信用しないほうがいい。契約を取りたいがために、無理な高値を提示する不動産仲介会社が増加している。

 「大手に頼んでおけば安心」という人も多いが、不動産業界は大手企業であっても、売り手を無視した手数料稼ぎ(これを囲い込みという)に走りがちな企業がある。

 なので、一括査定で複数の不動産仲介会社と接触したら、査定価格ばかりを見るのではなく、「売り手の話を聞いてくれて誠実な対応をしているか」、「価格の根拠をきちんと話せるか」、「売却に向けたシナリオを話せるか」といったポイントをチェックするのがいいだろう。

 以下が主な「不動産一括査定サイト」なので上手に活用しよう。

■相場を知るのに、便利な「不動産一括査定サイト」はこちら!
◆HOME4U(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、ビル、アパート、店舗・事務所
掲載する不動産会社数 1300社 不動産一括査定サイト「HOME4U」の公式サイトはこちら
サービス開始 2001年
運営会社 NTTデータ・スマートソーシング(東証一部子会社)
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、日本初の一括査定サービスであり、運営会社はNTTデータグループで安心感がある点。弱点は、提携会社数がやや少なめであること。
HOME4U公式サイトはこちら
◆イエウール(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
掲載する不動産会社数 1400社以上 不動産一括査定サイト「イエウール」の公式サイトはこちら
サービス開始 2014年
運営会社 Speee
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、掲載する会社数が多く、掲載企業の一覧も掲載しており、各社のアピールポイントなども見られる点。弱点は、サービスを開始してまだ日が浅い点。
イエウール公式サイトはこちら
◆LIFULL HOME'S(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、倉庫・工場、投資用物件
掲載する不動産会社数 1692社(2018年8月)
サービス開始 2008年
運営会社 LIFULL(東証一部)
紹介会社数 最大6社
【ポイント】強みは、匿名査定も可能で安心であるほか、日本最大級の不動産ポータルサイト「LIFULL HOME'S」が運営している点。弱点は大手の不動産仲介会社が多くはないこと。
LIFULL HOME'S公式サイトはこちら
◆リビンマッチ(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫
掲載する不動産会社数 1400社 不動産一括査定サイト「スマイスター」の公式サイトはこちら
サービス開始 2006年
運営会社 リビン・テクノロジーズ
紹介会社数 最大6社(売却6社、賃貸、買取)
【ポイント】強みは、掲載している不動産仲介会社数が多く、マンション、戸建て、土地以外の工場、倉庫、農地も取り扱いがある点。弱点は、運営会社が広告代理店で上場していないこと。
スマイスター公式サイトはこちら
◆イエイ(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション、戸建て、土地、投資用物件、ビル、店舗、工場、倉庫、農地
掲載する不動産会社数 1000社 不動産一括査定サイト「イエイ」の公式サイトはこちら
サービス開始 2007年
運営会社 セカイエ
紹介会社数 最大6社
【ポイント】 強みは、サービス開始から10年以上という実績があるほか、対象となる不動産の種類も多い。「お断り代行」という他社にないサービスもある。弱点は、経営母体の規模が小さいこと。
イエイ公式サイトはこちら
◆マンションナビ(不動産一括査定サイト)
対応物件の種類 マンション
掲載する不動産会社数 900社超、2500店舗 不動産一括査定サイト「マンションナビ」の公式サイトはこちら
サービス開始 2011年
運営会社 マンションリサーチ
紹介会社数 最大9社(売却・買取6社、賃貸3社)
【ポイント】 強みは、マンションに特化しており、マンション売却査定は6社まで、賃貸に出す場合の査定3社まで対応している点。弱点は、比較的サービス開始から日が浅く、取扱い物件がマンションしかない点。
マンションナビ公式サイトはこちら
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